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68.花畑
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オルフィの町を出て10日、4月に入ったからかかなり暖かい日が増えてきた
「シア、ルーク」
「どうした?」
「何かあるのか?」
俺達を手招きするシャノンに尋ねながらそっちに向かう
「見て!」
シャノンの指さした場所には白とピンクの花が咲き乱れていた
「これは…」
「すごいな…」
地面を這うように咲き誇る3種類の花
辺り一面が花の絨毯と言ってもいいくらいだった
『いいにおいがするよ』
リトスも気に入ったのかポーチから飛び出して花の中を走り回る
「リトス!あんまり遠くに行くなよ?花に埋もれて見つけられなくなるから」
『えー?やだよー』
見つけられなくなるという言葉に反応したのか駆け戻ってくるなり飛びついてきた
「走り回ってる時は大丈夫だぞ?でも花のなかで寝られたらちょっとな」
『いい。しあといる!』
リトスは俺の服を必死で握りしめていた
こうなるのは流石に予想外だったな…
「リトス、そんなに必死にならなくても大丈夫だ」
『でも…』
「リトスを置いて行ったりしないから安心しろ」
『むぅ…』
リトスはまだ不安そうにしながらも肩の上に移動した
「ねぇシア、ここで少し休憩しよ?」
「…そうだな。これだけだだっ広ければ何か来てもすぐわかるし問題ないだろ。ルークもいいか?」
「もちろん。押し花とかにしたら母さんとスカイが喜びそうだしね」
「シエラのこと忘れてない?」
「あ」
やばかったーとルークは苦笑する
「3種類あるから丁度いいね」
白と薄いピンクにそれより少し濃いめのピンク
大量にあるのに優しい色合いに見える
「それにしてもすごくいい香り。こんな香り初めてだよ?」
大きく息を吸い込むように香りを取り込んだ途端、シャノンはふにゃりと笑う
「…シャノン?」
「な~に~?」
その答え方に俺とルークは顔を見合わせた
「まさか…」
俺は慌てて辺りの花を鑑定した
***
ファシスネーションフラワー
白から赤迄10段階の色味を持つ
白味が強いものは甘い香りで夢の中へ誘う睡眠薬、赤みが強いものは魅惑的な香りを持つ媚薬の原材料として利用される
生花の香りは加工したものより強く即効性がある。精神に作用するがその効力は最大24時間で霧散する
***
「マジか…」
「何が?」
「この花、睡眠薬の成分だ」
俺は鑑定した内容をルークに伝えた
その視線の先でシャノンが既に横になっていた
「何でそんな花がこんな場所にあるんだよ…」
「これ、押し花はダメなやつだよな?」
「やめといた方がいいだろうな。でも母さんやバルドさんは喜びそうだ」
「ってことは苗ごと持ち帰り?」
「ああ」
俺達は出来るだけ浅く呼吸しながらそれなりの量の苗を確保した
「あとはシャノンを連れてこの場所を離れるだけだな」
「そうだね」
俺はシャノンを抱き上げた
「リトスはしっかり捕まってろよ?」
『うん!』
リトスは答えるなり胸ポケットに移動した
「それにしても精神異常も身体異常も耐性持ってるはずなのに随分簡単に寝たよなぁ」
「まぁ旅の疲れのせいもあるだろうけどな」
「確かに…」
セトイカでゆっくりしていたとはいえあの家にいる時とはまた違う
そう言う意味では俺もルークも含めてどこか緊張状態にあるのは確かだ
久々に見た花畑で気が緩んだところに香りを一気に吸い込めば、この結果は仕方ないともいえる
「とりあえず毒とかじゃなく寝るだけで良かったよ」
「本当にそうだよ。命に係わるタイプだったら今頃大変なことになってたしね」
かといって花の香りをかぐなとも言えないし、見るものすべてを鑑定して回るのもちょっとな…
「警戒するにも限度があるしな」
そう話しながら俺達は考え込んでしまった
「…とりあえず初めて見るものは警戒するくらいしかないか?」
「…」
ルークは無言で頷いた
俺達はその後も何かいい方法がないか考えながら、少し離れた場所で洞窟を見つけてシャノンが目覚めるのを待つことにした
「シア、ルーク」
「どうした?」
「何かあるのか?」
俺達を手招きするシャノンに尋ねながらそっちに向かう
「見て!」
シャノンの指さした場所には白とピンクの花が咲き乱れていた
「これは…」
「すごいな…」
地面を這うように咲き誇る3種類の花
辺り一面が花の絨毯と言ってもいいくらいだった
『いいにおいがするよ』
リトスも気に入ったのかポーチから飛び出して花の中を走り回る
「リトス!あんまり遠くに行くなよ?花に埋もれて見つけられなくなるから」
『えー?やだよー』
見つけられなくなるという言葉に反応したのか駆け戻ってくるなり飛びついてきた
「走り回ってる時は大丈夫だぞ?でも花のなかで寝られたらちょっとな」
『いい。しあといる!』
リトスは俺の服を必死で握りしめていた
こうなるのは流石に予想外だったな…
「リトス、そんなに必死にならなくても大丈夫だ」
『でも…』
「リトスを置いて行ったりしないから安心しろ」
『むぅ…』
リトスはまだ不安そうにしながらも肩の上に移動した
「ねぇシア、ここで少し休憩しよ?」
「…そうだな。これだけだだっ広ければ何か来てもすぐわかるし問題ないだろ。ルークもいいか?」
「もちろん。押し花とかにしたら母さんとスカイが喜びそうだしね」
「シエラのこと忘れてない?」
「あ」
やばかったーとルークは苦笑する
「3種類あるから丁度いいね」
白と薄いピンクにそれより少し濃いめのピンク
大量にあるのに優しい色合いに見える
「それにしてもすごくいい香り。こんな香り初めてだよ?」
大きく息を吸い込むように香りを取り込んだ途端、シャノンはふにゃりと笑う
「…シャノン?」
「な~に~?」
その答え方に俺とルークは顔を見合わせた
「まさか…」
俺は慌てて辺りの花を鑑定した
***
ファシスネーションフラワー
白から赤迄10段階の色味を持つ
白味が強いものは甘い香りで夢の中へ誘う睡眠薬、赤みが強いものは魅惑的な香りを持つ媚薬の原材料として利用される
生花の香りは加工したものより強く即効性がある。精神に作用するがその効力は最大24時間で霧散する
***
「マジか…」
「何が?」
「この花、睡眠薬の成分だ」
俺は鑑定した内容をルークに伝えた
その視線の先でシャノンが既に横になっていた
「何でそんな花がこんな場所にあるんだよ…」
「これ、押し花はダメなやつだよな?」
「やめといた方がいいだろうな。でも母さんやバルドさんは喜びそうだ」
「ってことは苗ごと持ち帰り?」
「ああ」
俺達は出来るだけ浅く呼吸しながらそれなりの量の苗を確保した
「あとはシャノンを連れてこの場所を離れるだけだな」
「そうだね」
俺はシャノンを抱き上げた
「リトスはしっかり捕まってろよ?」
『うん!』
リトスは答えるなり胸ポケットに移動した
「それにしても精神異常も身体異常も耐性持ってるはずなのに随分簡単に寝たよなぁ」
「まぁ旅の疲れのせいもあるだろうけどな」
「確かに…」
セトイカでゆっくりしていたとはいえあの家にいる時とはまた違う
そう言う意味では俺もルークも含めてどこか緊張状態にあるのは確かだ
久々に見た花畑で気が緩んだところに香りを一気に吸い込めば、この結果は仕方ないともいえる
「とりあえず毒とかじゃなく寝るだけで良かったよ」
「本当にそうだよ。命に係わるタイプだったら今頃大変なことになってたしね」
かといって花の香りをかぐなとも言えないし、見るものすべてを鑑定して回るのもちょっとな…
「警戒するにも限度があるしな」
そう話しながら俺達は考え込んでしまった
「…とりあえず初めて見るものは警戒するくらいしかないか?」
「…」
ルークは無言で頷いた
俺達はその後も何かいい方法がないか考えながら、少し離れた場所で洞窟を見つけてシャノンが目覚めるのを待つことにした
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