チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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67.妙な噂

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俺達はシャノンを追いかける様に宿を出てギルドに向かっていた
「何か注目されてる?」
遠巻きにヒソヒソ話し声が聞こえる
ガキの3人組とか喧嘩とか、そんな単語が多い
しかもそのどれもが悪い意味での言葉になってる気がする

「…気にすんな」
大半が冒険者と言うことは行きに寄った時に馬鹿を片付けたことが原因だろう
それが間違ってなかったと確信したのはギルドに入ってからだった

「お前ら…」
後ずさりながら声を発したのはギルド前に放置した馬鹿達だ

「久しぶりだな」
「な…何でお前らがここに…」
「旅の帰りに寄っただけだが?」
「私たちがこの町に寄ったらダメなの?」
「いや、そう言うわけじゃ…」
「そうそう“金払って喧嘩に勝たせてもらったガキの3人組”って何のことか聞きたいんだけど?」
明らかに狼狽えている馬鹿達に、俺は外で聞こえてきた言葉を突き付けた

「なに?そんなこと言われてたの?」
「うわ…当人居ないからって話しすり替えたんだ?」
「あ…だからその…」
「残念ながら俺達は金を奪われそうになったけど支払った覚えはないぞ?」
あえて周りに聞こえる声で言ってやる

「なんなら今ここでもう一度勝負してあげてもいいよ?」
「武器でも魔法でも選ばせてあげるけど?」
何でこの2人はこんなに好戦的なんだ?

「…その辺で勘弁してやってくれないか」
そう言いながら出てきたのはギルドマスターのエイルだった

「エイル、久しぶり」
「久しぶりじゃねぇよこの悪ガキ」
「悪ガキ?俺が?」
「他に誰がいるってんだ。頼むからこれ以上虐めてやんな」
「虐めるなんて心外だなぁ…ムカつく噂を流されてるから文句言ってるだけだろ?」
適当に言い返すとエイルは困ったようにため息を吐く

「…お前らよく聞け」
エイルは声を張り上げた
ギルド内にいた冒険者が一気に注目する

「はっきり言っておく。このクソガキどもは『無限』だ」
そのパーティー名に周りがざわついた

「噂が真実かどうかはそれで判断できるだろ?お前も負けたのが情けないと思うなら、相手を貶める前に自ら強くなりやがれ。この屑が」
吐き捨てる様に言われた馬鹿達は逃げる様に飛び出して行った
それを見て俺達は顔を見合わせ苦笑する

「ギルドマスター自らトドメ差さなくても…」
「いいんだよ。とにかくお前らはついてこい」
そう言われて俺達は応接室に入った

「で、何をしに来たって?」
「別に何も。旅の帰り道に町があれば寄る。それだけのことだよ」
「なるほど?行きの時みたいな厄介ごとは無いんだな?」
「厄介ごとって…」
「俺に取っちゃ王族が絡むようなことは厄介ごと以外の何者でもないってことだよ」
今にも叫びだしそうだ

「あれは俺だって想定外だからな?そう言う意味なら今回は大丈夫だよ。休憩と素材の売却しか予定はないから」
「素材の売却?まさかまた…」
「結構あるぞ。ただ、毒持ちの魔物が多いから先に伝えとこうと思って」
「毒持ち?まさか毒の森を通ってきたのか?」
「通らなきゃセトイカに行けないじゃん」
「あぁ…お前たちはセトイカが目的地だったか」
思い出したように言う

「そういうこと。もっとも今あるのはセトイカからここまでの道のりの分だから、行きの時ほどの量は無いけどな」
「でもBランクのポイズンバードやAランクのポイズンウルフは20体ずつ以上はあるよ」
「そうか。それは有り難い。滞ってる依頼も多いからな」
まぁ毒持ちの魔物ばかりの森にはそうそう踏み入れたくはないか

「そういうことだから明日の午前中に持ってくる」
「分かった。こっちもそれなりの準備をしておこう。前もって伝えてくれたことには感謝する」
数体なら問題なくても数十体となれば話は別だ
解体する側も慎重になるだろう
気持ちよく仕事してもらうにはこういう根回しは必要ってことだな

「さて、後は屋台でご飯を調達ね」
ギルドを出るなりシャノンは屋台に飛びついていく
旅の最初の頃は俺がいちいち払いに行ってたけど、途中からはある程度の金を渡して好きに買わせるようになった
おかげで俺はリトスとのんびり屋台を回れるということだ
俺達は思い思いに屋台で買い物を済ませて宿に戻った
行きとは違い、周りでささやかれる声は好意的なものに変わっていた
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