チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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64.セトイカ出発

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セトイカに来て3か月
長いような短いような、そんな時間が過ぎて俺達は旅立つ日を迎えていた
「なんだか寂しくなるねぇ…」
サイラさんが涙目になっていた

「長い間世話になった」
「ああ、いいってことよ。子供のくせに暴れるでもないお前さんたちは上客だからな。また来る機会があったらここに泊まってくれ」
「その時は朝ごはんお替りできるようにしてほしいな。勿論お金は払うから」
すかさずそう言ったのはシャノンだ

「確かにお前さん達が夜持って帰ってくる量を考えれば足りるわけもないか?」
「屋台もいいんだけどね」
「いいだろう。次があればその辺も考えるとしよう」
宿主の言葉に2人は嬉しそうだった

「じゃぁ俺達はこれで」
「気を付けてね」
「ありがとう!」
宿主とサイラさんに見送られて宿を後にする

「シア、お前ら帰るって?」
「ああ。世話になった」
「またいつか寄ってくれよな」
「あんたたちがいなくなると寂しくなるよ」
「これは餞別だ!持って行きな」
道すがら色んな人が声をかけてくれる
それだけじゃなく色んなものを渡してくる

「3か月しかいなかったのに有り難いことだよね?」
「そうだな。トラブルや事件はあったけど…いい町だったな」
あの後どうなるかと思ったけど、シャノンも2週間ほどで1人で動けるようになったしな

「海でも遊べたし、海の幸も堪能したし」
いい思い出がたくさんできたと3か月を振り返りながら歩いていた

「あれ?」
いざ町を出ようとしたところで俺達は足を止めた
「どうかし…え~?」
「…まじか…」
門の手前に漁師とその家族がズラッと並んでいた

「何なんだよこれ?」
俺は半分呆れながら尋ねる

「当然だろう?俺達漁師にとってシアは救世主みたいなもんだからな」
「漁師だけじゃない。料理人にとってもだ」
ルワードさんとグースが競う様に言いあっているのを皆が苦笑しながら見ていた

「皆暇なの?」
「屋台はどうしたんだよ?」
「今日は特別だ。屋台を開けるのはこの後にした」
ルワードさんは当然だろう?とどや顔で言ってきた

「これは俺達からの餞別だ。今朝絞めたところだから新鮮だぞ?」
そう言いながら20台近くある荷車に乗せた大量の魚介類が指し出された

「ちょっ…これ多すぎだろ?1日の収穫量軽く超えてんじゃねぇか…」
「問題ない。この日の為に少しずつ囲いの中に溜めてたからな」
数日前にも漁に連れてってもらったのに全然気づかなかった…
何よりこの量を朝から絞めたってことは多分大半の漁師が明け方から駆り出されてるよな?

「本当にいいのか?」
「もちろんだ。逆に持ってってもらわねぇとダメになっちまう」
確かにそうだな

「じゃぁ有り難く貰っとくよ」
「ありがと~」
「助かるよ」
2人も嬉しそうにお礼を言っていた

「お前さんの町に魚を届けるっていうでっかい夢も出来たからな。その時を楽しみにしてろよ」
「ああ、楽しみにしてるよ」
それは本当に楽しみだ

「これは昼飯にでもしてくれ」
そう言って大きな包みを渡してきたのはグースだ
しかもそのでかい包みは3つある

「これは?」
「シアに教えてもらった料理やそこからアレンジしたものを色々作った」
「こいつ徹夜で作ってたぞ」
「ちょっ…ルワードそれは言うなって…」
しょぼくれるグースに俺達も含め皆が笑い出す

「ありがたく貰っとく。魚介類の料理、冒険者通じてどんどん広めてくれよな」
「まかせとけ。他国や内陸部の冒険者がこの町に来たくなるくらいしっかり宣伝させてもらうよ」
グースは胸を叩いて言う
そうなってくれれば行き来はもっと楽に、そして安全になるはずだ
途中の宿も増えるかもしれない
何となくその日はそんなに遠くないような気がした

『これからも さかな たべれる?』
「そうだな。いつかそんな日が来ると思うぞ」
白身魚が気に入ったリトスは嬉しそうに飛び跳ねる

「じゃぁ行くよ」
このまま話してたい気もするけどそういうわけにもいかない

「ああ、気を付けてな」
「また来ておくれ」
「できればまた来させてもらう。みんなも元気で」
互いに別れの言葉をかけあい、俺達は3か月過ごしたセトイカの町を後にした
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