チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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63.大漁?

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「お、今日も行くのか?」
「ああ」
4時前から桟橋で待っていた俺に声をかけてきたのはルワードさんだ

「今回もシアだけか?双子はどうした?」
「双子はまだ寝てるよ」
「ははは!まぁ普通のやつにはこの時間はきついか?」
「そんな感じ」
俺は答えながらいつものように船に乗り込んだ
今日はちょうど10回目の漁だ
ルークとシアは1回目だけ参加して、その後は寝ることを選んだ
特に約束していなくても、出発前に桟橋に居れば連れて行ってくれる
すでに勝手知ったる状態の船の上でルワードさんの作業の邪魔にならないように動き回る

「今日は底引きだ」
「まじ?じゃぁカニやエビが採れるってことだよな!?」
嬉しさのあまり掴みかかる様に聞いていた
なんならエンドレス並みに大量に取れて欲しいと思った

「お前の言う通りカニもエビもタラも採れるから…まずは落ち着け」
「わり…」
「まぁいいけどよ。普段は落ち着いてるお前さんも好物には敵わんってことか?」
「…」
笑いながら言われて居たたまれなくなる
でも好きなもんはどうしようもない
頭の片隅にある前世の記憶
その中の小さな俺はカニとエビが大好物だった
この世界でカニとエビに類する魔物は食べたことはあっても、魚介類としてのカニとエビ、しかも獲れたてとなると興奮しても仕方ない

底引きの時は小型の船に大体3~4人ずつ乗り込むらしい
「シア!そっち引っ張ってくれ」
「了解」
時々こうして声がかかる
縄を引っ張ったりするくらいの手伝いだけど何もしないでいるよりはいい
当然だけど毎日乗るわけじゃないから主要な作業には関わらせてもらえない
かといって客扱いも居心地が悪すぎる
だからこういった雑用を気軽に言いつけてくれるのはとてもありがたい
少しして出港した船は30分程で今日の目的地に到着した

「準備できたぞ~」
「よし、じゃあ始めるぞ!」
ルワードさんの言葉に皆が答え再び船が動き出す
時速2キロほどのスピードで網を引きながら40分程走る
その後網を引き揚げて捕れた獲物を仕分けするまでが1回の流れだと説明された
それを大体4~5回繰り返せばその日の漁は終了になる

「おいおい…何だよこれは?」
まだ10分程しか走っていないのに船が止まった
同時に聞こえてきたのはルワードさんの困惑を含んだ声だ

「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもあるか!とんでもないことが起きてる」
「?」
「いいからお前も手伝え!網を引き揚げるぞ」
「引き上げるって…40分くらい走ってからって言ってなかったか?まだ10分くらい…」
そう言いながら網をのぞき込んで固まった

「すげ…」
そこには網から溢れんばかりの獲物がピチピチとうごめいていた

「こんなことは俺が漁師になってから初めてだ」
「たった10分程で普段の1日の収穫量を軽く超えてるぞ…」
「てかこれ引き上げられるのか?」
船にいるのは俺を入れて4人
さっきの話からして通常の4~5倍以上の重さになるはず

「まさか…な」
俺はどこかで嫌な予感を感じながらそれを振り払う様に頭を振った
頭の中でルークとシャノンの“シア効果”なんて言葉が聞こえた気がしたけどきっと気のせいだ

「何としてでも引き上げるぞ」
「けどこの量だと網の方が持たないんじゃないか?」
「かといってこのまま帰るわけにもいかんだろう?」
ルワードさん達はどうしたものかと頭を抱え込む
重力操作とか水魔法で持ち上げるとか…
俺も色々考えてみるもののこの場でぶっつけ本番でするのは流石に厳しい
そもそも俺に水魔法は使えないんだよな…
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