チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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51.セトイカ到着

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家を出てあと10日弱で5か月が過ぎようという頃、俺達はようやく目的の町、セトイカを視界にとらえた
「シア!あれだよね?」
シャノンが前方に見えてきた町を囲む塀を指して大はしゃぎだ

「何か色々あったなぁ…」
「そうだな。怪我したり死にかけたり…安全な旅とはとても言えなかったな」
「囚人の気分も味わったしね。それにリトスって言う仲間も増えた」
『ぼくもなかま?』
「そうだよ」
『わーい』
リトスは嬉しそうに頬ずりする

「屈辱味わってシャノンとルークがケガして『黒煙』に助けてもらったのが懐かしいな」
あの時ロイさんにもらったノートと母さんから送られてきた本にも、何度も助けられた

「温泉気持ちよかったよね」
「ああ、蛇は何とも言えなかったけど」
シャノンの言葉にルークが苦笑しながら言う

「でもシアが倒れたのも毒にやられた時も気が気じゃなかった」
「はは…あれは俺の責任だな」
「ううん。でもあのお陰で色々考えさせられた」
「そうだよな。シアに頼り切ってたってよくわかったし」
「お前ら…」
確かに俺が寝込んだ後の変化は大きい
今は出発した時に比べてはるかに頼りになるもんな
「…おかげで俺も助かってるよ」
何となく伝えると2人は照れ臭そうに笑った

「ようこそセトイカへ」
旅の道中の事を思い出しながら話していると門番からそう声を掛けられた
「身分証を」
「ん」
「はーい」
「これ」
俺達はそれぞれカードを取り出して見せる

「…これ、本当に君達の?」
「まぁ」
ランクを見て驚愕の表情をされたところでギルドカードの偽造はまず無理だ
どういう仕組みか顔写真のようなものまで表示されてるのにその質問はどうなんだろうな?

「通っていいよね?」
「あ、あぁ、楽しんでいってくれ」
どもりながらの言葉に見送られて俺達はセトイカの町に足を踏み入れた

「変わった香り」
「潮の香りだな。海から風に乗ってきてるんだろ」
「海!楽しみだね」
「そうだな。でも海は明日以降だ。今日はもう遅いし飯を調達して宿だな」
「屋台からの匂いのお陰で空腹が…」
「わたしも~」
色気より食い気、花より団子を地で行く2人は相変わらずだ
いつものように屋台で調達した食料を大量に抱えて宿に向かう

「いらっしゃい」
「部屋を頼みたい」
俺は以前アドバイスしてもらった通りギルドカードを見せる
宿主は最初疑り深そうな目をしてたのにカードを見るなりにこやかな顔になる

「部屋はどういたしましょう?」
「どうする?今までと違って3か月だし個室にするか?」
父さん達との約束で滞在するのは到着してから3か月までだ
今日が12月21日だから、最大限滞在しても出発は3月20日になる

「そうだね。別に部屋の行き来は出来るし私は個室がいいな」
「じゃぁ僕もそれで。シアもいい加減自分の時間が欲しいんだろ?」
「まぁ、否定はしない」
一緒でも問題はないけど元々長い時間一緒の部屋で過ごしてないからな

「1人部屋を3つ、3月20日引き上げで」
「となると3か月間ですか?」
「そう。3か月滞在するの。朝食は付けてね?」
「支払いは先払いになりますが?」
「ああ、このカードで」
共有のカードを渡して精算してもらう

「丁度隣り合った部屋が空いてるのでそちらを。2階の左奥の3部屋です」
そう言ってカギを3つ渡してくれた

「朝食の時はそのカギを見せてください。係りの者には説明しておきます」
3か月分のタグを渡すのは流石に無理だったらしい
「分かった」
礼を告げて側にあった階段で2階に上がる

「シャノンは真ん中な」
「はーい」
「僕はよく出入りするから手前でいいよ」
シャノンに真ん中の扉と同じ絵の鍵を渡しているとルークが別の鍵を取っていく

「でもその前にこれ先に置いていい?」
「ああ」
両手で抱えている食料を指していうシャノンに俺の部屋の鍵を開ける
俺の部屋で食うのは決まってるらしい
まぁいいけど
2人は抱えていた食料をテーブルに置くと一旦部屋に戻って行った

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