チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

文字の大きさ
上 下
106 / 370
30.両親と

1

しおりを挟む
とうとうこの日が来た
俺は緊張と期待で殆ど眠れないまま朝を迎えてしまった

「はよ~」
「おはようシア。随分早いわね?」
下に降りると母さんが声をかけて来る
「なんか緊張してるかも。あと期待も」
困惑気味に応えると母さんはクスクスと笑う

「私も楽しみだわ。あなた達の戦いぶりが見れるんだもの。レイも興奮して昨日は中々寝付けなかったみたいよ?」
「父さんが?」
「当然でしょう?シアの事は毎週見てるけどルークとシャノンの事は随分長いこと見てないもの。ランクや聞いてる話である程度は理解できても実際に見るのはまた別だからね」
「確かに…」
いつからだろう?
アイツらが2人でパーティー組むようになってからだとしたら結構経つし

「それにほら、シャノンはやっぱりお姫様だからね」
「あー」
それには渇いた笑いしか出ない

「「おはよー」」
シャノンとルークが降りて来た

「おはよう2人共。シャノンは珍しく早いのね?」
「うん。今日が最後だと思うと何となく…」
最後
その言葉に俺の気が引き締まる

今日の迷宮攻略が終われば明日の休みを挟んで俺達は出発する
今夜はシャノンとルークの少し早い誕生日パーティーを兼ねた壮行会らしい
その時に2人はテントを貰って明日は丸一日最終準備と休息に当てる予定だ

「だったら気を引き締めていかないとな」
「お父さん!おはよー」
シャノンが父さんに飛びついていく
「おはよう」
挨拶を交わして朝食が始まった
このご飯も明後日からは当分お預け
そう思うとちょっと寂しい気がする

少しするとみんなも起きてきて賑やかないつもの朝になった
ケインは起きてくるなり俺の膝の上を陣取り、スカイはルークの背中に乗っかってる
ここ数日普段以上に甘えて来る2人を俺達は気の済むまで甘やかすことにしていた


そして迷宮に入って既に45階層の攻略を終えていた
残りは50階層のみ
「シア、次でエンドレスな」
「え?」
父さんの言葉に俺達は驚いていた

「あいつらともエンドレスしたんだろ?」
「したけど…?」
「なら私達ともしてもらわないとね?」
「って母さん妊娠中!」
「大丈夫よ。離れた場所から魔法使うし」
そういう問題じゃないと思う

「大丈夫だ。俺一人で問題ない場所にお前たちもいるからな」
「父さんまで…」
「シア、父さん達は言い出したら止められない」
ルークは諦めたように言う

「…わかった。でも母さんは絶対無理しないでくれよ?」
母さんに何かあったら旅どころじゃなくなる

「約束するわ」
にっこり微笑んで言う母さんに俺も諦めた

「じゃぁ開けるよ?」
シャノンの言葉に皆が頷いた
ドアを開けると既に見慣れたケルベロスが2体
いつものように俺が1体、もう1体にはルークとシャノンが向かって行く
危なげなく、むしろ余裕で倒せたはずだ

「次は俺にやらせろ」
「「「え?」」」
エンドレスに突入したとたん放たれた父さんの言葉に俺達は同時に声を上げていた

「大丈夫よ。レイにやらせてあげて」
母さんの言葉に俺達は壁際に寄った
2体のケルベロス
攻撃は8方向から飛んでくる
父さんはそれを余裕でかわしながら1体を魔法で、もう1体を剣で倒してしまった
その動きに無駄なんて無くて、俺は瞬きするのも忘れて見入っていた
これがSSランクなのかと、力の差を嫌と言う程感じる

「お父さんカッコいい!」
シャノンが大はしゃぎだ
ルークは微動だにしない

そんな俺達に父さんは言った
「ほら、次はお前らだ」

不思議と打ちのめされたような感覚は無い
どちらかというと奮い立たされた感じかもしれない
憧れや悔しさが入り混じったような、その上で俺は父さんに追いついて、いつか追い越したいと、心から思う
その後は父さんと組んだり、母さんと組んだりしながらいつもと違う連携を取った

「3人共随分たくましくなったわね」
「そうだな。これなら旅も大丈夫だろ」
最後にそう言われて俺達は歓喜した
誰よりも認めてもらいたかった両親にそう言ってもらえたことが何よりも嬉しかったんだ

「さぁ、今日はパーティーもあるからそろそろ帰りましょう」
母さんのその言葉で俺達は迷宮を後にした
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない

丙 あかり
ファンタジー
 ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。  しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。  王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。    身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。    翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。  パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。  祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。  アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。  「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」    一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。   「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。 ****** 不定期更新になります。  

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

処理中です...