チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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9.弟妹

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「子どもは等しく大切」
当然…だよな
当然だとわかってるのに落ち込んでる自分に呆れる

「それが理想なんだがな」
「え…?」
「サラサにも気づかれてるが…俺にとってシアはサラサの次に特別な存在だ」
「は…?」
なんかとんでもないことを聞いた気がした

「お前たちが生まれてくれて同じように喜んだ。そこに嘘はない」
父さんはそう言って苦笑しながら俺を見た

「でもお前だけはちょっと違うな」
「違うって?」
「…お前が無事に旅から帰ってきたら聞かせてやる」
「それめっちゃ気になるんだけど…」
父さんってこんなこと言う人だったっけ?

「とにかく、お前は一人じゃないってことだ」
「あ…りがと。大事にする」
そう言うと父さんが嬉しそうに目を細めた
この顔、どこかで見た気がする
でもいつだ?どこでだ?

「シア」
「ん?」
「そのリングだけどな」
「これのことはもう…」
「サラサのを除いて俺が唯一自分で選んだ物だ。柄にもないことをして居たたまれなくなって余りもののように言ってしまったけどな」
父さんは俺の言葉を遮ってそれだけ言うと今度こそ降りて行った

「え…今なんて…?」

『俺が唯一自分で選んだ物』

そんなはずないだろ
事あるごとに祝いだって…プレゼントだって…
これまでの事を思い返して俺は初めて気づいた
それは全て母さんから渡されてきたってことに
Bランクに上がった時もちゃんと母さんから『私達から』って別に貰ってたことに

「それに…」
いつも父さんが選んでたら商会の親父もいちいち覚えてない…?
俺達が祝いの時に買う場所なんて限られる
そんなのをいちいち全部覚えてたらとんでもない情報量だ
しかもこの大所帯で事あるごとに祝いだ何だってやってるなら余計に

「嘘だろ…」
俺は崩れるようにそばのベンチタイプ椅子に身を投げ出していた
驚くほど明るい星の輝きと、大きく近く見える月
寝転がったまま見上げる先にはいつもと変わらない空がある
でも見上げる俺の気持ちはいつも違う
何かある度に空を見上げるのは前世から変わらないな…

少しでも空気のいい場所でと考えた両親が選んだのはのどかな場所にある病院だった
周りは自然豊かで自分の足で立ち、見渡す窓からの景色は確かにきれいだった
でも病院のベッドの上から見えるのは空だけ
小高い丘の上にあった病院から町を見下ろすことは出来ても同じ高さには何もなかった
でも両親がこの同じ空の下にいると思えば寂しさは少しマシだった
だから俺はかなりの時間を空を見て過ごした

それが今も変わらず俺の心の拠り所になってると気づいたのはいつだったか…
自然とリングのはまった手を目の前に掲げていた
これまでなら同じように眺めても複雑な気持ちに押しつぶされそうになった

『俺が唯一自分で選んだ物』

その言葉が頭の中で繰り返される
少し前にちゃんと話をして父さんとの関係が変わっただけでも嬉しかったのに、それ以上の嬉しさがこみあげて来た
父さんが選んでくれたリング
母さんが作った父さんが大事にしてたブレスレット
左手にあるその2つの装飾品の重みを、それを手にした喜びを胸に焼き付けた
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