チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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9.弟妹

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「おい!シルヴィア!ベランダで何してるんだよ!体が冷えるぞ!」
そう言ってきたのは侯爵家の三男のオスカー・ブライスだ。

彼はルイスの親友だ。
学園生活では彼も一緒に4人で楽しんでた仲だった。
彼はちょっと言葉遣いが荒いとこがある。
なんでも小さい頃よく平民と絡んでたとか。
貴族としてはあるまじき行為だけど、前世の記憶がある私からしたら親しみやすい人だ。

「ええ、ごめんなさい。今入ろうと思ったとこよ。」

「ん?なんか顔色悪いぞ?大丈夫か?」

「大丈夫よ。さぁ早く中に入りましょう。」

「っちょ。押さなくてもいいだろ…!?」

「…」



彼も気付いてしまった。ルイス達が密会してることを…



「…中に入るぞ。」

「え、ええ」

オスカーと私は会場の中に入った。



________________

「はい…」

私達が会場の隅っこに到着した時、オスカーは私にハンカチを渡してくれた。

「涙の跡がある。これで拭いてろ。」

「え、ええ。ありがとう。」

私は渡されたハンカチで涙を拭いた。

「新しいハンカチを贈り返すわ。」

「いいよ。いらん。男として泣いてる女が居たら心配するのは当たり前だ。もしそれが知り合いなら余計な。」

「あら、嫌だわ。私は恩をちゃんと返す人よ。お礼をさせてちょうだい。」

「ふ、そうだったな。じゃあ楽しみにしとく。」

「ええ。そうして。」

「…」

「…」

話が続くこと無く、2人は無言になってしまった。

(やっぱり話さないといけないのかしら…。オスカーは頑固だから、話逸らしても意味ないわね…)


「何か飲み物持ってくる。」

「え、いえ、大丈夫よ。要らないわ。」

「いや!持ってくる。」

そう言ったオスカーはさっさと飲み物が置かれてるテーブルに行った。

(ちょっとでも落ち着かせる為に持ってきてくれるのかしら?)


「はい。飲み物」

「え、ええ。ありがとう。」

オスカーは飲み物をくれた。


私達は淡々と飲み物を飲んでた。ちょうど飲み物を飲み終わった時、オスカーが話を切り出した。



「で、どうするんだ?」

「え?」

「ルイスの事だよ。まさか噂は本当とはな。」

「…」

「復讐でもするのか?」

「え…」


復讐なんて考えても見なかった。
これから私はどう生きようかで頭がいっぱいだった。


(自分のことしか考えられないなんて… 私って薄情ね。)


「いいえ、しないわ。」

「は!? 悔しくないのかよ!」

「あら、オスカー。あなた一応ルイスの親友でしょ?ルイスの身を案じないの?」

「それとこれは違うだろ!この件は完全にルイスが悪い。」

「復讐はしないわ。だって意味ないもの。」


そう。復讐は意味ない。復讐はただ行き場のない気持ちを何かに当たって気を晴らす行為。ただの八つ当たりで、自己満足だ。時間の無駄に過ぎない。


「でもちゃんと責任は取らせるわ。」

「ほう。」

「心配してくれてありがとう。」

「!? べ、別にこんぐらい大したことねぇよ。俺ら友達だろ?」

「ふふ、そうね。」


(オスカーと喋ってたらしょんぼりしてた気持ちが薄れてきたわ。)

そう思いながら会場を見渡した。会場は私とは反して煌びやかで賑やかだった。



「あ、あのさ「オスカー、私、ルイスと婚約破棄しようと思うの。」」

「へ?」

「私とルイスは政略結婚だけど、信用できないパートナーと一生一緒に生きれるとは思わないの。」

そう貴族の結婚は信頼で成り立ってる。だって信頼出来ない人と事業なんて出来ないでしょ?


「だから私、パーティの途中だけど帰ろうと思うの。」


そう私の未来の為に決断しないと。その為に色々準備が必要ね。

「…ああ。それがいい。だが、何かする前に休めよ。顔色が悪いぞ。」

「あら、レディに対して失礼よ。」

「準備万端の時に戦った方がいいだろ。お前の為に言ってるんだ。」

「別に戦いに行くんじゃないのよ。話し合いをするのよ。」

「それは余計に頭を使いそうだな。やっぱり休息は今のお前には必要だな。」

「ふふ。そうね。」


オスカーは心配性ね。まだ友人は捨てたもんじゃないわね。


「…シルヴィア、忘れるなよ。」

「ん?何をかしら?」

「俺は何があってもお前の味方だ。」

「…。ふふ。その口説き文句は好きな人に言うべきよ。」

「!? い、いや、俺は別にく、口説く為に言ったわ、わけじゃない!」


(ふふ。でもありがとうオスカー。今の私にとってその言葉は救いだわ。本当に感謝するわ。ありがとう。)


「じゃあ、行ってきます。」

「おう、頑張れ。」


そして私はパーティ会場から出た。
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