自称乙女ゲームのヒロインに婚約者を譲れと脅されましたが、王子は私を絶対に離しません。

夢咲桜

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本編

対象者その3ドミニク·ヴァリアーディ伯爵令息

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続いてドミニク·ヴァリアーディ伯爵令息の元へ向かおうとしているのですが·····。

「駄目だ。アイネはあんな所に行ってはいけない。」
「もう、殿下!調査をするのでしょう?そんな事言っている場合ではありませんよ!」
「嫌だ!何故愛しの婚約者を獣たちの巣窟へ行かせなければならないんだ!アイネが穢れてしまうだろう!」
「穢れませんったら!早く行きますよ!」

ドミニク様は現王宮騎士団の団長のご子息で、ご自身も学園卒業後には騎士団に入団なさるそう。その為、毎日鍛錬場で他の入団希望者と共に鍛練に励んでいるそうなのです。当然鍛錬場には男性の方しかいらっしゃらないので、殿下は私を行かせたくないでしょう。

「わ、私は殿下の事だけをお慕いしているのですよ?今更他の殿方になど懸想する筈もございません。」
「······っ!し、しかし、アイネはそうでも他の男共がそうとは限らないじゃないか!何せアイネはこんなにも愛らしくて美しいんだ!きっとアイネを一目見た瞬間に皆が恋に落ちてしまうに違いない!!」
「いや、ありませんよそんなこと。大体、私が殿下の婚約者であるということは皆さん周知の事実です。殿下に楯突いてまで私を奪おうとする方などいらっしゃいませんよ。」
「くっ·····、········っ!!調査の間は僕から決して離れないなら、······良いよ。」

なんやかんやあって、漸く殿下の許可が出たので私たちはドミニク様がいらっしゃるであろう鍛錬場へ向かいました。

「遅いぞ!もっと素早く剣を振るえ!」
「よっし·····!そこだぁ!」
「甘い!お前の実力はこんなものか!?」
「くっ······、まだまだ!!」

「······相変わらず此処は熱気で溢れているな····。」
「皆さん騎士団に入団する為に頑張っていらっしゃいますものね。」

鍛錬場を巡っていると、お目当てのドミニク様はすぐに見つかりました。
ドミニク様はオレンジ色の髪の毛を短く刈り上げていて、意志の強さが現れているグレーの瞳をした凛々しい方です。日常的に鍛えているだけあって流石の筋肉美で、彼の筋肉を讃える会が開かれているとかいないとか。

「ハッ!ハッ!····っ、そこ、だぁっ!」
「凄いな、流石次期騎士団団長と名高いだけある。」
「あんなに重そうな木刀をいとも軽々振り回していらっしゃいますね。才能も勿論ですが、彼のたゆまぬ努力の賜物なのでしょうね。」
「!殿下····と、トレンティス嬢じゃないか!誰かに用事か?」

私たちに気が付いたドミニク様が此方に近づいてきました。

「ヴァリアーディ、君に用があるんだ。」
「今、お時間少しよろしいでしょうか?」
「あぁ、もうすぐ休憩だから時間は大丈夫だぞ。少し待っていてくれ。」

そう言うとドミニク様は戻って行き、仲間の方に何か話しかけるとまた此方にいらっしゃいました。

「待たせたな!場所が気になるなら移動しようか?」
「あぁ、そうだな。聞かれて困る程ではないのだが、用心するに越したことはないからな。」
「では、彼方の端に行きましょうか。」


▼▽▼▽▼▽▼▽

「·····で、何が聞きたいんだ?」
「ああ、君も鍛練に早く戻りたいと思うから単刀直入に聞くぞ。」
「ドミニク様の元へ、リディナ·オルヴァリーク男爵令嬢がいらっしゃいませんでしたか?」
「あ~、そのオルヴァリークって女は知らないが、ピンク頭の女は俺の所に来たぞ。」

ビンゴですね。リディナ様のあのピンク色の髪と、あの少々····結構·····大分·····ネジの外れたような言動は間違いようもありませんものね。

「ああ、多分そのピンク頭が僕たちの言うリディナ·オルヴァリークだ。」
「その女の事を聞きに来たって事は二人の用事ってのは、その女と話してた内容····みたいな事で良いか?」
「ええ。流石、理解が早くていらっしゃいますね。」
「あのキチガイとどんな話をしてたか教えてもらえるか?」
「ああ、····っつってもそんな大した話はしてないな。アイツと話してると、何つーかこう····宇宙人と会話してる気になる。」
「「ああ·······」」

ドミニク様の言葉に私たちは思わず顔を見合せ遠い目をしてしまいます。おそらきれい

「何だったかな·····。『お父様がどんなに凄い人でも貴方は貴方よ!私はいつでも貴方の味方だからっ!』とか言われたな···。」
「?何を当たり前の事を言っているんだアイツは。」
「騎士団長様とドミニク様がいくら親子でいらっしゃっても、お二人は全くの別人なのは当然の事ですのにね。」
「だろ?俺は親父を何より尊敬してるし、親父のように国民を守れる男になりたい。けど、親父のようになりたいだなんて思ってないし、俺は俺の思う騎士になりたい。誰に言われたからじゃない。自分の意思でなるんだ。」

····成程。恐らくリディナ様はドミニク様がお父上である騎士団長様に対してコンプレックスを抱いていると思っているのでしょうね。それでお父上と自分を同じように見ないという印象をつけて好意を抱かせようとしている···という訳ですか。

「その様子だと、あの女の毒牙にはかかっていないようだな。」
「?どういう事だ?」
「リディナ様は魅了の魔法を増幅させる魔法具を所持していると思われるのです。」
「そうか。まあ、心配いらないぞ!俺がアイツの事を好きになるのは、宇宙が滅びても有り得ない!」
「まあ、そうだな。僕もアイツと結ばれるか自死するか選べと言われたら進んで死を選ぶだろうな。」

·····リディナ様。貴女が何をしようとしているのかは存じませんが、逆効果なような気がしますよ。
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