上 下
6 / 12
本編

もしかしなくとも私、マウントを取られましたか?

しおりを挟む
私と殿下は、リディナ様を放って教室へ向かいました。(ちなみに、私のクラスは殿下と同じでした。何か言ったのですかと尋ねても『世の中には知らなくても良いことがあるんだよ。』と言われました。ワタクシハナニモシラナイ·····。)
教室へ着き皆さんが揃うと、先生からお話がありました。何でも、これから魔力適性検査を行うとのこと。魔力適性検査とは、その名の通り自分の魔力がどの魔法属性に適しているかを調べるものです。学園にある特別な水晶に手を翳すだけで簡単に分かるようになっています。ちなみに自分に合った属性は魔力が高ければ高い程多いとされていて、必然的に王族や上位貴族たちがより多くの魔法を使えるのです。ちなみに平民に魔力はなく、魔法に触れる機会も殆どありません。なので学園には平民はいないのです。魔法の適性としては治癒魔法が一番適性率が低く、稀有なものとされています。国内にも、治癒魔法を使える者は数少なく、その殆どが王宮にて国王陛下に仕える最精鋭の医療チームとなっています。治癒魔法を扱うことが出来る方の多くは上位貴族出身であるため、男爵家の庶子であるにも関わらず豊富な魔力と治癒魔法の適性を持つリディナ様はとても希少な存在なのです。·····本人の性格は別として。そして治癒魔法を頂点とした時に次にくるのは光魔法で、これは王族にのみ使うことが出来る魔法です。光魔法は人に祝福の光を与えることが出来ます。それを浴びた人は、魔力量が膨大に増えるのみならず、その先の人生を病気も、大きな怪我もすることなく幸せに人生を全う出来るのです。とても強大な魔法ですがその分魔力の消費も激しく、光魔法を使えるのは人生において一度きりで、使用者が心からの幸せを願うたった一人にのみ祝福を与えることが出来るのです。歴代の王族の方たちは皆、己の配偶者に対してその祝福を行っています。
光魔法の下は雷·火·水·風·土·闇となっています。雷から土は五大魔法と呼ばれており、基本的な魔力です。日常生活においても使うことがあり私たちが生きていく上で非常に大切なものです。平民の方たちは、貴族が使う雷魔法を電気へと変えて生活をしています。
そして、闇魔法。これは世界で最も忌避されている魔法です。闇魔法を扱うことが出来るのは魔族のみで、魔族は闇魔法を使って魔獣を造り出しています。そのため私たちには関わりのない魔法ではありますが、中には好奇心と言う名の悪魔に唆され闇魔法に手を出してしまい、人の道を外れてしまう者もいるのです。

▽▼▽▼▽▼▽▼

「では、新入生は呼ばれた者から前に出るように。」

新入生たちが集められた講堂で、先生の声が響きます。名前を呼ばれた生徒が次々に水晶の前へ移動していきます。水晶に手を翳すと、それぞれの属性の色に光ります。属性への適性が複数ある場合は、一番適性のある属性の色がより濃くあらわれるのです。ちなみに、色はそれぞれ治癒魔法は白、光魔法は紫、雷魔法はオレンジ、火魔法は赤、水魔法は青、風魔法は緑、土魔法は黄色、そして闇魔法は黒となっています。

「お次は、エミリオ·ロージェンス第一王子。」

殿下の番になりました。殿下が水晶へ手を翳すと紫が一番濃い、治癒魔法と闇魔法を除いた全ての属性の色に光りました。すると周囲が俄に騒がしくなりました。それもその筈、殿下が一番適性があるとされた光魔法は年々適性が薄くなってきているのです。国を栄えさせる為には他の国々との交流を持つことが重要です。王族の婚姻によって結ばれるそれは、悔しくも王族特有の魔法を薄れさせていったのです。しかし殿下は歴代でも一二を争う程秀才で魔力量も多いので、光魔法が濃く現れたのでしょう。

「ここまでの濃さとなると、歴代でも珍しいのではないでしょうか?」
「流石、将来有望の第一王子だな。エミリオ殿下が王となれば、この国は安泰だ。」

周りの方々は称賛の眼差しで殿下を見つめていますが、当の殿下は気にかける様子もありません。······こんなに他人に興味がない殿下ですのに、何故私にあんなに執着するのでしょう?

「次、アイネリーゼ·トレンティス公爵令嬢。」
「はい。」

私の名が呼ばれました。私は水晶の前へ移動し手を翳しました。すると水晶は治癒魔法、光魔法、闇魔法、雷魔法を除いた属性に適性がありその中でも特に風魔法の緑が濃いようです。私の家系は代々風魔法に特化した人が多いので当然ではありますが。

「八属性の内四つに適性がありますね。上位貴族としては充分に優秀な部類に入りますよ。」
「ありがとうございます。」

先生方に挨拶をしてから自分の席へ戻ります。その時、ふとリディナ様と目が合ったように感じました。彼女はどこか私を嘲るような笑みを浮かべたあと、名前を呼ばれて水晶の前へ移動しました。リディナ様が水晶に手を翳すと、水晶が乳白色に光りました。分かってはいた事ですが、こうして初めて見ると彼女がとても稀有な存在かが分かりますね。·····本人の性格は別として(大事な事なので二回言います)。
するとまた、リディナ様と目が合いました。彼女の顔には、『希少な魔法が使える私の方が優秀な殿下に相応しい』···と書いてある気がします。明らかなマウントと分かってはいるのですが、確かにそうなのかもしれません。多少性格に難があるとしても、彼女は男爵令嬢にして希少な治癒魔法を扱うことが出来ます。片や私は上位貴族としても中の中。殿下に相応しいとは言えないかもしれません。殿下は私をそれはもう砂糖を煮詰めたような甘さで愛して下さいますが、そもそも王族とは時に利益を考えて婚姻を結ぶ時があります。
·····私は、殿下の婚約者の座を譲るべきなのでしょうか·····?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...