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オトナ

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打ち上げも終わりホテルの帰ってる道中、わいわいと賑やかに歩くみんなを目にしながら、あることを思い返していた。

ライブが終わり、打ち上げと称してみんなで酒でも飲もうと居酒屋に向かってる最中ハルと2人でした会話だ。

「レンくん今日すごかったね!」

「おれがすごくない時なんてねえよ」

この色んな期待を胸に秘めて、目一杯の無邪気さを宿したような視線と、少し躊躇いを感じる口調、それを覆い隠すようなやはり無邪気な振る舞いに慣れてしまった自分がいる。

「そうだ、レンくん。話があるんだけどさ」

そんな彼女が珍しく、真剣な表情をして。

「ん?なんだよ急に」

真剣というより、深刻に近い気もする。

「さっきの楽屋のことなんだけど…」

「ん?あぁ、ゆいね。別に気にしなくても…」

「いや、そうじゃなくて。せなの話。なんかいつにも増して消耗してる感じがして…」


それをおれに言われたって困るんだけどな。

誰もが感じている事だ、せながどんどん普通では無くなってるって。

ハルもゆいも心配してるように、おれらだって心配していた。それこそ、2人よりもずっとあいつのことを見ているんだから。でも、もう気にしたってしょうがない。その事に触れさせないようにしてるのはあいつなんだから。

「それにさ、レンくんとせな、あまり関係良くない?今日も全然会話してなかったし。」

「いや、そんな事ねえよ。大丈夫だから心配すんなって」

軽く流して頭をポンポンと撫でてやれば、ハルは少し照れながらこの話題を終わらせてくれる。

ハル…

最初は好意を寄せてきた女の子の1人に過ぎなかった。

出会った時から、隠す気のない好意を向けてきて当時、鬱陶しさすら感じていたけど、他の奴らと違う部分を見つけてからは、あまり無下にも出来なくなった。

こいつは言い寄ってくる事が無かった。

ただ、ひたすらに純白な恋心と、嫉妬や独占欲みたいなドロドロとした感情が入り交じった、とにかく、純粋な視線を送ってくるだけだった。

まるで、心の底からおれが欲しくて、心の底からおれの迷惑になりたくない、そう叫んでいるかのように。

そして、こいつのその色々なものが混じった"純粋な感情"が何時しかおれの心を落ち着かせてくれるようになった。



ホテルに入り、直ぐにシャワーを浴び寝支度を済ませて、ベッドに腰を下ろすと、スマホが鳴った。

『…なんだよ、忘れ物でもしたか?』

『いやー?全然そんなんじゃないよ。ちょっと2人で話せないかなーって。』

相変わらず、"柔らかそうな"口調で話すこいつが何だか可笑しくて乾いた笑いが漏れる。

『とりあえずさー、まだ寝ないならちょっと外でてきてよ。ホテルの目の前に公園みたいなのあったでしょ?そこで待ってるわー。』

寝ようと思ってたけど、せながそんな事言ってくるのも珍しいから行ってやる事にした。
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