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結衣の1年間

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いつもそうだった。

大事に思えば思うほど私の手から離れていった。

保育園の頃、お父さんが出張のお土産で買ってきてくれたうさぎのぬいぐるみも、小学校の頃仲の良かった友達が誕生日にプレゼントしてくれた可愛いリップも、大切にすればするほど私の元から消えていった。

だから私はこの土地に来た

私はきっと呪われてるんだ、そうに違いない。

私がいるからバラバラになっちゃうんだ

だから私はこの土地に来た。








ふと目を開けると私はリビングの床で横になっていた。
どうやら寝てしまっていたみたいで窓の外に目をやると
まだ空は暗く少し寝落ちただけだった事に安心した。

頭がぼーっとしているからか寝落ちる前に何していたのかが曖昧だ。

部屋を見渡すとまだ優が帰ってきた形跡は無くて少し寂しい気持ちになる。今日は何時に帰ってくるのかな?
まだ眠いけど帰ってくるまで起きて待ってようかな?

そんな事を考えていると頭の横に置いてあるスマホが鳴った。

優が鍵を持って忘れたのかな?なんて考えながら見ると
そこに表示されてる名前は、優とはかけ離れた人の名前。

「ゆっくり休んで」

短い言葉で綴られたメッセージからとてつもない温かさを感じる。

そっか、昨日わたし…………

「ありがとう」

私も短い言葉でそう返すとすぐに既読がつきスタンプが返ってきた。

どうやら私は時刻を勘違いしていたみたいで、さっき見た外の景色は夜明け前の空ではなくてもう夕陽の沈んだ空だった。

優は帰ってこなかった

その事実が自分に降りかかる。

「……もう終わりなのかな」

柄にもなく1人でそう呟き、小さくうずくまり自分の身体を自分で抱いた。










人間誰しも、良いところだけがある訳じゃない、悪い所も必ずある。

それは、善人と呼ばれる人も悪人と呼ばれる人も皆平等にそうだ。

昨日、私の寂しさを埋めに来てくれたあいつはそう言っていた。

そうだ、優もそうなんだ。

彼は目に余るほどの嫌な部分があった、でも良いところもいっぱいあった。もしかしたら、それは周りの人達には見えないものだったのかもしれない。私にしか見えてないものだったのかもしれない。

でも、私にとって優はその名前の通り優しい人だった。

彼が私には必要だった、ずっと一緒に居たかった。

もうとっくに冷えきっていた関係に気づかないほど結衣という人間も馬鹿じゃない。ただ、隣に居てくれればそれで良かった。仕事も頑張れるし彼となら堕ちた人生を送ってもいいって思っていた。

ずっと一緒に居たかった。

でも、それは私だけが望んでいても叶わない訳で。

ならば、私は受け入れるしかない。私は受け入れられるまで、とことん悲しむしか無いんだ。

でも、でももし皆が許してくれるなら

私はズルく生きようと思う。

いつか気が変わり帰ってくるかもしれない優を待っていようと思う。その間の寂しさや孤独を、別の人で埋めながら。






結衣の1年間 Fin.
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