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新学期
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ハルside
綺麗な夕日で空が紅く照らされる頃、私はいつもの海にいた。
何とかしないと、このままだと、私たちバラバラになっちゃうかも。
そんな事を思いながら、どこまでも続いている海の向こう側をじっと見つめていた。
「みんな何してるのかなぁ。」
学校以外でレンくんと顔を合わす事もほぼ無くなった。
バンドが忙しいのは分かるけど、でもねぇ…。
ゆいも、ライブに一緒に行ったきり連絡すら取っていない。
セナは…、会っていないというかなんというか…。
「あれ?ハルちゃんじゃん。」
後ろを振り返ると、驚いたような表情を浮かべるカイトが居た。
「かいちゃん!!!」
「久しぶりだなぁ、何でこんなとこ1人で居るんだよ。」
「えっ、何でって…近所だし、お気に入りスポットだから?かな?」
確かに、1人で海見て黄昏てるって、ちょっと変だよね。
「……ちょっとまって?かいちゃんこそ、なんで1人で?」
「あ、いや。なんつーか……。おれもここ好きなんだよね。」
邪魔しないから隣いい?
そう言って、隣にちょこんと座り込むカイト。
この人もワンちゃんっぽいんだよなぁ。
こうやって、誰かと一緒に海に居ると、どうしても思い出す。
初めてみんなで遊んだのも、それから遊ぶ度に待ち合わせする場所も、全部ここだったなぁって。
あともうちょっとで冬休みだけど、遊ぶ事も無いかもしれない。
短かったなぁ、色々と。
「ハルちゃんさ、おれ話聞くよ?」
「んー?何がー?」
「いや、何でもない。」
きっとカイトは全部知ってる。
「カイトは、どう?バンド。」
「いや、別に。」
何となく想像はつく。
ここ最近、レンくんがよく言っていた。
「あいつの考えてる事全然分かんねえよ、あいつにとっての友達って、仲間って何なんだよ。」
あの口ぶりと、荒れようで大体想像はつく。
「ねえ、カイト。みんな困惑はしてると思うけどさ」
「セナのこと、見捨てないであげてね。」
こくりと頷き、そのまま俯いてしまったカイトの頭を撫でてあげた。
本当は、私が誰かにしてもらいたいのにね。
もう深夜になり、明日も学校があるから寝なきゃいけないけど、私はまだベッドに入ることは無く、その時が来るのをじっと待っていた。
遠くから微かに聞こえる、バイクの音。
私は、親を起こさないようにそっと家を出て、いつもの場所に向かう。
もうとっくに夏の色は無く、辺りを冷たい風が包んでいる。もうちょっと厚着してくれば良かったなぁ。
そんな事考えながら歩いていたら、いつの間にか着いていた。登ることは決して無い。
めんどくさい、弱い人だ。みんな、みんな経験してることだ。私だって…、私だっていま正に、君と同じように傷ついてる。
でも、みんなとは違うんだよね。
この人は、全てを、笑顔で隠しちゃう。どんどん弱っていってるのに、全部笑顔に隠して、誰にも触れさせようとしない。
一人でいる時ですら、こうやって、歌う事でしか表現出来ずに。その歌すらも悲しげに鳴り響く波の音に隠してしまう。
君は、酷い人だ。
ねぇ、私思うんだ。こうやって、バラバラになりかけてるのって、集まれなくなったのって。
私たちのせいなんだって。君と私があのふたりに対して気持ちがあるから、それを2人はちゃんと知ってるから会えなくなってるって。
そうでしょ?セナ。
【新学期】Fin.
綺麗な夕日で空が紅く照らされる頃、私はいつもの海にいた。
何とかしないと、このままだと、私たちバラバラになっちゃうかも。
そんな事を思いながら、どこまでも続いている海の向こう側をじっと見つめていた。
「みんな何してるのかなぁ。」
学校以外でレンくんと顔を合わす事もほぼ無くなった。
バンドが忙しいのは分かるけど、でもねぇ…。
ゆいも、ライブに一緒に行ったきり連絡すら取っていない。
セナは…、会っていないというかなんというか…。
「あれ?ハルちゃんじゃん。」
後ろを振り返ると、驚いたような表情を浮かべるカイトが居た。
「かいちゃん!!!」
「久しぶりだなぁ、何でこんなとこ1人で居るんだよ。」
「えっ、何でって…近所だし、お気に入りスポットだから?かな?」
確かに、1人で海見て黄昏てるって、ちょっと変だよね。
「……ちょっとまって?かいちゃんこそ、なんで1人で?」
「あ、いや。なんつーか……。おれもここ好きなんだよね。」
邪魔しないから隣いい?
そう言って、隣にちょこんと座り込むカイト。
この人もワンちゃんっぽいんだよなぁ。
こうやって、誰かと一緒に海に居ると、どうしても思い出す。
初めてみんなで遊んだのも、それから遊ぶ度に待ち合わせする場所も、全部ここだったなぁって。
あともうちょっとで冬休みだけど、遊ぶ事も無いかもしれない。
短かったなぁ、色々と。
「ハルちゃんさ、おれ話聞くよ?」
「んー?何がー?」
「いや、何でもない。」
きっとカイトは全部知ってる。
「カイトは、どう?バンド。」
「いや、別に。」
何となく想像はつく。
ここ最近、レンくんがよく言っていた。
「あいつの考えてる事全然分かんねえよ、あいつにとっての友達って、仲間って何なんだよ。」
あの口ぶりと、荒れようで大体想像はつく。
「ねえ、カイト。みんな困惑はしてると思うけどさ」
「セナのこと、見捨てないであげてね。」
こくりと頷き、そのまま俯いてしまったカイトの頭を撫でてあげた。
本当は、私が誰かにしてもらいたいのにね。
もう深夜になり、明日も学校があるから寝なきゃいけないけど、私はまだベッドに入ることは無く、その時が来るのをじっと待っていた。
遠くから微かに聞こえる、バイクの音。
私は、親を起こさないようにそっと家を出て、いつもの場所に向かう。
もうとっくに夏の色は無く、辺りを冷たい風が包んでいる。もうちょっと厚着してくれば良かったなぁ。
そんな事考えながら歩いていたら、いつの間にか着いていた。登ることは決して無い。
めんどくさい、弱い人だ。みんな、みんな経験してることだ。私だって…、私だっていま正に、君と同じように傷ついてる。
でも、みんなとは違うんだよね。
この人は、全てを、笑顔で隠しちゃう。どんどん弱っていってるのに、全部笑顔に隠して、誰にも触れさせようとしない。
一人でいる時ですら、こうやって、歌う事でしか表現出来ずに。その歌すらも悲しげに鳴り響く波の音に隠してしまう。
君は、酷い人だ。
ねぇ、私思うんだ。こうやって、バラバラになりかけてるのって、集まれなくなったのって。
私たちのせいなんだって。君と私があのふたりに対して気持ちがあるから、それを2人はちゃんと知ってるから会えなくなってるって。
そうでしょ?セナ。
【新学期】Fin.
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