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24・2人の弟子
しおりを挟むチューブが尋ねて来た翌日から、弟子の2人がグラッセ家に訪ねて来てくれる事となった。
2人から外の事を学ぶようにと、チューブが計らってくれたのだ。
弟子の一人の名は、リユーサ。
知的で社交的、交渉術を兼ね備えた将来有望な商人見習いで、イケメンでもある。
そしてもう一人の弟子の名はシャラ。
お喋りで場を和ませるのが得意なムードメーカー、誰とでも話せる特技を持っている。
2人はまだ十代前半の年若い青年だが、チューブの弟子なだけはあって、世界中の事を良く知っていた。
マロンは興味津々に目を輝かせ、マリンはふむ…ふむ…と頷き時折メモを取りながら、2人の話を聞いていた。
話を聞くと、ここまで好戦的な国は他にはないようだ。
だが、国の外には魔物も存在するので、国同士の戦争だけでなく、魔物の討伐にも軍事力は役立つ。
だから、グロッシュラーは他国からそれほど疎まれてもいない。
5つの大国は同盟を結んでいるので、滅多な事では戦争はせず、強力な魔物が攻めて来たなどの非常事態が起こった場合は、グロッシュラーからも兵士を派遣し、魔物討伐に協力する。
チューブは、グロッシュラーの国王は東の大陸の統一の野望があるから、近い未来に戦争が起こるだろうと言った。
だが、東の大陸には5大国の1つ、カルサイト国が存在する。
それに東の大陸は世界で一番大きな大陸で、大国以外にも小国もいくつかあり、中立を貫く町や貿易が盛んな港町なども、いくつも存在する。
それを国王1人で全て統治するなど、現実的ではないのではないか。
と、リユーサは語った。
世界地図を見せて貰っても、マリンとマロンはその広さを実感する事は出来なかった。
だが、いくつかある大陸の中で、東の大陸が世界で一番大きな大陸だと言う事は地図を見て分かった。
「ま、テンチョーが、ああ言うんすから、間違いないっすよ。」
ニカッと歯を見せて陽気に笑うシャラを見て、リユーサはため息を付く。
「だから師匠と呼ぶようにといつも言ってるのに…。」
テンチョーとは、どうやらチューブの事を指しているようだ。
リユーサはちゃんと師匠と呼んでいるらしい。
テンチョー…。
何だか懐かしいような気がしてくるのは、何故だろう。
マリンとマロンは無言のまま、顔を見合わせる。
「この国の雰囲気は独特で普通じゃない感じがするっす。
違和感を持ってるなら、さっさと離れた方が利口ってもんですよ。」
鼻の下を指でこすりながら、サラリと言ってのけるシャラ。
世界中を見て来たシャラがそう言うのだから、その通りだろう。
マリンとマロンも、卒業後はグロッシュラーを出ようと考えている。
だが、誰かにそんな風に言われると、逆に本当にそうしても良いのかと言う不安が生まれてしまう。
マリンの隣でマロンはうんうんと大きく頷いているので、不安を持っているのはマリンだけかもしれないが…。
「自分もそれについては同意見ですね。
グロッシュラーは女性でも魔導師であれば、戦争や魔物討伐に参加しなければなりません。
お2人は高魔力持ちではありますが、そう言った事を好むようには見えません。
魔物ならまだしも、同じ人間相手に攻撃を繰り出す事は出来ますか?」
「っ…、人間…。」
人間と言うのは、知的生命体であるヒューマン、エルフ、ドワーフなどの総称として使われる。
リユーサの言う通り、マリンとマロンにその覚悟はない。
「他の街や国に住めば、敵とみなすのは普通に魔物だけを指し示すようになります。
国民のほとんどが魔導を学んだりもしませんし、魔物退治が必要であれば、冒険者に依頼をすれば解決。
のんびり自由に暮らせるのです。」
「自由に―――。」
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