優しい闇に抱かれて

彼の家族 ①

彼と私との騒動が
彼の家族を、呼び寄せて
しまったらしい。



「一体なにがあった
      ウィル！大丈夫か？」

「大丈夫なの？
               返事をして…」




階段を、
駆け上がってくる
足音がふたつ…
彼の両親なのかな。






不安な表情を…
見せる私を気遣って
彼が、大丈夫だからと
言ってくれた…。




足音が近づいてくる。
そして、ドアが開き
彼の両親であろう
男女が現れた。





◇ ◇ ◆ ◇ ◇





応接間のソファに、
ひとりで座り…
縮こまって震える私に
彼の父親が、労る声で
話しかけてくれた。





「お嬢ちゃんは、
   この世界とは違う…
   別の世界から…来た…」





その言葉に驚いて
彼の、父親であろう
男の人の顔を見上げたら
その人は…私を見て
優しく微笑んだ。


 


「大丈夫だから…。」


「…お嬢ちゃんの
   こうなった原因と
   状況は、理解している
   からね。」


「…怖がらなくても
                大丈夫。」






何故だか解らない。





私の眼から、
涙が止めどもなく
こぼれ落ち…しまいには
わんわんと泣きだして
目の前の三人を
慌てさせた。






人前で、最後に
泣いたのはいったい
いつだったのか。






心を…
切り裂かれる
苦しみに…私の…
幼い心が、悲鳴をあげ…
血を流す心を護るために
感情のすべてを…
凍らせてしまったから…








泣き止まない
私を、彼の母親だろう
女の人が…おそるおそる
私に触れ…ほんの少し
考えたのちに…労りを
感じさせる優しさで…
抱きしめてくれた。







そのまま…
私は…泣き疲れて
気を失うように…
眠ってしまったらしい。