世界のためなら何度でも

つぼっち

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第九章、敗北と絶望

#110 博識の試練

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「そう。お前には極限状態技術エクストラスキルを習得してもらう。」

「エクストラスキル……。」

「エクストラスキルは神をも超える力。」

「そんな力があるのですね。」

「そう、お前はその力を身につけないといけない。」

「何故です?」

「……それが、世界の決めた選択だからだ。」

グランがパチンと指を鳴らすとさっきまでいた少し狭い研究所がなくなり、足場の悪い山岳地帯のような場所に変わった。

「俺がいうのもなんだけどお前には守る力しか備わっていない。もし相方や主人が戦闘不能になった状態で逃げられないようになった時どうする?守るだけじゃなにもできないだろ。」

「……。」

グランはゼロに紅い宝石を渡す。

「それはお前が結界内に来る前にお前の潜在能力を引き出すために作ったものだ。まぁ名前は考えてないしそうだなぁ……、《零石ゼロストーン》とでも言っておくか。」

「零石ですか……。」

ゼロはその宝石のようなものを結界の明かりにかざす。

石に光を当てると紅く綺麗にキラキラと光った。

「神様もなんでこんなもの作れって言ったのかわからんがまぁ必要なものなんだろうな。」

「神様ですか。それはもしかして神王様のことですか?」

「いや、もっと上の神様だ。まぁお前は知る必要もない。」 

「世界の選択とは一体なんなのですか?」

「なんでそんなことを聞く。」

グランはひどく真剣な目でゼロを睨む。

そして深いため息をつき、頭をボリボリとかきむしる。

頭からはフケがパラパラと落ちた。

「いや、まぁいい。今は知らなくていいんだ。いつかお前の主人が解明する時が来るさ。」

グランはそう吐き捨ててゼロに向き直る。

「お前には守りたいものはあるか。」

さっきとは違い穏やかな口調で話しかける。

「あります。」

「そういうと思ったよ。お前は防御力が高いがその分攻撃がない。そこでその零石を使って限界を突破するんだ。」

「限界突破……。」

ゼロは零石を見つめる。

それに反応するように零石はキラキラと光がイマイチ実感は掴めない。

「その限界突破するためにこの試練がある。試練の内容はそれぞれ違うが俺の《博識の試練》の達成条件は『俺を殺すこと。』、その零石を使って攻撃力を引き出し、私を殺してみろ。できるか?」

「そんな……博士を傷つけるなんてわたしには……。」

「はぁ。」

グランは深いため息をつく。

「作ったのは俺だがここまでお人好しに作ってしまっていたか。」

グランはそう言って手をパンと叩く。

すると背後から次元の渦ができ、中から大量の銃火器が出現した。

銃火器の銃口は全てゼロを捕捉している。

「俺は今から本気でお前を殺す。そしてお前を二度と作らない、またあの主人のところに行きたいのなら俺を殺して試練を達成するんだな。」

「で、でも」

「でもじゃない。お前には誰かを守るための覚悟がない。生憎俺は一度死んでいるんだ、今更もう一度死んだところでなにもない。」

グランは腕を組む。

「それじゃあ今から試練を開始する。覚悟を決めないと早々に死ぬぞ。」



こうして、ゼロの望まない形のまま《博識の試練》がはじまった。
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