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☆第2章☆リエン山
2ー95★何もわからぬ状況
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『あのー…お話ししてもいいですか…?』
一瞬で辺り一面が包まれるほどのけたたましい悲鳴をあげたフィリアだったが、その悲鳴の後は事態が掴めずにただひたすらに怖くて震えていた。
そんな彼女を見て目の前の顔は彼女に普通に声をかける。
まるで小さな子供にお菓子を進めるかの様子でだ。
『あっ…あっ…』
そう言われて話しかけられた彼女だが、今の事態がどういった状況なのか分からない。
安全だと思っていた小屋の中で、振りかえると以前見たことがある人物がいる。
ノルドの話では、兼ねてから疑惑の人物としてあげられていた人物が、自分の前に現れた。
ここまでであれば多分、彼女も言葉を失うほどに取り乱すことはないはずなのだが…
今回は、そこから先のオマケがある。
見知った顔は何故か分からないが顔だけで自分の方に話しかけてくると言うオマケだ。
顔だけでも不思議だと言うのに、その顔は表情を作り普通に話しかけてくる。
間違いなく今まで生きてきた人生の中で初めての体験で、自分にとって悪いことと言うのも自分の中で想像できているのだろう。
どうしたらいいのか分からない彼女は、言葉を失ったまま驚きの表情で顔を見つめるだけだった。
『いやー、驚いてはもらえるとは思っていたんですけどね。まさかここまでとは、こちらも思っていませんでしたよ。ただ、いつまでもこのままと言うわけにはいかないんですよね…今回は時間があまり無いので…んー…』
顔はそう言うと眉間にシワを寄せながら視線を上に向ける。
そしてその動作は彼女の目の前で行われたことで、目の前の対象に最大限注意している彼女も顔の視線の先が気になったのだろう。
彼女もまた、顔の視線に合わせて自分の視線を動かした。
『あー、いやねぇー。別に上を向いてほしいと言うことではありませんよ。そんなことをしても時間の短縮にはなりませんからね…ただ、これからコチラがお話しすることと言うのは、フィリア王女…あっ…フィリア様にも関係あるお話なんですよ。お仲間達のね』
『えっ…お仲間達…?』
『おっ…!いいですねぇ~。さすがに反応してくれましたか。やはりそういった性格と言うのは変わらないものなんですね』
お仲間達と言う言葉がまるでキーワドであるかのごとく反応を見せる彼女。
そして自分の目論み道理に話が進みそうと言う手応えがあるのだろう。
顔もまた先ほどとは違い表情が実に明るくなっていた。
『お仲間達と言うのは…具体的には…』
『んー、そうですね。今のところはたった今、成功した一人だけと言うことなんですけどね』
『えっ…成功した一人?』
『はい、今成功しました!フィリア様のお陰でね』
顔はそういいながら、彼女の方に片目をつむるような仕草を見せた。
まるで、その動作が彼女に対してのお礼代わりとでも言うのだろうか?
彼女にはサッパリと意味が分かっていなかった。
『具体的には、誰のことなのでしょうか?』
『んー、それは後々分かるとして、今は話を先に進めてもいいですか?進路方向としてもう一方は恐らく成功しないんですよね。そして、その一方とは今、ちょっと会える状態じゃないんですよね』
彼女は顔が言っていることが、相変わらずサッパリ分かっていない。
分かっていないのだが、彼女の方も今の状況が自分にとって良くないと言うのは先ほどから嫌と言うほど感じている。
そして顔の話により僅かに冷静さを取り戻した彼女は、分からないとは言え彼女なりに必死に考えていた。
その中で考え出した結論…
恐らく目の前に見える顔は本物ではないのではないかと言うことだった。
とは言え、顔の話ではどうやら自分に関わっている者の誰かがとらえられているような印象を受ける。
そうなると迂闊な状況をとるべきではないだろう。
彼女はもう少し情報を引っ張りたいとも思ったが、それも危険な賭けに過ぎないと感じたので先ずは可能な限り目の前の話を聞くことにした。
『それで…ワタクシに何かをしてほしいと言うことなのでしょうか?』
『あー、はい。分かりますか?』
『それでなくてはワタクシに話しかける意味がないですからね…』
『はい、では用件の方をお伝えします。先ずは先ほど外に小さな明かりがあったのは確認していますよね?』
『はい、確認しております』
そう言いながら彼女は先ほど悲鳴をあげる直前、窓から僅かな明かりを見た記憶を思い出す。
『もう少しでその明かりのところまで、貴方のお仲間の一人が到着します。そしてその人は場合によっては、その明かりがついたマジックアイテムを壊すかもしれません。ですが、それを壊されると後々ちょっと面倒なことになってしまいます。おっとぉ~、この面倒は何もコチラだけではありませんよ。唯一成功したお仲間さんに対してもですからね。早まった行動をしないでください!なのでフィリア様には先ずは、その明かりを護って欲しいのです』
『まもる?まもって終わりですか?』
『はい、護るです。先ずはそのマジックアイテムを壊さないようにお仲間さんを説得してください。そして、それが出来たら次の段階に移るのでマジックアイテムの安全が確認できた段階で、どこか一人になって私を呼んでください!ヨハンと…その後で指示の方をお伝えします。あっ…、そうだ忘れてました。このお話、他言無用ですからねぇっ!』
最後の言葉の瞬間、顔はこれまでフィリアが一度も見たことがない鋭い表情を見せた。
その瞬間、彼女は彼の言葉の意味を正確に理解する。
まだ誰か分からないがとらえられたであろう仲間の一人の身が危険だと言うことを…
無言で何度も頷く彼女を見て、顔はあっという間に姿を消した。
一瞬で辺り一面が包まれるほどのけたたましい悲鳴をあげたフィリアだったが、その悲鳴の後は事態が掴めずにただひたすらに怖くて震えていた。
そんな彼女を見て目の前の顔は彼女に普通に声をかける。
まるで小さな子供にお菓子を進めるかの様子でだ。
『あっ…あっ…』
そう言われて話しかけられた彼女だが、今の事態がどういった状況なのか分からない。
安全だと思っていた小屋の中で、振りかえると以前見たことがある人物がいる。
ノルドの話では、兼ねてから疑惑の人物としてあげられていた人物が、自分の前に現れた。
ここまでであれば多分、彼女も言葉を失うほどに取り乱すことはないはずなのだが…
今回は、そこから先のオマケがある。
見知った顔は何故か分からないが顔だけで自分の方に話しかけてくると言うオマケだ。
顔だけでも不思議だと言うのに、その顔は表情を作り普通に話しかけてくる。
間違いなく今まで生きてきた人生の中で初めての体験で、自分にとって悪いことと言うのも自分の中で想像できているのだろう。
どうしたらいいのか分からない彼女は、言葉を失ったまま驚きの表情で顔を見つめるだけだった。
『いやー、驚いてはもらえるとは思っていたんですけどね。まさかここまでとは、こちらも思っていませんでしたよ。ただ、いつまでもこのままと言うわけにはいかないんですよね…今回は時間があまり無いので…んー…』
顔はそう言うと眉間にシワを寄せながら視線を上に向ける。
そしてその動作は彼女の目の前で行われたことで、目の前の対象に最大限注意している彼女も顔の視線の先が気になったのだろう。
彼女もまた、顔の視線に合わせて自分の視線を動かした。
『あー、いやねぇー。別に上を向いてほしいと言うことではありませんよ。そんなことをしても時間の短縮にはなりませんからね…ただ、これからコチラがお話しすることと言うのは、フィリア王女…あっ…フィリア様にも関係あるお話なんですよ。お仲間達のね』
『えっ…お仲間達…?』
『おっ…!いいですねぇ~。さすがに反応してくれましたか。やはりそういった性格と言うのは変わらないものなんですね』
お仲間達と言う言葉がまるでキーワドであるかのごとく反応を見せる彼女。
そして自分の目論み道理に話が進みそうと言う手応えがあるのだろう。
顔もまた先ほどとは違い表情が実に明るくなっていた。
『お仲間達と言うのは…具体的には…』
『んー、そうですね。今のところはたった今、成功した一人だけと言うことなんですけどね』
『えっ…成功した一人?』
『はい、今成功しました!フィリア様のお陰でね』
顔はそういいながら、彼女の方に片目をつむるような仕草を見せた。
まるで、その動作が彼女に対してのお礼代わりとでも言うのだろうか?
彼女にはサッパリと意味が分かっていなかった。
『具体的には、誰のことなのでしょうか?』
『んー、それは後々分かるとして、今は話を先に進めてもいいですか?進路方向としてもう一方は恐らく成功しないんですよね。そして、その一方とは今、ちょっと会える状態じゃないんですよね』
彼女は顔が言っていることが、相変わらずサッパリ分かっていない。
分かっていないのだが、彼女の方も今の状況が自分にとって良くないと言うのは先ほどから嫌と言うほど感じている。
そして顔の話により僅かに冷静さを取り戻した彼女は、分からないとは言え彼女なりに必死に考えていた。
その中で考え出した結論…
恐らく目の前に見える顔は本物ではないのではないかと言うことだった。
とは言え、顔の話ではどうやら自分に関わっている者の誰かがとらえられているような印象を受ける。
そうなると迂闊な状況をとるべきではないだろう。
彼女はもう少し情報を引っ張りたいとも思ったが、それも危険な賭けに過ぎないと感じたので先ずは可能な限り目の前の話を聞くことにした。
『それで…ワタクシに何かをしてほしいと言うことなのでしょうか?』
『あー、はい。分かりますか?』
『それでなくてはワタクシに話しかける意味がないですからね…』
『はい、では用件の方をお伝えします。先ずは先ほど外に小さな明かりがあったのは確認していますよね?』
『はい、確認しております』
そう言いながら彼女は先ほど悲鳴をあげる直前、窓から僅かな明かりを見た記憶を思い出す。
『もう少しでその明かりのところまで、貴方のお仲間の一人が到着します。そしてその人は場合によっては、その明かりがついたマジックアイテムを壊すかもしれません。ですが、それを壊されると後々ちょっと面倒なことになってしまいます。おっとぉ~、この面倒は何もコチラだけではありませんよ。唯一成功したお仲間さんに対してもですからね。早まった行動をしないでください!なのでフィリア様には先ずは、その明かりを護って欲しいのです』
『まもる?まもって終わりですか?』
『はい、護るです。先ずはそのマジックアイテムを壊さないようにお仲間さんを説得してください。そして、それが出来たら次の段階に移るのでマジックアイテムの安全が確認できた段階で、どこか一人になって私を呼んでください!ヨハンと…その後で指示の方をお伝えします。あっ…、そうだ忘れてました。このお話、他言無用ですからねぇっ!』
最後の言葉の瞬間、顔はこれまでフィリアが一度も見たことがない鋭い表情を見せた。
その瞬間、彼女は彼の言葉の意味を正確に理解する。
まだ誰か分からないがとらえられたであろう仲間の一人の身が危険だと言うことを…
無言で何度も頷く彼女を見て、顔はあっという間に姿を消した。
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