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☆第2章☆リエン山
2ー84★声…
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【あれれぇ~、おにぃさんじゃないでかぁ~。お久しぶりですねぇ~。思いがけない再会にビックリですぅ~】
今、俺の周囲にはフェン。
それ以外では小屋を取り巻くように大勢のモンスター。
目立ったものはこれくらいしか見当たらない。
なのでパッと見た感じでは俺と彼以外には意図的に会話を出来る者がいない。
そして、この声も耳から聞こえたと言うよりは何となくなのだが頭の中に直接響いたと言う感じがする。
だから最初は気のせいだと思ったのだが…
響いた声を再び思い出してみると、俺はその声と口調に思いっきり覚えがあった。
気のせいとして片付けるには、あまりにも重すぎる思い出…
いや、思いでと言う言い方では生ぬるすぎる。
たった一度しか聞いた記憶はないのだが、あの時俺は間違いなくこの声にトラウマを植え付けられてしまったのを覚えている。
絶対に間違えるはずがない、アスタロトだ!
そう思った瞬間…
『てめぇー、どこにいんだよ!出てこいよ!ごらぁぁぁあああ~!!』
結界の外周、モンスターで埋め尽くされた周囲の更に後ろに位置する林の中を思いっきり睨みながら叫んでいた。
認めたくないトラウマに対して、俺は精一杯の虚勢で立ち向かうつもりでいたのだが…
『えっ!?えっ!?えっ!?ちょっと、待ってください、アタルさん。どうしたんですか?急に!』
それを遮るようなフェンの声。
彼が驚いた様子で俺の方と林の方で視線を何度も交差させながら聞いてくる。
『えっ?急にって、今いきなり声聞こえたよね?だからさぁ…』
『声ぇ~?』
俺の方としてはアスタロトの声に反応したつもりだった。
だから、この時、フェンの反応として「あの声知ってるんですか?」とか、そういう反応の言葉がくるのだろうと思ったのだが、きたのは「声?」というような声そのものの存在を疑うような言葉だ。
『え?フェン…、声ってどういうことだ?』
『どういうことは、アタルさんの方ですよね?いきなり大きな声あげて、いくらノルド様の結界があってモンスターが侵入してこないとは言え、あまりうかつにモンスターを刺激するような行動は避けてください』
明らかにそうだ、俺とフェンとの間で会話が噛み合っていない。
え?どういうことだ?
俺は自分がまだ気絶状態の最中で頭が混乱している状態なのかと感じ、彼の言葉に明確な返事を出すことができず、ただ頷くだけで精一杯となっていた。
『アタルさん、とりあえず事態は分かりましたよね?それでノルド様たちの様子も気になるのは勿論ですが、その為には今見えるモンスターの群れを何とかしなければいけないと言うわけです』
『あっ…ああ…、確かにそうだな』
俺と彼の間で会話のちぐはぐさは感じるが、先ずは目に見える問題を片付けましょうというフェンの発言には俺の方も反対の余地はないのでとりあえず頷きながらにはなるが話を合わせるのだが…
【あぁー、あぁー。おにぃさん怒られちゃったねぇ~…】
まただ!
また声が聞こえた?
いや、耳から入ってくる声ならばモンスターのうなり声や木々の揺れる音、風の音なども混ざってくるはずなので、今の状態でここまで鮮明に入ってくることはないだろう。
だから聞こえたというよりは、さっきも思ったように声が頭に直接響いたと言う表現の方が適切なのかもしれない。
と言うことは…
魔法かマジックアイテムなのか?
隠れているのか、この場にいないのかどちらなんだ…
情報が少ないのでハッキリと判断できない。
そんな気持ちで俺は辺り一面を注意深く睨み付けていたのだろう。
だがそうすると俺の横にはフェンがいるわけで…
『え?どうしたんですか?アタルさん。何か気になることでもあるんですか?』
今回は先程彼に言われた手前、いきなり叫び出すと言う行動はとらなかった。
とは言っても、それなりに不思議な行動だったのかもしれない。
彼は俺の方を訝しげに見つめていた。
『あー、いやー…。別に…』
先程のチグハグな会話から彼に声が響いていないと言うのは俺も分かっている。
だから膨らまない会話を続けるよりはと思い、会話を切ろうとしたのだが…
『いえ、今の感じ。明らかに異常ですよね?別にって言う感じではなかったんですけど…』
彼がと言うか…
正確には俺の様子を見たフェンの言葉と言う方が適切なのだろう。
彼の性格上、口調は穏やかなのだが納得のいく説明をしてくれと言っているように聞こえた。
考えてみれば当然なのかもしれない。
今この場には周囲を見渡して俺とフェンしかいない。
彼にとっては唯一会話の出来る相手が、自分でもなくモンスターでもない。
目標が定かではない明後日の方向に視線を向け臨戦態勢の状態で思いっきり睨み付けている。
そんな状況で「大丈夫!」なんて軽く言われて「ハイそうですか!」なんて納得できると言うのか…
俺だったら絶対に納得しない。
ただ…
そうなると彼自身に納得できるような説明と言うのをしなければいけないのだが…
今の状態を説明するとすると、俺だけが理解できてフェンの方は理解できない状態を彼に納得しろと言わねばならない。
それもモンスターに囲まれた、この状況で?
多分、無理なんだよなぁ~…
と言う考えが俺の頭の中を駆け巡った瞬間、先程の気絶事件の事が俺の頭の中をよぎる。
確かあの時ってフェンもフィリアも何ともないのに、俺だけが気絶した感じに思えた。
そして今の状況…
俺には間違えようもない過去のトラウマとなったアスタロトの声が認識でき、それが目の前にいるはずの彼の方では認識できない。
この二つって似ているんじゃないのか?
そう思った瞬間…
今、俺の周囲にはフェン。
それ以外では小屋を取り巻くように大勢のモンスター。
目立ったものはこれくらいしか見当たらない。
なのでパッと見た感じでは俺と彼以外には意図的に会話を出来る者がいない。
そして、この声も耳から聞こえたと言うよりは何となくなのだが頭の中に直接響いたと言う感じがする。
だから最初は気のせいだと思ったのだが…
響いた声を再び思い出してみると、俺はその声と口調に思いっきり覚えがあった。
気のせいとして片付けるには、あまりにも重すぎる思い出…
いや、思いでと言う言い方では生ぬるすぎる。
たった一度しか聞いた記憶はないのだが、あの時俺は間違いなくこの声にトラウマを植え付けられてしまったのを覚えている。
絶対に間違えるはずがない、アスタロトだ!
そう思った瞬間…
『てめぇー、どこにいんだよ!出てこいよ!ごらぁぁぁあああ~!!』
結界の外周、モンスターで埋め尽くされた周囲の更に後ろに位置する林の中を思いっきり睨みながら叫んでいた。
認めたくないトラウマに対して、俺は精一杯の虚勢で立ち向かうつもりでいたのだが…
『えっ!?えっ!?えっ!?ちょっと、待ってください、アタルさん。どうしたんですか?急に!』
それを遮るようなフェンの声。
彼が驚いた様子で俺の方と林の方で視線を何度も交差させながら聞いてくる。
『えっ?急にって、今いきなり声聞こえたよね?だからさぁ…』
『声ぇ~?』
俺の方としてはアスタロトの声に反応したつもりだった。
だから、この時、フェンの反応として「あの声知ってるんですか?」とか、そういう反応の言葉がくるのだろうと思ったのだが、きたのは「声?」というような声そのものの存在を疑うような言葉だ。
『え?フェン…、声ってどういうことだ?』
『どういうことは、アタルさんの方ですよね?いきなり大きな声あげて、いくらノルド様の結界があってモンスターが侵入してこないとは言え、あまりうかつにモンスターを刺激するような行動は避けてください』
明らかにそうだ、俺とフェンとの間で会話が噛み合っていない。
え?どういうことだ?
俺は自分がまだ気絶状態の最中で頭が混乱している状態なのかと感じ、彼の言葉に明確な返事を出すことができず、ただ頷くだけで精一杯となっていた。
『アタルさん、とりあえず事態は分かりましたよね?それでノルド様たちの様子も気になるのは勿論ですが、その為には今見えるモンスターの群れを何とかしなければいけないと言うわけです』
『あっ…ああ…、確かにそうだな』
俺と彼の間で会話のちぐはぐさは感じるが、先ずは目に見える問題を片付けましょうというフェンの発言には俺の方も反対の余地はないのでとりあえず頷きながらにはなるが話を合わせるのだが…
【あぁー、あぁー。おにぃさん怒られちゃったねぇ~…】
まただ!
また声が聞こえた?
いや、耳から入ってくる声ならばモンスターのうなり声や木々の揺れる音、風の音なども混ざってくるはずなので、今の状態でここまで鮮明に入ってくることはないだろう。
だから聞こえたというよりは、さっきも思ったように声が頭に直接響いたと言う表現の方が適切なのかもしれない。
と言うことは…
魔法かマジックアイテムなのか?
隠れているのか、この場にいないのかどちらなんだ…
情報が少ないのでハッキリと判断できない。
そんな気持ちで俺は辺り一面を注意深く睨み付けていたのだろう。
だがそうすると俺の横にはフェンがいるわけで…
『え?どうしたんですか?アタルさん。何か気になることでもあるんですか?』
今回は先程彼に言われた手前、いきなり叫び出すと言う行動はとらなかった。
とは言っても、それなりに不思議な行動だったのかもしれない。
彼は俺の方を訝しげに見つめていた。
『あー、いやー…。別に…』
先程のチグハグな会話から彼に声が響いていないと言うのは俺も分かっている。
だから膨らまない会話を続けるよりはと思い、会話を切ろうとしたのだが…
『いえ、今の感じ。明らかに異常ですよね?別にって言う感じではなかったんですけど…』
彼がと言うか…
正確には俺の様子を見たフェンの言葉と言う方が適切なのだろう。
彼の性格上、口調は穏やかなのだが納得のいく説明をしてくれと言っているように聞こえた。
考えてみれば当然なのかもしれない。
今この場には周囲を見渡して俺とフェンしかいない。
彼にとっては唯一会話の出来る相手が、自分でもなくモンスターでもない。
目標が定かではない明後日の方向に視線を向け臨戦態勢の状態で思いっきり睨み付けている。
そんな状況で「大丈夫!」なんて軽く言われて「ハイそうですか!」なんて納得できると言うのか…
俺だったら絶対に納得しない。
ただ…
そうなると彼自身に納得できるような説明と言うのをしなければいけないのだが…
今の状態を説明するとすると、俺だけが理解できてフェンの方は理解できない状態を彼に納得しろと言わねばならない。
それもモンスターに囲まれた、この状況で?
多分、無理なんだよなぁ~…
と言う考えが俺の頭の中を駆け巡った瞬間、先程の気絶事件の事が俺の頭の中をよぎる。
確かあの時ってフェンもフィリアも何ともないのに、俺だけが気絶した感じに思えた。
そして今の状況…
俺には間違えようもない過去のトラウマとなったアスタロトの声が認識でき、それが目の前にいるはずの彼の方では認識できない。
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