神業(マリオネット)

床間信生

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☆第2章☆リエン山

2ー67★魔法の便利さ

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装備品を選び終わり、部屋を出ると小屋の広間の方に、俺とノルドを除くメンバーが集まっている。
その中でエルメダが朝方預けたシャツを持ち近寄ってきた。

『ナカノさん、はいこれ出来たよ!』
『あー、うん。ありがとう!って、ほんとに乾いてるね。凄いね!』

エルメダからシャツを手渡され確認してみると、確かに朝エルメダが言ったように乾いていた。

別に彼女の言っていたことを疑うわけではなかったが、魔法の使えない俺にとっては彼女が朝言っていたことと言うのがいまいち理解できなかったのだ。
なので実際に着替えながら確認することで、俺は改めて魔法の便利さを確認する。

『うーん。でもこれ生活魔法の一部だから…』
『あー、確か火を起こしたり水を出したりするって言う魔法だっけ?』
『そう、魔力に適正がある人なら誰でも使える魔法なんだよね』
『魔力に適正か…うーん。でも、それだと、俺は厳しいかな…』
『ナカノ様も生活魔法を使いたいのですか?』

俺とエルメダの会話の中にフィリアが入ってきた。

『えーっと、生活魔法をと言いますか…出来ることならもっと強力な魔法とか使えると嬉しいんですけどね』
『なるほど、適正がない方が魔法を使えるようになる手段もあるにはあるんですが…ですが…』
『えっ?そんな便利な手段あるの?』

俺は今まで、魔法を使うには個人の才能などによるものが、ほとんどだと思っていたのだが…
それがフィリアの今の発言だと、どうやら才能がない人間にも魔法を使う手段というのがあるように聞こえる。

『あくまでも、魔法を使えるようになるための手段という意味なのですが…』
『えーっと…それって、魔法使いになるための手段ってことでは…?』
『魔法を使える者全てを魔法使いというのでしたら、そうなのかもしれませんが…』
『ん?それは戦士でも魔法を使える者がいるよとか、そういうこと?』
『いえ…、そう言う意味ではなく。魔法を自由自在に操れる者と魔法を使わせてもらっている者と言えば良いのでしょうか…』

俺はフィリアの言っている意味が良く分からなくなっていた。
フィリアの言い方では、魔法によって何かに影響を与える行為にもいくつか種類があるように感じる。
自由自在に操るのも、使わせてもらうのも、どちらも使うと言うことでいいとは思うのだが…
今の俺には、それら二つの行為について違いがサッパリ分からない。

『あー、それは刺青タトゥーを利用した方法の事ですね。あれならナカノ様でも魔法を使えるようにはなると思いますが、結局後々になって困ることになるので、やめておいた方がいいですよ』
『えっ、ノルド知ってるの?』
『はい、知ってますよ。ただ、生活魔法を使えるようになりたい程度であればいいんですけど、戦闘に利用したいと言う感じにある程度以上の効果を求める場合、結局みんな後悔をすることになりますよ』
『それは、代償があるってことか?』
『んー、正しい知識や実力が兼ね備えられている者が刺青タトゥーをするのであれば、それほどないとは思いますよ。ただ、刺青タトゥーで得られる力と言うのは一部の方法を除いてかなり限定的になる場合が多いので、本当に行いたい場合は、なるべく慎重に調べたりする必要があります』
『なるほどね…それ、けっこう興味があるから、今回の事が全てすんだ後に改めて話を聞きに来ようかな』
『そうですね。それがいいかもしれません』
『では、ナカノ様。そろそろ着替えも終わったようで、準備は整いましたか?』
『うん。とりあえずは整ったかな。ということで、そろそろ行こうかな』

着替えも終わった俺は、そう言いながら自分のポケットの中にしまった位置情報の書いてある地図を広げる。

『それには、事前に私が記録した位置情報しか書いていないようですが、トーレさんでしたでしょうか?その方がいる位置情報と言うのは…』
『あー、それなら大丈夫。前に行ったことがある場所だから覚えているよ』
『分かりました。では、くれぐれも道中はお気を付けてください』
『はい。大丈夫だよ。って、昨日から何度もその言葉を聞いている気がするんだけど…、そんなに危険に思うことがあるってこと?』
『んー、危険に思うことと言うよりも、分からないことが多いと言った方が適切だと思います』
『分からないことねー』
『はい。今回の場合は、相手がフィリアさんを狙っているのは、ほぼ間違いないと思います。ですが今、彼女は最初の洞窟から離れています。そうすると相手は彼女の所在を知っているのか分からない。それに相手が実際にはどの程度の実力なのかということも本当のところ分かっていないですから、知らない間は用心を重ねられるだけ重ねた方がいいと私は思います』
『なんか、ノルドのそう言う考えを聞けば聞くほど、目立った行動は避けて穏便に行動したいとは思うよね』
『そうですか?それなら良かったです。私の最終的な狙いが、ナカノ様に通じたようで』

最後、ノルドは笑いながら俺に話してくるが、行動を起こす本人である俺にとっては彼の言うことを冗談と笑い流すことはできない。
とは言え、昼間のうちに動いた方が危険は少ないのかなと考えた俺は、他のみんなと一言づつ暫しの別れと言葉を掛け合ったあと、トーレの拠点を目指すべく行動を開始した。
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