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☆第1章☆貿易都市(ルート)
1ー36★二つ名
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色々あったアンテロ衝撃の発言から約1日が経過している。
昨日は二度目の話し合いが終わった時には夜も更けていて、話の途中でアンテロからは相談と言われたが翌日にするようお願いした。
奴隷商人の館や登録所など移動もしたりで疲れはてて余裕が全く無かったからだ。
とは言っても今日もアイテム運びと討伐もやった後だったので疲れていることには変化がないけど。
だが夕方過ぎにはアンテロが俺の家に来ると言うので、討伐が終わった後はかなり急いで戻ってきた。
今更になってエルメダを置いてきぼりにするほど急ぐ必要はあったのかと考えるほどだ。
(これ…相談とか無かったらロマンチックな雰囲気とかになるのかな…)
何とも残念な気持ちを胸に抱き、少し早く戻りすぎたのかなと思ってテラスでくつろいでいると丘の方から一人の影が近づいてきた。
アンテロだ。
『すいません。遅くなり申し訳ございません』
『俺も帰ってきたばかりなので大丈夫です。』
お互いに軽く挨拶を済ませると、俺はアンテロを家の中に招きキッチンの横にある大きめの椅子とテーブルがある部屋まで案内した。
『ナカノ様、本日はお時間いただきありがとうございます。相談と言うのは今後のことなのですが…』
『はい、今後のこと?』
『ナカノ様は、旅人だとお聞きしたのですが…今後、貿易都市の方にはいつ頃までいるのでしょうか?』
(一度も旅人を公言したつもりはないのだけども…転勤族は旅人じゃないだろ…)
『いや、おれ…意識して旅人しているわけではなくて…たまたまの偶然というだけの話なんですよね…それにエルメダともパーティ組んだばかりだし…』
『お嬢様ですか…』
アンテロが一層真剣な顔になり考え込んでいるように見える。
『当分は、貿易都市にいるとは思いますけど…どうしたんですか?』
『実は…トラボン様と話した時にいくつかの条件が必要と言われました』
『いくつかの条件?』
『私のラストネームがハクショクと言うのは、以前にカードを見て知っているとは思うのですが、このハクショクと言うラストネームは二つ名としてハクショクと言われるのが一般的らしいのです』
『えっ?ハクショクって…もしかして…』
『はい、奴隷です。それも職業として登録させる奴隷ではなく、恐怖と暴力により支配されるのが一般的な奴隷らしいです』
(これって…もしかして…)
『それってまさか…首輪に鎖をつけてとかですか?』
『首輪に鎖と言うのは聞きませんでしたが…従属のトゥリングと言うのは聞きました…』
『従属のトゥリング?トゥリングってことは足に何か付けるんですか?』
『なんでも正式名称は違うようなのですが…亜人を見つけて恐怖と暴力を植え付けて、そのトゥリングを両足の人差し指にすると相手を強制的に奴隷として従わせることができるんだとか。そしてつけられた相手は抵抗することもできないし、逃げ出すこともできなくなるらしいのです』
『なんだよ…それ…どう考えてもおかしいだろ…そんなんあったら気に入らない人に付ける輩とか普通に現れるだろう…』
(信じられない…って言うか本当に存在しているなら、この世界は狂っているよ…)
『はい、私もそう思います。ただ、そのリングを従属のリングとして人間・エルフ・ドワーフと一部の亜人に使用するのは禁止されていると言われました。私はそんな狂った使い方は許せません。そこでナカノ様のお力を貸していただきたいのです』
『えっ…お力って…??』
俺の言葉よりも早くアンテロは自分の言葉が終わると、座っていた椅子から降りて、俺の前にひれ伏すが如く小さくなり俺の右足にしがみついてきた。
『兎人族の中でもハクショクは集団で住むよりは家族ごとの小さな集まりで住むのを好む一族らしいのです。小規模集団だけに見つけ出せれば後は容易。だからハクショクと呼ばれるのだと。恐らく私の両親も親戚も忌々しいアクセサリーの力によって、取り返しのつかない時間を今も過ごしているはずです。例え顔が分からないとしても私にはどうしても許すことはできません。放っておくこともできません。力になってあげたいのです。ですが私一人の力では絶対にどうしようも出来ません。ナカノ様、お願いです。私はどうなっても構いません。何があっても必ず受け入れます。今、現状でお力を貸していただける方はナカノ様だけなのです!どうか、どうかお力を貸していただけないでしょうか!!!お願いします!』
オモチャを買って欲しいと駄々を捏ねる子供と言うと例えが非常に不味いのかもしれない。
だが俺の足を掴みながら必死に叫び、俺が言おうとする言葉が彼女にとって否定的であると感じると大声で「お願いします!」と言い続け俺の言葉を打ち消してしまう…
(こんなのどうしたらいいんだよ…)
『ちょっと待ってください!!!!!!冷静に話し合いましょう!とりあえず足から離れてください』
『では…力になってくれると言うことで…』
何度目の言葉か分からないが俺の方も必死に叫び続け、なんとかアンテロが聞く気になったようだ。
とは言っても俺が力を貸すと言うのはアンテロにとって譲れないところらしい。
『あの、俺が力を貸すって言っても具体的にはどうするんですか?それにエルメダの方は、どうするんですか?』
『はい、それでは具体的なことをお話ししたいと思います』
アンテロのことは力になってあげたい。
だが俺は職業登録所の件で自分には戦う才能がないのは分かっている。
もしもアンテロがアクセサリーのことで立ち上がるのであれば、今後の俺は危険なことに足を突っ込む可能性が多くなるはずだ。
正直なところ全てを置いてアンテロの話からは逃げ出したかった…
昨日は二度目の話し合いが終わった時には夜も更けていて、話の途中でアンテロからは相談と言われたが翌日にするようお願いした。
奴隷商人の館や登録所など移動もしたりで疲れはてて余裕が全く無かったからだ。
とは言っても今日もアイテム運びと討伐もやった後だったので疲れていることには変化がないけど。
だが夕方過ぎにはアンテロが俺の家に来ると言うので、討伐が終わった後はかなり急いで戻ってきた。
今更になってエルメダを置いてきぼりにするほど急ぐ必要はあったのかと考えるほどだ。
(これ…相談とか無かったらロマンチックな雰囲気とかになるのかな…)
何とも残念な気持ちを胸に抱き、少し早く戻りすぎたのかなと思ってテラスでくつろいでいると丘の方から一人の影が近づいてきた。
アンテロだ。
『すいません。遅くなり申し訳ございません』
『俺も帰ってきたばかりなので大丈夫です。』
お互いに軽く挨拶を済ませると、俺はアンテロを家の中に招きキッチンの横にある大きめの椅子とテーブルがある部屋まで案内した。
『ナカノ様、本日はお時間いただきありがとうございます。相談と言うのは今後のことなのですが…』
『はい、今後のこと?』
『ナカノ様は、旅人だとお聞きしたのですが…今後、貿易都市の方にはいつ頃までいるのでしょうか?』
(一度も旅人を公言したつもりはないのだけども…転勤族は旅人じゃないだろ…)
『いや、おれ…意識して旅人しているわけではなくて…たまたまの偶然というだけの話なんですよね…それにエルメダともパーティ組んだばかりだし…』
『お嬢様ですか…』
アンテロが一層真剣な顔になり考え込んでいるように見える。
『当分は、貿易都市にいるとは思いますけど…どうしたんですか?』
『実は…トラボン様と話した時にいくつかの条件が必要と言われました』
『いくつかの条件?』
『私のラストネームがハクショクと言うのは、以前にカードを見て知っているとは思うのですが、このハクショクと言うラストネームは二つ名としてハクショクと言われるのが一般的らしいのです』
『えっ?ハクショクって…もしかして…』
『はい、奴隷です。それも職業として登録させる奴隷ではなく、恐怖と暴力により支配されるのが一般的な奴隷らしいです』
(これって…もしかして…)
『それってまさか…首輪に鎖をつけてとかですか?』
『首輪に鎖と言うのは聞きませんでしたが…従属のトゥリングと言うのは聞きました…』
『従属のトゥリング?トゥリングってことは足に何か付けるんですか?』
『なんでも正式名称は違うようなのですが…亜人を見つけて恐怖と暴力を植え付けて、そのトゥリングを両足の人差し指にすると相手を強制的に奴隷として従わせることができるんだとか。そしてつけられた相手は抵抗することもできないし、逃げ出すこともできなくなるらしいのです』
『なんだよ…それ…どう考えてもおかしいだろ…そんなんあったら気に入らない人に付ける輩とか普通に現れるだろう…』
(信じられない…って言うか本当に存在しているなら、この世界は狂っているよ…)
『はい、私もそう思います。ただ、そのリングを従属のリングとして人間・エルフ・ドワーフと一部の亜人に使用するのは禁止されていると言われました。私はそんな狂った使い方は許せません。そこでナカノ様のお力を貸していただきたいのです』
『えっ…お力って…??』
俺の言葉よりも早くアンテロは自分の言葉が終わると、座っていた椅子から降りて、俺の前にひれ伏すが如く小さくなり俺の右足にしがみついてきた。
『兎人族の中でもハクショクは集団で住むよりは家族ごとの小さな集まりで住むのを好む一族らしいのです。小規模集団だけに見つけ出せれば後は容易。だからハクショクと呼ばれるのだと。恐らく私の両親も親戚も忌々しいアクセサリーの力によって、取り返しのつかない時間を今も過ごしているはずです。例え顔が分からないとしても私にはどうしても許すことはできません。放っておくこともできません。力になってあげたいのです。ですが私一人の力では絶対にどうしようも出来ません。ナカノ様、お願いです。私はどうなっても構いません。何があっても必ず受け入れます。今、現状でお力を貸していただける方はナカノ様だけなのです!どうか、どうかお力を貸していただけないでしょうか!!!お願いします!』
オモチャを買って欲しいと駄々を捏ねる子供と言うと例えが非常に不味いのかもしれない。
だが俺の足を掴みながら必死に叫び、俺が言おうとする言葉が彼女にとって否定的であると感じると大声で「お願いします!」と言い続け俺の言葉を打ち消してしまう…
(こんなのどうしたらいいんだよ…)
『ちょっと待ってください!!!!!!冷静に話し合いましょう!とりあえず足から離れてください』
『では…力になってくれると言うことで…』
何度目の言葉か分からないが俺の方も必死に叫び続け、なんとかアンテロが聞く気になったようだ。
とは言っても俺が力を貸すと言うのはアンテロにとって譲れないところらしい。
『あの、俺が力を貸すって言っても具体的にはどうするんですか?それにエルメダの方は、どうするんですか?』
『はい、それでは具体的なことをお話ししたいと思います』
アンテロのことは力になってあげたい。
だが俺は職業登録所の件で自分には戦う才能がないのは分かっている。
もしもアンテロがアクセサリーのことで立ち上がるのであれば、今後の俺は危険なことに足を突っ込む可能性が多くなるはずだ。
正直なところ全てを置いてアンテロの話からは逃げ出したかった…
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