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お金の行方
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借金奴隷と犯罪奴隷で高額な方はどちらか?
これは流石に俺でも分かる。
というのもごく身近にルカという借金奴隷から犯罪奴隷へと移動した例があるのだから。
さっきの話だと借金奴隷から犯罪奴隷へと移った際に彼女はロザリオの弁償や罰金もあらたに発生したと言っていた。
と言うことは同じ借金であっても、その分だけ上乗せされるのが犯罪奴隷だろう!
なので!
「はい!こた…」
「えは犯罪奴隷です」の一言が俺には出なかった。
人が買いたいのは借金奴隷。
売れて欲しいのは犯罪奴隷。
そして高額なのは犯罪奴隷だとすると…
あれ?おかしくないか?
犯罪奴隷っていつ売れるんだ?
「お主、やっと気づいたか。奴隷というのは、他の商品とは違う。仕入れてきたらどんなに粗末であろうと食事は与えなければいけない。服も着せねばいけない。その他、病気の際の薬代など身の回りにおいて色々と発生することがある。椅子や机のように置いておけば良いなどということはない。更に言うと国や町、村など人々の集まりがあると、一定以上で犯罪というのは確実におこる。その度に犯罪奴隷というのは確実に増えていく。今は売れ残っているので待ってください?国はそんな奴隷商人の言い分など考えてはくれない。ふと気がつくと、この国の犯罪奴隷の数というのは全奴隷の7割を越え、その内約9割が売れ残っていたらしいのじゃ」
「えっ…国が裁きにより犯罪奴隷にしたら、その後は奴隷商人に丸投げってことですか?」
売れる見込みがない商品を無理矢理買わされるってことですか。
「そうじゃ、なので奴隷商人たちも流石に反発を始めてな、とうとうこの国から出ていく奴隷商人が出だしたのじゃ。流石に奴隷商人が0になったりする自体というのは国も避けたいとみえてな、色々と策を実行することになる。確か最初は罰金の減額とか被害者への賠償の一部肩代わりなどで犯罪奴隷の価格を減額しようとしたようじゃ…だがそれらのほとんどは、あまり成果が上がらなくてな、ここ数年前からは奴隷商人へ補助金を出し始めたそうだ」
「それって、さっき言ってた犯罪奴隷の生活費みたいなヤツですか?」
「むろん。そういうことじゃ」
なるほど…
売れないなりにどうにか国も処分していきたいから、特典を一緒に掴ませようということか…
「それってどのくらいですか?」
「うーん。儂も詳しくは知らんが、確か預かった日から一定期間、維持費用などの経費を申告出来たはずじゃ」
ん…?
「一定期間ですか?」
「そうじゃ」
多分、国の方としてはその間に雇い主を探して売買を成立させて欲しいということなのだろう。
だが…
「一定期間過ぎたらどうなるんですか?」
「うーん…打ちきりじゃろ?よく知らんが…」
ガイアス様が腕を組み上を見上げながら困ったような表情で答えた。
「ちなみに奴隷って例えばいなくなったりしたら、どうなるんですか?」
「奴隷商人や商業ギルドへ届けをしてという感じじゃな」
「何か証明できるものとかは要らないのですか?」
「特にはいらんはずじゃ」
「ちなみに売れたときはどうするんですか?」
「届け出と犯罪奴隷の場合は賠償金などを納めたりするハズじゃ」
「それだけですか?」
「それだけじゃ」
「えっ…ザルじゃないですか?」
「ザルじゃな」
あー…これで話が繋がった。
ここからは俺の推測にすぎないが、今回の件をルカを例に俺なりに考えてみる。
ルカが借金奴隷から犯罪奴隷になり、奴隷商人に引き渡された。
その後、どこかの探索者に適当な言葉をかけてルカを押し付ける。
そして自分はその間、国から金を貰う。
全ての手続きが届け出だけで通るのであれば、申請するのは別に他の奴隷の生活費でもいいハズだ。
もっと言うと、自分達の生活費でもいいのかもしれない。
もし俺が、その奴隷商人の立場で悪どくやりたいのであれば、ルカを探索者に預けるときにうまく始末できた場合、成功報酬でいくらかお礼という話をすると思う。
仮に探索者がルカを気に入れば、普通に売買をして後から届け出をすれば問題ないハズだ。
そして彼女は再び奴隷商人の元へ送り返されたとしたら、自分は再び元凄腕冒険者として売られるなどと心配していたが、確かにそうだ、奴隷商人ならそうするね。
更に俺がルカを押し付けられた探索者の立場で、ルカを始末する気マンマンであれば、確かに粗末な木の盾一枚でモンスターと戦わせるだろう。
あくまで全てが俺の推測にすぎないが、ガイアス様の話が正しいのであれば、誰だってそうするのではないかと思う。
「そういうことですか」
「そういうことじゃな」
ただ…
それだと納得できないことが一点ある。
今回の件。
話の根本が犯罪奴隷についてだ。
それぞれの事情があるので一概には言えないかもしれないが、ただ犯罪を犯した人という点で言うと犯罪奴隷は大なり小なり償う必要はあると思う。
なので、その機会をなんとか模索しようとしている国の活動も俺は賛成だと思うのだが…
それを邪魔する奴隷商人の活動というのが、なんとなく俺の中では納得がいかない。
確かに以前は色々と国のシステムに問題があって、犯罪奴隷の維持に不満があったのは分かる。
ただ、それはそれだと思う。
以前の不満そのままに自分達で塞き止めて、打開策を考えずに自分達だけで利益をせしめるというのは納得がいかない。
奴隷商人らをどうにか…
いやそこまではちょっと…
せめて俺なりに犯罪奴隷の新たな使い道とかって何かないものだろうか…
これは流石に俺でも分かる。
というのもごく身近にルカという借金奴隷から犯罪奴隷へと移動した例があるのだから。
さっきの話だと借金奴隷から犯罪奴隷へと移った際に彼女はロザリオの弁償や罰金もあらたに発生したと言っていた。
と言うことは同じ借金であっても、その分だけ上乗せされるのが犯罪奴隷だろう!
なので!
「はい!こた…」
「えは犯罪奴隷です」の一言が俺には出なかった。
人が買いたいのは借金奴隷。
売れて欲しいのは犯罪奴隷。
そして高額なのは犯罪奴隷だとすると…
あれ?おかしくないか?
犯罪奴隷っていつ売れるんだ?
「お主、やっと気づいたか。奴隷というのは、他の商品とは違う。仕入れてきたらどんなに粗末であろうと食事は与えなければいけない。服も着せねばいけない。その他、病気の際の薬代など身の回りにおいて色々と発生することがある。椅子や机のように置いておけば良いなどということはない。更に言うと国や町、村など人々の集まりがあると、一定以上で犯罪というのは確実におこる。その度に犯罪奴隷というのは確実に増えていく。今は売れ残っているので待ってください?国はそんな奴隷商人の言い分など考えてはくれない。ふと気がつくと、この国の犯罪奴隷の数というのは全奴隷の7割を越え、その内約9割が売れ残っていたらしいのじゃ」
「えっ…国が裁きにより犯罪奴隷にしたら、その後は奴隷商人に丸投げってことですか?」
売れる見込みがない商品を無理矢理買わされるってことですか。
「そうじゃ、なので奴隷商人たちも流石に反発を始めてな、とうとうこの国から出ていく奴隷商人が出だしたのじゃ。流石に奴隷商人が0になったりする自体というのは国も避けたいとみえてな、色々と策を実行することになる。確か最初は罰金の減額とか被害者への賠償の一部肩代わりなどで犯罪奴隷の価格を減額しようとしたようじゃ…だがそれらのほとんどは、あまり成果が上がらなくてな、ここ数年前からは奴隷商人へ補助金を出し始めたそうだ」
「それって、さっき言ってた犯罪奴隷の生活費みたいなヤツですか?」
「むろん。そういうことじゃ」
なるほど…
売れないなりにどうにか国も処分していきたいから、特典を一緒に掴ませようということか…
「それってどのくらいですか?」
「うーん。儂も詳しくは知らんが、確か預かった日から一定期間、維持費用などの経費を申告出来たはずじゃ」
ん…?
「一定期間ですか?」
「そうじゃ」
多分、国の方としてはその間に雇い主を探して売買を成立させて欲しいということなのだろう。
だが…
「一定期間過ぎたらどうなるんですか?」
「うーん…打ちきりじゃろ?よく知らんが…」
ガイアス様が腕を組み上を見上げながら困ったような表情で答えた。
「ちなみに奴隷って例えばいなくなったりしたら、どうなるんですか?」
「奴隷商人や商業ギルドへ届けをしてという感じじゃな」
「何か証明できるものとかは要らないのですか?」
「特にはいらんはずじゃ」
「ちなみに売れたときはどうするんですか?」
「届け出と犯罪奴隷の場合は賠償金などを納めたりするハズじゃ」
「それだけですか?」
「それだけじゃ」
「えっ…ザルじゃないですか?」
「ザルじゃな」
あー…これで話が繋がった。
ここからは俺の推測にすぎないが、今回の件をルカを例に俺なりに考えてみる。
ルカが借金奴隷から犯罪奴隷になり、奴隷商人に引き渡された。
その後、どこかの探索者に適当な言葉をかけてルカを押し付ける。
そして自分はその間、国から金を貰う。
全ての手続きが届け出だけで通るのであれば、申請するのは別に他の奴隷の生活費でもいいハズだ。
もっと言うと、自分達の生活費でもいいのかもしれない。
もし俺が、その奴隷商人の立場で悪どくやりたいのであれば、ルカを探索者に預けるときにうまく始末できた場合、成功報酬でいくらかお礼という話をすると思う。
仮に探索者がルカを気に入れば、普通に売買をして後から届け出をすれば問題ないハズだ。
そして彼女は再び奴隷商人の元へ送り返されたとしたら、自分は再び元凄腕冒険者として売られるなどと心配していたが、確かにそうだ、奴隷商人ならそうするね。
更に俺がルカを押し付けられた探索者の立場で、ルカを始末する気マンマンであれば、確かに粗末な木の盾一枚でモンスターと戦わせるだろう。
あくまで全てが俺の推測にすぎないが、ガイアス様の話が正しいのであれば、誰だってそうするのではないかと思う。
「そういうことですか」
「そういうことじゃな」
ただ…
それだと納得できないことが一点ある。
今回の件。
話の根本が犯罪奴隷についてだ。
それぞれの事情があるので一概には言えないかもしれないが、ただ犯罪を犯した人という点で言うと犯罪奴隷は大なり小なり償う必要はあると思う。
なので、その機会をなんとか模索しようとしている国の活動も俺は賛成だと思うのだが…
それを邪魔する奴隷商人の活動というのが、なんとなく俺の中では納得がいかない。
確かに以前は色々と国のシステムに問題があって、犯罪奴隷の維持に不満があったのは分かる。
ただ、それはそれだと思う。
以前の不満そのままに自分達で塞き止めて、打開策を考えずに自分達だけで利益をせしめるというのは納得がいかない。
奴隷商人らをどうにか…
いやそこまではちょっと…
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