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ベンケー

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カロリーに少女のことを任せた後、俺はホムンクルスを解除してガイアス様の所に相談をしに行った。

今お世話になっている結界はガイアス様が管理しているものなので、本来であれば事前に断りを入れてというのが筋ではあると思う。
なので、どのくらいかは分からないが、ある程度の事は言われるだろうなと思っていたのだが、あの方は全く怒りもしない。
それどころか終始にこやかな様子で、相談を聞いてくれた。

その結果、カロリーに任せた少女は、ガイアス様のところで基本的に寝泊まりをして食べ物については俺たちが彼女の分を面倒見るということであれば、ガイアス様は構わないということで落ち着く。
彼女もせっかく助けてもらったのに申し訳ないといってきたので先ずは大丈夫だろう。

「差し入れるのは少女の分ということは、ガイアス様は何を食べているのだろう?」なんてどうでもよい疑問が浮かんでしまい尋ねてみたのだが、ここでもニコニコと笑うだけで答えてくれなかった。
神様は食べなくても生きていけるのだろうと言うことで勝手に納得するしかないのか…

そんな感じで突然、俺たちの周囲に現れた少女の名前はレント。
ガイアス様とカロリーのお陰なのか、一晩明けると実に落ち着いたようだ。
今、俺たちがいる場所はコントラ王国という国が治める王国領になるらしい。
そして彼女は俺たちの山の北側にある北ガーネット領という土地に住んでいたのだが、この度成人になり山の南側にある南ガーネット領にいるミナモ商会のヨハンという人物に嫁ぐことになったそうだ。
そこで北ガーネット領から南ガーネットへと引っ越しの真っ最中で、今回の騒動に出くわしたというのが事の顛末だと言っていた。

ちなみに移動には傭兵を8人ほど雇っていたらしいのだが、それがあのホブゴブリン1匹に壊滅させられたらしい。

ちなみに今俺たちがいる山が王国領。
レントの話を聞いて、地図で考えるとこの山と一部の地域が北ガーネット領と南ガーネット領に挟まれている形になる。
なんでこの山の周辺だけはガーネット領に属していないのか、彼女に聞いてみたところ。
なんでも数年前まではここも北も南もなく、そしてこの山も含めて全てガーネット領だったらしい。
そしてこの辺りも元々、ゴブリンも自然発生する場所として有名だったようだが、ただ発生するのはゴブリン、領に来る新人冒険者などによって問題なく処理されていたらしいのだが、それが5年ほど前を境に話が全く変わってしまったのだとか。

その話が変わってしまった原因というのが俺たちが今回、蹂躙されてしまったホブゴブリンである。

5年ほど前に突然現れたヤツは、ただひたすらに暴れまわったそうだ。
最初はガーネット領の領主も兵をあげてホブゴブリンに対して対抗していたようだが、いつまで待っても全く成果があがらない。
ついには王国側に泣きついたところ、王国側からは「たかがゴブリンだろ?自分でなんとかしなさいよ」みたいな返事を返されたらしく、困った領主は山とその周囲を放棄するように塀で囲んで、被害が及んでいない地域を北ガーネット領と南ガーネット領と言う形で隔離してしまったそうだ。

ちなみにそのホブゴブリンだが、今では誰が名付けたのか分からないが「ベンケー」なる二つ名まであるらしく、ただ暴れるだけではない数々の悪さもしているとかで倒すと褒賞金も貰える賞金首なんだとか…

とは言っても所詮、ホブゴブリンもゴブリン。
賞金も結構高めらしいのだが、一生困りませんというほどではない。
それに実力のある冒険者には金より名誉と考える輩が多いらしく、みんな似たような賞金であれば別な依頼をこなすんだとか…

こんな話を聞いてしまった今となっては、ガイアス様がこの山に拠点を構えたのって、意図的な感じがするのは俺だけだろうか。
更にホブゴブリンの二つ名が「ベンケー」って、強い化け物でベンケーって、俺の想像だと「弁慶」とかじゃないよね?
どうにもこうにも全てが仕組まれている気がする…

とは言っても、今の状況となってしまってはどうにもこうにもラチが明かない。
ごく身近に恐怖の対象がある今、根本的な解決手段としては、排除するか逃げるかのどちらかの選択しかない気がする。
本当であれば逃げるという選択肢をとりたいのだが、多分、そんなすぐに安全になんて出来るわけがない。
出来るのであればレントも酷い目にはあっていなかったはずだ。
そのレントも一度かくまってあげたから「あとは大丈夫でしょ?バイバイ!」なんてことは絶対できない。
できるほどの能力があるのであれば、そもそも捕まったりはしないはずだ。

かといって、落ち着くまでここにいさせてホムンクルスのことを再び見られたら、妙な騒動に発展する可能性もある。

そう考えると、早急にホブゴブリンを倒してから一緒に下山してあげるという方法になるのだが…
全くもってヤツを倒す算段というのが全く思い付かない。

一応、昨日の夕方、ゴブリンを4匹倒した後、カロリーのスキル能力上昇食品バランスアップのプレーンをリンに使いながらレベルアップに使用したところ

タカヒロ・イダ(26☆1)
種族     人
レベル  6→8
体力    23→33
魔力      0
力        26→29
俊敏    24→29
器用    21→29
適性     内政E 戦闘E+ 生産E
スキル 言語(パッシブ)

まではステータスをアップさせることができた。
だが、こんな程度の上昇でなんとかなるのであれば、前回の戦いではもっと善戦できたはずなのだ。
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