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ホムンクルス

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俺は魔力の使用履歴を確認した後、ガイアス様との話し合いもそこそこに急いで小屋に戻った。

見える位置にあるとはいえ、ガイアス様の教会と小屋は若干の距離がある。
走りながら、小屋を出る前にもう少しリンとしっかり話をしてから出るべきだったかと今さら後悔していたが、そんなのは後の祭りだ。
そんな気持ちで小屋に辿り着いて、扉を開けたとき案の定、口一杯にパーンを詰め込んでハムスターのように顔を膨らませているリンの顔があった。
そして、当然のようにメニューで確認できる使用可能魔力は0になっている。

俺は慌てるようにパーンを無理矢理掻き込んでいる仕草があまりにも可笑しくて吹き出してしまった。

大丈夫。無理矢理奪ったりはしないよ。

それにしても、まだ小さい少女のような体型なのにちょっと見ない間にコッペパンを7本とか…
どうやったら、そんなに食べられるのか不思議に思う。
「もしかしたら前世ではフードファイターとかだったのか?いや、待て!パンの大食いと言うのは口の中の水分を持っていかれやすいので、喉に詰まりやすくなり危険なんだぞ!というか、そもそも食事はよく噛んで食べるのが基本だ」などとどうしようもないことが頭の中を過ったが、そんなことは今となってはどうでも良い。
問題なのは今後、同じようなことが起きないようにすることである。
その後、小屋に戻った俺はリンと夕方近くまでシッカリと今後の事について話し合った。

お陰でリンも分かってくれたようなので、とりあえずは心配ないだろうと思う。

と言うことで少し時間が空いた俺は、続いてガイアス様がやっておいた方が良いということを実践してみることにする。

彼は俺が元いた世界に生き返るには、とある試練を何度か挑戦してもらう必要があると言っていた。

そして、その試練というのは結構な確率で危険なものになるらしい。
当然、俺が死んだ原因を作ったガイアス様。
俺がどういった世界にいたのかも知っている。
その結果から考えると、普通においそれと俺が簡単に突破できるような試練などないらしい。
その試練で失敗した場合、本来この世界に住んでいるモノであれば、ガイアス様は特定条件下にて生き返らせることが出来るらしいのだが、俺は本来、この世界にいるべき人間ではないので、生き返らせることが出来ないと言われた。

当然のことだが、俺は死ぬのが絶対に嫌だ。
不幸な事故で今回、このような事に巻き込まれてしまったが「絶対にタダでなんか死んでやるもんか」と思っている。
(と言っても、お金をもらって死ぬのは大丈夫というわけではない)

「じゃー、どうすればいいんだ?」という俺の気持ちを見越したようにガイアス様は人造人間ホムンクルスの作成を提案してきた。

メニューを開き錬金を選択。
そこから魔力操作・創造モンスターゴーレム・アイテム作成・人造人間ホムンクルスの内、ホムンクルスを選択。

『魔石を使用しますか?』

今はないので『いいえ』を選択すると…

途端に俺の体が輝き出した。
予想外に大きな反応となったので、俺はビックリして周囲を見渡すと、隣のリンはジーっと俺を見ているだけだ。
多分だが「彼女にとっては普通の反応なんだろうな」などと思っていると、今度は俺の前に見たことも内容なサークル模様が現れてきた。
恐らくは、ガイアス様が言っていた魔法陣というやつなのだろう。
魔法陣は俺の前に現れた後、独りでに回りだしたかと思うと、俺の体から出ていた輝きを徐々にだが吸収していった。
俺の体の輝きが全て魔法陣に吸収されると同時に、今度は魔法陣は回転をヤメて輝きが徐々に大きく人形を形成していく。
あまりにも見たことがない光景が続き、俺は何も言えずに黙ってみていることしかできなかった。
どのくらいたったのかは定かではないが、次に気づいたとき俺の目の前には、俺と全く一緒の服装をした俺にソックリな人物が目をつぶり仰向けに寝ていた、恐らくこれが人造人間ホムンクルスということなのだろう。

この人造人間ホムンクルス
ガイアス様が言うには、自分の意識を共有することができるらしい。
なので任務などはホムンクルスを使えば問題がないと言われた。
もし仮に操作の途中で重大な事故などに陥ってホムンクルスがなくなった場合、自動的に自分の意識が元の体へと返ってくる仕組みになるらしい。
作成した後は、自分の意識をホムンクルスとリンクをする作業になり、この作業だけはホムンクルスに触れながらではないと出来ないと言われた。
なので先ずはホムンクルスに触れながら自分のメニューを開く必要がある。

そんな事を思いながら俺は目の前のホムンクルスに視線を移してみたのだが…

気持ちが悪いくらいに自分にソックリである。
作成の時に俺のイメージが反映されるらしいのだが、ガイアス様は慣れない内は、自分をイメージするのが手っ取り早く成功するための手段と言っていた。
なので、俺もその言う通りにしたのだが…

目の前には目を瞑った自分がいる。
意識がないらしいが、しっかりと息はしているのだ。
見たことはないのだが、怪我などで植物人間になった人というのはこういった感じなのだろうかとも思ってしまう。
もしくは、俺が近づいて触れるか触れないかという段階になって、いきなり目を開けて「はい!どっきりでーす!!」なんて俺を驚かそうとしているといわれても非常に説得力がある見た目だ。

そんな余計なことを考えていて、俺はビビってしまったなんて口が裂けても言えない。
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