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間違いで殺された…

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拝啓
おだやかな小春日和が続く今日この頃でございますが、お父さん、お母さんはいかがお過ごしでしょうか?
体調の方は大丈夫でしょうか?
こちらの方としては、無事に日々を過ごしております。
つい先ほど、車に轢かれ命を失ったと思った私ですが安心してください。
今まで私が歩んできた人生を神様も見ていてくれたようで、私が再び生き返るチャンスという物をくれるというのです。
これも全てお父さんとお母さんの言いつけを守り真面目に生きてきたお陰だと思っています。
ただ、神様も事情があるようなので、そのまま直ぐに生き返らせるという事は出来ないようですが、大丈夫です。
これまで学業もスポーツも就職先も全て一流と言われてきた私だけに、迅速に結果を残すことが出来ると確信しております。
なお、結果を残すことができ生き返る事が出来た暁には、お祝いを兼ねてパーティーでも開きたいと思いますがいかがでしょうか?
それでは、これ以上時間を取りすぎて目の前の神様の機嫌を損ねてもいけないので、この辺りにしようと思います。
それではまた。
敬具
依田貴大

ーーーーー

「成る程、それで私はこれから、横にいる少女と一緒に異世界へと送られるというわけですか」

そう言いながら依田貴大(イダタカヒロ)は自分の横にいる少女に視線を落とした後、目の前にいる神と名乗る人物(見た目は長い髭を生やした痩せ型のお爺さん)へ再び視線を向けた。

「そうじゃ、本当に申し訳ないと思っておる」

そう言うと神は深々と頭を下げる。
神の話によると、俺の横にいる少女はダンジョンと呼ばれる存在らしい。
最初聞いた時は「このジジイ耄碌し過ぎだろう」と思ったが、俺自身が車に轢かれた事実は確かに俺の中にある事と目の前の老人がいくつか説明出来そうにない不思議な事象を俺に見せてくれた事で、彼が神である事や目の前の少女がダンジョンである事は信じることにした。

それによるとこう言う事だ。
彼女はダンジョンと呼ばれる存在で、神様は彼女をとある世界に送ろうとしたのだが、神様は送る世界を間違えて俺のいる世界に送った。
彼女が送られた場所は不幸にも車道ど真ん中。
いきなり送られた彼女はかってが分からずにボーッとしていたら、車が走ってきた所を俺が発見した。
危ないとすかさず助けようとしたところ、タイミングが最悪のタイミングにより俺も彼女も轢かれてしまう。
その直後、自分のミスに気づいた神様は俺と少女を一緒に回収したというワケらしい。

なんて事はない。
先程、俺が目の前の神様に「耄碌し過ぎだろう」と思った感情は間違いなどではなく至って正確な事だと言うのが判明した。
ただ、だからと言って今この場で大声あげたり感情を爆発させたりしても何にもならない。
ましてや神様はなんとか俺が元の世界に戻る方法があるとまで言ってくれるのだから、先ずはその事から聞きたいと思う。

「それで彼女と一緒に異世界に行った後、私はどうすれば良いのでしょうか?」
「行った後は、しばらくの間彼女を儂と一緒に育てて欲しい」
「はい?彼女を育てる?親になれって事ですか?」
「親とはちと違うな。彼女にはダンジョンとして本格的に活動してもらい。それを儂とお主で手助けしていくと言う事じゃ」

神様の発言内容により俺の中で一気に怪しさが増した。
彼の言う事が全く信じられないと言うのを抜きにして考えてみる。
そうすると彼が神で彼女がダンジョン。
俺はこれから彼らと一緒に異世界へ行きダンジョンを育てると言うことになるのだが…

俺の中でダンジョンという物はゲームなどでやった洞窟的な存在である。
確か、中に入って探険してモンスター出てきたり宝箱をとったりなどという事を繰り返すイメージで、最下層にダンジョンボスなんてのがいたりするはず。
ここから考えると、何と無くだが人類の敵というイメージがするのは俺だけなのだろうか。

俺は神様の言葉の後、返事が出来なくなり下顎を触りながら思いっ切り考え込んでしまった。

「ははは。別に心配せんでも良いぞ。人類の敵になろうと言うつもりは全くない。と言うか、本来ダンジョンと言うのは洞窟でも人でもなく神が持つアイテムに近いものじゃからな」
「アイテムですか?」

俺は思わず目の前の少女に目線を向けると彼女は不思議そうに俺を見返し首を軽く捻る。
本来ならメチャクチャ可愛い感じがするのだろうが、今の状況としては…

「先ず、ダンジョンについての認識であるが、お主の認識で大体は合っておる。正しくは洞窟以外にも城とか塔とか様々な形態もあるからな」
「なるほど…って、もしかして心読めるんですか?」
「そうじゃ」

なんて事だ。
目の前の人物は心が読めると言う事が判明した。
なので、どうやら不敬な事を考えてはいけないらしい。

「ただそうするとモンスターなども発生するんですよね?そう考えると、ヤハリ敵というイメージが強いのですが…」
「お主のイメージに考えて考えてみるとするか。確かにダンジョンと言うのはモンスターも発生したり、ボスがいたりして危険なイメージがあったりするのう。魔王なんかの存在もあるしな。確かにそう言ったダンジョンと言うのは極めて厄介に違いない。だがなぁ、ダンジョンで生まれるモンスターやアイテムなんかは第三者を強くする為の触媒としての役割もあるんじゃよ」

確かにゲームなどではフィールドよりダンジョンの方がモンスターが生まれやすく、そう言った敵を倒す事でレベルアップしたり、伝説の武器なんかもあったりするゲームも俺はやった事がある。

「では、彼女はそう言ったダンジョンと言う事でしょうか?」
「簡単に言うとそう言う事じゃ。と言うかお主の言っているダンジョンと言うのは、大抵、魔王の上に邪神とかそう言う悪い神がいてのぅ、そいつらがダンジョンを悪用しているに過ぎないんじゃよ。それで、儂はそう言った奴らとは別な神じゃから安心してくれんか」

なるほど、俺の中でとりあえずの疑問は解決したように思うし、目の前の神様と彼女が悪人とも思えないし、俺が元の世界に戻るには今のところ目の前の神様を信じるしかない。

という事で、先ずは出来る限り俺は力を貸すことにした。

「宜しくお願いします」
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