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第4話 珠美さん、勇者になる
第4話 その3
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「それで助けて欲しいというのは?」
珠美さんは、出されたお茶を飲み、お菓子を食べながら聞きました。色々な意味で遠慮がありません。
テーブルで相対するのは、村長です。ここまで案内してくれた村人はどこかに去っていきました。きっとNPCだったんでしょうね。……いやいや、NPCであっても、神様にとっては大事な支持母体です。この国の神は、人々に求められて存在するのですから。ありがたや、ありがたや。
さて、村長の答えはこうでした。
「娘が騎士になりたいと言っています」
「なればいいじゃない」
「そんな無謀なこと、私は許しません! だいたい田舎の小娘が騎士になれるはずがない。そうでしょう? 勇者殿」
「え? 私、勇者だけど騎士団じゃないから、わかんない」
「勇者殿から娘に話してくれませんか」
この村長さん、珠美さんの話をあまり聞いていませんね。
「話すのはいいけど……」
「では連れて参ります。あ、お菓子のおかわりは?」
「食べるー」
村長が部屋を出るのと入れ替わりで、使用人らしき人がお菓子を持ってきてくれました。それをはむはむと食べながら待っていると、村長が娘を連れて戻ってきました。
娘……小さいな。
「子供ね」
「一二歳になります。勇者様に挨拶をしなさい」
「はじめまして、勇者様。リタ・マクスウェル・クロスロード三世と申します」
「それは本名?」
「自分で考えました」
「ハンドルってやつね」
「そのように考えて頂いても構いません」
「村長さん、子供なのにしっかりした喋り方するじゃない。偉いじゃない。すごいじゃない」
いや、珠美さん、これはキャラ付けだと思いますよ。いわゆる中二病の一種です。
「それではリタさん。あなたは騎士になりたいって聞いたけれど、本当?」
「はい」
「どうすれば騎士になれるのか、知っているの?」
「はい、もちろんです」
「説明してみて」
「まず学校に入ります」
「学校?」
「はい、騎士団音楽学校です。まず音楽学校の文化祭での主役を目指します。そこで目をつけられて、初舞台生全員でのラインダンスの中でもひときわ目立ったダンスを披露し、鳴り物入りで娘役候補として組に入ります。その後は新人公演で主役の座を射止め、トップスターへの階段を登ります」
これは……。
「……ヅカね」
宝塚歌劇団ですね。根本的に勘違いをしているようです。
彼女の勘違いは、どうやって正してあげればよいでしょうか。難問です。
その時、ドアがばたんと開きました。そこに立っていたのは、女騎士でした。
「ローレンシア皇国騎士団女子部所属のアルル・シャルル・ド・ゴール四世だ! 話は聞いていた!」
「その名前は自分で考えたの?」
「本名だ!」
「本名だって」
珠美さんはリタに耳打ちしました。どうやら本物の騎士の登場のようです。
「おお……騎士殿。騎士殿は、娘の心を変えてくださるというのか」
「村長、このような事例は、騎士団にとっては慣れたこと。お任せください」
「なにとぞ、なにとぞ、娘に現実を教えてやってください」
「娘さん、条件を与えよう」
「なんでしょうか」
「そこにいらっしゃる勇者殿——」
「珠美です」
「タマミ殿と勝負しなさい。勝負して買ったら、騎士訓練生として進言しよう」
「「ええっ!」」
珠美さんとリタが同時に声をあげました。
珠美さんにとっては寝耳に水ですし、リタからすれば勇者に敵うはずがありません。
「おお! それは妙案! さすがは騎士殿!」
村長は、この方法で納得するようです。万が一、リタが勝ったらどうするんでしょうね。
珠美さんは、出されたお茶を飲み、お菓子を食べながら聞きました。色々な意味で遠慮がありません。
テーブルで相対するのは、村長です。ここまで案内してくれた村人はどこかに去っていきました。きっとNPCだったんでしょうね。……いやいや、NPCであっても、神様にとっては大事な支持母体です。この国の神は、人々に求められて存在するのですから。ありがたや、ありがたや。
さて、村長の答えはこうでした。
「娘が騎士になりたいと言っています」
「なればいいじゃない」
「そんな無謀なこと、私は許しません! だいたい田舎の小娘が騎士になれるはずがない。そうでしょう? 勇者殿」
「え? 私、勇者だけど騎士団じゃないから、わかんない」
「勇者殿から娘に話してくれませんか」
この村長さん、珠美さんの話をあまり聞いていませんね。
「話すのはいいけど……」
「では連れて参ります。あ、お菓子のおかわりは?」
「食べるー」
村長が部屋を出るのと入れ替わりで、使用人らしき人がお菓子を持ってきてくれました。それをはむはむと食べながら待っていると、村長が娘を連れて戻ってきました。
娘……小さいな。
「子供ね」
「一二歳になります。勇者様に挨拶をしなさい」
「はじめまして、勇者様。リタ・マクスウェル・クロスロード三世と申します」
「それは本名?」
「自分で考えました」
「ハンドルってやつね」
「そのように考えて頂いても構いません」
「村長さん、子供なのにしっかりした喋り方するじゃない。偉いじゃない。すごいじゃない」
いや、珠美さん、これはキャラ付けだと思いますよ。いわゆる中二病の一種です。
「それではリタさん。あなたは騎士になりたいって聞いたけれど、本当?」
「はい」
「どうすれば騎士になれるのか、知っているの?」
「はい、もちろんです」
「説明してみて」
「まず学校に入ります」
「学校?」
「はい、騎士団音楽学校です。まず音楽学校の文化祭での主役を目指します。そこで目をつけられて、初舞台生全員でのラインダンスの中でもひときわ目立ったダンスを披露し、鳴り物入りで娘役候補として組に入ります。その後は新人公演で主役の座を射止め、トップスターへの階段を登ります」
これは……。
「……ヅカね」
宝塚歌劇団ですね。根本的に勘違いをしているようです。
彼女の勘違いは、どうやって正してあげればよいでしょうか。難問です。
その時、ドアがばたんと開きました。そこに立っていたのは、女騎士でした。
「ローレンシア皇国騎士団女子部所属のアルル・シャルル・ド・ゴール四世だ! 話は聞いていた!」
「その名前は自分で考えたの?」
「本名だ!」
「本名だって」
珠美さんはリタに耳打ちしました。どうやら本物の騎士の登場のようです。
「おお……騎士殿。騎士殿は、娘の心を変えてくださるというのか」
「村長、このような事例は、騎士団にとっては慣れたこと。お任せください」
「なにとぞ、なにとぞ、娘に現実を教えてやってください」
「娘さん、条件を与えよう」
「なんでしょうか」
「そこにいらっしゃる勇者殿——」
「珠美です」
「タマミ殿と勝負しなさい。勝負して買ったら、騎士訓練生として進言しよう」
「「ええっ!」」
珠美さんとリタが同時に声をあげました。
珠美さんにとっては寝耳に水ですし、リタからすれば勇者に敵うはずがありません。
「おお! それは妙案! さすがは騎士殿!」
村長は、この方法で納得するようです。万が一、リタが勝ったらどうするんでしょうね。
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