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第一章 王国動乱篇

第十六話 教鞭①

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 魔術とは、魔力を用いた術の総称である。

 その発動の仕方にはいくつか種類がある。

 魔法陣が必要だったり、無詠唱だったり、詠唱が必要だったり。

 これはあくまで手順の違いであり、どれが最適だと定められているわけではない。それぞれに利点と欠点が明確に存在する。


 簡単に説明しよう。


 魔法陣とは、その魔術の構成要素だ。どんな効果か、どう動くのか、仕組みはどうなっているか。魔術を発動するための基盤と言える。

 詠唱は、魔法陣の効果を発現させるトリガーになる。魔法陣だけでは、魔術は完成しない。そこに詠唱が加わり、初めて発動するのだ。魔力を込めねば話にはならないが。

 つまり魔法陣で元から定められている魔術の基盤を顕現、そして詠唱で発射。これが基本的な魔術発動の手順だ。

 例えるなら、そうだな。
 弓を引いている状態の射手がいるとする。魔法陣は引かれている状態の弓そのものであり、詠唱は握っている手、となる。


 しかし、無詠唱は違う。
 これら全てを初めから自分の頭の中で構成する必要があるのだ。

 魔法陣もなし、詠唱もなし。であれば、魔術の仕組みや構成をイメージで補完しなければならない。当然だ。練り上げる量が違うため難易度も桁違いだ。
 

 後は、そうだな。魔法陣を省略し、詠唱だけで行使するやり方もある。結局魔法陣の分を自分で理解していないといけないが。


 そしてそれぞれの特徴だが、魔法陣は、バレる。何を使うか、どんな構成か。相手によっては対抗する魔術で相殺しにくる場合もある。だが、使うと魔術発動は圧倒的に楽である。

 詠唱でも何をするかバレる可能性がある。魔法陣より多少はましだが。あと、発動が楽。

 無詠唱は、一々構成からイメージする必要があるため、面倒臭い。簡単なものなら私のレベルだと、特に何も感じないが。
 複雑な魔術程無詠唱は難しくなる。全盛期の私ですら、無詠唱で放てない魔術もあるのだ。難易度の高さがうかがえることだろう。


「っていうのがー、まおーさまの作り上げたー、最初の魔術でー」


 ということで、私は今ライラと共に魔術の訓練場にいる。欠片を集めるまで、と息巻いて王都へと行ったが、たったの一日で戻ってきてしまった。だって思った以上に人間、ダメダメで。私は悪くない。

 ダメダメというより、効率が悪い。あのまま手当たり次第に話を聞いていては、時間がいくらあっても足りない。優秀な人間を見つけるのも手間…………あ。

 優秀な人間、いたじゃないか。それも一番最初に出会った。

 メリウスだ。あいつは確かAランク冒険者とか言っていたな。つまりはそれなりの実力が保証されているわけだ。


 あの時は推薦状で頭が一杯だったんだ。だって、ほら。早く迷宮行きたかったし。


 まあ、過ぎてしまったことは仕方がない。結局ライラに教えて貰う、という方向になったが効率が良いのは確かだ。

 実際人間がどの程度の力を持っているのか、いまだ把握しきれていない。であれば、生き続けている且つ、実力が分かっているライラに聞く方が良いに決まっている。戻ってくる時間はかかったが、誤差だ誤差。


「────のでー、人間のー……って聞いてるんですかー、まおーさまー」

「……ん、ああ。聞いてる聞いてる。寝小便が治らないんだろ?」

「そーんなこと言ってませーーーーん!」


 周囲に数十にも及ぶ炎の槍を浮かばせ怒りを表現するライラ。やはり憤怒の権能を持ってるだけあって怒りの表現が上手い。面白い奴だな、はは、熱い熱い投げつけるんじゃあない。


「私じゃなかったらそれなりに痛手を負っていたぞ」

「信頼の表れですぅー」


 確かに、この程度じゃ数万発撃ったところで死にはしない。目覚めてから唯一私と魔術で戦った存在だからな、説得力が違う。じゃれあいにしては中々力が入っていると言えるが。


「だが、一発は一発だ。【お返し】といこうか」
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