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第十九話 甞めるなよ
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へスカル国で行なわれる、帝国と独裁国家による極秘会談。
帝国女王のもとに届けられた一通の書状が、全ての始まりであった。アンジェリカが憤怒したその書状の送り主は、ジエーデル国外交官である。
彼の送った書状の内容は、両国間での休戦協定を結ぶための、交渉を行ないたいというものだった。
これに激怒したアンジェリカ。書状を読み、彼女が激怒した理由はこれである。独裁国家ジエーデルは、彼女にとって憎むべき仇敵。ジエーデルが侵攻を開始した事により、帝国は二度に渡る戦争を戦い、多くの犠牲を払った。
そして彼女は、ジエーデルの侵攻をきっかけに、かけがえのない存在を失った。
自国の領土拡大のために突然侵攻を開始して、自分達から戦端を開いておきながら、今度は自分達の都合で戦いを終わらせようとしている。だから彼女は、怒りを露わにした。
絶対の仇敵であり、滅ぼすべき国家。彼女にとっても、帝国の民にとっても、そして、あの男にとっても・・・・・・。
憎しみの炎を燃やす彼女達に、この休戦の申し込みは、彼女達の怒りを誘っているとしか思えない。外交官セドリックは、それを承知で休戦を持ちかけたのである。
彼の狙いは、戦争状態と言える両国間の関係を、一先ず落ち着かせる事にある。帝国と交渉し、休戦協定を結ぶ事で、自国の宿敵を排除しようと画策しているのだ。
ヴァスティナ帝国は、ジエーデル国の宿敵エステラン国とも戦争状態にある。小国でありながら、二国と戦争状態にある帝国は、どちらか一方との戦いに、全力を注ぎたいと考えている。
どちらかと言えば、帝国はジエーデルではなく、もう一つの宿敵であるエステラン国と決着を付けたいと考えていた。帝国軍を含む、南ローミリアの戦力の多くは、ジエーデルとエステランの侵攻に備え、戦力をへスカルとチャルコの国境線に配置している。そのため、ジエーデルやエステランに比べ、元々の戦力が少ない南ローミリアの国家群は、唯でさえ少ない戦力を二分して、それぞれの国境線に置いてしまっているのだ。
現状の南ローミリアの戦力では、どちらの国と戦っても、防衛線を展開して撃退するのが精々であり、戦争状態の解決は不可能である。帝国の望む戦争状態の解決とは、敵対国家であるこの二国を滅ぼす事であるため、膠着状態となってしまっている現状を、如何にか打開したいのである。
よって、ジエーデルとの休戦交渉は、帝国にとってまたとない好機であった。これを上手く利用する事により、敵対国家の一つであるエステラン国に対して、全戦力を投入する事が可能になる。そうなれば、今度は帝国の反撃が始まる。
帝国の侵攻が順調に進めば、エステラン国を滅ぼす事も夢ではない。対ジエーデル戦に戦力を割いている、今のエステラン国が相手であれば、帝国が勝利を収める確率は高いだろう。
ジエーデル外交官セドリック・ホーキンスの戦略は、順調に進行している。帝国はこの誘いを断るわけにはいかず、交渉が無事終われば、彼の思惑通りの形が完成するだろう。
両国の戦争状態を停止した後、帝国の軍事力を利用する事により、ジエーデルにとっても宿敵であるエステラン国を、今度こそ滅亡させる事が出来る。その後は、豊かな土地に恵まれた南ローミリアを、ジエーデル国が支配する番だ。
今までジエーデル国は、エステラン国の存在もあって、南ローミリアへの侵攻に十分な戦力を投入できなかった。実際、ジエーデルの侵攻軍が南ローミリアの連合軍と戦った際、エステランはジエーデルに対して進行を開始した。そのせいで、ジエーデルの侵攻は失敗に終わっている。
全ては順調に推移している。後は、明日の交渉を待つのみ。
これ以上、邪魔者が現れない限り、全てはセドリックの思惑通りだ。
帝国女王のもとに届けられた一通の書状が、全ての始まりであった。アンジェリカが憤怒したその書状の送り主は、ジエーデル国外交官である。
彼の送った書状の内容は、両国間での休戦協定を結ぶための、交渉を行ないたいというものだった。
これに激怒したアンジェリカ。書状を読み、彼女が激怒した理由はこれである。独裁国家ジエーデルは、彼女にとって憎むべき仇敵。ジエーデルが侵攻を開始した事により、帝国は二度に渡る戦争を戦い、多くの犠牲を払った。
そして彼女は、ジエーデルの侵攻をきっかけに、かけがえのない存在を失った。
自国の領土拡大のために突然侵攻を開始して、自分達から戦端を開いておきながら、今度は自分達の都合で戦いを終わらせようとしている。だから彼女は、怒りを露わにした。
絶対の仇敵であり、滅ぼすべき国家。彼女にとっても、帝国の民にとっても、そして、あの男にとっても・・・・・・。
憎しみの炎を燃やす彼女達に、この休戦の申し込みは、彼女達の怒りを誘っているとしか思えない。外交官セドリックは、それを承知で休戦を持ちかけたのである。
彼の狙いは、戦争状態と言える両国間の関係を、一先ず落ち着かせる事にある。帝国と交渉し、休戦協定を結ぶ事で、自国の宿敵を排除しようと画策しているのだ。
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どちらかと言えば、帝国はジエーデルではなく、もう一つの宿敵であるエステラン国と決着を付けたいと考えていた。帝国軍を含む、南ローミリアの戦力の多くは、ジエーデルとエステランの侵攻に備え、戦力をへスカルとチャルコの国境線に配置している。そのため、ジエーデルやエステランに比べ、元々の戦力が少ない南ローミリアの国家群は、唯でさえ少ない戦力を二分して、それぞれの国境線に置いてしまっているのだ。
現状の南ローミリアの戦力では、どちらの国と戦っても、防衛線を展開して撃退するのが精々であり、戦争状態の解決は不可能である。帝国の望む戦争状態の解決とは、敵対国家であるこの二国を滅ぼす事であるため、膠着状態となってしまっている現状を、如何にか打開したいのである。
よって、ジエーデルとの休戦交渉は、帝国にとってまたとない好機であった。これを上手く利用する事により、敵対国家の一つであるエステラン国に対して、全戦力を投入する事が可能になる。そうなれば、今度は帝国の反撃が始まる。
帝国の侵攻が順調に進めば、エステラン国を滅ぼす事も夢ではない。対ジエーデル戦に戦力を割いている、今のエステラン国が相手であれば、帝国が勝利を収める確率は高いだろう。
ジエーデル外交官セドリック・ホーキンスの戦略は、順調に進行している。帝国はこの誘いを断るわけにはいかず、交渉が無事終われば、彼の思惑通りの形が完成するだろう。
両国の戦争状態を停止した後、帝国の軍事力を利用する事により、ジエーデルにとっても宿敵であるエステラン国を、今度こそ滅亡させる事が出来る。その後は、豊かな土地に恵まれた南ローミリアを、ジエーデル国が支配する番だ。
今までジエーデル国は、エステラン国の存在もあって、南ローミリアへの侵攻に十分な戦力を投入できなかった。実際、ジエーデルの侵攻軍が南ローミリアの連合軍と戦った際、エステランはジエーデルに対して進行を開始した。そのせいで、ジエーデルの侵攻は失敗に終わっている。
全ては順調に推移している。後は、明日の交渉を待つのみ。
これ以上、邪魔者が現れない限り、全てはセドリックの思惑通りだ。
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