300 / 875
第十五話 野望
5
しおりを挟む
大陸の各地で、様々な野望が燃えている。
このローミリア大陸の今を代表する国家。ゼロリアス帝国、ホーリスローネ王国、ジエーデル国などの国は、この先必ず戦争を経験する事だろう。
ある者は、己の目指す未来のために。またある者は、己の信じる正義のために。戦いという道も視野に入れ、思案している。
いつの日か、この大国同士が衝突する事もあるだろう。激しい戦争になるのは、目に見えている。
「王子、準備が整いました」
「遅い!準備にどれだけ無駄な時間をかけているのだ!!」
「もっ、申し訳ありません・・・・・」
三国以外にも、野望を持つ者たちは多い。この王子もそうだ。
元々彼には野望と呼べる者はなかった。ただ、自分の地位を利用し、好き勝手な人生を送る事が出来れば、それで満足であったのである。しかし去年、ある事件を経験した事により、彼には一つの野望が生まれたのである。
「何という体たらくだ。これでもし負けたら、責任は貴様たちにある事を忘れるな!」
「・・・・・・はっ」
怒鳴られている兵士の一人は、内心の怒りを堪え、王子の横暴に耐えている。周りの兵士たちも、内心の怒りを胸に秘め、そして思う。
「どうしてこんな自分勝手な愚か者の下で、これから命を懸けて戦わなければならないのだ」と。
「奴らには必ず報いを受けて貰う。殺すだけでは足りない、帝国参謀長とあの剣士は生かして私の前に連れて来るのだ。よいな!」
王子の名はメロース。エステラン国の第二王子である。
長い金髪が特徴的な、見た目だけなら美形の青年である。だが、彼の内面はエゴの塊で、御世辞でも好人物と呼びたくない人間だ。
国民からも兵士からも嫌われており、今回の戦いで、メロースが最高指揮官になると皆が知った時は、従軍した兵士のほとんどが、天を仰いで神に祈った。
「どうか、メロースを病にでもして下さい」。重い病にでもかかれば、戦争に行くのは不可能になるので、メロースが最高指揮官になるのは回避できる。そのため、誰もが神に祈ったのである。
それほどまでに、メロースはエステラン国の多くの人間に嫌われ、恨まれてさえいる。もしもここに、赤い糸を解けば恨みの相手を地獄に流せる藁人形でもあれば、誰も彼もが躊躇いなく糸を解くかも知れない。人を呪わば穴二つだとしても、絶対にこいつだけは地獄に流したいと思うだろう。
それもこれも、メロースが今まで行なった、自分勝手で非道な行ないの被害を受けていれば、無理もない話である。
「決して敗北は許さん!臆病風に吹かれて逃げ出す者は処刑する!必ずやあの忌まわしき国を攻め滅ぼし、私の前に奴らを跪かせてやる!!」
憎しみに燃えるメロース。彼はあの時受けた仕打ちを、未だに根に持っているのである。
だが彼は知らない。メロースのあの事件の事が、民たちの間で密かに話され広められて、話を聞いた誰もが好い気味だと思い、中には爆笑する者さえいた事を。
(いっそ帝国が、この馬鹿王子を討ち取ってくれれば・・・・・・)
エステラン王の命令であるから、エステラン軍の兵士たちは仕方なく従軍し、仕方なく戦うのである。正直、全体の士気は最悪だ。
エステラン軍の相手は、南ローミリアの盟主ヴァスティナ帝国である。帝国と戦う事になった切っ掛けは、このメロース王子にある。
メロースは帝国に恨みを持っている。彼は自分の父親であるエステラン王のもとへ赴き、ヴァスティナ帝国討伐を訴えた。帝国は現在、エステランにとって隣国のジエーデル国に次ぐ、敵対関係にある国家である。
メロースは自らの恨みを晴らすため、帝国の危険性を王に説いた。帝国をこのまま野放しにしておけば、いずれはジエーデル国と協力し、エステランへ侵攻を開始するかも知れない。それを防ぐためには、今攻め滅ぼしておかなければならないと、そう説いたのである。
メロースの説いた言葉に間違いはないが、王はこの時期に帝国と戦う事を考えてはいなかった。今の季節は冬であり、ゼロリアス程の過酷な環境ではないにしろ、戦争をするには適さない季節であるからだ。
だが王は、メロースのこの訴えを聞き入れ、彼に兵を与えたのである。これには、王の密かな考えがあるのだが、その事に気付かず、何も知らないメロースは、恨みの相手を滅ぼせると意気込んでいた。
王は自分の息子を、とある計画に利用したのである。
そして、メロースはともかく、従軍した兵たちはこの出兵には何かあると、薄々気が付いていた。
「裁きを下す時は来た。全軍に出陣を命じる!」
不満を抱える兵士たち。士気は最悪で、とても戦いができる状態ではない。この状態で戦えば、勝利の可能性は限りなく低い。
しかも相手は、あのヴァスティナ帝国であるのだ。
「待っていろ、必ずこの手で罰を与えてやるぞ」
王子メロースのやる気に反して、兵士たちの士気の低下は著しい。
それでもエステランの兵士たちは、戦わなければならない。何故なら彼らは、国と王に忠誠を誓った兵士である。それが彼らの義務であり、存在意義なのだ。
このローミリア大陸の今を代表する国家。ゼロリアス帝国、ホーリスローネ王国、ジエーデル国などの国は、この先必ず戦争を経験する事だろう。
ある者は、己の目指す未来のために。またある者は、己の信じる正義のために。戦いという道も視野に入れ、思案している。
いつの日か、この大国同士が衝突する事もあるだろう。激しい戦争になるのは、目に見えている。
「王子、準備が整いました」
「遅い!準備にどれだけ無駄な時間をかけているのだ!!」
「もっ、申し訳ありません・・・・・」
三国以外にも、野望を持つ者たちは多い。この王子もそうだ。
元々彼には野望と呼べる者はなかった。ただ、自分の地位を利用し、好き勝手な人生を送る事が出来れば、それで満足であったのである。しかし去年、ある事件を経験した事により、彼には一つの野望が生まれたのである。
「何という体たらくだ。これでもし負けたら、責任は貴様たちにある事を忘れるな!」
「・・・・・・はっ」
怒鳴られている兵士の一人は、内心の怒りを堪え、王子の横暴に耐えている。周りの兵士たちも、内心の怒りを胸に秘め、そして思う。
「どうしてこんな自分勝手な愚か者の下で、これから命を懸けて戦わなければならないのだ」と。
「奴らには必ず報いを受けて貰う。殺すだけでは足りない、帝国参謀長とあの剣士は生かして私の前に連れて来るのだ。よいな!」
王子の名はメロース。エステラン国の第二王子である。
長い金髪が特徴的な、見た目だけなら美形の青年である。だが、彼の内面はエゴの塊で、御世辞でも好人物と呼びたくない人間だ。
国民からも兵士からも嫌われており、今回の戦いで、メロースが最高指揮官になると皆が知った時は、従軍した兵士のほとんどが、天を仰いで神に祈った。
「どうか、メロースを病にでもして下さい」。重い病にでもかかれば、戦争に行くのは不可能になるので、メロースが最高指揮官になるのは回避できる。そのため、誰もが神に祈ったのである。
それほどまでに、メロースはエステラン国の多くの人間に嫌われ、恨まれてさえいる。もしもここに、赤い糸を解けば恨みの相手を地獄に流せる藁人形でもあれば、誰も彼もが躊躇いなく糸を解くかも知れない。人を呪わば穴二つだとしても、絶対にこいつだけは地獄に流したいと思うだろう。
それもこれも、メロースが今まで行なった、自分勝手で非道な行ないの被害を受けていれば、無理もない話である。
「決して敗北は許さん!臆病風に吹かれて逃げ出す者は処刑する!必ずやあの忌まわしき国を攻め滅ぼし、私の前に奴らを跪かせてやる!!」
憎しみに燃えるメロース。彼はあの時受けた仕打ちを、未だに根に持っているのである。
だが彼は知らない。メロースのあの事件の事が、民たちの間で密かに話され広められて、話を聞いた誰もが好い気味だと思い、中には爆笑する者さえいた事を。
(いっそ帝国が、この馬鹿王子を討ち取ってくれれば・・・・・・)
エステラン王の命令であるから、エステラン軍の兵士たちは仕方なく従軍し、仕方なく戦うのである。正直、全体の士気は最悪だ。
エステラン軍の相手は、南ローミリアの盟主ヴァスティナ帝国である。帝国と戦う事になった切っ掛けは、このメロース王子にある。
メロースは帝国に恨みを持っている。彼は自分の父親であるエステラン王のもとへ赴き、ヴァスティナ帝国討伐を訴えた。帝国は現在、エステランにとって隣国のジエーデル国に次ぐ、敵対関係にある国家である。
メロースは自らの恨みを晴らすため、帝国の危険性を王に説いた。帝国をこのまま野放しにしておけば、いずれはジエーデル国と協力し、エステランへ侵攻を開始するかも知れない。それを防ぐためには、今攻め滅ぼしておかなければならないと、そう説いたのである。
メロースの説いた言葉に間違いはないが、王はこの時期に帝国と戦う事を考えてはいなかった。今の季節は冬であり、ゼロリアス程の過酷な環境ではないにしろ、戦争をするには適さない季節であるからだ。
だが王は、メロースのこの訴えを聞き入れ、彼に兵を与えたのである。これには、王の密かな考えがあるのだが、その事に気付かず、何も知らないメロースは、恨みの相手を滅ぼせると意気込んでいた。
王は自分の息子を、とある計画に利用したのである。
そして、メロースはともかく、従軍した兵たちはこの出兵には何かあると、薄々気が付いていた。
「裁きを下す時は来た。全軍に出陣を命じる!」
不満を抱える兵士たち。士気は最悪で、とても戦いができる状態ではない。この状態で戦えば、勝利の可能性は限りなく低い。
しかも相手は、あのヴァスティナ帝国であるのだ。
「待っていろ、必ずこの手で罰を与えてやるぞ」
王子メロースのやる気に反して、兵士たちの士気の低下は著しい。
それでもエステランの兵士たちは、戦わなければならない。何故なら彼らは、国と王に忠誠を誓った兵士である。それが彼らの義務であり、存在意義なのだ。
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる