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第四十五話 切り札
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ギルバートの作戦によって、グラーフ同盟軍は持てる戦力の全てを結集し、全軍で総攻撃を開始した。
先鋒を務めたのは、ヴァスティナ帝国国防軍の精鋭達である。その中でも一番槍を決め込んだのは、帝国国防軍の最高司令官たる、「帝国の狂犬」ことリクトビア・フローレンスだった。
「あっはははははははははははははっ!!!」
邪悪な笑みと共に狂った笑い声を上げ、構えた散弾銃を乱射しまくるリックは、目に付く怪物の放つ触手を次々と吹き飛ばしていった。
「⋯⋯⋯⋯ちっ! 弾切れかよ!?」
調子に乗って気分良く撃ちまくったはいいものの、直ぐに弾切れとなり、焦るリックは懐から予備の弾丸を取り出し装填を始める。その隙を突いて、触手の一本が彼に瞬時に襲い掛かった。
反応が遅れ、回避が間に合わないリックのもとに伸びる触手。獲物を喰らうため、触手が持つ不気味な口が開きかける。その瞬間、リックへと向かっていた触手を、突如現れた火炎が焼き尽くす。
彼の危機を救ったのは、十文字槍と共に現れたレイナだった。リックを襲った触手を炎魔法で焼き払い、安堵の息を吐いて見せた彼女だったが、無事な彼の姿を見るや否や怒りを露わにする。
「閣下!! 前に出過ぎです!」
「うっ⋯⋯⋯⋯、ごめん」
「私の傍を絶対に離れないで下さい! もしも閣下に何かあったら、ヴィヴィアンヌに何て言えば⋯⋯⋯⋯」
リックの身を案じ、より一層彼の傍を離れまいと心に誓うレイナ。心配する彼女の気迫に負けたリックは、しゅんとして縮こまってしまった。
そんな二人に別の触手が襲い掛かろうとするが、今度は神速の速さで金髪の剣士が現れ、伸びてきた触手を自慢の剣で一刀両断して見せた。息一つ乱す事なく、一撃で触手を切り伏せた剣士は、勿論クリスである。
「おい!! 油断すんじゃねぇ!」
「油断などしていない。お前が助けに入らなくとも、私一人で十分だった」
「けっ! 助けてやったのに可愛くねぇ女だぜ」
先陣を切ったリックの傍には、帝国国防軍が誇る二人の英雄が並び立ち、彼らに率いられた精鋭が続く。最高司令官であるリックや、英雄であるレイナやクリスに後れまいと、南ローミリア最強の兵士が得物を手に存分に暴れまわる。
ある者は小銃で正確な射撃を行ない、ある者は短機関銃を乱射して、またある者は手榴弾を投げて触手を吹き飛ばす。レイナとクリスが率いる、烈火騎士団と光龍騎士団の精鋭達もまた、槍と剣を武器に次々と触手を仕留めにかかる。彼らは勇猛果敢に危険な接近戦を挑み、連携しつつほぼ無傷で触手を斬り付け、時に得物の切っ先を突き刺していく。
攻撃を受けた触手は力尽き、怪物らしくと言うべきか、緑色の体液を撒き散らしながら地面に倒れ伏す。しかしそれは一時的な状態で、死んだように見える触手は傷の再生を始め、何事もなかったように起き上がってまた襲い掛かる。
「くそっ!! わかっちゃいたが切りがねぇ!」
「ぼやくな破廉恥剣士! 敵の動きに集中しろ!」
「お前こそ、リックがどっか行っちまわないように気を付けとけ! だから夜戦で怪我なんかすんだよ!」
「それとこれとは関係ない! お前こそ閣下から目を離していただろ!」
「何だとこの野郎!! 今ここで決着つけるか、ああん!?」
「面白い、受けて立つぞ!!」
口で喧嘩はしつつも、レイナとクリスは一騎当千の戦い振りを披露して、一瞬の内に触手を切り伏せていく。互いに死角を守り合い、怒鳴り合いながらも舞う様に得物を振るい、無数の触手を一時的だが戦闘不能にしていった。
レイナとクリスが存分に己の武を振るう事により、道が切り開かれる。帝国国防軍は、二人が突破してできた道を突き進み、怪物が放つ触手に途切れる事のない攻撃を加え続けた。レイナとクリスの後に全軍が続く中、リックもまた一人の兵士となって、彼らと共に戦場を駆け続けていく。
「あはっ、あっはははははははははは!!! こいつは俺からの奢りだ!」
再び散弾銃を乱射し、今度は懐から手榴弾も取り出して、歯で安全ピンを引き抜き投擲する。放たれた散弾と手榴弾の爆発で、目の前の触手を吹っ飛ばしたリックだったが、ここで散弾銃の弾を使い切ってしまった。
「閣下、これを!!」
「ホブスか!? 良いところに!」
弾切れとなった散弾銃を投げ捨てたリックに向かって、持ってきた突撃銃を投げつける兵士が現れた。投げ渡された突撃銃を受け取ったリックは、新たに現れた触手に向かって銃を連射する。リックに新たな武器を渡したのは、最近彼の傍で参謀的立ち位置に就いたホブスであった。
リック様に持ってきた銃を渡し、ホブスも自分の突撃銃を構えて彼と共に発砲を始める。他の兵達も二人の射撃に続き、一斉射撃で触手を蜂の巣にしていった。
「助かった。ちょうど弾切れで困ってたんだ」
「どうせそうなるだろうと思って持ってきたんです。まったく貴方は、前線に出るといつも考えなしで武器を使い潰す」
「だって、その方が楽しいし⋯⋯⋯⋯。それよりお前、態々こんな危ないところに来なくてもよかったのに」
「自分は閣下の相談役兼護衛兼パシリだと言ったのは閣下ご自身です。貴方が向かうところ、例えどんな危険が待っていようと付いて行くのが自分の役目ですから」
「流石、ガレスさんの息子なだけある。あの人に似て勇敢だ」
「勇敢だなんてとんでもない。家じゃただの飲んだくれ親父でしたよ」
リックにとってホブスは、かつて共に戦った救国の英雄の息子だ。初陣のリックを助け、彼の作戦成功の為に戦い散ったヴァスティナ帝国軍の兵士ガレス。ホブスはその彼の息子なのである。
父親と同じように勇猛果敢に、あの初陣の時のガレスと同じように、彼もまた様々な面でリックを助けてくれている。隣に立って共に戦うホブスに、初陣で共に戦ったガレスの姿がリックだけには重なって見えた。
初陣で散っていった英雄達の事を、リックは今でも忘れてはいない。彼らが命を捨てて守ったものの為にも、リックは戦い続け、これからの戦争に勝利し続けなければならない。父親であったガレスを失った息子のホブスという存在は、リックにそれを訴え続けている。
「ガレスさんみたいに俺に付いて来てくれると助かる。頼りにしてるぞ」
「ミカヅキ隊長やレッドフォード隊長に比べたら大した事ありませんが、全力でやらせて貰いますよ。自分が閣下と一緒に戦うのを、死んだ親父も望んでると思うんで」
「だったらもっと派手にいこう。先に逝ったガレスさんが羨ましがるくらいにな」
「そいつはいいや。自分があの世に行った時の良い土産話になる」
父であったガレスの死は、リックと共に危険な作戦に参加した事が原因である。覚悟していたとはいえ、父親であった彼の死に、当時のホブスは涙を流して悲しんだ。それでもホブスは、父の死の原因を作ったリックを恨む事はなかった。
業火戦争と呼ばれるあの戦争は、リックが考えた一発逆転の策によって、ヴァスティナ帝国の勝利という形で幕を閉じた。結果、多くの犠牲を払いながらも、帝国は滅亡の危機から救われたのである。
もし、あの戦争にリックが居なければ、ガレスどころか自分も死んでいただろう。確かに父の死は悲しかったが、勝利していなければどの道皆生きてはいなかった。ホブスにとってリックは、父親を死に追いやった英雄ではなく、自らも傷付きながら戦い、己の手で救える命を救った英雄なのである。
そんな英雄を、一体どうして恨む事が出来るだろう。寧ろ感謝しているくらいだ。父と同じように帝国軍の兵士として数々の戦いに参加し、これまでの功績を認められてリック直轄の兵士となった時など、飛び上がりそうな程に大喜びしたものである。
これからは彼の傍で、救って貰った恩を返す事が出来る。彼と共に戦った父のように、自分も彼と戦場を共にしたい。その想いを持つガレスはリックに忠実で、こうして今も彼のために駆け付けた。
リックもホブスも、相手が化け物だろうが何だろうが関係なく、戦意は十分である。弾丸を撃ち尽くし、銃身が焼き付いても、勝つまで戦い続ける覚悟だ。
お互いに頼もしさを感じつつ、リックはホブスと共に前進を続けようとする。眼前に広がるは、息絶える事のない夥しい数の不気味な触手。そんな触手に一切の恐れを感じる事なく、英雄に率いられた精鋭達は躊躇わず銃口を前に向けた。
そんな彼らのもとに、後方から頼もしい援軍が駆けつける。ありったけの武器と弾薬、有り余る戦闘欲を持って戦場に駆け付けるは、リック直轄の愚連隊であった。乗車している戦闘車輌をかっ飛ばし、我先にと戦場に急行した彼らは、リックのもとにやって来るなり車輌を急停止させ、全身武器満載の状態で車輌から降り始める。
「隊長! 俺らを置いてくなんざひでぇですぜ!」
「やっと来たな戦争中毒共! 待ちくたびれた!」
「獲物がわんさかいやがるじゃないですか。弾薬を箱ごと持ってきて正解だったぜ」
何台もの戦闘車輌に乗って現れた愚連隊は、ヴァスティナ帝国国防軍最古参の精鋭であり、最もタフでイカレた戦闘狂集団である。
リックのもとに駆け付けた部隊の名は、鉄血部隊。部隊長であるヘルベルトが、戦闘準備万端な屈強な兵士達を連れ、髭面をにやけさせながら戦場を見渡す。数え切れない無数の触手と、その遥か後方に聳え立つ巨大な怪物。倒しても倒しても蘇る、不気味な触手と戦う最前線に、この男達は満足そうに笑みを浮かべていた。
「勝てる気がしねぇデカい化け物に、気色の悪い触手共が相手か。久々に絶望的な戦局って奴だな。これだから隊長の下で戦争するのは止められねぇ」
ヘルベルト達は戦争なしでは生きられない、戦争中毒者の戦闘狂の集まりである。彼ら鉄血部隊は、戦場で命を落とす事を恐れない。ただ戦いを愉しみたいのである。その戦いが絶望的であればある程、彼らにとっては圧倒的至福の戦争だ。
リックはヘルベルト達に、最高の戦争を用意してくれる。だからこそ彼らはリックに付き従い、彼の下で戦場を暴れまわる。鉄血部隊全員、戦いに飢えた実戦経験豊富な元傭兵であるため、こんな戦場では彼らほど頼もしい存在はいないだろう。
戦闘狂の元傭兵達は、銃火器完全武装の状態で下車し、迅速に戦闘態勢を取って前線に展開を始める。突撃銃、短機関銃、狙撃銃、機関銃など、それぞれの得物を手にする彼らの瞳には、殺意と狂気が溢れていた。しかも彼らは、こんな状況下でも笑っていた。獲物に飢えた、邪悪な笑みを浮かべて⋯⋯⋯⋯。
「おいおい見ろよ! 触手って聞いたから何かと思えば、デカいだけの白いミミズってか!?」
「あれが人間を丸呑みするらしいぜ。ミミズだと馬鹿にして食われんなよ」
「殺しても何回も蘇るらしいぞ。飽きるまで殺したい放題だな」
「違いねぇ! こういうのは俺達向けの相手だ」
瞬時に展開を終えた鉄血部隊が、一斉に銃火器の引き金を引いて発砲を開始した。弾薬の節約など考えない一斉射撃で、目の前に立ちはだかっている触手の壁を蜂の巣にし、容赦なく薙ぎ倒す。それを見ていたリックとホブスも、彼らに続いて銃撃を再開する。
鉄血部隊の登場によって、帝国国防軍の兵士達が更に湧き立つ。頼もしき彼らの背中に続き、前線で戦っていた全兵士が、大地を震わさんばかりの雄叫びを上げて撃ちまくる。
「おらおらおらっ!! てめぇらのためにそこら中から弾を搔き集めてきたんだ! 死ぬほどたらふく喰らいやがれ!」
「ヘルベルト! 短機関銃《マシンガン》!」
「ほらよ隊長! ちっとは弾の節約を考えたらどうです!?」
「お前らだけには言われたくない! 一番弾遣いが荒いのお前らだろ!」
新たな武器として、短機関銃をヘルベルトに要求したリック。彼の声に即座に応えたヘルベルトは、自分が背中に掛けて装備していた短機関銃を片手で掴むと、それをリックへと投げ渡した。短機関銃を受け取ったリックは、右手に突撃銃、左手に短機関銃を持ち、二丁を構えて同時に乱射を始めた。
彼に負けじと、ヘルベルトも自分の突撃銃を構えて発砲する。弾ある限り鉛玉を直撃させ、触手を次々と戦闘不能に変えていくが、時間が経てば倒した触手は復活してしまう。傷の再生が始まろうとしている触手には、ヘルベルトが手榴弾を投げつけ追い打ちをかけた。
「傷の治りが早いってんなら、二度と治らねぇように粉々にしてやるよ!」
一時的に撃破した触手に対しても、鉄血部隊は苛烈な攻撃を加えた。二度と復活できないよう、倒れている触手に弾丸を浴びせ、爆弾で吹き飛ばし、無反動砲まで喰らわせる。中には、何処からともなく火炎放射器を持ち出して、最大火力で触手の《バーベキュー》を始める者まで出始めた。
鉄血部隊は戦争中毒の狂った集団だが、戦いの場に於いての彼らは非常に考えて戦闘を行なう。再生能力の高い触手に対し、鉄血部隊が導き出した結論が、「生きていようが死んでいようが関係なく徹底的に叩く」だった。
如何に再生能力が高くとも、粉々になるまでばらばらにされ、火炎まで使われて灰にされてしまったら、再生などできるはずがない。今回の敵を殺すための彼らの回答は、非常に単純だが合理的だった。
「ヒャハハハハハハハハハハハッ!! 弾ばら撒き放題だぜ、ヒーハー!!」
「よく燃えてやがるぜ! 火炎放射器を親衛隊からかっぱらってきて正解だったな!」
「邪魔なのはバズーカで全部ぶっ飛ばしてやる! 鋼鉄戦闘団から弾腐るほどパクってきたから安心しな!」
「弾は何でも揃ってるぞ!! 第一と第二の戦闘団から備蓄分くすねてきてっから補給はばっちりだ!」
「シャランドラの嬢ちゃんのところから盗んできたはいいが、何だこりゃ? おーい部隊長、また訳分かんねぇ武器があんぞ」
鉄血部隊の活躍によって、再生できないよう攻撃を受け続けた触手達。徹底的な攻撃を受けた触手は回復を諦め、根が繋がっている怪物のもとへと逃げていく。触手を粉々にして確実に処理すれば勝てると考えた、鉄血部隊の読みは正しかったのである。
触手を丁寧に片付けていくため、撃破に時間が掛かってしまうものの、触手の数は確実に減らす事が出来る。剣や矢などでは不可能な、銃火器と爆薬の火力があってこその戦術だが、絶望的な戦局に希望をもたらすには十分だった。
最前線で戦うヴァスティナ帝国国防軍の全兵士が、勝利の希望を目にして益々士気を上げていく。今の彼らの心に、敗北という二文字は微塵も存在しなかった。
鉄血部隊の活躍と、全軍の士気向上に一番満足しているのは、勿論指揮官たるリックであった。しかしリックは、引き攣った笑顔でヘルベルト見る。そして直ぐに察したヘルベルトは、口笛を吹く真似をして顔を背ける。
「おいヘルベルト。あいつらが持ってきた武器と弾、何処から調達してきた?」
「いっ、い~や⋯⋯⋯、派手な戦闘が出来るって全員張り切っちまって、取り敢えず陣地内にあった武器を片っ端から集めさせて⋯⋯⋯⋯」
「お前らの分はちゃんと用意してたろ?」
「そっ、それが、この前の夜戦で大分使っちまって⋯⋯⋯⋯」
それを聞いたリックは、引き攣っていた笑顔から真顔になり、今度はにこにこした笑顔でヘルベルトを見た。目が全く笑っていない彼の笑顔に、ヘルベルトは直立不動で恐怖していた。
「ヘルベルト、お前減給」
「やっぱりかよちくしょおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
先鋒を務めたのは、ヴァスティナ帝国国防軍の精鋭達である。その中でも一番槍を決め込んだのは、帝国国防軍の最高司令官たる、「帝国の狂犬」ことリクトビア・フローレンスだった。
「あっはははははははははははははっ!!!」
邪悪な笑みと共に狂った笑い声を上げ、構えた散弾銃を乱射しまくるリックは、目に付く怪物の放つ触手を次々と吹き飛ばしていった。
「⋯⋯⋯⋯ちっ! 弾切れかよ!?」
調子に乗って気分良く撃ちまくったはいいものの、直ぐに弾切れとなり、焦るリックは懐から予備の弾丸を取り出し装填を始める。その隙を突いて、触手の一本が彼に瞬時に襲い掛かった。
反応が遅れ、回避が間に合わないリックのもとに伸びる触手。獲物を喰らうため、触手が持つ不気味な口が開きかける。その瞬間、リックへと向かっていた触手を、突如現れた火炎が焼き尽くす。
彼の危機を救ったのは、十文字槍と共に現れたレイナだった。リックを襲った触手を炎魔法で焼き払い、安堵の息を吐いて見せた彼女だったが、無事な彼の姿を見るや否や怒りを露わにする。
「閣下!! 前に出過ぎです!」
「うっ⋯⋯⋯⋯、ごめん」
「私の傍を絶対に離れないで下さい! もしも閣下に何かあったら、ヴィヴィアンヌに何て言えば⋯⋯⋯⋯」
リックの身を案じ、より一層彼の傍を離れまいと心に誓うレイナ。心配する彼女の気迫に負けたリックは、しゅんとして縮こまってしまった。
そんな二人に別の触手が襲い掛かろうとするが、今度は神速の速さで金髪の剣士が現れ、伸びてきた触手を自慢の剣で一刀両断して見せた。息一つ乱す事なく、一撃で触手を切り伏せた剣士は、勿論クリスである。
「おい!! 油断すんじゃねぇ!」
「油断などしていない。お前が助けに入らなくとも、私一人で十分だった」
「けっ! 助けてやったのに可愛くねぇ女だぜ」
先陣を切ったリックの傍には、帝国国防軍が誇る二人の英雄が並び立ち、彼らに率いられた精鋭が続く。最高司令官であるリックや、英雄であるレイナやクリスに後れまいと、南ローミリア最強の兵士が得物を手に存分に暴れまわる。
ある者は小銃で正確な射撃を行ない、ある者は短機関銃を乱射して、またある者は手榴弾を投げて触手を吹き飛ばす。レイナとクリスが率いる、烈火騎士団と光龍騎士団の精鋭達もまた、槍と剣を武器に次々と触手を仕留めにかかる。彼らは勇猛果敢に危険な接近戦を挑み、連携しつつほぼ無傷で触手を斬り付け、時に得物の切っ先を突き刺していく。
攻撃を受けた触手は力尽き、怪物らしくと言うべきか、緑色の体液を撒き散らしながら地面に倒れ伏す。しかしそれは一時的な状態で、死んだように見える触手は傷の再生を始め、何事もなかったように起き上がってまた襲い掛かる。
「くそっ!! わかっちゃいたが切りがねぇ!」
「ぼやくな破廉恥剣士! 敵の動きに集中しろ!」
「お前こそ、リックがどっか行っちまわないように気を付けとけ! だから夜戦で怪我なんかすんだよ!」
「それとこれとは関係ない! お前こそ閣下から目を離していただろ!」
「何だとこの野郎!! 今ここで決着つけるか、ああん!?」
「面白い、受けて立つぞ!!」
口で喧嘩はしつつも、レイナとクリスは一騎当千の戦い振りを披露して、一瞬の内に触手を切り伏せていく。互いに死角を守り合い、怒鳴り合いながらも舞う様に得物を振るい、無数の触手を一時的だが戦闘不能にしていった。
レイナとクリスが存分に己の武を振るう事により、道が切り開かれる。帝国国防軍は、二人が突破してできた道を突き進み、怪物が放つ触手に途切れる事のない攻撃を加え続けた。レイナとクリスの後に全軍が続く中、リックもまた一人の兵士となって、彼らと共に戦場を駆け続けていく。
「あはっ、あっはははははははははは!!! こいつは俺からの奢りだ!」
再び散弾銃を乱射し、今度は懐から手榴弾も取り出して、歯で安全ピンを引き抜き投擲する。放たれた散弾と手榴弾の爆発で、目の前の触手を吹っ飛ばしたリックだったが、ここで散弾銃の弾を使い切ってしまった。
「閣下、これを!!」
「ホブスか!? 良いところに!」
弾切れとなった散弾銃を投げ捨てたリックに向かって、持ってきた突撃銃を投げつける兵士が現れた。投げ渡された突撃銃を受け取ったリックは、新たに現れた触手に向かって銃を連射する。リックに新たな武器を渡したのは、最近彼の傍で参謀的立ち位置に就いたホブスであった。
リック様に持ってきた銃を渡し、ホブスも自分の突撃銃を構えて彼と共に発砲を始める。他の兵達も二人の射撃に続き、一斉射撃で触手を蜂の巣にしていった。
「助かった。ちょうど弾切れで困ってたんだ」
「どうせそうなるだろうと思って持ってきたんです。まったく貴方は、前線に出るといつも考えなしで武器を使い潰す」
「だって、その方が楽しいし⋯⋯⋯⋯。それよりお前、態々こんな危ないところに来なくてもよかったのに」
「自分は閣下の相談役兼護衛兼パシリだと言ったのは閣下ご自身です。貴方が向かうところ、例えどんな危険が待っていようと付いて行くのが自分の役目ですから」
「流石、ガレスさんの息子なだけある。あの人に似て勇敢だ」
「勇敢だなんてとんでもない。家じゃただの飲んだくれ親父でしたよ」
リックにとってホブスは、かつて共に戦った救国の英雄の息子だ。初陣のリックを助け、彼の作戦成功の為に戦い散ったヴァスティナ帝国軍の兵士ガレス。ホブスはその彼の息子なのである。
父親と同じように勇猛果敢に、あの初陣の時のガレスと同じように、彼もまた様々な面でリックを助けてくれている。隣に立って共に戦うホブスに、初陣で共に戦ったガレスの姿がリックだけには重なって見えた。
初陣で散っていった英雄達の事を、リックは今でも忘れてはいない。彼らが命を捨てて守ったものの為にも、リックは戦い続け、これからの戦争に勝利し続けなければならない。父親であったガレスを失った息子のホブスという存在は、リックにそれを訴え続けている。
「ガレスさんみたいに俺に付いて来てくれると助かる。頼りにしてるぞ」
「ミカヅキ隊長やレッドフォード隊長に比べたら大した事ありませんが、全力でやらせて貰いますよ。自分が閣下と一緒に戦うのを、死んだ親父も望んでると思うんで」
「だったらもっと派手にいこう。先に逝ったガレスさんが羨ましがるくらいにな」
「そいつはいいや。自分があの世に行った時の良い土産話になる」
父であったガレスの死は、リックと共に危険な作戦に参加した事が原因である。覚悟していたとはいえ、父親であった彼の死に、当時のホブスは涙を流して悲しんだ。それでもホブスは、父の死の原因を作ったリックを恨む事はなかった。
業火戦争と呼ばれるあの戦争は、リックが考えた一発逆転の策によって、ヴァスティナ帝国の勝利という形で幕を閉じた。結果、多くの犠牲を払いながらも、帝国は滅亡の危機から救われたのである。
もし、あの戦争にリックが居なければ、ガレスどころか自分も死んでいただろう。確かに父の死は悲しかったが、勝利していなければどの道皆生きてはいなかった。ホブスにとってリックは、父親を死に追いやった英雄ではなく、自らも傷付きながら戦い、己の手で救える命を救った英雄なのである。
そんな英雄を、一体どうして恨む事が出来るだろう。寧ろ感謝しているくらいだ。父と同じように帝国軍の兵士として数々の戦いに参加し、これまでの功績を認められてリック直轄の兵士となった時など、飛び上がりそうな程に大喜びしたものである。
これからは彼の傍で、救って貰った恩を返す事が出来る。彼と共に戦った父のように、自分も彼と戦場を共にしたい。その想いを持つガレスはリックに忠実で、こうして今も彼のために駆け付けた。
リックもホブスも、相手が化け物だろうが何だろうが関係なく、戦意は十分である。弾丸を撃ち尽くし、銃身が焼き付いても、勝つまで戦い続ける覚悟だ。
お互いに頼もしさを感じつつ、リックはホブスと共に前進を続けようとする。眼前に広がるは、息絶える事のない夥しい数の不気味な触手。そんな触手に一切の恐れを感じる事なく、英雄に率いられた精鋭達は躊躇わず銃口を前に向けた。
そんな彼らのもとに、後方から頼もしい援軍が駆けつける。ありったけの武器と弾薬、有り余る戦闘欲を持って戦場に駆け付けるは、リック直轄の愚連隊であった。乗車している戦闘車輌をかっ飛ばし、我先にと戦場に急行した彼らは、リックのもとにやって来るなり車輌を急停止させ、全身武器満載の状態で車輌から降り始める。
「隊長! 俺らを置いてくなんざひでぇですぜ!」
「やっと来たな戦争中毒共! 待ちくたびれた!」
「獲物がわんさかいやがるじゃないですか。弾薬を箱ごと持ってきて正解だったぜ」
何台もの戦闘車輌に乗って現れた愚連隊は、ヴァスティナ帝国国防軍最古参の精鋭であり、最もタフでイカレた戦闘狂集団である。
リックのもとに駆け付けた部隊の名は、鉄血部隊。部隊長であるヘルベルトが、戦闘準備万端な屈強な兵士達を連れ、髭面をにやけさせながら戦場を見渡す。数え切れない無数の触手と、その遥か後方に聳え立つ巨大な怪物。倒しても倒しても蘇る、不気味な触手と戦う最前線に、この男達は満足そうに笑みを浮かべていた。
「勝てる気がしねぇデカい化け物に、気色の悪い触手共が相手か。久々に絶望的な戦局って奴だな。これだから隊長の下で戦争するのは止められねぇ」
ヘルベルト達は戦争なしでは生きられない、戦争中毒者の戦闘狂の集まりである。彼ら鉄血部隊は、戦場で命を落とす事を恐れない。ただ戦いを愉しみたいのである。その戦いが絶望的であればある程、彼らにとっては圧倒的至福の戦争だ。
リックはヘルベルト達に、最高の戦争を用意してくれる。だからこそ彼らはリックに付き従い、彼の下で戦場を暴れまわる。鉄血部隊全員、戦いに飢えた実戦経験豊富な元傭兵であるため、こんな戦場では彼らほど頼もしい存在はいないだろう。
戦闘狂の元傭兵達は、銃火器完全武装の状態で下車し、迅速に戦闘態勢を取って前線に展開を始める。突撃銃、短機関銃、狙撃銃、機関銃など、それぞれの得物を手にする彼らの瞳には、殺意と狂気が溢れていた。しかも彼らは、こんな状況下でも笑っていた。獲物に飢えた、邪悪な笑みを浮かべて⋯⋯⋯⋯。
「おいおい見ろよ! 触手って聞いたから何かと思えば、デカいだけの白いミミズってか!?」
「あれが人間を丸呑みするらしいぜ。ミミズだと馬鹿にして食われんなよ」
「殺しても何回も蘇るらしいぞ。飽きるまで殺したい放題だな」
「違いねぇ! こういうのは俺達向けの相手だ」
瞬時に展開を終えた鉄血部隊が、一斉に銃火器の引き金を引いて発砲を開始した。弾薬の節約など考えない一斉射撃で、目の前に立ちはだかっている触手の壁を蜂の巣にし、容赦なく薙ぎ倒す。それを見ていたリックとホブスも、彼らに続いて銃撃を再開する。
鉄血部隊の登場によって、帝国国防軍の兵士達が更に湧き立つ。頼もしき彼らの背中に続き、前線で戦っていた全兵士が、大地を震わさんばかりの雄叫びを上げて撃ちまくる。
「おらおらおらっ!! てめぇらのためにそこら中から弾を搔き集めてきたんだ! 死ぬほどたらふく喰らいやがれ!」
「ヘルベルト! 短機関銃《マシンガン》!」
「ほらよ隊長! ちっとは弾の節約を考えたらどうです!?」
「お前らだけには言われたくない! 一番弾遣いが荒いのお前らだろ!」
新たな武器として、短機関銃をヘルベルトに要求したリック。彼の声に即座に応えたヘルベルトは、自分が背中に掛けて装備していた短機関銃を片手で掴むと、それをリックへと投げ渡した。短機関銃を受け取ったリックは、右手に突撃銃、左手に短機関銃を持ち、二丁を構えて同時に乱射を始めた。
彼に負けじと、ヘルベルトも自分の突撃銃を構えて発砲する。弾ある限り鉛玉を直撃させ、触手を次々と戦闘不能に変えていくが、時間が経てば倒した触手は復活してしまう。傷の再生が始まろうとしている触手には、ヘルベルトが手榴弾を投げつけ追い打ちをかけた。
「傷の治りが早いってんなら、二度と治らねぇように粉々にしてやるよ!」
一時的に撃破した触手に対しても、鉄血部隊は苛烈な攻撃を加えた。二度と復活できないよう、倒れている触手に弾丸を浴びせ、爆弾で吹き飛ばし、無反動砲まで喰らわせる。中には、何処からともなく火炎放射器を持ち出して、最大火力で触手の《バーベキュー》を始める者まで出始めた。
鉄血部隊は戦争中毒の狂った集団だが、戦いの場に於いての彼らは非常に考えて戦闘を行なう。再生能力の高い触手に対し、鉄血部隊が導き出した結論が、「生きていようが死んでいようが関係なく徹底的に叩く」だった。
如何に再生能力が高くとも、粉々になるまでばらばらにされ、火炎まで使われて灰にされてしまったら、再生などできるはずがない。今回の敵を殺すための彼らの回答は、非常に単純だが合理的だった。
「ヒャハハハハハハハハハハハッ!! 弾ばら撒き放題だぜ、ヒーハー!!」
「よく燃えてやがるぜ! 火炎放射器を親衛隊からかっぱらってきて正解だったな!」
「邪魔なのはバズーカで全部ぶっ飛ばしてやる! 鋼鉄戦闘団から弾腐るほどパクってきたから安心しな!」
「弾は何でも揃ってるぞ!! 第一と第二の戦闘団から備蓄分くすねてきてっから補給はばっちりだ!」
「シャランドラの嬢ちゃんのところから盗んできたはいいが、何だこりゃ? おーい部隊長、また訳分かんねぇ武器があんぞ」
鉄血部隊の活躍によって、再生できないよう攻撃を受け続けた触手達。徹底的な攻撃を受けた触手は回復を諦め、根が繋がっている怪物のもとへと逃げていく。触手を粉々にして確実に処理すれば勝てると考えた、鉄血部隊の読みは正しかったのである。
触手を丁寧に片付けていくため、撃破に時間が掛かってしまうものの、触手の数は確実に減らす事が出来る。剣や矢などでは不可能な、銃火器と爆薬の火力があってこその戦術だが、絶望的な戦局に希望をもたらすには十分だった。
最前線で戦うヴァスティナ帝国国防軍の全兵士が、勝利の希望を目にして益々士気を上げていく。今の彼らの心に、敗北という二文字は微塵も存在しなかった。
鉄血部隊の活躍と、全軍の士気向上に一番満足しているのは、勿論指揮官たるリックであった。しかしリックは、引き攣った笑顔でヘルベルト見る。そして直ぐに察したヘルベルトは、口笛を吹く真似をして顔を背ける。
「おいヘルベルト。あいつらが持ってきた武器と弾、何処から調達してきた?」
「いっ、い~や⋯⋯⋯、派手な戦闘が出来るって全員張り切っちまって、取り敢えず陣地内にあった武器を片っ端から集めさせて⋯⋯⋯⋯」
「お前らの分はちゃんと用意してたろ?」
「そっ、それが、この前の夜戦で大分使っちまって⋯⋯⋯⋯」
それを聞いたリックは、引き攣っていた笑顔から真顔になり、今度はにこにこした笑顔でヘルベルトを見た。目が全く笑っていない彼の笑顔に、ヘルベルトは直立不動で恐怖していた。
「ヘルベルト、お前減給」
「やっぱりかよちくしょおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
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