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第九話 悪魔の兵器
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「はああああああっ!!」
「おらあああああっ!!」
最前線で己の武を存分に振るう、帝国軍最強の二人。
十文字槍の切っ先が舞い、電光石火の剣戟が敵を斬る。炎が燃え盛り、雷が轟く。槍士レイナと剣士クリスの二人が、競うようにジエーデル兵を次々と討ち取っていた。
二人を先頭に、敵軍を突破していく連合軍。当初は数で勝る敵軍に、連合軍が徐々に押されてしまう形であった。しかし、レイナとクリスの参戦により、前線を押し返した連合軍の士気は高い。二人の活躍は、味方に希望を与え、敵に絶望を与える。
槍が流れるように振られ、剣が必殺の突きを放つ。槍と剣が神速の速さで振られ、もう何十人が餌食になったのかわからない。
「おい破廉恥剣士!前に出られると邪魔だ!」
「邪魔はてめぇだ脳筋槍女!俺の獲物を盗るんじゃねぇ!!」
敵兵からすれば、圧倒的な武と魔法で戦う、恐ろしく驚異的な存在であろう。
だが一番恐ろしいのは、喧嘩しながら戦う二人の戦士ではなく、その二人を上回る実力を持った、ヴァスティナ最強の騎士である。
「仲がいいな、お前たちは」
「「どこがっ!?」」
「そうやって反応するところがだ」
レイナとクリスのすぐ後ろには、美しい褐色の肌を持ち、長い銀髪をなびかせる、剣と盾を装備した女性騎士がいた。彼女は帝国騎士団を率い、とうとうその姿を戦場に現す。
「レイナ、クリス。我々の後ろには女王陛下が居られる。よって我らに、敗北は許されない」
「わかっています。陛下だけでなく、後方にはリック様も居られます。ならば私たちは、敵兵を一兵たりとも通すわけにはいきません」
「あいつは怪我人だがよぉ、俺らが下手打つと、無茶して戦場に出て来るぜ。そうならねぇように戦うさ」
真ん中には騎士団長メシア。両翼には槍士レイナと剣士クリス。
後方にはゴリオンとイヴが控え、連合軍陣地では、密かにシャランドラが、あるものを準備している。帝国の主戦力がこの戦場に集まり、兵たちの士気は高い。
「いくぞ」
駆け出したメシアは、剣を片手に敵軍に襲いかかる。
眼前に映った敵兵に斬りかかり、一撃のもとに切り伏せた。それだけでは終わらず、次々と敵兵に斬りかかり、二撃目を振るう事なく、やはり一撃で討ちとっていく。
流れるような剣捌きが、兵士の首や胸を切り裂き、彼女が通った後には鮮血が飛ぶ。一分も経たない内に、彼女一人で十人以上の敵兵が、その命を落とした。何の反撃もできないまま、たった一人の女性騎士の手によってだ。
「臆するな騎士たちよ、死力を尽くして戦え!」
「騎士団長に続け!!」
「「「「うおおおおおーーーーっ!!!」」」」
騎士団長を筆頭に、雄叫びを上げて突撃する帝国騎士団。鍛えられた騎士たちは、剣や槍を武器に、敵兵を恐れず立ち向かう、四百人の帝国騎士たち。これで三度目となる、本格的な実戦。二度のオーデル王国との戦いで、実戦経験を積んだ帝国騎士たちは、チャルコなどの騎士団を上回る実力を持つ。
実戦慣れしたジエーデル兵に対し、一歩も退く事なく、正面から立ち向かっていく。剣を片手に斬りかかり、敵兵の胸を裂いた騎士もいれば、槍の切っ先を、相手の喉元に突き刺す騎士もいた。敵に斬りかかられても、その攻撃を躱して反撃する。矢が飛んで来れば、盾を装備した騎士が仲間を守るため、盾を上に構えて矢を防ぐ。
実力も高く、仲間同士の連携も取れている。ここまで錬度が高い騎士団は、南ローミリア大陸内でも、ヴァスティナ騎士団しかいないだろう。彼らの錬度が高いのは、彼らを鍛えた女性騎士団長である、メシアの力あってこそだ。
「私も負けてはいられない」
「団長に獲物とられちゃ敵わねぇ。いくぜ!」
メシアが剣を振りまわす度に、敵兵が討ち取られていく。中には、横一線の斬撃によって、首を跳ねられた兵士もいる。戦場では軍神として恐れられる彼女に、正面から敵うジエーデル兵は存在しない。
そんな彼女に負けまいと、帝国参謀長の両腕であるレイナとクリスも、己の得物を握りしめ、猛然と立ち向かう。メシア、レイナ、クリスの三人が前線を切り開き、その後に、帝国軍と騎士団が続く。彼らだけでなく、王国残党軍も雄叫びを上げて突撃。兵力差をものともせず、戦局を有利に進め始めた。
「ミカズキ殿、レッドフォード殿!」
王国軍残党を率いている、元王都守備隊隊長のライオネスが、二人のもとへと駆けつける。レイナやクリスほどではないが、ライオネスも実力者である。剣を片手に敵兵を蹴散らしながら、二人に合流した。
「ライオネス殿!ご無事でしたか」
「そちらも無事で何よりだ。我々も帝国に続き、ジエーデル軍を突き崩す」
「そのまま魔法兵部隊の連中を根絶やしにしてやろうぜ。奴らは厄介だからな」
クリスの言葉にライオネスが頷く。
ジエーデル軍の魔法兵部隊の力は、ライオネスたち王国軍残党も、身をもって理解している。遠距離から一方的に、強力な魔法攻撃をかけるこの部隊の存在は、連合軍全体の脅威となっているのだ。
この部隊を排除すれば、敵軍に大きな損害を与える事ができ、味方が魔法攻撃に晒される事が無くなる。となれば、殲滅しない手はない。
「御二人の魔法で、この距離から攻撃をかけられればよいのだが・・・・・・」
「生憎、俺は魔法使うの苦手なんだよ。魔力も大した事ねぇしな」
「残念ながら、私が操れる炎魔法は微力です。炎を出して操るのが精々で、遠方まで炎を飛ばす事はできません」
二人は同様に、魔法を出して操る事しかできない。ジエーデルの魔法兵部隊のように、狙った地点目掛けて魔法を飛ばす事は、魔法専門ではない二人には、専門外なのである。
「魔法なんざなくても、俺の剣技だけで十分だぜ」
「我が槍に懸けて、魔法兵たちは殲滅して見せる。魔法など使わなくとも、距離を詰めてしまえばこちらに分がある」
「御二人の言葉は頼もしい限りだ。では急ぐとしよう、こうしている間にも、騎士団長殿は進軍を続けているからな」
何十人もの屍を築き上げながら、息一つ乱さず戦い続けるメシア。
しかし本当は、彼女と騎士団の前線参加は、万が一の場合を除いて、作戦内容には無かったのである。守らなければならない女王陛下を陣地に残し、彼女たちが前線に立ったのは、リックの作戦不参加が関係していた。
アングハルト救出で負傷したリックは、レイナとクリスと共に、前線で戦うつもりでいたのだが、怪我の具合的に作戦参加は不可能だった。そこで名乗りを上げたのが、メシアである。
女王ユリーシアから許可を貰い、前線に出ると、エミリオに頼んだメシア。
リックが前線に出れば士気は上がり、帝国軍は国のために命を懸ける。そうさせるリックがいないとなれば、戦力の低下に繋がってしまう。仕方なくエミリオは頼みを聞き入れ、騎士団の前線参加を認めたのである。
女王陛下を守り、帝国に勝利をもたらすため、彼女は自分の率いる騎士団と共に、最前線にその姿を現した。
女王ユリーシアの身は、メイド長であるウルスラと、彼女率いるメイド部隊が守っている。女王の許しを受け、メシアが護衛の任から外れ、前線に出るとウルスラに伝わった。するとウルスラは、戦場に出るメシアに対し、餞別の言葉を送っている。
彼女はこう言った。
「陛下に刃を向けた者を、生かして帰すわけには参りません。本当ならば私が殺りたいところですが、今回はお譲りします。ご武運を」
とてもメイドの言葉とは思えない発言。
偶々近くでその会話聞いてしまったイヴは、この時こう思った。
(帝国って危険な人しかいないよ・・・・・・。僕も大概だけど、あの二人には負けるかな)
こういった経緯があり、メシアは己の武を存分に披露しているのだ。
彼女を知るレイナとクリスからすれば、とても頼もしい存在である。だが、ライオネスからすれば彼女は、圧倒的な武を振るう、鬼神の如き存在だ。
こんな騎士のいる国と戦争をしたのかと思うと、対ヴァスティナ戦に自分が参加する事がなく、本当に良かったと思うライオネス。その思いと同時に、メシアたちの力があれば、ジエーデルに敗北する事はないと思えてしまう。
国が滅ぼされたあの時を、ライオネスは忘れる事ができない。眼前に映る憎むべき敵、ジエーデルを倒すため、帝国の力を利用している王国軍残党。しかし、利用しているのは帝国も同じである。
お互いを利用し合いながら、共通の敵を倒す。国を失ったライオネスたちにとって、帝国の猛者たちは頼りになる存在だ。故に、心に余裕が持てたライオネスは、勝利を信じて戦う。
この場で戦う誰も彼もが、勝利を信じて疑わない。何故なら、最強の軍神が先頭に立ち、連合軍を勝利に導こうとしているのだから。
「勝利は我らにあり!!怯むことなく前進せよ!」
「メシア団長に続くのだ!はああああああっ!!」
「邪魔すんなよ槍女!おらああああああっ!!」
「帝国に後れを取るな!オーデル王国の意地を見せる時は今だぞ!!」
戦局は動いた。
ジエーデルの魔法兵部隊を排除するため、敵軍を突き崩していく連合軍。反撃のための、敵軍の魔法攻撃が飛来したが、連合軍は恐れず突撃し続ける。飛来した炎魔法が襲いかかろうとも、攻撃に怯むことない連合軍兵士に、ジエーデル兵は脅威と恐怖を覚え始めていた。
だが、これ以上の突撃を許すまいと、連合軍の前にジエーデルの虎の子の戦力が、その姿を現す。
「もうここまで来たか」
「どうする?なあどうするよ?」
「殺すに決まってるだろ。皆殺しだ」
「けっけっけっ!やっと出番が来たな、おい!」
現れた四人の男たち。
一人は三十代後半の中肉中背の男。残りの三人は、顔がそっくりの若い男たちである。
周りのジエーデル兵とは違う雰囲気に、突撃を止めて様子を窺う連合軍。四人の登場に、先程まで劣勢であったジエーデル兵たちは、急に士気を取り戻す。
「カラミティルナ隊か」
「如何にもそうだ。昨日はうちの一人が世話になったな」
エミリオにカラミティルナ隊の存在を聞いていたメシアは、現れた相手がそれであると気付く。
敵軍の一般兵士とは違い、軍服を着用していない。私服だと思われる自由な格好をし、鍛えられてはいなさそうな身体つきをしている。
カラミティルナ隊の人間は、元々民間人であった者も多い。特殊な魔法を開花させたために、ジエーデル軍に徴兵されたのだ。緒戦で戦死したエギルも、現れた彼らも、元は軍人ではなかった。特に軍紀もなく、一般の兵士より自由が許されている。
彼らに与えられている基本の命令は、総統閣下のために命を捧げ、国家に勝利をもたらせというものだ。勝利を約束できれば、基本的に何をやっても許される。それが彼らの特典であるのだ。現れた四人の自由な服装も、その特典によるものである。
「エギルの仇をとるつもりはないが、これも仕事なのでな。ここで死んで貰おうか」
「なあなあオーギュスト、もう殺しちまっていいだろ?」
「まったく、この三つ子は堪えを知らん。そんなにやりたければ好きにしろ」
顔がそっくりの若い男三人は、歳が同じの三つ子である。この三つ子もまた、特殊な魔法を使いこなす、カランティルナ隊の戦力だ。この三人もエギル同様、殺戮に飢えた獣である。殺しの快楽を知ってしまった、危険な狂人たちなのだ。
「こいつらがカラミティルナかよ。大した事なさそうだな」
「下郎共め。おい破廉恥剣士、わかっているな?」
「返り討ちにしてやればいいんだろ。てめぇに言われるまでもないぜ」
対峙した、連合とジエーデルの精鋭。
前に歩み出た三つ子の三人に対し、正面から立ち向かうのはレイナとクリスである。メシアは後ろに三つ子の控える、オーギュストと呼ばれた男を警戒して動かない。ライオネスは二人に加勢しようとしたが、二人は片手を上げて彼を止めた。
これは自分たちの相手だと、二人の背中は語っている。二人の邪魔になってはいけないと、加勢する事を止めたライオネス。
三つ子がレイナとクリスを獲物に定め、襲いかかろうと身構える。レイナとクリスも、それぞれの得物を構えた。
「あいつら知ってるぜ。昨日暴れまわってた帝国の兵士だ」
「じゃあ強いんだろうな?もっとも、俺らには敵わねぇだろうが」
「殺す?なあ殺す?」
下衆な笑みを浮かべて、目の前の獲物をどう料理するか考えている三つ子たち。明らかに彼らは、頭がイカレている。人間を殺す事しか頭になく、人殺しを楽しんでいるのだ。
そんな三つ子を、冷ややかな目で見るレイナとクリス。二人は恐ろしく冷静で、集中力を高めていた。
現れた四人は、武器らしいものを一切身に付けていない。恐らくは、特殊な魔法攻撃だけで敵を殺すのだろう。相手の魔法が不明である以上、一部の油断も許されない。故に二人からは、油断も慢心も全く感じられない。逆に三つ子たちは、隙も多ければ油断も大きい。だが、三つ子がわざとそのように振る舞い、誘っている可能性もある。
この時、二人を見守っていたライオネスは、誘われている可能性を考えていた。相手の出方がわからない以上、下手に攻撃をかけるべきではないと考える。
「よし、いつも通りにやるぞ」
「わかったぜ、俺たちの魔法でぶっ殺してやる!」
「皆殺しだ!!」
「おい見てろよ!これが俺たちの必殺まほ-------」
ズドンっ!!
・・・・・・弾丸が三つ子の一人を撃ち貫いた。
頭のど真ん中に、ライフル弾が一発命中。魔法を叫ぼうとしていた三つ子の一人が、叫び終える前に、撃たれて死んだ。
そう、死んでしまった。意図も容易くあっさりと・・・・・・。
「「にっ、兄ちゃああああああああんっ!!!」」
撃たれたのは、一番上の兄であった。弟たちの衝撃は凄まじく、撃ち殺された兄の死体へと急いで駆け寄る。それが命取りになると、全く気が付かないまま・・・・・・。
「「はあっ!!」」
電光石火、神速必殺の一撃。
槍の切っ先が、片方の弟の心臓を捉え、正確かつ一瞬で貫いた。それと同時に、もう片方の弟の首が、一瞬にして斬撃により、跳ね飛ばされる。反応する暇もなく、気が付けば胸に槍が突き刺さっていた弟と、何が起こったか理解できていない表情のまま、宙を舞うもう一人の弟の首。
ジエーデル軍精鋭部隊、カラミティルナ隊所属の三つ子たちは、名乗る事も、自慢の魔法を披露する事もなく、ここで死んだ。
「・・・・・・・・・・・」
唖然としている最後の一人。
多くの者たちに恐れられ、戦場に血の雨を降らせる事で有名な、カラミティルナ隊の一員が、目の前で瞬殺されたのだ。この部隊に入って長いオーギュストでも、こんな光景を見るのは、初めての事である。
「今のはイヴの狙撃か」
「余計な事しやがって。連中なら俺一人でも十分だったぜ」
三つ子を瞬殺したレイナとクリス。
連合軍兵士からは歓声が上がり、ジエーデル軍兵士からは恐怖の対象となった。
「しっかし、どんな魔法だったんだろうな?女装男子がいきなり撃ち殺しやがったから、つい動いちまったぜ」
「イヴの狙撃で奴らに大きな隙ができた。おかげで、魔法を使われる前に倒せたのだ。文句を言う必要はないだろう」
カラミティルナ隊を倒したというのに、誇りも喜びもしない二人。
レイナとクリスからすれば、魔法さえ出させなければ、倒すのは余裕であった。三つ子もオーギュストも、基本的には魔法頼みである。つまり、魔法がなければ戦闘力は皆無だ。
よって二人は、対カラミティルナ戦が起こった場合の戦術を、戦闘開始前から考えていた。そして、二人の出した結論が「魔法を出させる前に倒せばいい」という、如何にも二人らしい、シンプルな考えであったのだ。
今回はイヴの狙撃があったが、狙撃がなくとも、三つ子が技を出す前に、一撃で討ち取ろうと決めていた。ライオネスのように、相手の出方がわからないから、攻撃をかけないという考えは、最初から存在しなかったのである。
「わっ、技を出すまで待つとか、名乗るまで待つとか、お前たちにそういった考えはないのか・・・・・・」
「「ない」」
オーギュストの言葉に、同時に答えたレイナとクリス。
それが気に入らなかったようで、急にお互い睨み合う。いつもの喧嘩の勃発だ。
「おい槍女、てめぇわざと被らせてんのか?喧嘩売ってるだろ」
「私ではなく貴様がだろ、破廉恥剣士」
「斬るぞこの野郎」
「貴様が斬りつけるより速く、私の槍で討ち取るぞ」
「上等だ糞野郎、やってみやがれ!!」
「いいだろう破廉恥剣士!そこになおれ!!」
戦場のど真ん中でこの二人は、目の前の敵を無視して喧嘩を始める。見慣れた者たちからすれば平常運転で、ため息をついてしまう程度だが、初めての者たちからすれば、まさに異常な光景だろう。
ライオネスや王国軍残党の兵士たちは、どうすればいいのかと、おろおろするばかり。どうもする必要はないのだ。ただ、放っておけばいい。
「団長殿・・・・・・」
「気にするな、この二人はいつもこうだ」
「そっ、そうですか・・・・・・」
「それよりも、残りのカラミティルナを倒す事だけを考えろ」
そう、戦いはまだ終わってはいない。
カラミティルナ隊の一人、オーギュストを倒さなければならない。特殊魔法の使い手であるこの男がいると、味方にどんな損害が出てしまうかわからない。そして、カラミティルナに対抗できるのは、帝国の猛者だけだ。
三つ子たちはレイナとクリス、そしてイヴの狙撃によって倒された。後方で射撃姿勢をとっていたイヴは、偶然三つ子の姿をスコープに捉え、躊躇いなく引き金を引いたのである。
恐らく、噂のカラミティルナだろうと思い、二人の支援のために射殺した。しかしイヴは、これで最後の弾薬を使い切る。緒戦と同じで、今日も開戦早々に射撃支援を行なっていたイヴは、遠距離から一方的に敵兵を射殺していた。
一人で相当数の敵兵を殺し、味方の進軍を陰ながら助けていたのだが、その分弾薬の消耗も激しかったのである。もしも弾が残っていれば、今頃オーギュストも撃ち殺されていただろう。この男がまだ生きていられるのは、運が良かったと言える。
「三つ子はやられてしまったが、ここで退くわけにはいかん。いいだろう、我が魔法を見せよう!」
「させない!」
「くたばれ!」
魔法を出そうとしたオーギュストへ、レイナとクリスが駆け出し、一気に距離を詰める。
槍と剣が、目にも止まらぬ速さで繰り出され、オーギュストの身体を刺し貫こうとした、その時だった。
「「!!」」
オーギュストの肌が変化した。先程までは、極普通の肌色であったが、鉛のような色に肌が染まる。
二人の得物が男の胸を刺し貫こうとしたが、その刃は弾かれてしまった。弾かれてしまったのだ、人間の皮膚に。これまで、簡単に人を切り裂いてきた二人の刃が、オーギュストの身体を貫けず、甲高い音とともに弾かれる。魔法の発動が早かったために、発動前に倒す事ができなかった。倒せないと分かるや否や、一度距離を取り、様子を窺う二人。
「これが鋼鉄の魔法だ。我が肉体は今まさに、鋼と化した!」
基本の六つの属性魔法に属さない、特殊な魔法。
この男の特殊な魔法は、身体の鋼鉄化である。鋼となった身体は、どんな武器の攻撃も通さず、鋼となった拳は、どんな人間だろうと、一撃で殴り殺す、まさに攻防一体の魔法なのである。
オーギュスト自身、この魔法に絶対の自信を持っている。六つの属性魔法の攻撃すら通さない、この鋼の肉体を作り出す魔法こそ、最強クラスの魔法であると信じて疑わない。実際、この魔法が打ち破られた事は未だになく、カラミティルナ隊の中でも、オーギュストの立ち位置は、実力者の部類だ。
「この硬さ・・・、炎魔法も通らないか」
「厄介な奴だぜ」
早速攻略法を考え始める二人。だが、有効な方法が思いつかない。
この魔法が発動していられる時間も不明で、どれほどの攻撃に耐えられるのかもわからない以上、これは仕方がない。
「私がやろう」
二人が手を拱いていると、眼前の敵を討ち取るため、最強の女性騎士が前に出た。
右手に剣を、左手に盾を持つ騎士団長メシアが、魔法の使い手相手に勝負を挑む。
「メシア団長!」
「ちょっと待てよ、俺はまだやれるぜ!」
レイナとクリスは当然反論する。自分たちはまだ負けたわけではない、よって騎士団長の出番はないと言いたいのだ。これは、戦士としてのプライドだった。
しかしメシアは、そんな二人のプライドを無視する。
「覚悟はいいか」
「次はお前が相手か。女だからといって手加減は------」
「いくぞ!」
「なっ!?話は最後まで聞け!」
レイナとクリスよりも速く、一瞬で距離を詰めるメシア。
己の剣を高く振り上げ、鋼鉄と化したオーギュストを斬ろうとする。
「ばかめ!そんな剣で我が身体に傷がつけられるものか!!」
魔法に絶対の自信を持つ故に、迫る彼女の攻撃を回避しようとは考えない。
その場を動かず、振り下ろされようとしている剣を待つ。自らの身体で剣を弾き返し、相手に絶望を与えるためだ。自分の身体を傷つけようとして、剣や槍で攻撃をかけるが、全く効果がないのを理解し、愕然となる表情が見たい。それがオーギュストの、戦場での楽しみである。
だからこそ動かない。真っ向からメシアに対峙する。
「はああああああああああっ!!!!」
「!!?」
しかし、それは愚かな選択であった。
凄まじい雄叫びと、鬼神の如き気迫で振り下ろされた刃。メシア渾身の一撃は、目にも止まらぬ速さで振り下ろされ、オーギュストの頭上に迫る。
剣はオーギュストを、金属同士がぶつかり合う音とともに、頭から叩き切った。頭のてっぺんから股まで一直線に、斬撃が男を切り裂いたのである。二つに割れた男の身体は、左右に分かれて地面に倒れる。
切り裂かれた傷口から大量出血し、血の池を作ってしまうオーギュストの死体。
対してメシアは、叩き切った衝撃で砕け散った剣を捨て、死体を一瞥。オーギュストの死を確認すると、次の敵をジエーデル兵と定めて、彼らを睨む。
敵も味方も、目の前で起こった信じられない光景に、開いた口が塞がらない状況だ。
カラミティルナ隊の全滅を受け、大きく士気を低下させ、帝国の猛者たちに恐怖するジエーデル兵士たち。鋼の肉体を一本の剣で、一撃のもとに切り伏せたメシアの睨みに、逃げ出してしまうジエーデル兵も出始めた。恐怖は伝染し、軍団に動揺が奔る。指揮系統は混乱し、最早戦闘どころではない。
「「「・・・・・・・・」」」
「どうした?何か言いたそうだな」
振り向いたメシアは、後ろで唖然としていた、レイナとクリスとライオネスを見る。
三人の言いたい事は同じだ。
「普通鋼鉄の男を・・・・・・真正面から叩き切りますか・・・・・」
「無茶苦茶すぎんだろ・・・・・・・」
「こっ、これが・・・・・・帝国騎士団長の力なのか・・・・・・」
恐怖、驚愕、唖然、そして呆れ。もっと他の方法があったのではないのかという、三人の共通の感想。
実はオーギュストの鋼鉄化魔法には、いくつかの弱点があった。その一つは目であり、眼球だけは鋼鉄にできないという欠点があったのである。
まあ今となっては、弱点の事など、もうどうでもいい事ではあるのだが・・・・・・。
「あの程度の硬さならば斬れる範疇だ」
「「あの程度!?」」
「敵の精鋭は排除した。後は・・・・・・」
後は、ジエーデルの魔法兵部隊を排除するだけだ。
士気ががた落ちした今のジエーデル軍が相手ならば、敵中突破は容易であるだろう。
その考えから、騎士団に突撃の指示を出そうとした瞬間、後方から敵軍の反撃が襲いかかる。カラミティルナ隊を倒したメシアたちを、連合軍最大の脅威と考えた敵軍は、弓兵と魔法兵部隊を集中運用し、後方から全力攻撃をかけ始めた。
一斉に降り注ぐ炎魔法と矢の雨。これには堪らず、帝国軍と騎士団、それに王国軍残党の兵士たちは、直撃を避けようと後ろに下がる。だが、一部の兵たちは回避が間に合わず、魔法と矢に襲われて負傷する。
「後退するぞ」
メシアはすぐさま後退を決意。騎士団に指示を出し、負傷した仲間を助けながら後退を始める。
レイナとクリス、そしてライオネスも、敵軍の攻撃でこれ以上の被害を出さないよう、彼女に倣って後退の指示を出した。内心後退はしたくないが、ここで大切な兵を失うわけにはいかない。一度立て直すために、負傷した兵を助けつつ、少しずつ前線から下がっていく。
ライオネスの王国軍残党が、率先して殿を務め、帝国の後退を支援している。ジエーデルに最も損害を与えている帝国に負けまいと、ライオネスも兵たちも、自ら殿を買って出たのである。
(予定通りか)
この後退もまた、エミリオに前もって言われていた。敵軍の全力魔法攻撃が始まれば、無理せず後退する。これは全て、予定通りであった。
後退の指示が早かったため、大きな損害を受ける事のなかった連合軍。負傷した兵は何十人もいるが、健在な兵たちが負傷兵を助け、動けない者は運んでいる。指揮官の一人であるライオネスも、負傷兵の救出を率先して務めていた。
「いいか、仲間を決して見捨てるな!ここは我らの死地ではないぞ!!」
メシアの檄が飛ぶ。彼女に応える、勇猛果敢な連合軍の戦士たち。
負傷した者を一人も見捨てる事なく、連合軍は前線より後退していった。
「おらあああああっ!!」
最前線で己の武を存分に振るう、帝国軍最強の二人。
十文字槍の切っ先が舞い、電光石火の剣戟が敵を斬る。炎が燃え盛り、雷が轟く。槍士レイナと剣士クリスの二人が、競うようにジエーデル兵を次々と討ち取っていた。
二人を先頭に、敵軍を突破していく連合軍。当初は数で勝る敵軍に、連合軍が徐々に押されてしまう形であった。しかし、レイナとクリスの参戦により、前線を押し返した連合軍の士気は高い。二人の活躍は、味方に希望を与え、敵に絶望を与える。
槍が流れるように振られ、剣が必殺の突きを放つ。槍と剣が神速の速さで振られ、もう何十人が餌食になったのかわからない。
「おい破廉恥剣士!前に出られると邪魔だ!」
「邪魔はてめぇだ脳筋槍女!俺の獲物を盗るんじゃねぇ!!」
敵兵からすれば、圧倒的な武と魔法で戦う、恐ろしく驚異的な存在であろう。
だが一番恐ろしいのは、喧嘩しながら戦う二人の戦士ではなく、その二人を上回る実力を持った、ヴァスティナ最強の騎士である。
「仲がいいな、お前たちは」
「「どこがっ!?」」
「そうやって反応するところがだ」
レイナとクリスのすぐ後ろには、美しい褐色の肌を持ち、長い銀髪をなびかせる、剣と盾を装備した女性騎士がいた。彼女は帝国騎士団を率い、とうとうその姿を戦場に現す。
「レイナ、クリス。我々の後ろには女王陛下が居られる。よって我らに、敗北は許されない」
「わかっています。陛下だけでなく、後方にはリック様も居られます。ならば私たちは、敵兵を一兵たりとも通すわけにはいきません」
「あいつは怪我人だがよぉ、俺らが下手打つと、無茶して戦場に出て来るぜ。そうならねぇように戦うさ」
真ん中には騎士団長メシア。両翼には槍士レイナと剣士クリス。
後方にはゴリオンとイヴが控え、連合軍陣地では、密かにシャランドラが、あるものを準備している。帝国の主戦力がこの戦場に集まり、兵たちの士気は高い。
「いくぞ」
駆け出したメシアは、剣を片手に敵軍に襲いかかる。
眼前に映った敵兵に斬りかかり、一撃のもとに切り伏せた。それだけでは終わらず、次々と敵兵に斬りかかり、二撃目を振るう事なく、やはり一撃で討ちとっていく。
流れるような剣捌きが、兵士の首や胸を切り裂き、彼女が通った後には鮮血が飛ぶ。一分も経たない内に、彼女一人で十人以上の敵兵が、その命を落とした。何の反撃もできないまま、たった一人の女性騎士の手によってだ。
「臆するな騎士たちよ、死力を尽くして戦え!」
「騎士団長に続け!!」
「「「「うおおおおおーーーーっ!!!」」」」
騎士団長を筆頭に、雄叫びを上げて突撃する帝国騎士団。鍛えられた騎士たちは、剣や槍を武器に、敵兵を恐れず立ち向かう、四百人の帝国騎士たち。これで三度目となる、本格的な実戦。二度のオーデル王国との戦いで、実戦経験を積んだ帝国騎士たちは、チャルコなどの騎士団を上回る実力を持つ。
実戦慣れしたジエーデル兵に対し、一歩も退く事なく、正面から立ち向かっていく。剣を片手に斬りかかり、敵兵の胸を裂いた騎士もいれば、槍の切っ先を、相手の喉元に突き刺す騎士もいた。敵に斬りかかられても、その攻撃を躱して反撃する。矢が飛んで来れば、盾を装備した騎士が仲間を守るため、盾を上に構えて矢を防ぐ。
実力も高く、仲間同士の連携も取れている。ここまで錬度が高い騎士団は、南ローミリア大陸内でも、ヴァスティナ騎士団しかいないだろう。彼らの錬度が高いのは、彼らを鍛えた女性騎士団長である、メシアの力あってこそだ。
「私も負けてはいられない」
「団長に獲物とられちゃ敵わねぇ。いくぜ!」
メシアが剣を振りまわす度に、敵兵が討ち取られていく。中には、横一線の斬撃によって、首を跳ねられた兵士もいる。戦場では軍神として恐れられる彼女に、正面から敵うジエーデル兵は存在しない。
そんな彼女に負けまいと、帝国参謀長の両腕であるレイナとクリスも、己の得物を握りしめ、猛然と立ち向かう。メシア、レイナ、クリスの三人が前線を切り開き、その後に、帝国軍と騎士団が続く。彼らだけでなく、王国残党軍も雄叫びを上げて突撃。兵力差をものともせず、戦局を有利に進め始めた。
「ミカズキ殿、レッドフォード殿!」
王国軍残党を率いている、元王都守備隊隊長のライオネスが、二人のもとへと駆けつける。レイナやクリスほどではないが、ライオネスも実力者である。剣を片手に敵兵を蹴散らしながら、二人に合流した。
「ライオネス殿!ご無事でしたか」
「そちらも無事で何よりだ。我々も帝国に続き、ジエーデル軍を突き崩す」
「そのまま魔法兵部隊の連中を根絶やしにしてやろうぜ。奴らは厄介だからな」
クリスの言葉にライオネスが頷く。
ジエーデル軍の魔法兵部隊の力は、ライオネスたち王国軍残党も、身をもって理解している。遠距離から一方的に、強力な魔法攻撃をかけるこの部隊の存在は、連合軍全体の脅威となっているのだ。
この部隊を排除すれば、敵軍に大きな損害を与える事ができ、味方が魔法攻撃に晒される事が無くなる。となれば、殲滅しない手はない。
「御二人の魔法で、この距離から攻撃をかけられればよいのだが・・・・・・」
「生憎、俺は魔法使うの苦手なんだよ。魔力も大した事ねぇしな」
「残念ながら、私が操れる炎魔法は微力です。炎を出して操るのが精々で、遠方まで炎を飛ばす事はできません」
二人は同様に、魔法を出して操る事しかできない。ジエーデルの魔法兵部隊のように、狙った地点目掛けて魔法を飛ばす事は、魔法専門ではない二人には、専門外なのである。
「魔法なんざなくても、俺の剣技だけで十分だぜ」
「我が槍に懸けて、魔法兵たちは殲滅して見せる。魔法など使わなくとも、距離を詰めてしまえばこちらに分がある」
「御二人の言葉は頼もしい限りだ。では急ぐとしよう、こうしている間にも、騎士団長殿は進軍を続けているからな」
何十人もの屍を築き上げながら、息一つ乱さず戦い続けるメシア。
しかし本当は、彼女と騎士団の前線参加は、万が一の場合を除いて、作戦内容には無かったのである。守らなければならない女王陛下を陣地に残し、彼女たちが前線に立ったのは、リックの作戦不参加が関係していた。
アングハルト救出で負傷したリックは、レイナとクリスと共に、前線で戦うつもりでいたのだが、怪我の具合的に作戦参加は不可能だった。そこで名乗りを上げたのが、メシアである。
女王ユリーシアから許可を貰い、前線に出ると、エミリオに頼んだメシア。
リックが前線に出れば士気は上がり、帝国軍は国のために命を懸ける。そうさせるリックがいないとなれば、戦力の低下に繋がってしまう。仕方なくエミリオは頼みを聞き入れ、騎士団の前線参加を認めたのである。
女王陛下を守り、帝国に勝利をもたらすため、彼女は自分の率いる騎士団と共に、最前線にその姿を現した。
女王ユリーシアの身は、メイド長であるウルスラと、彼女率いるメイド部隊が守っている。女王の許しを受け、メシアが護衛の任から外れ、前線に出るとウルスラに伝わった。するとウルスラは、戦場に出るメシアに対し、餞別の言葉を送っている。
彼女はこう言った。
「陛下に刃を向けた者を、生かして帰すわけには参りません。本当ならば私が殺りたいところですが、今回はお譲りします。ご武運を」
とてもメイドの言葉とは思えない発言。
偶々近くでその会話聞いてしまったイヴは、この時こう思った。
(帝国って危険な人しかいないよ・・・・・・。僕も大概だけど、あの二人には負けるかな)
こういった経緯があり、メシアは己の武を存分に披露しているのだ。
彼女を知るレイナとクリスからすれば、とても頼もしい存在である。だが、ライオネスからすれば彼女は、圧倒的な武を振るう、鬼神の如き存在だ。
こんな騎士のいる国と戦争をしたのかと思うと、対ヴァスティナ戦に自分が参加する事がなく、本当に良かったと思うライオネス。その思いと同時に、メシアたちの力があれば、ジエーデルに敗北する事はないと思えてしまう。
国が滅ぼされたあの時を、ライオネスは忘れる事ができない。眼前に映る憎むべき敵、ジエーデルを倒すため、帝国の力を利用している王国軍残党。しかし、利用しているのは帝国も同じである。
お互いを利用し合いながら、共通の敵を倒す。国を失ったライオネスたちにとって、帝国の猛者たちは頼りになる存在だ。故に、心に余裕が持てたライオネスは、勝利を信じて戦う。
この場で戦う誰も彼もが、勝利を信じて疑わない。何故なら、最強の軍神が先頭に立ち、連合軍を勝利に導こうとしているのだから。
「勝利は我らにあり!!怯むことなく前進せよ!」
「メシア団長に続くのだ!はああああああっ!!」
「邪魔すんなよ槍女!おらああああああっ!!」
「帝国に後れを取るな!オーデル王国の意地を見せる時は今だぞ!!」
戦局は動いた。
ジエーデルの魔法兵部隊を排除するため、敵軍を突き崩していく連合軍。反撃のための、敵軍の魔法攻撃が飛来したが、連合軍は恐れず突撃し続ける。飛来した炎魔法が襲いかかろうとも、攻撃に怯むことない連合軍兵士に、ジエーデル兵は脅威と恐怖を覚え始めていた。
だが、これ以上の突撃を許すまいと、連合軍の前にジエーデルの虎の子の戦力が、その姿を現す。
「もうここまで来たか」
「どうする?なあどうするよ?」
「殺すに決まってるだろ。皆殺しだ」
「けっけっけっ!やっと出番が来たな、おい!」
現れた四人の男たち。
一人は三十代後半の中肉中背の男。残りの三人は、顔がそっくりの若い男たちである。
周りのジエーデル兵とは違う雰囲気に、突撃を止めて様子を窺う連合軍。四人の登場に、先程まで劣勢であったジエーデル兵たちは、急に士気を取り戻す。
「カラミティルナ隊か」
「如何にもそうだ。昨日はうちの一人が世話になったな」
エミリオにカラミティルナ隊の存在を聞いていたメシアは、現れた相手がそれであると気付く。
敵軍の一般兵士とは違い、軍服を着用していない。私服だと思われる自由な格好をし、鍛えられてはいなさそうな身体つきをしている。
カラミティルナ隊の人間は、元々民間人であった者も多い。特殊な魔法を開花させたために、ジエーデル軍に徴兵されたのだ。緒戦で戦死したエギルも、現れた彼らも、元は軍人ではなかった。特に軍紀もなく、一般の兵士より自由が許されている。
彼らに与えられている基本の命令は、総統閣下のために命を捧げ、国家に勝利をもたらせというものだ。勝利を約束できれば、基本的に何をやっても許される。それが彼らの特典であるのだ。現れた四人の自由な服装も、その特典によるものである。
「エギルの仇をとるつもりはないが、これも仕事なのでな。ここで死んで貰おうか」
「なあなあオーギュスト、もう殺しちまっていいだろ?」
「まったく、この三つ子は堪えを知らん。そんなにやりたければ好きにしろ」
顔がそっくりの若い男三人は、歳が同じの三つ子である。この三つ子もまた、特殊な魔法を使いこなす、カランティルナ隊の戦力だ。この三人もエギル同様、殺戮に飢えた獣である。殺しの快楽を知ってしまった、危険な狂人たちなのだ。
「こいつらがカラミティルナかよ。大した事なさそうだな」
「下郎共め。おい破廉恥剣士、わかっているな?」
「返り討ちにしてやればいいんだろ。てめぇに言われるまでもないぜ」
対峙した、連合とジエーデルの精鋭。
前に歩み出た三つ子の三人に対し、正面から立ち向かうのはレイナとクリスである。メシアは後ろに三つ子の控える、オーギュストと呼ばれた男を警戒して動かない。ライオネスは二人に加勢しようとしたが、二人は片手を上げて彼を止めた。
これは自分たちの相手だと、二人の背中は語っている。二人の邪魔になってはいけないと、加勢する事を止めたライオネス。
三つ子がレイナとクリスを獲物に定め、襲いかかろうと身構える。レイナとクリスも、それぞれの得物を構えた。
「あいつら知ってるぜ。昨日暴れまわってた帝国の兵士だ」
「じゃあ強いんだろうな?もっとも、俺らには敵わねぇだろうが」
「殺す?なあ殺す?」
下衆な笑みを浮かべて、目の前の獲物をどう料理するか考えている三つ子たち。明らかに彼らは、頭がイカレている。人間を殺す事しか頭になく、人殺しを楽しんでいるのだ。
そんな三つ子を、冷ややかな目で見るレイナとクリス。二人は恐ろしく冷静で、集中力を高めていた。
現れた四人は、武器らしいものを一切身に付けていない。恐らくは、特殊な魔法攻撃だけで敵を殺すのだろう。相手の魔法が不明である以上、一部の油断も許されない。故に二人からは、油断も慢心も全く感じられない。逆に三つ子たちは、隙も多ければ油断も大きい。だが、三つ子がわざとそのように振る舞い、誘っている可能性もある。
この時、二人を見守っていたライオネスは、誘われている可能性を考えていた。相手の出方がわからない以上、下手に攻撃をかけるべきではないと考える。
「よし、いつも通りにやるぞ」
「わかったぜ、俺たちの魔法でぶっ殺してやる!」
「皆殺しだ!!」
「おい見てろよ!これが俺たちの必殺まほ-------」
ズドンっ!!
・・・・・・弾丸が三つ子の一人を撃ち貫いた。
頭のど真ん中に、ライフル弾が一発命中。魔法を叫ぼうとしていた三つ子の一人が、叫び終える前に、撃たれて死んだ。
そう、死んでしまった。意図も容易くあっさりと・・・・・・。
「「にっ、兄ちゃああああああああんっ!!!」」
撃たれたのは、一番上の兄であった。弟たちの衝撃は凄まじく、撃ち殺された兄の死体へと急いで駆け寄る。それが命取りになると、全く気が付かないまま・・・・・・。
「「はあっ!!」」
電光石火、神速必殺の一撃。
槍の切っ先が、片方の弟の心臓を捉え、正確かつ一瞬で貫いた。それと同時に、もう片方の弟の首が、一瞬にして斬撃により、跳ね飛ばされる。反応する暇もなく、気が付けば胸に槍が突き刺さっていた弟と、何が起こったか理解できていない表情のまま、宙を舞うもう一人の弟の首。
ジエーデル軍精鋭部隊、カラミティルナ隊所属の三つ子たちは、名乗る事も、自慢の魔法を披露する事もなく、ここで死んだ。
「・・・・・・・・・・・」
唖然としている最後の一人。
多くの者たちに恐れられ、戦場に血の雨を降らせる事で有名な、カラミティルナ隊の一員が、目の前で瞬殺されたのだ。この部隊に入って長いオーギュストでも、こんな光景を見るのは、初めての事である。
「今のはイヴの狙撃か」
「余計な事しやがって。連中なら俺一人でも十分だったぜ」
三つ子を瞬殺したレイナとクリス。
連合軍兵士からは歓声が上がり、ジエーデル軍兵士からは恐怖の対象となった。
「しっかし、どんな魔法だったんだろうな?女装男子がいきなり撃ち殺しやがったから、つい動いちまったぜ」
「イヴの狙撃で奴らに大きな隙ができた。おかげで、魔法を使われる前に倒せたのだ。文句を言う必要はないだろう」
カラミティルナ隊を倒したというのに、誇りも喜びもしない二人。
レイナとクリスからすれば、魔法さえ出させなければ、倒すのは余裕であった。三つ子もオーギュストも、基本的には魔法頼みである。つまり、魔法がなければ戦闘力は皆無だ。
よって二人は、対カラミティルナ戦が起こった場合の戦術を、戦闘開始前から考えていた。そして、二人の出した結論が「魔法を出させる前に倒せばいい」という、如何にも二人らしい、シンプルな考えであったのだ。
今回はイヴの狙撃があったが、狙撃がなくとも、三つ子が技を出す前に、一撃で討ち取ろうと決めていた。ライオネスのように、相手の出方がわからないから、攻撃をかけないという考えは、最初から存在しなかったのである。
「わっ、技を出すまで待つとか、名乗るまで待つとか、お前たちにそういった考えはないのか・・・・・・」
「「ない」」
オーギュストの言葉に、同時に答えたレイナとクリス。
それが気に入らなかったようで、急にお互い睨み合う。いつもの喧嘩の勃発だ。
「おい槍女、てめぇわざと被らせてんのか?喧嘩売ってるだろ」
「私ではなく貴様がだろ、破廉恥剣士」
「斬るぞこの野郎」
「貴様が斬りつけるより速く、私の槍で討ち取るぞ」
「上等だ糞野郎、やってみやがれ!!」
「いいだろう破廉恥剣士!そこになおれ!!」
戦場のど真ん中でこの二人は、目の前の敵を無視して喧嘩を始める。見慣れた者たちからすれば平常運転で、ため息をついてしまう程度だが、初めての者たちからすれば、まさに異常な光景だろう。
ライオネスや王国軍残党の兵士たちは、どうすればいいのかと、おろおろするばかり。どうもする必要はないのだ。ただ、放っておけばいい。
「団長殿・・・・・・」
「気にするな、この二人はいつもこうだ」
「そっ、そうですか・・・・・・」
「それよりも、残りのカラミティルナを倒す事だけを考えろ」
そう、戦いはまだ終わってはいない。
カラミティルナ隊の一人、オーギュストを倒さなければならない。特殊魔法の使い手であるこの男がいると、味方にどんな損害が出てしまうかわからない。そして、カラミティルナに対抗できるのは、帝国の猛者だけだ。
三つ子たちはレイナとクリス、そしてイヴの狙撃によって倒された。後方で射撃姿勢をとっていたイヴは、偶然三つ子の姿をスコープに捉え、躊躇いなく引き金を引いたのである。
恐らく、噂のカラミティルナだろうと思い、二人の支援のために射殺した。しかしイヴは、これで最後の弾薬を使い切る。緒戦と同じで、今日も開戦早々に射撃支援を行なっていたイヴは、遠距離から一方的に敵兵を射殺していた。
一人で相当数の敵兵を殺し、味方の進軍を陰ながら助けていたのだが、その分弾薬の消耗も激しかったのである。もしも弾が残っていれば、今頃オーギュストも撃ち殺されていただろう。この男がまだ生きていられるのは、運が良かったと言える。
「三つ子はやられてしまったが、ここで退くわけにはいかん。いいだろう、我が魔法を見せよう!」
「させない!」
「くたばれ!」
魔法を出そうとしたオーギュストへ、レイナとクリスが駆け出し、一気に距離を詰める。
槍と剣が、目にも止まらぬ速さで繰り出され、オーギュストの身体を刺し貫こうとした、その時だった。
「「!!」」
オーギュストの肌が変化した。先程までは、極普通の肌色であったが、鉛のような色に肌が染まる。
二人の得物が男の胸を刺し貫こうとしたが、その刃は弾かれてしまった。弾かれてしまったのだ、人間の皮膚に。これまで、簡単に人を切り裂いてきた二人の刃が、オーギュストの身体を貫けず、甲高い音とともに弾かれる。魔法の発動が早かったために、発動前に倒す事ができなかった。倒せないと分かるや否や、一度距離を取り、様子を窺う二人。
「これが鋼鉄の魔法だ。我が肉体は今まさに、鋼と化した!」
基本の六つの属性魔法に属さない、特殊な魔法。
この男の特殊な魔法は、身体の鋼鉄化である。鋼となった身体は、どんな武器の攻撃も通さず、鋼となった拳は、どんな人間だろうと、一撃で殴り殺す、まさに攻防一体の魔法なのである。
オーギュスト自身、この魔法に絶対の自信を持っている。六つの属性魔法の攻撃すら通さない、この鋼の肉体を作り出す魔法こそ、最強クラスの魔法であると信じて疑わない。実際、この魔法が打ち破られた事は未だになく、カラミティルナ隊の中でも、オーギュストの立ち位置は、実力者の部類だ。
「この硬さ・・・、炎魔法も通らないか」
「厄介な奴だぜ」
早速攻略法を考え始める二人。だが、有効な方法が思いつかない。
この魔法が発動していられる時間も不明で、どれほどの攻撃に耐えられるのかもわからない以上、これは仕方がない。
「私がやろう」
二人が手を拱いていると、眼前の敵を討ち取るため、最強の女性騎士が前に出た。
右手に剣を、左手に盾を持つ騎士団長メシアが、魔法の使い手相手に勝負を挑む。
「メシア団長!」
「ちょっと待てよ、俺はまだやれるぜ!」
レイナとクリスは当然反論する。自分たちはまだ負けたわけではない、よって騎士団長の出番はないと言いたいのだ。これは、戦士としてのプライドだった。
しかしメシアは、そんな二人のプライドを無視する。
「覚悟はいいか」
「次はお前が相手か。女だからといって手加減は------」
「いくぞ!」
「なっ!?話は最後まで聞け!」
レイナとクリスよりも速く、一瞬で距離を詰めるメシア。
己の剣を高く振り上げ、鋼鉄と化したオーギュストを斬ろうとする。
「ばかめ!そんな剣で我が身体に傷がつけられるものか!!」
魔法に絶対の自信を持つ故に、迫る彼女の攻撃を回避しようとは考えない。
その場を動かず、振り下ろされようとしている剣を待つ。自らの身体で剣を弾き返し、相手に絶望を与えるためだ。自分の身体を傷つけようとして、剣や槍で攻撃をかけるが、全く効果がないのを理解し、愕然となる表情が見たい。それがオーギュストの、戦場での楽しみである。
だからこそ動かない。真っ向からメシアに対峙する。
「はああああああああああっ!!!!」
「!!?」
しかし、それは愚かな選択であった。
凄まじい雄叫びと、鬼神の如き気迫で振り下ろされた刃。メシア渾身の一撃は、目にも止まらぬ速さで振り下ろされ、オーギュストの頭上に迫る。
剣はオーギュストを、金属同士がぶつかり合う音とともに、頭から叩き切った。頭のてっぺんから股まで一直線に、斬撃が男を切り裂いたのである。二つに割れた男の身体は、左右に分かれて地面に倒れる。
切り裂かれた傷口から大量出血し、血の池を作ってしまうオーギュストの死体。
対してメシアは、叩き切った衝撃で砕け散った剣を捨て、死体を一瞥。オーギュストの死を確認すると、次の敵をジエーデル兵と定めて、彼らを睨む。
敵も味方も、目の前で起こった信じられない光景に、開いた口が塞がらない状況だ。
カラミティルナ隊の全滅を受け、大きく士気を低下させ、帝国の猛者たちに恐怖するジエーデル兵士たち。鋼の肉体を一本の剣で、一撃のもとに切り伏せたメシアの睨みに、逃げ出してしまうジエーデル兵も出始めた。恐怖は伝染し、軍団に動揺が奔る。指揮系統は混乱し、最早戦闘どころではない。
「「「・・・・・・・・」」」
「どうした?何か言いたそうだな」
振り向いたメシアは、後ろで唖然としていた、レイナとクリスとライオネスを見る。
三人の言いたい事は同じだ。
「普通鋼鉄の男を・・・・・・真正面から叩き切りますか・・・・・」
「無茶苦茶すぎんだろ・・・・・・・」
「こっ、これが・・・・・・帝国騎士団長の力なのか・・・・・・」
恐怖、驚愕、唖然、そして呆れ。もっと他の方法があったのではないのかという、三人の共通の感想。
実はオーギュストの鋼鉄化魔法には、いくつかの弱点があった。その一つは目であり、眼球だけは鋼鉄にできないという欠点があったのである。
まあ今となっては、弱点の事など、もうどうでもいい事ではあるのだが・・・・・・。
「あの程度の硬さならば斬れる範疇だ」
「「あの程度!?」」
「敵の精鋭は排除した。後は・・・・・・」
後は、ジエーデルの魔法兵部隊を排除するだけだ。
士気ががた落ちした今のジエーデル軍が相手ならば、敵中突破は容易であるだろう。
その考えから、騎士団に突撃の指示を出そうとした瞬間、後方から敵軍の反撃が襲いかかる。カラミティルナ隊を倒したメシアたちを、連合軍最大の脅威と考えた敵軍は、弓兵と魔法兵部隊を集中運用し、後方から全力攻撃をかけ始めた。
一斉に降り注ぐ炎魔法と矢の雨。これには堪らず、帝国軍と騎士団、それに王国軍残党の兵士たちは、直撃を避けようと後ろに下がる。だが、一部の兵たちは回避が間に合わず、魔法と矢に襲われて負傷する。
「後退するぞ」
メシアはすぐさま後退を決意。騎士団に指示を出し、負傷した仲間を助けながら後退を始める。
レイナとクリス、そしてライオネスも、敵軍の攻撃でこれ以上の被害を出さないよう、彼女に倣って後退の指示を出した。内心後退はしたくないが、ここで大切な兵を失うわけにはいかない。一度立て直すために、負傷した兵を助けつつ、少しずつ前線から下がっていく。
ライオネスの王国軍残党が、率先して殿を務め、帝国の後退を支援している。ジエーデルに最も損害を与えている帝国に負けまいと、ライオネスも兵たちも、自ら殿を買って出たのである。
(予定通りか)
この後退もまた、エミリオに前もって言われていた。敵軍の全力魔法攻撃が始まれば、無理せず後退する。これは全て、予定通りであった。
後退の指示が早かったため、大きな損害を受ける事のなかった連合軍。負傷した兵は何十人もいるが、健在な兵たちが負傷兵を助け、動けない者は運んでいる。指揮官の一人であるライオネスも、負傷兵の救出を率先して務めていた。
「いいか、仲間を決して見捨てるな!ここは我らの死地ではないぞ!!」
メシアの檄が飛ぶ。彼女に応える、勇猛果敢な連合軍の戦士たち。
負傷した者を一人も見捨てる事なく、連合軍は前線より後退していった。
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