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第四十話 破壊の神
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「もうほんとびっくりしたんだよ。王子に会いに行って勇者に襲われるって、俺にもエミリオにも予想外だったからさ」
ヴァスティナ帝国国防軍陣地、仮設作戦司令所。それは、帝国国防軍陣地内に設置された、作戦会議を行なうための天幕である。
広く大きな天幕の中に、会議用の長机。机の上には、戦場となっている大平原の地図が広げられ、いくつかの駒が置かれている。長机の周りには椅子が置かれており、会議に集まった帝国国防軍の幹部達が、椅子に腰かけ、最高司令官である男の話に耳を傾けていた。
最高司令官の席に座り、今日あった出来事の話をしているのは、ヴァスティナ帝国国防軍総帥リクトビア・フローレンス。親しい者達からはリックと呼ばれている、帝国の狂犬の異名を持つ将軍だ。
「ヴィヴィアンヌが来なかったら危うく殺されてた。ありがとう、助かったよ」
「閣下の身の安全を守るのが親衛隊の務めです。閣下にお怪我がなく、安心致しました」
「エミリオもありがとう。間に合ってなかったけど、俺の盾になってくれようとしただろ」
「感謝なんてとんでもない。寧ろ、何もできなかった私を許して欲しい」
リックの感謝の言葉に答えたのは、帝国国防軍親衛隊隊長ヴィヴィアンヌ・アイゼンリーゼと、参謀長エミリオ・メンフィスである。二人共、彼の話題の現場にいたのだ。
「参謀長が謝る事ありませんわ。どうせこの人、殺しても死なないですもの」
「ミュセイラお前、後で絶対泣かす」
お互い仲が悪いため、いつもの様にリック相手に火花を散らすのが、参謀のミュセイラ・ヴァルトハイムである。話を聞いていた彼女は、終始微塵も心配した素振りは見せず、寧ろ残念そうに話を聞いていた。
彼女の他にも、帝国国防軍の幹部は揃い踏みである。
各戦闘技術に長けた精鋭部隊を率いる、レイナとクリス、ヘルベルトやゴリオンやイヴに加え、第一戦闘団の指揮官アングハルトに、技術開発本部主任のシャランドラと、おまけでライガの姿もある。集まった者達の中で、現場にいた者以外はリックの語った話に驚き、興味津々な様子を見せていた。
事件は夕方に起こった。
グラーフ同盟軍の最高司令官アリオンへの挨拶に行ったリックは、そこで一人の勇者に命を狙われた。その勇者の名はルーク。大剣の勇者と呼ばれている、勇者連合所属の勇者である。
だが彼には、もう一つの顔があった。それは、滅亡した大国オーデル王国の王子、ルーク・クラウダ・オーデルという顔である。彼は勇者であり、滅亡した国で生き残った、最後の王族だったのだ。
「隊長がぶっ殺したオーデルの王族の生き残りとはな。恨まれてもしょうがねぇか」
「勇者ってところが面倒やな。復讐に来るなら返り討ちにするとこやけど、連合と喧嘩になりそうやんか」
「関係ねぇよ。次やってきたら俺が叩き切ってやる」
リックに復讐しようとしているルークは、彼によって家族を殺された。それがきっかけとなって、国も滅んだのである。家族と国の仇として、ルークはリックを殺そうとした。それだけの事があれば、恨まれるのも無理はない。
「将軍閣下。今の話で勇者の復讐の動機は理解できましたが、その後勇者はどうなったのでしょうか?」
「いい質問だなアングハルト。みんなも気になってるみたいだし、続きを話すか」
夕方突然起こった勇者の復讐劇。あの後何が起きたのか、話の続きをリックは語り出す。
時間は数時間前まで遡る⋯⋯⋯。
「リクトビア!!今ここで、兄さんと父さんの仇を討つ!」
怒りと殺意に支配された剣幕で、リックを睨み付けたルーク。得物である自身の大剣を構え、切っ先をリックに向け、彼の命を奪う事だけに集中する。
相手はリックが生んでしまった、過去の亡霊だった。口で説得できる相手ではない。彼の復讐を止めるためには、武力を行使する以外になかった。故に、復讐の刃からリックを守るため、槍を構えたレイナが彼の盾となり、ヴィヴィアンヌがルークの前に立ちはだかる。
「どけよ!!俺と戦うと怪我するぜ!?」
「特殊魔法が使える程度で吼えるな、腐った王族の亡霊が。貴様の国が滅んだのは、王族の業の深さだと知るがいい」
ここでリックの命を奪おうとする、勇者ルークの刃を阻む存在は、現ヴァスティナ帝国最強と言える存在の、親衛隊隊長ヴィヴィアンヌだった。その彼女が、リックの命を脅かしたルークに対し、猛烈な怒りと殺意を放っている。勇者だけあり、ルークの実力は確かなものだが、纏う風格の大きさが、ヴィヴィアンヌの方が格上であると告げていた。
ルークが動けば、ヴィヴィアンヌは彼よりも速く動き、得物である二本のナイフで、彼の首を一瞬で刎ねてしまうだろう。戦う前から、既に勝敗は決しているのだ。
普段のルークであれば、相手との実力の差を直感で知る事が出来る。だが今の彼は、完全に冷静さを欠いている状態だった。実力差を感じていても、リックに対しての憎悪に駆られ、勝ち目のない勝負を挑もうとしてしまう。
「ヴィヴィアンヌと話してるところ悪いが、お前に殺されるわけにはいかない」
「!!」
襲われた瞬間から、一言も発していなかったリックが、ルークに向けて口を開いた。
自分の命を捨てるつもりはない。声を発したリックの顔は、ルークに対する同情も、己の行動に対する後悔も見せてはいない。ただ落ち着いてルークを見据え、言葉を続けた。
「あの王子も、あの王様も、俺がこの手で殺した。言っとくが、後悔は微塵もない」
「ああそうだろうな!お前は人殺しを愉しんでる糞野郎だ!!」
「奴らは許されない罪を犯した糞野郎共だったから、仲良くぶっ殺してやったんだよ」
リックの脳裏に蘇る、絶望的な戦力差の戦いを強いられた、二つの戦争の記憶。どちらもそれは、大国オーデル王国との戦争だった。その戦争でリックは、今も忘れぬ多くの犠牲を払いながら、ヴァスティナという国のために戦った。
「自分達で国を腐敗させておきながら、王族に反発する民を納得させるため、無関係だった南ローミリアへの侵攻を企てた。あの二人を殺していなければ、ヴァスティナの街は焼かれ、民は死に絶えていた。国で善政を敷いていた女王陛下も、連中は処刑する気でいた」
「⋯⋯⋯⋯⋯!」
「俺達はな、お前の国の馬鹿共が力で侵略にやってきたから、守るべきもののために戦った。お前が俺を恨むのは仕方ない。だがお前は、オーデルとの戦いで死んでいった帝国の戦士達の仇として、俺に討たれる覚悟はあるんだろうな?」
瞬間、リックの纏う空気が変わった。彼をよく知る者達は何度も感じた事のある、溢れ出して止まらなくなる彼の怒りと殺意だ。
あの戦争で死んでいった者達を、リックは今も忘れてはいない。絶望的な戦局を覆す、奇跡の作戦。その作戦を成功させるために、彼は多くの兵士に「勝利のために死ね」と命令した。
自分がもっと強ければ、もっと賢ければ、皆を死なせずに済んだかもしれない。今も尚、あの時の己の無力さを後悔し、二度と繰り返さぬと誓い続けている。そんな彼でも、「あいつらが侵略にやって来なければ」と思ってしまう。
腐敗したオーデルの王族が、自分達を守るために始めた戦争。彼らさえいなければ、あの戦争で多くのヴァスティナの戦士達が、戦場で命を落とす事などなかった。
「俺を殺したければかかって来い。返り討ちにしてやる」
「閣下、この男の始末は私にお任せを。勇者と言えど、先に仕掛けた以上は死んで貰う」
今もリックを苦しめる、自分とオーデルへの怒りと、失われた命への悲しみ。苦悩し続ける彼の心を、ヴィヴィアンヌは痛いほど知っている。だからこそ、彼女は目の前のルークを憎んだ。
ここで殺しておかなければ、今後のリックの脅威となるだけでなく、彼を苦悩させる原因になり続ける。眼前で刃を向ける存在が、守るべきリックの癌であると考えたヴィヴィアンヌは、この場でルークを排除する気なのだ。今の彼女には、相手が勇者である事や、勇者連合との関係悪化など、全く眼中にはない。
「さあ、私に殺される覚悟が出来たなら向かって来い。まさか、あれだけ啖呵を切っておいて怖気付いたのか?」
「黙れよ!!それじゃあ望み通り、俺から行かせて貰うぜ!!」
彼女を倒さなければ、リックを討つ事は出来ない。一歩も退く気を見せない彼女に、他の人間を巻き込みたくなかった彼は、覚悟を決めた。
大剣の切っ先をヴィヴィアンヌへと向け、勇者ルークは力強く地面を蹴って駆け出そうとする。
「!?」
ルークが駆け出そうとした瞬間、五人の兵士が飛び出して、彼を後ろと左右から取り押さえにかかった。兵士達は全体重をかけてルークに圧しかかり、彼の手足を掴んで自由を奪う。大剣を握っていた右手は、押さえつける力が特に強かった。
五人の兵士は、ルークが身動きできないよう、身体を張って拘束したのである。その兵士達は、彼の周囲を取り囲んでいた同盟軍の兵士ではなく、リックを護衛していた、ヴァスティナ帝国国防軍の兵士であった。
「王子!どうかこの場は剣をお収め下さい!」
「なんだお前らは!?俺の邪魔をするんじゃねぇ!!」
「アイゼンリーゼ隊長は無敵です!王子の力では到底太刀打ちできません!」
「知るかよ放せ!!帝国の兵士なんかに心配されたくねぇよ!!」
ヴィヴィアンヌの実力を知っている彼らからすれば、ルークを取り押さえる必要などない。何故なら、彼らがこんな事をしなくても、リックの安全は約束されているからだ。
しかし彼らは、それを承知でありながら、ルークを王子と呼んで取り押さえたのである。その理由は、元々彼らがヴァスティナ帝国の兵士ではなかったからだ。
「我らは王子の顔を覚えておりましたが、王子はもうお忘れの様ですね」
「なに⋯⋯⋯!?」
「我らは、オーデル王国軍の生き残りです。ライオネス隊長が我々の指揮官でした」
「!!」
身体の自由を取り戻すため、懸命に暴れていたルークの動きが止まる。取り押さえにかかった兵士の言葉で、ルークはようやく悟った。
オーデル王国はヴァスティナ帝国との二度に渡る戦争で、国を支配する国王と王子を失った。それがきっかけとなり、独裁国家ジエーデル国の侵攻を許す事となり、国は滅亡したのである。ルークを取り押さえた兵士達は、国を守るために戦うも力及ばず、再起を図って脱出した、元オーデル王国軍王都守備隊の残党だった。
生き残りを率いていた彼らの隊長は、ライオネスという男だった。彼は王国の残党軍を率い、ヴァスティナ帝国軍と共に、南ローミリア侵攻を企てたジエーデル国と戦ったのである。ライオネスと、彼が率いた残党軍の活躍もあって、帝国はジエーデルに勝利を収めたのだ。帝国にとっても、そして生き残った王国の兵士達にとっても、彼は英雄となった。
そしてルークにとって、ライオネスは彼に剣を教えた者の一人だった。彼がまだ勇者ではなく、王国の王子だった頃、剣の扱い方や戦い方はライオネスに習ったのだ。自分の師とも言える男の事を、ルークは今でも覚えている。
ライオネスを知っていた事で、ルークは彼らが本物の王国軍の生き残りだと知った。まさか、王国の滅亡の後も生き残っていた兵がいたと知らず、驚きを隠せないルーク。復讐の心は一旦忘れ、彼は生き残りの彼らに問いかけた。
「生き残った兵がいたなんて知らなかった⋯⋯⋯⋯⋯。じゃあ、ライオネスもここにいるのか!?」
「⋯⋯⋯⋯⋯何もご存知ないようですね。ライオネス隊長は既にこの世を去りました」
「しっ、死んだのか⋯⋯⋯!あのライオネスが!?」
「フローレンス将軍と共にジエーデルと戦い、負傷した兵を助けようとして戦死されました。隊長は最後まで、仲間思いの勇敢な御方でした⋯⋯⋯⋯!」
師であるライオネスは、もう既にこの世にいなかった。何も知らなかったルークは、たった今聞いたライオネスの死の事実に耳を疑い、一人衝撃を受けている。
話しはそれだけで終わらない。ライオネスが戦死したあの瞬間の、彼の最後の言葉を思い出しながら、兵士は言葉を続けた。
「ライオネス隊長の遺言に従い、ジエーデルとの戦いで生き残った我らは、そこに居られるフローレンス将軍閣下に従うと決めたのです」
「なんだって!?そいつは王国の敵だぞ!」
「我々にとっては違います。将軍閣下は残党であった我らに勝利をもたらし、ライオネス隊長の遺言に従って、我らを自軍に加えて下さったのです」
「ふざけるな!!そいつのせいで兄さんと父さんが死んだんだ!」
「⋯⋯⋯⋯⋯ライオネス隊長も仰っていましたが、それは自業自得の結果です」
「⋯⋯⋯⋯⋯!」
王国が滅んだ後、生き残った彼らがどう生きてきたか、何も知らないルークからすれば耳を疑う話だ。怒りを覚える事でもある。元は王国に忠誠を誓った彼らが、憎むべき仇敵と言える存在に従い、今はこうして自分を拘束している。
今の彼らは、ルークにとって敵と言えた。ライオネスの遺言の話も、彼にとっては信じられない話である。だがこれは、全て事実だった。
「国を出て勇者となった王子には理解できないでしょう。いや、王子は昔から、世の中の事が何も分かってはいなかった」
「どういう意味だよ⋯⋯⋯⋯!?」
「王子は城で守られて育ちました。だから王子は、王国の腐敗も、苦しむ民の姿も知らずにいた」
「そっ、それは⋯⋯⋯⋯」
「ヴァスティナ帝国は我々の敵ではなかった。国を腐敗させた者達の愚かな考えが、御二人を死なせ、国を滅亡させたのです。それなのに侵略者であった我々を、フローレンス将軍も女王陛下も快く迎え入れました」
彼らの言う通り、当時リックも帝国女王も、生き残った彼らを咎める事はなく、新たな帝国の民として平等に扱った。だからこそ、今も彼らは帝国の兵士として、リックの護衛の任に就いたのである。
そしてルークは、自分の存在、自分の言葉に、彼らが湧き上がる怒りを必死に抑えていると、ようやく気付く。滅亡する以前の王国を知る者達の前では、ルークは王国の事を何も分かっていなかった、無知で愚かな元王族だったのである。
「最初は千人いた仲間達も、ジエーデルとの戦いで七百となり、今日までの戦いで四百になりました。それでも、今日まで我々が生き抜いてこられたのは、あの日ライオネス隊長の遺言に従って下さったフローレンス将軍のお陰なのです」
「仲間達の中には、今の暮らしの中で結婚し、幸せな家庭を築いている者だっている。我々は将軍にお返し出来ない程の大恩があるんです。だから、あなたに将軍を殺させはしません」
「それでも我らは、一度はオーデル王国に忠誠を誓った兵士です。ここで将軍閣下への復讐を止めさせ、アイゼンリーゼ隊長からあなたの命を救う事を、最後の忠義とさせて頂きます」
彼らはヴァスティナの兵としての責務を果たし、オーデルの兵であった事への忠義を示した。今は存在しない、一度は忠誠を誓った国と王族に対し、王族最後の生き残りであるルークの命を守る。それが彼らの、最後の忠義となった。
彼らの忠義、彼らの言葉、彼らの怒りを知ったルークは、何も言い返せなかった。ルークは沈黙し、全身の力を抜いて抵抗を止めた。復讐の意志が消えたわけではないが、今は復讐の事よりも、彼らに言われた言葉が心に突き刺さっている。彼は今日、初めて自分の国の人々の、真の声を聞いたのだ。
ルークを取り押さえていた彼らは、暴れなくなった彼の拘束を解き、後の事を周りの同盟軍兵士に任せて離れた。彼らはヴィヴィアンヌの前に横一列で並び、一人が代表して口を開く。
「アイゼンリーゼ隊長。どんな処罰も覚悟しております」
「閣下の命を狙う者を生かした罪は重い。わかっているな?」
「はい」
彼らは自分達の忠義を果たし、自分達の罪から目を背けはしなかった。今の彼らはヴァスティナの人間であり、ヴァスティナ帝国と女王のために戦う兵士だ。国を守る軍隊の最高司令官であり、女王に絶対の忠誠を誓うリックを狙う存在は、決して生かしてはならない。
彼らは覚悟を決め、処罰を受けるためにヴィヴィアンヌの前に並ぶ。処刑すら覚悟している彼らに、鋭い眼光のままヴィヴィアンヌが口を開きかけるが、それを止めたのはリックだった。
「ヴィヴィアンヌ、何もしなくていい。用は済んだから戻る」
「⋯⋯⋯⋯⋯了解致しました。貴様達、閣下の護衛に戻れ」
「しかし隊長、我らは⋯⋯⋯⋯⋯」
「聞こえなかったのか?貴様達の罪は閣下への忠誠で償えと言っている」
「⋯⋯⋯⋯⋯はっ!!」
リックは彼らを咎めはしなかった。エミリオとレイナを連れ、振り返った彼はこの場を後にしていく。ヴィヴィアンヌの許しを得た彼らは、すぐさまリックのもとに駆けて行き、彼の護衛を再開するのだった。
こうして、勇者ルークの復讐劇は誰の血も流れる事なく、沈みゆく夕陽と共に、一旦静かに幕を閉じたのである。
ヴァスティナ帝国国防軍陣地、仮設作戦司令所。それは、帝国国防軍陣地内に設置された、作戦会議を行なうための天幕である。
広く大きな天幕の中に、会議用の長机。机の上には、戦場となっている大平原の地図が広げられ、いくつかの駒が置かれている。長机の周りには椅子が置かれており、会議に集まった帝国国防軍の幹部達が、椅子に腰かけ、最高司令官である男の話に耳を傾けていた。
最高司令官の席に座り、今日あった出来事の話をしているのは、ヴァスティナ帝国国防軍総帥リクトビア・フローレンス。親しい者達からはリックと呼ばれている、帝国の狂犬の異名を持つ将軍だ。
「ヴィヴィアンヌが来なかったら危うく殺されてた。ありがとう、助かったよ」
「閣下の身の安全を守るのが親衛隊の務めです。閣下にお怪我がなく、安心致しました」
「エミリオもありがとう。間に合ってなかったけど、俺の盾になってくれようとしただろ」
「感謝なんてとんでもない。寧ろ、何もできなかった私を許して欲しい」
リックの感謝の言葉に答えたのは、帝国国防軍親衛隊隊長ヴィヴィアンヌ・アイゼンリーゼと、参謀長エミリオ・メンフィスである。二人共、彼の話題の現場にいたのだ。
「参謀長が謝る事ありませんわ。どうせこの人、殺しても死なないですもの」
「ミュセイラお前、後で絶対泣かす」
お互い仲が悪いため、いつもの様にリック相手に火花を散らすのが、参謀のミュセイラ・ヴァルトハイムである。話を聞いていた彼女は、終始微塵も心配した素振りは見せず、寧ろ残念そうに話を聞いていた。
彼女の他にも、帝国国防軍の幹部は揃い踏みである。
各戦闘技術に長けた精鋭部隊を率いる、レイナとクリス、ヘルベルトやゴリオンやイヴに加え、第一戦闘団の指揮官アングハルトに、技術開発本部主任のシャランドラと、おまけでライガの姿もある。集まった者達の中で、現場にいた者以外はリックの語った話に驚き、興味津々な様子を見せていた。
事件は夕方に起こった。
グラーフ同盟軍の最高司令官アリオンへの挨拶に行ったリックは、そこで一人の勇者に命を狙われた。その勇者の名はルーク。大剣の勇者と呼ばれている、勇者連合所属の勇者である。
だが彼には、もう一つの顔があった。それは、滅亡した大国オーデル王国の王子、ルーク・クラウダ・オーデルという顔である。彼は勇者であり、滅亡した国で生き残った、最後の王族だったのだ。
「隊長がぶっ殺したオーデルの王族の生き残りとはな。恨まれてもしょうがねぇか」
「勇者ってところが面倒やな。復讐に来るなら返り討ちにするとこやけど、連合と喧嘩になりそうやんか」
「関係ねぇよ。次やってきたら俺が叩き切ってやる」
リックに復讐しようとしているルークは、彼によって家族を殺された。それがきっかけとなって、国も滅んだのである。家族と国の仇として、ルークはリックを殺そうとした。それだけの事があれば、恨まれるのも無理はない。
「将軍閣下。今の話で勇者の復讐の動機は理解できましたが、その後勇者はどうなったのでしょうか?」
「いい質問だなアングハルト。みんなも気になってるみたいだし、続きを話すか」
夕方突然起こった勇者の復讐劇。あの後何が起きたのか、話の続きをリックは語り出す。
時間は数時間前まで遡る⋯⋯⋯。
「リクトビア!!今ここで、兄さんと父さんの仇を討つ!」
怒りと殺意に支配された剣幕で、リックを睨み付けたルーク。得物である自身の大剣を構え、切っ先をリックに向け、彼の命を奪う事だけに集中する。
相手はリックが生んでしまった、過去の亡霊だった。口で説得できる相手ではない。彼の復讐を止めるためには、武力を行使する以外になかった。故に、復讐の刃からリックを守るため、槍を構えたレイナが彼の盾となり、ヴィヴィアンヌがルークの前に立ちはだかる。
「どけよ!!俺と戦うと怪我するぜ!?」
「特殊魔法が使える程度で吼えるな、腐った王族の亡霊が。貴様の国が滅んだのは、王族の業の深さだと知るがいい」
ここでリックの命を奪おうとする、勇者ルークの刃を阻む存在は、現ヴァスティナ帝国最強と言える存在の、親衛隊隊長ヴィヴィアンヌだった。その彼女が、リックの命を脅かしたルークに対し、猛烈な怒りと殺意を放っている。勇者だけあり、ルークの実力は確かなものだが、纏う風格の大きさが、ヴィヴィアンヌの方が格上であると告げていた。
ルークが動けば、ヴィヴィアンヌは彼よりも速く動き、得物である二本のナイフで、彼の首を一瞬で刎ねてしまうだろう。戦う前から、既に勝敗は決しているのだ。
普段のルークであれば、相手との実力の差を直感で知る事が出来る。だが今の彼は、完全に冷静さを欠いている状態だった。実力差を感じていても、リックに対しての憎悪に駆られ、勝ち目のない勝負を挑もうとしてしまう。
「ヴィヴィアンヌと話してるところ悪いが、お前に殺されるわけにはいかない」
「!!」
襲われた瞬間から、一言も発していなかったリックが、ルークに向けて口を開いた。
自分の命を捨てるつもりはない。声を発したリックの顔は、ルークに対する同情も、己の行動に対する後悔も見せてはいない。ただ落ち着いてルークを見据え、言葉を続けた。
「あの王子も、あの王様も、俺がこの手で殺した。言っとくが、後悔は微塵もない」
「ああそうだろうな!お前は人殺しを愉しんでる糞野郎だ!!」
「奴らは許されない罪を犯した糞野郎共だったから、仲良くぶっ殺してやったんだよ」
リックの脳裏に蘇る、絶望的な戦力差の戦いを強いられた、二つの戦争の記憶。どちらもそれは、大国オーデル王国との戦争だった。その戦争でリックは、今も忘れぬ多くの犠牲を払いながら、ヴァスティナという国のために戦った。
「自分達で国を腐敗させておきながら、王族に反発する民を納得させるため、無関係だった南ローミリアへの侵攻を企てた。あの二人を殺していなければ、ヴァスティナの街は焼かれ、民は死に絶えていた。国で善政を敷いていた女王陛下も、連中は処刑する気でいた」
「⋯⋯⋯⋯⋯!」
「俺達はな、お前の国の馬鹿共が力で侵略にやってきたから、守るべきもののために戦った。お前が俺を恨むのは仕方ない。だがお前は、オーデルとの戦いで死んでいった帝国の戦士達の仇として、俺に討たれる覚悟はあるんだろうな?」
瞬間、リックの纏う空気が変わった。彼をよく知る者達は何度も感じた事のある、溢れ出して止まらなくなる彼の怒りと殺意だ。
あの戦争で死んでいった者達を、リックは今も忘れてはいない。絶望的な戦局を覆す、奇跡の作戦。その作戦を成功させるために、彼は多くの兵士に「勝利のために死ね」と命令した。
自分がもっと強ければ、もっと賢ければ、皆を死なせずに済んだかもしれない。今も尚、あの時の己の無力さを後悔し、二度と繰り返さぬと誓い続けている。そんな彼でも、「あいつらが侵略にやって来なければ」と思ってしまう。
腐敗したオーデルの王族が、自分達を守るために始めた戦争。彼らさえいなければ、あの戦争で多くのヴァスティナの戦士達が、戦場で命を落とす事などなかった。
「俺を殺したければかかって来い。返り討ちにしてやる」
「閣下、この男の始末は私にお任せを。勇者と言えど、先に仕掛けた以上は死んで貰う」
今もリックを苦しめる、自分とオーデルへの怒りと、失われた命への悲しみ。苦悩し続ける彼の心を、ヴィヴィアンヌは痛いほど知っている。だからこそ、彼女は目の前のルークを憎んだ。
ここで殺しておかなければ、今後のリックの脅威となるだけでなく、彼を苦悩させる原因になり続ける。眼前で刃を向ける存在が、守るべきリックの癌であると考えたヴィヴィアンヌは、この場でルークを排除する気なのだ。今の彼女には、相手が勇者である事や、勇者連合との関係悪化など、全く眼中にはない。
「さあ、私に殺される覚悟が出来たなら向かって来い。まさか、あれだけ啖呵を切っておいて怖気付いたのか?」
「黙れよ!!それじゃあ望み通り、俺から行かせて貰うぜ!!」
彼女を倒さなければ、リックを討つ事は出来ない。一歩も退く気を見せない彼女に、他の人間を巻き込みたくなかった彼は、覚悟を決めた。
大剣の切っ先をヴィヴィアンヌへと向け、勇者ルークは力強く地面を蹴って駆け出そうとする。
「!?」
ルークが駆け出そうとした瞬間、五人の兵士が飛び出して、彼を後ろと左右から取り押さえにかかった。兵士達は全体重をかけてルークに圧しかかり、彼の手足を掴んで自由を奪う。大剣を握っていた右手は、押さえつける力が特に強かった。
五人の兵士は、ルークが身動きできないよう、身体を張って拘束したのである。その兵士達は、彼の周囲を取り囲んでいた同盟軍の兵士ではなく、リックを護衛していた、ヴァスティナ帝国国防軍の兵士であった。
「王子!どうかこの場は剣をお収め下さい!」
「なんだお前らは!?俺の邪魔をするんじゃねぇ!!」
「アイゼンリーゼ隊長は無敵です!王子の力では到底太刀打ちできません!」
「知るかよ放せ!!帝国の兵士なんかに心配されたくねぇよ!!」
ヴィヴィアンヌの実力を知っている彼らからすれば、ルークを取り押さえる必要などない。何故なら、彼らがこんな事をしなくても、リックの安全は約束されているからだ。
しかし彼らは、それを承知でありながら、ルークを王子と呼んで取り押さえたのである。その理由は、元々彼らがヴァスティナ帝国の兵士ではなかったからだ。
「我らは王子の顔を覚えておりましたが、王子はもうお忘れの様ですね」
「なに⋯⋯⋯!?」
「我らは、オーデル王国軍の生き残りです。ライオネス隊長が我々の指揮官でした」
「!!」
身体の自由を取り戻すため、懸命に暴れていたルークの動きが止まる。取り押さえにかかった兵士の言葉で、ルークはようやく悟った。
オーデル王国はヴァスティナ帝国との二度に渡る戦争で、国を支配する国王と王子を失った。それがきっかけとなり、独裁国家ジエーデル国の侵攻を許す事となり、国は滅亡したのである。ルークを取り押さえた兵士達は、国を守るために戦うも力及ばず、再起を図って脱出した、元オーデル王国軍王都守備隊の残党だった。
生き残りを率いていた彼らの隊長は、ライオネスという男だった。彼は王国の残党軍を率い、ヴァスティナ帝国軍と共に、南ローミリア侵攻を企てたジエーデル国と戦ったのである。ライオネスと、彼が率いた残党軍の活躍もあって、帝国はジエーデルに勝利を収めたのだ。帝国にとっても、そして生き残った王国の兵士達にとっても、彼は英雄となった。
そしてルークにとって、ライオネスは彼に剣を教えた者の一人だった。彼がまだ勇者ではなく、王国の王子だった頃、剣の扱い方や戦い方はライオネスに習ったのだ。自分の師とも言える男の事を、ルークは今でも覚えている。
ライオネスを知っていた事で、ルークは彼らが本物の王国軍の生き残りだと知った。まさか、王国の滅亡の後も生き残っていた兵がいたと知らず、驚きを隠せないルーク。復讐の心は一旦忘れ、彼は生き残りの彼らに問いかけた。
「生き残った兵がいたなんて知らなかった⋯⋯⋯⋯⋯。じゃあ、ライオネスもここにいるのか!?」
「⋯⋯⋯⋯⋯何もご存知ないようですね。ライオネス隊長は既にこの世を去りました」
「しっ、死んだのか⋯⋯⋯!あのライオネスが!?」
「フローレンス将軍と共にジエーデルと戦い、負傷した兵を助けようとして戦死されました。隊長は最後まで、仲間思いの勇敢な御方でした⋯⋯⋯⋯!」
師であるライオネスは、もう既にこの世にいなかった。何も知らなかったルークは、たった今聞いたライオネスの死の事実に耳を疑い、一人衝撃を受けている。
話しはそれだけで終わらない。ライオネスが戦死したあの瞬間の、彼の最後の言葉を思い出しながら、兵士は言葉を続けた。
「ライオネス隊長の遺言に従い、ジエーデルとの戦いで生き残った我らは、そこに居られるフローレンス将軍閣下に従うと決めたのです」
「なんだって!?そいつは王国の敵だぞ!」
「我々にとっては違います。将軍閣下は残党であった我らに勝利をもたらし、ライオネス隊長の遺言に従って、我らを自軍に加えて下さったのです」
「ふざけるな!!そいつのせいで兄さんと父さんが死んだんだ!」
「⋯⋯⋯⋯⋯ライオネス隊長も仰っていましたが、それは自業自得の結果です」
「⋯⋯⋯⋯⋯!」
王国が滅んだ後、生き残った彼らがどう生きてきたか、何も知らないルークからすれば耳を疑う話だ。怒りを覚える事でもある。元は王国に忠誠を誓った彼らが、憎むべき仇敵と言える存在に従い、今はこうして自分を拘束している。
今の彼らは、ルークにとって敵と言えた。ライオネスの遺言の話も、彼にとっては信じられない話である。だがこれは、全て事実だった。
「国を出て勇者となった王子には理解できないでしょう。いや、王子は昔から、世の中の事が何も分かってはいなかった」
「どういう意味だよ⋯⋯⋯⋯!?」
「王子は城で守られて育ちました。だから王子は、王国の腐敗も、苦しむ民の姿も知らずにいた」
「そっ、それは⋯⋯⋯⋯」
「ヴァスティナ帝国は我々の敵ではなかった。国を腐敗させた者達の愚かな考えが、御二人を死なせ、国を滅亡させたのです。それなのに侵略者であった我々を、フローレンス将軍も女王陛下も快く迎え入れました」
彼らの言う通り、当時リックも帝国女王も、生き残った彼らを咎める事はなく、新たな帝国の民として平等に扱った。だからこそ、今も彼らは帝国の兵士として、リックの護衛の任に就いたのである。
そしてルークは、自分の存在、自分の言葉に、彼らが湧き上がる怒りを必死に抑えていると、ようやく気付く。滅亡する以前の王国を知る者達の前では、ルークは王国の事を何も分かっていなかった、無知で愚かな元王族だったのである。
「最初は千人いた仲間達も、ジエーデルとの戦いで七百となり、今日までの戦いで四百になりました。それでも、今日まで我々が生き抜いてこられたのは、あの日ライオネス隊長の遺言に従って下さったフローレンス将軍のお陰なのです」
「仲間達の中には、今の暮らしの中で結婚し、幸せな家庭を築いている者だっている。我々は将軍にお返し出来ない程の大恩があるんです。だから、あなたに将軍を殺させはしません」
「それでも我らは、一度はオーデル王国に忠誠を誓った兵士です。ここで将軍閣下への復讐を止めさせ、アイゼンリーゼ隊長からあなたの命を救う事を、最後の忠義とさせて頂きます」
彼らはヴァスティナの兵としての責務を果たし、オーデルの兵であった事への忠義を示した。今は存在しない、一度は忠誠を誓った国と王族に対し、王族最後の生き残りであるルークの命を守る。それが彼らの、最後の忠義となった。
彼らの忠義、彼らの言葉、彼らの怒りを知ったルークは、何も言い返せなかった。ルークは沈黙し、全身の力を抜いて抵抗を止めた。復讐の意志が消えたわけではないが、今は復讐の事よりも、彼らに言われた言葉が心に突き刺さっている。彼は今日、初めて自分の国の人々の、真の声を聞いたのだ。
ルークを取り押さえていた彼らは、暴れなくなった彼の拘束を解き、後の事を周りの同盟軍兵士に任せて離れた。彼らはヴィヴィアンヌの前に横一列で並び、一人が代表して口を開く。
「アイゼンリーゼ隊長。どんな処罰も覚悟しております」
「閣下の命を狙う者を生かした罪は重い。わかっているな?」
「はい」
彼らは自分達の忠義を果たし、自分達の罪から目を背けはしなかった。今の彼らはヴァスティナの人間であり、ヴァスティナ帝国と女王のために戦う兵士だ。国を守る軍隊の最高司令官であり、女王に絶対の忠誠を誓うリックを狙う存在は、決して生かしてはならない。
彼らは覚悟を決め、処罰を受けるためにヴィヴィアンヌの前に並ぶ。処刑すら覚悟している彼らに、鋭い眼光のままヴィヴィアンヌが口を開きかけるが、それを止めたのはリックだった。
「ヴィヴィアンヌ、何もしなくていい。用は済んだから戻る」
「⋯⋯⋯⋯⋯了解致しました。貴様達、閣下の護衛に戻れ」
「しかし隊長、我らは⋯⋯⋯⋯⋯」
「聞こえなかったのか?貴様達の罪は閣下への忠誠で償えと言っている」
「⋯⋯⋯⋯⋯はっ!!」
リックは彼らを咎めはしなかった。エミリオとレイナを連れ、振り返った彼はこの場を後にしていく。ヴィヴィアンヌの許しを得た彼らは、すぐさまリックのもとに駆けて行き、彼の護衛を再開するのだった。
こうして、勇者ルークの復讐劇は誰の血も流れる事なく、沈みゆく夕陽と共に、一旦静かに幕を閉じたのである。
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