贖罪の救世主

水野アヤト

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第二話 狂犬の戦士たち

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「お前たちは俺がリリカに調べさせた、最高の傭兵部隊だ。俺はお前たちの命知らずの強さが欲しい」
「だからよう、俺たちは自由にやりたいんだよ。負けた俺たちに文句は言えねぇが、従いたくはねぇんだ」

 ヘルベルトを筆頭に、従うことを拒む傭兵たち。だが、実力を見せつけ勝利したために、最初の時よりも、彼らは素直になっている。
 診療所でリリカに頼んだこととは、実力のある傭兵部隊探しである。情報収集のため、トロスクスの街で聞き込みなどを行ったリリカが見つけたのが、傭兵集団鉄血部隊であった。
 とある仕事を終えた鉄血部隊が、稼いだ金で一杯やるために、酒場に向かうという情報を手に入れたリリカは、診療所に戻り、宗一だけに報告したのだ。これをチャンスだと考えた宗一は、勝利のためにレイナとクリスを無理やり連れて、あの大乱闘を引き起こした。
 全ては、旅の目的達成のためである。

「鉄血部隊は戦場を求める戦争中毒者の集まりだって聞いてるが、事実なのか?」
「まあそうだな。俺たちは戦場の血の匂いを知っちまったイカレ集団だ。戦場でしか生きられないようにできてるのさ」
「なら問題ない。俺に従えば、お前たちの欲を満たせる」

 宗一が何を言っているのか、まるで理解できない傭兵たち。
 鉄血部隊の傭兵たちは、金よりも戦いを求めている。戦場の興奮と緊張感、殺すか殺されるかの世界にはまり、脳細胞の末端に至るまで、戦いが体に染み付いている。
 戦い失くして生きられず、戦いがなければ、砂漠の真ん中で水を渇望するかの如く、苦しい渇きに襲われるのだ。
 戦争が彼らを狂わせ、戦地を求める生き方しかできなくしたことを、宗一は理解している。つまり彼らを従わせるには、戦いの場が必要で、それを用意することができればいいのだ。

「もっと大きく激しい戦場が欲しくないか?俺が進むこれからの道には、そんな戦場が待っている。ここにいる鉄血部隊も、レイナとクリスも、そして俺ですら最後まで生き残れるかわからない戦いだ。どうだ、一緒に戦わないか?俺は、お前たちが狂おしいほどに欲しい」

 宗一の言葉は、彼らの心に何かを感じさせた。
 確信があるわけでも、信用できるわけでもないが、この男には、戦争に飢えた傭兵たちを惹き付けるものがある。
 本当にそんな戦いが待っているのか、確証がないにもかかわらず、宗一が言ったことに、魅力を感じずにはいられないのだ。
 何より、戦争しか能のなく、他人に煙たがられている彼らを、宗一は狂おしいほどに欲しいと言ったのだ。
 彼らを雇う者たちは、彼らのことが気に入らなくとも、戦いの勝利のためにと雇う。しかし宗一は、そんな彼らを気に入り、彼らの全てが欲しいと言っているのだ。こんな人間との出会いは初めてだった。
 レイナやクリスのように、彼らもまた、宗一を気に入ってしまったのだ。
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