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第三十四話 勇者召喚 後編
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次の日。櫂斗、悠紀、真夜、華夜の四人を待っていたのは、正式に彼らに勇者の称号を与えるための、ホーリスローネ城での授与式であった。
城の謁見の間で、玉座に座る国王オーウェン。称号を与えるためこの場に集まった、グラーフ教の大司教と、勇者連合団長。称号を与える最高責任者達が集まり、彼ら四人の若き少年少女達は、文官や軍人達に見届けられながら、勇者の称号を授与された。これで彼らは、王国も、教会も、勇者連合も認めた、正式な勇者となったのである。
「ホーリスローネ王国、異世界より勇者召喚を成功させる」。この報は、すぐに王国国内から外の世界へ、瞬く間に広められていった。異世界から秘宝によって選ばれた、その四人こそ、ローミリア大陸に平和をもたらす。彼ら四人が、勇者の称号を得るまでに至る話は、大陸全土を駆け巡り、人々を大いに驚愕させたのである。
この結果を受け、一番満足していたのは王子アリオンであった。だが彼は、自分が得た力の本当の重みを、まだ理解していない。
選ばれし勇者の存在は、この国に苛酷な戦争をもたらす。
その事に気付いていたのは、アリオンと四人以外の、この場に集まった全員であった。
授与式を終えた櫂斗達は、アリオンと共に城内を歩いていた。正式に勇者と認められたため、これからグラーフ教会と勇者連合本部に向かい、挨拶や説明を受けるためである。
「これで俺達も、みんなに認められた勇者ってわけか」
「嬉しいのはわかるけど、あんまりはしゃがないでよ。私達が恥ずかしくなるから」
「いいじゃんかよ。せっかく勇者になったんだぜ?これで俺達も、ラノベやアニメの主人公決定だろ」
憧れ、そして念願が叶い、櫂斗は勇者になった。元の世界では決してあり得なかった存在に、彼はなったのである。はしゃいでしまうのも無理はなく、興奮を抑え切れないのも当然だ。
これは彼にとって、退屈だった現実が一変し、非現実の世界で新たな人生を得たに等しい、まさに奇跡であった。彼にとってこの世界は、楽園とも呼べる憧れたファンタジーの世界。その世界の人間となり、偉大な力を手に入れ、選ばれた勇者になった。まるで、物語の主人公そのものである。
そう、櫂斗はこの世界を楽しみ始めていた。元の世界よりもずっと面白い、退屈とは無縁な素晴らしい世界。今の彼は、この世界が気に入っている。帰ろうと思う気持ちは微塵もない。
「櫂斗。自分がこの先どうなっちゃうか、本当にわかってる・・・・?」
「わかってるって。勇者として、この世界を脅かす悪と戦うって事だろ?」
「そうじゃなく、私が言いたいのは————————」
「何にも心配いらないって!俺達にはこの秘宝があるじゃんか。どんな敵が来たって恐いもんなしだ!」
今の櫂斗には、何を言っても無駄だろう。そう考えた悠紀は、それ以上言葉を続けなかった。
わかっているようで、本当は何もわかっていない。彼女が不安に思っているのは、そこではないのだ。この世界を脅かす悪とは、魔物だけではない。王子アリオンの目的通りに、自分達が戦いの道具とされてしまった時、彼の目の前にいる敵は・・・・・・。
(わかってるの、櫂斗・・・・・。このままだと私達、人殺しさせられるのよ・・・・・・?)
悠紀の胸の内は、今の櫂斗には届かない。
城の謁見の間で、玉座に座る国王オーウェン。称号を与えるためこの場に集まった、グラーフ教の大司教と、勇者連合団長。称号を与える最高責任者達が集まり、彼ら四人の若き少年少女達は、文官や軍人達に見届けられながら、勇者の称号を授与された。これで彼らは、王国も、教会も、勇者連合も認めた、正式な勇者となったのである。
「ホーリスローネ王国、異世界より勇者召喚を成功させる」。この報は、すぐに王国国内から外の世界へ、瞬く間に広められていった。異世界から秘宝によって選ばれた、その四人こそ、ローミリア大陸に平和をもたらす。彼ら四人が、勇者の称号を得るまでに至る話は、大陸全土を駆け巡り、人々を大いに驚愕させたのである。
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その事に気付いていたのは、アリオンと四人以外の、この場に集まった全員であった。
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「これで俺達も、みんなに認められた勇者ってわけか」
「嬉しいのはわかるけど、あんまりはしゃがないでよ。私達が恥ずかしくなるから」
「いいじゃんかよ。せっかく勇者になったんだぜ?これで俺達も、ラノベやアニメの主人公決定だろ」
憧れ、そして念願が叶い、櫂斗は勇者になった。元の世界では決してあり得なかった存在に、彼はなったのである。はしゃいでしまうのも無理はなく、興奮を抑え切れないのも当然だ。
これは彼にとって、退屈だった現実が一変し、非現実の世界で新たな人生を得たに等しい、まさに奇跡であった。彼にとってこの世界は、楽園とも呼べる憧れたファンタジーの世界。その世界の人間となり、偉大な力を手に入れ、選ばれた勇者になった。まるで、物語の主人公そのものである。
そう、櫂斗はこの世界を楽しみ始めていた。元の世界よりもずっと面白い、退屈とは無縁な素晴らしい世界。今の彼は、この世界が気に入っている。帰ろうと思う気持ちは微塵もない。
「櫂斗。自分がこの先どうなっちゃうか、本当にわかってる・・・・?」
「わかってるって。勇者として、この世界を脅かす悪と戦うって事だろ?」
「そうじゃなく、私が言いたいのは————————」
「何にも心配いらないって!俺達にはこの秘宝があるじゃんか。どんな敵が来たって恐いもんなしだ!」
今の櫂斗には、何を言っても無駄だろう。そう考えた悠紀は、それ以上言葉を続けなかった。
わかっているようで、本当は何もわかっていない。彼女が不安に思っているのは、そこではないのだ。この世界を脅かす悪とは、魔物だけではない。王子アリオンの目的通りに、自分達が戦いの道具とされてしまった時、彼の目の前にいる敵は・・・・・・。
(わかってるの、櫂斗・・・・・。このままだと私達、人殺しさせられるのよ・・・・・・?)
悠紀の胸の内は、今の櫂斗には届かない。
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