贖罪の救世主

水野アヤト

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第三十三話 勇者召喚 前編

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 勇者。
 それは、ローミリア大陸北方に位置する国家、ホーリスローネ王国の正義の象徴である。
 ホーリスローネ王国の歴史は古く、ローミリア大陸が剣と魔法の世界と呼ばれる所以になった、千年前の伝説の六剣の伝説以前から存在していた。その後、大陸中が戦場になったローミリア大戦を戦い抜き、大陸北方の大国として今も君臨し続けている。
 極北に位置する、大陸最大の国家ゼロリアス帝国に並ぶ、大陸最大の王政国家がホーリスローネ王国である。ゼロリアス帝国は大陸最強の軍事力を有し、大陸全ての国家に恐れられているのが特徴である。一方ホーリスローネ王国は、ローミリア大陸の秩序と平和のために、「勇者」と呼ばれる存在を輩出させ、大陸全土の治安維持を行なわせているのが特徴となっている。
 勇者というのは、ホーリスローネ王国と、王国内に本拠を置くグラーフ教会並びに、同じく本拠を置く勇者連合本部に勇者と認められた、ローミリア大陸の秩序と平和を守る使命を帯びた戦士の称号である。
 勇者と認められた戦士は、各国を自由に行き来できる権利を有し、勇者連合の指示、もしくは勇者の自己判断で、ローミリア大陸を脅かす悪しき存在を駆逐する。勇者が戦う悪しき存在とは、例えば人々に害を為す魔物や、犯罪者や盗賊などを差す。それらを全て敵と定め、勇者は大陸全土の平和維持活動に務めるのである。
 大陸全体のルールによって各国は、勇者を自国の野心のために利用する事や、勇者を傷付ける行為を固く禁止されている。そして勇者は、国家間の戦争に関与する事を許されず、私利私欲のための戦闘行為を禁じられている。故に勇者の称号を持つ戦士は、大陸内では中立的存在であり、剣と魔法の世界ローミリア大陸を守護する、平和の象徴なのだ。
 平和守る象徴であり英雄。誰もが憧れるその称号を得られるのは、どんな魔物とも戦える実力を持ち、正義の心を認められた、選ばれた者達である。そのため、勇者の称号を持つ者は、大陸内でも極僅かだ。
 そして今回。ホーリスローネ王国王子アリオンは、自身の召喚魔法を使う事によって、選ばれた少年少女を異世界より召喚した。アリオンが彼らを召喚した理由は、異世界に住む力ある者を勇者とし、ローミリア大陸の平和を取り戻すためである。
 これから語られるのは、大陸全土に勇者召喚の噂が広がる、一か月以上前の話である。
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