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第一話 初陣
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戦いは終わり、兵士も国民も帝国の勝利に歓喜した。だが、喜んでばかりではいられない現実がある。
今回の戦いでヴァスティナ帝国軍は、戦死者二百人に負傷者三百人以上という損害を出した。兵士であった父親や息子を失った家庭は多く、残された者達は、深い悲しみに暮れることとなり、とても戦勝で盛り上がれる雰囲気ではない。
そして、敗北したオーデル王国軍の戦傷者はなんと一万人を超え、総指揮官を失ってしまったことも含め、残存した兵力は自国を目指し退却を始めていた。まさに大敗を期すこととなってしまったのだ
戦いを終え、初めての戦争を経験し、初めての人殺しをした宗一は、心身ともに疲れ切っていたために、丸一日王宮のベッドで眠り続け、目覚めてすぐ、戦後処理で忙しいメシアから、戦争の結果を聞かされた。
オーデル軍の撤退と両軍の損害、そして宗一が率いた奇襲部隊のことについてだ。結果として奇襲部隊の生き残りは、宗一のみであった。四十九人の兵士たちは、あの戦場で命を燃やしたのだ。彼らを運んだ馬も、メシア号を残して全滅したことも聞かされた。
話を聞かされた宗一は、騎士団長であるメシアにただ一言謝罪した。作戦のためとはいえ、彼女の部下であった兵士たちと、帝国自慢の馬を全て失ってしまったためだ。
しかしメシアは言った。
「お前が気に病むことではない。女王と帝国を守ったお前は救国の英雄なのだ。死んでいった者たちも、お前のおかげで守るべきものが守れて本望だったはずだ」
そう言った彼女は、伝えるべきことを言い終わり、戦後処理に戻っていった。
丸一日眠っていたお陰で、ある程度体力が回復していた宗一は、忙しくしている人々の姿を目の当たりにし、何もしないでいるのが嫌になり、自分も何か手伝えないかと動くことにした。
そうして二日ほど、遺体の埋葬や負傷者の手当てなどの処理に追われ、これらが一段落したところで、彼は女王陛下に呼び出された。
あの寝室の時以来、ユリーシアに会う機会はなかった。彼女もまた女王であるが故に、様々な仕事をしていたためだ。宰相のマストールも、まだ少女である女王をあらゆる面で補佐し、ようやくユリーシアの時間がつくられた。ユリーシアは宗一と会うことを望み、二人は再び謁見の間で、顔を合わせることになったのだ。
謁見の間では今回の戦いの功績を称えるため、騎士団長メシアが勲章を授与されていた。宗一も参謀として、この戦いの勝利に貢献したことに対し、勲章が授与されたが、その勲章がメシアが授与されたものよりも、価値のあるものだったため、周りの衛兵などの驚きは大きかった。どれほどの価値の勲章だったのか、彼は全く知らなかったのだが。
メシアはともかく、勲章を貰えると思っていなかった宗一も、やはり驚きを隠せなかったが、これ以上に驚くべきことが次に起こった。
なんと再び、女王の寝室でのお茶会に誘われたのだ。
今回の戦いでヴァスティナ帝国軍は、戦死者二百人に負傷者三百人以上という損害を出した。兵士であった父親や息子を失った家庭は多く、残された者達は、深い悲しみに暮れることとなり、とても戦勝で盛り上がれる雰囲気ではない。
そして、敗北したオーデル王国軍の戦傷者はなんと一万人を超え、総指揮官を失ってしまったことも含め、残存した兵力は自国を目指し退却を始めていた。まさに大敗を期すこととなってしまったのだ
戦いを終え、初めての戦争を経験し、初めての人殺しをした宗一は、心身ともに疲れ切っていたために、丸一日王宮のベッドで眠り続け、目覚めてすぐ、戦後処理で忙しいメシアから、戦争の結果を聞かされた。
オーデル軍の撤退と両軍の損害、そして宗一が率いた奇襲部隊のことについてだ。結果として奇襲部隊の生き残りは、宗一のみであった。四十九人の兵士たちは、あの戦場で命を燃やしたのだ。彼らを運んだ馬も、メシア号を残して全滅したことも聞かされた。
話を聞かされた宗一は、騎士団長であるメシアにただ一言謝罪した。作戦のためとはいえ、彼女の部下であった兵士たちと、帝国自慢の馬を全て失ってしまったためだ。
しかしメシアは言った。
「お前が気に病むことではない。女王と帝国を守ったお前は救国の英雄なのだ。死んでいった者たちも、お前のおかげで守るべきものが守れて本望だったはずだ」
そう言った彼女は、伝えるべきことを言い終わり、戦後処理に戻っていった。
丸一日眠っていたお陰で、ある程度体力が回復していた宗一は、忙しくしている人々の姿を目の当たりにし、何もしないでいるのが嫌になり、自分も何か手伝えないかと動くことにした。
そうして二日ほど、遺体の埋葬や負傷者の手当てなどの処理に追われ、これらが一段落したところで、彼は女王陛下に呼び出された。
あの寝室の時以来、ユリーシアに会う機会はなかった。彼女もまた女王であるが故に、様々な仕事をしていたためだ。宰相のマストールも、まだ少女である女王をあらゆる面で補佐し、ようやくユリーシアの時間がつくられた。ユリーシアは宗一と会うことを望み、二人は再び謁見の間で、顔を合わせることになったのだ。
謁見の間では今回の戦いの功績を称えるため、騎士団長メシアが勲章を授与されていた。宗一も参謀として、この戦いの勝利に貢献したことに対し、勲章が授与されたが、その勲章がメシアが授与されたものよりも、価値のあるものだったため、周りの衛兵などの驚きは大きかった。どれほどの価値の勲章だったのか、彼は全く知らなかったのだが。
メシアはともかく、勲章を貰えると思っていなかった宗一も、やはり驚きを隠せなかったが、これ以上に驚くべきことが次に起こった。
なんと再び、女王の寝室でのお茶会に誘われたのだ。
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