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第一話 初陣
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「貴様は何者だ?」
「ただの通りすがりの旅人です」
「もう一度聞く、貴様は何者だ?」
今、自分がこの世界に来て、最も危機的状況に陥っているのだと思う。
目の前の女性は、とても鋭く、それだけで全身の筋肉が、緊張で硬直し動けなくなってしまう、刺すような視線でこちらを見ており、ちょっとでもおかしなことをすれば、たちまち襲いかかってくるのではと考えられる程に、恐ろしく危ない人物なのではないかと思った。
何故なら彼女からは、十人の男たちから感じたのを軽く上回る、大きな殺気を感じたからだ。
(まるで獣のような目とは、こういうのを言うんじゃないのか)
「私が獣か何かに見えるのだな」
「っ?!」
心を読まれたのだろうか。それとも、心の声を口に出してしまったのだろうか。いや、そんなはずはないが、彼女が当てずっぽうで言ったようには思えないのだ。
彼女たちに連れられ城下の街を移動し、帝国を治める王がいる、王宮に辿り着いた。王宮の中を案内されたが、三人とは別れて、見ようによっては、アマゾネスにも見える騎士団長に、付いて来るよう言われ、小部屋に案内された後、入るや否や、椅子に座らせられ、刑事ドラマさながらの取り調べが始まったのだ。
騎士団長と一対一の、人生初の取り調べという名の戦いである。
「貴様が旅人でないのはわかっている。だが、オーデルの人間でもないのだろう」
「・・・・なんのことだかわかりませんが」
「旅人にしては軽装すぎる。敵兵にしては隙の多い素人だ。少なくとも、私の兵を助けたのだから敵ではないな」
「あなたの兵を助けたのが演技だったとは、疑わないのですか?」
「隙が多過ぎると言っただろ。兵士ではないとわかる」
彼女には嘘を言っても見抜かれてしまう。それはわかるが、本当のことを言ったところで、信じて貰えるわけはない。あまりにも非現実的なことで、それを話そうものなら信じて貰えず、恐らくは頭のおかしい人間と思われるだけだ。
一体どうしろと言うのだ。嘘を言っても駄目で、正直に言っても無駄とは、どんな理不尽二択問題なのか。
そう思っていると彼女は、こちらの心情を察してか、鋭い視線を解いて微笑を浮かべて見せた。先程まで放たれていた殺気も消えていく。
「安心しろ。貴様を殺そうとしているわけではない。念の為に調べさせてもらっただけだ」
「調べる・・・ですか?」
「ああ、なにか言えない事情があるのはわかった。無理に話す必要はない」
調べると言っても、自分自身のことを特に話したわけでもないのに、一体どうやって、そこまで理解できてしまったのだろうか。これがプロの取り調べとでも言うのか。
「兵を助けてくれたこと、礼を言う」
「偶然です。礼を言われるほどではありませんよ」
「おかげで兵たちは、貴重な情報を無事持ち帰ってくることができた」
「帝国に迫ってる侵略者のですよね・・・・」
「そうだ。もっとも、貴様には関係ない話だろうがな」
助けた三人が偵察兵であったのは間違いないようだ。恐らく、オーデルの軍勢を偵察でもしていたのだろう。到着して早々の彼らの会話の内容も、そういうことなら話は分かる。
彼らが遭遇していた男たちはオーデルの兵士たちで、襲われている現場に、偶然自分が現れたということだ。そのせいで、今現在のこの状況に至る。礼を言って貰えるのは素直に嬉しいが、この騎士団長様は自分を解放してくれるのだろうか。人助けをしたのに取り調べを受けてしまうのは、こうも心が辛いものなのか。一先ず、殺されはしないようだが。
これからどうなるのか不安に駆られていると、部屋の扉を叩く、ノックする音が聞こえた。
「入れ」
「失礼します。騎士団長、陛下がお呼びです」
部屋に先程別れた、三人の内の一人が入ってきた。陛下とやらへの報告は済んだようだ。
「それと、陛下が旅人様にお会いしたいと言っております」
「なんだと?」
「えっ、俺に?」
「はい。直に会ってお礼を言いたいと・・・」
「・・・・わかった。すぐに向かう」
・・・・・・これはまさかの展開である。
「ただの通りすがりの旅人です」
「もう一度聞く、貴様は何者だ?」
今、自分がこの世界に来て、最も危機的状況に陥っているのだと思う。
目の前の女性は、とても鋭く、それだけで全身の筋肉が、緊張で硬直し動けなくなってしまう、刺すような視線でこちらを見ており、ちょっとでもおかしなことをすれば、たちまち襲いかかってくるのではと考えられる程に、恐ろしく危ない人物なのではないかと思った。
何故なら彼女からは、十人の男たちから感じたのを軽く上回る、大きな殺気を感じたからだ。
(まるで獣のような目とは、こういうのを言うんじゃないのか)
「私が獣か何かに見えるのだな」
「っ?!」
心を読まれたのだろうか。それとも、心の声を口に出してしまったのだろうか。いや、そんなはずはないが、彼女が当てずっぽうで言ったようには思えないのだ。
彼女たちに連れられ城下の街を移動し、帝国を治める王がいる、王宮に辿り着いた。王宮の中を案内されたが、三人とは別れて、見ようによっては、アマゾネスにも見える騎士団長に、付いて来るよう言われ、小部屋に案内された後、入るや否や、椅子に座らせられ、刑事ドラマさながらの取り調べが始まったのだ。
騎士団長と一対一の、人生初の取り調べという名の戦いである。
「貴様が旅人でないのはわかっている。だが、オーデルの人間でもないのだろう」
「・・・・なんのことだかわかりませんが」
「旅人にしては軽装すぎる。敵兵にしては隙の多い素人だ。少なくとも、私の兵を助けたのだから敵ではないな」
「あなたの兵を助けたのが演技だったとは、疑わないのですか?」
「隙が多過ぎると言っただろ。兵士ではないとわかる」
彼女には嘘を言っても見抜かれてしまう。それはわかるが、本当のことを言ったところで、信じて貰えるわけはない。あまりにも非現実的なことで、それを話そうものなら信じて貰えず、恐らくは頭のおかしい人間と思われるだけだ。
一体どうしろと言うのだ。嘘を言っても駄目で、正直に言っても無駄とは、どんな理不尽二択問題なのか。
そう思っていると彼女は、こちらの心情を察してか、鋭い視線を解いて微笑を浮かべて見せた。先程まで放たれていた殺気も消えていく。
「安心しろ。貴様を殺そうとしているわけではない。念の為に調べさせてもらっただけだ」
「調べる・・・ですか?」
「ああ、なにか言えない事情があるのはわかった。無理に話す必要はない」
調べると言っても、自分自身のことを特に話したわけでもないのに、一体どうやって、そこまで理解できてしまったのだろうか。これがプロの取り調べとでも言うのか。
「兵を助けてくれたこと、礼を言う」
「偶然です。礼を言われるほどではありませんよ」
「おかげで兵たちは、貴重な情報を無事持ち帰ってくることができた」
「帝国に迫ってる侵略者のですよね・・・・」
「そうだ。もっとも、貴様には関係ない話だろうがな」
助けた三人が偵察兵であったのは間違いないようだ。恐らく、オーデルの軍勢を偵察でもしていたのだろう。到着して早々の彼らの会話の内容も、そういうことなら話は分かる。
彼らが遭遇していた男たちはオーデルの兵士たちで、襲われている現場に、偶然自分が現れたということだ。そのせいで、今現在のこの状況に至る。礼を言って貰えるのは素直に嬉しいが、この騎士団長様は自分を解放してくれるのだろうか。人助けをしたのに取り調べを受けてしまうのは、こうも心が辛いものなのか。一先ず、殺されはしないようだが。
これからどうなるのか不安に駆られていると、部屋の扉を叩く、ノックする音が聞こえた。
「入れ」
「失礼します。騎士団長、陛下がお呼びです」
部屋に先程別れた、三人の内の一人が入ってきた。陛下とやらへの報告は済んだようだ。
「それと、陛下が旅人様にお会いしたいと言っております」
「なんだと?」
「えっ、俺に?」
「はい。直に会ってお礼を言いたいと・・・」
「・・・・わかった。すぐに向かう」
・・・・・・これはまさかの展開である。
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