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8.兄妹=同志
しおりを挟む男とりこが風呂から上がったのは、結局、昼の1時過ぎであった。りこは、叔父による激しい情事で、最後の方はほとんど気絶していた。今は、自分のベッドで深い眠りに就いている。一方、りこを欲望のままに抱き潰したこの男は、広めのカウンターキッチンにいた。とってもスッキリした顔で出来立ての3つのチキンライスの上にトロふわなオムレツを乗せている。
「ふぁ~~、おはよ、さく兄。はぁ~!良い匂い!これ、オムライス?!美味しそうじゃん!!ってあれ、りこは?まだ起きてないの?」
「あっおはよう、かおり。今から、お前をお越しに行こうと思ってたんだ。りこちゃんはまだ寝てるから、後でまた、声掛けるよ」
Tシャツとホットパンツを履いた、りこの母親かおりが、大きなあくびをしながら降りてきた。そして、30代の成熟した柔らかな肉体をくねらせて、男のいるキッチンカウンターを覗く。かおりとりこは親子であり、その容姿や体型は似ているが、りこが清純無垢な少女であるならば、かおりは熟した桃のような色気と艶めかしさを全身に纏った女だと言える。
男はそんな妹に気を止めることなく、出来立てのオムライスとスプーン、冷えた緑茶をカウンター横のテーブルに置く。
「ほら、どうぞ」
「いただきまーす!!」
さっきまで眠そうにしていたかおりの表情が一気に明るくなる。そして、目の前のオムライスに喰らいつく。男は妹かおりから、さく兄と呼ばれていた。さく兄こと本名さくやは、かおりと10コ年が離れているため、子どものころから妹に対する面倒をよく見ていた。それは、大人になった今でも変わらない。
「お前、がっつき過ぎだって。ひっかけんなよ?」
りこの家は、やや大きな木造の一戸建てで、約2年前に建て替えた。元々はかおりと、その兄である男の実家だ。母親は、3年間の入院で1年前に亡くなっている。父親はここから車で10分のアパートに住んでいる。かおりはシングルマザーで、りこは17の時に産んだ子どもで、りこには父親が誰かを明かしていない。かおりは、普段、パートの看護助手として働いているため、独り身である兄さくやに、子育てを手伝ってもらっていた。
「ねぇ、さく兄、なんか良いことあった?顔がにやけてるよ?」
「はぁ?!何もないから」
さくやは、りこの分のオムライスにラップをかけると、かおりの向かい側のテーブルに座り、自分の分のチキンライスを食べ始めた。
「ふーん、りことなんかあったな」
「なんで、そこで、りこの名前が出るんだよ!」
「"りこちゃん"から"りこ"呼びになってるけど。あっ、あ~そういうことか!!だから、りこ、まだ寝てるのね。別に隠さなくて良いのに」
「うるさい!!お前こそどうなんだよ、最近父さん所行ってるだろ?」
「はっ?!どうって、さく兄がなんで知ってんのよ。別に何もないから。ご飯作って、掃除洗濯して、それだけよ」
「へ~~、それでさ、親父とは毎日寝てるのか?」
「はぁ?!なななななな何言ってるのよ?!」
顔がすっかり真っ赤になったかおりは、食べている手を止め、さくやの言葉にオロオロする。
「は~ん、まーーーいにち、仲睦まじく寝てるんだな。分かってるって。良かったな、お前の積年の想いが実って。最近、眠いのも父さんの子妊娠してるからだろ?俺に隠したって無駄だから」
さくやは、そんなかおりを面白がりながら、チキンライスを頬張る。
「さく兄だって同じことしてるじゃない!ていうか、りこは私の娘でもあるんだけど?」
「結局、親子似るんだよな。それで、お前、来週からは父さんと住めよ?まぁ、お前もそのつもりだろうけど」
「はいはい。さく兄とりこが結ばれたら、私が出ていく約束だったもんね。りこたちの邪魔する気はないし、私も早くパパと住んでイチャイチャしたいからWinWinよね」
「お前、まだ、りこには言うなよ。俺がちゃんと言うから」
「分かってるって。は~ご馳走様でした!」
兄妹の会話の内容は世間一般から見れば凄まじいものだが、いづれも純粋に親子での恋慕を望む兄妹だ。同じ望みを持つ兄妹は、まさに同志とも言えるだろう。
かおりは、コップに入った緑茶を飲み干した。
「さく兄、私、今日もパパのところ、泊まってくる」
「あぁ、そうしてくれ。俺もりこを可愛がりたい。でも、りこは、お前が父さんのところ毎日のように通って、しかも父さんと毎晩子作りしてるってこと、まだ知らない。母親の真実知ったら、りこびっくりするだろうな」
「それ、来週にしよ?来週の日曜日、パパの所に来て、その時話せばいいじゃん。りこにはいづれ、ちゃんと話すつもりだったし。生半可な気持ちでパパと一緒になるわけじゃないの。さく兄だって、りこのこと本気なんでしょ。ま、さく兄がいきなり、りこを抱いたのは、さすがにびっくりしたけど。いや、さく兄ならやるか。でもさ、好きなんだから、その気持ちは止められないよね。世間的にはさ、うちら家族の関係は異常なんだけど」
「……そんなことはどうだっていい。りこさえいれば、俺は何もいらない」
さくやはかおりの目を真っ直ぐに見る。かおりは、さくやの本気を直に感じ取る。
「ほんと、さく兄のりこ愛はやばいわ。母親の私でも引く。もちろん、私もりこのこと大好きだけど」
「その母親が何やってんだって話だよな」
「はいはい、なんとでも言って。私だって、パパさえいれば何もいらない。あ、りことさく兄は別ね」
「はぁ、なんだそれ。まぁいいや。それより、もう、父さん所行った方が良いんじゃないか?」
「あっ、そうね!じゃ、りこのことよろしく!」
そう言うと、食べ終わった皿をシンクに置くと、駆け足で2階に戻って行く。さくやもちょうど食べ終わり、シンクで後片付けを始める。シンクに溜まったフライパンやまな板、包丁も合わせて、洗い終わった頃に、再び、着替えたかおりが降りて来た。ナチュラルメイクに茶髪ロングの緩い三つ編みを一本、背中に垂らし、ノースリーブの黒いロングワンピースに薄手のクリーム色をカーディガンを羽織った姿に、掌サイズのショルダーバッグを掛けている。全体的にシンプルでありながら、成熟した色香は隠せていない。
これでは、父さんも抑えるのが大変だろう。
そのことを自覚しているのかしていないのか、実にあっけらかんとしているかおりは無邪気に声を掛ける。
「じゃあ、行ってくるね!」
「あぁ、鍵は閉めろよ」
「はーぃ」
バタン
最後の返事は、玄関の閉まる音で掻き消えたが、恋人に会う嬉々とした音色の表情は残っていた。
時刻は、15:35
「そろそろ僕も、愛しの眠り姫を起こしに行くか」
後片付けが終わったさくやは、そう呟くと、愛する少女の元へ階段を駆け上って行った。
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