忘れない

ニャン太郎

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忘れない

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ねぇ、なんで君はこんなところにいるの?

さぁ、なんでだろう?

いつから、こんなところにいるの?

いつからかな…最初っからかな。

こんなところにいて、君は寂しくないの?

寂しい…って何?

ん~ひとりぼっちじゃないってことかな。

ひとりぼっちか…そんなこと思ったことない。
君は寂しいの?

僕は寂しい…

どうして、寂しいの?

ひとりぼっちになっちゃったから…

ひとりぼっちは嫌なの?

ひとりぼっちは嫌じゃない。
嫌じゃなかったんだ…

嫌じゃないのにどうして寂しいの?

ある日、みんなが僕の名前を呼んでくれなくなったんだ。

君の名前?

そう。僕の名前を呼ばないってことは、僕は忘れられたってこと。

そうなんだ。だから、寂しいの?

うん。だから、君はこんなところにいて寂しくないのかなって。

寂しいっていうのは分かんないけど、ひとりぼっちじゃないかな。

君以外にも誰かいるの?

いないよ?

じゃあ、みんな君の名前を呼んでくれるの?

ううん、私に名前はない。

名前、ないの?
じゃあ、どうして…

君を待っていたんだよ。

僕を?

そうだよ、君のこと。

みんなが忘れても私は忘れない。

僕を忘れない?

そう、忘れない。

どうして…君は僕の名前、知らないだろ?

名前は知らなくても、君を知っている。

僕は君を知らない。君には名前がない。
僕は君を忘れるかもしれないよ。

君が私を忘れても、私は君を忘れない。

どうして、君はそこまで僕を…

最初、君が来た時、嬉しかったんだ。
君と話したこと、全部覚えてる。
でも君は私を覚えていない。
それは当然だと思う。

…どういうこと?君と僕は今日が初めてだろ?

ううん。5348回目だよ。

嘘…だろ…
そんなに会ってたら君のこと忘れるはずがない。

そうだね。でも、忘れてる。何も思い出せない。
だって君はいつも同じ台詞を言ってるよ?
なんで君はこんなところにいるの?って。

そんなことあるわけないじゃないか?!

それがそんなことあるんだよ。

そうだとしたら、僕、相当おかしいじゃないか。
何にも覚えてないなんて…

君のせいじゃない。私のせいなんだ。

君のせい?

さっき、私、君を待っていたって言ったよね。
私が君に会いたくて、君が私と会った記憶消してるの。

会いたい……?

そう、君に会いたかったから。

じゃあ、どうして記憶を消すの?

消さないと、君は私に会えないから。

僕が君に会えない?

そうだよ、だって私、悪い子だもん。

悪い子?

君と一緒にいたくて、みんなの記憶から君の名前を消したのは私なんだ。そして、君から私の記憶も消した。消した代償に私は私の名前をなくし、私はみんなの記憶から消えた。

どうして…

だから、君は悪くない。

なんでそこまで…

それは、私だけの君でいてほしかったから。
君がみんなのものであることが嫌だった。
君には私だけを見てほしかった。
みんなの中の私は嫌だったの。

…んふふふ、あはははは、あはははは

どうしたの?
いきなりこんなこと言われたから混乱してる?

あはははは。んん。違う違う。
僕は全然ひとりぼっちじゃないって分かったから。
それが嬉しくて…
こんなに僕のことを想ってくれてたなんて…
僕に会いたいって思ってくれてありがとう。

ありがとう…か。君の口から初めて聞いた。
こんな話するの、今回の君が初めて…
君と何度も会って同じやりとりをするうちに、私のしてることって意味あるのかなって。
私がただ、会いたいだけでいいのかなって。
君はいつも笑顔で、また会おう!って。
それが心苦しくて…

あのさ、お願いがある。今日君と会ったことを忘れたくない。記憶を消さないでくれ。

え…??忘れたくないって言ってくれるのは嬉しい…
でも、それは…できない…

どうして…

記憶を消さなかったら、君自体が消えるから。
そして、私の存在も消える。
私は君を消したくない。

僕は消えるんだね。
それでも良い。この記憶は消したくない。
君を覚えていたいから。

そんな…!私は君に消えてほしくない!
私のことは忘れてもいい、ただそばにいてほしい。
それだけなの!
私をひとりぼっちにしないで!ずっとそばにいて!


ぎゅっ


分かった。君のそばにいる。
君をひとりぼっちになんてしないから。

じゃあ…記憶を…

んん。しなくていい。
記憶、消さなかったら、どっちも消えるんだろ?
じゃあさ、一緒に覚えたまま消えよ?

一緒に?君はそれでいいの?
私と一緒に消えるのよ?

僕は君と一緒に消えたいの。
実はさ、今日初めてなのに君のことをどうしても忘れたくないんだ。不思議だよな…記憶はないのに。
この手を離したくない。この身体を離したくない。この感触をこの感情を君とのこの時間を全部全部忘れたくない。それだけが今の僕の望みだ。
それだけ君を忘れたくないんだ…

ん…ふぇ…うぇ…うぇ…んん
もう君と寂しい思いで会わなくていいのね。
私はひとりぼっちじゃないのね。

あぁ、一人でよく頑張ったな。

これが寂しいってこと…?

そう、これが寂しいってこと。
でも、これからは二人一緒。
存在が消えても寂しくない。二人一緒なら。

二人一緒…なんか好き…
二人なら消えても寂しくない…
君がそばにいてくれる。
二人一緒なら。


こうして、二人の存在は消えた。
最後までお互いを固く抱き締めたまま…


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