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異星交信 the planet echos
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異星交信 the planet echos
プロローグ
もうずいぶん都市部は見えなくなった、だいぶ遠くまで来ただろう。
父の運転する車の助手席でもう7時間ほど座ってずっと外の風景を眺めていた
「あちこち木ばっかだね」
「そりゃそうだろここは田舎だからな、ナツはあまり県外は出てないしな」
父の仕事の関係で元々生まれ育った都市部を離れ、この山と森に囲まれた
小さな町へ引っ越しをすることになった。
お世話になった先生や小中高一緒だったクラスメイトとお別れをし
もらった手紙や色紙を家財道具と一緒に引っ越し屋に運んでもらい。
僕らはその後に都市を出た。
「心配するなよ、ナツなら向こうの子達と仲良くなれるさ」
「それでも不安だよ、知らない所だし、知ってる人がいないから」
「お父ちゃんもそうだよ、お母ちゃんもフユも、みんな同じさ」
「お父さん!」
と後ろの母がコラっと言った。
「あまりナツを不安にすることは言わないの、ほらフユもケータイ
いじってないの電池がすぐ切れるよ」
「はぁーい」
妹のフユはケータイをポケットにしまってウゥーんッと背伸びした。
17になって子供のように外の風景に目を輝かせていた僕とは違って
妹は見たことのないこの風景には全く興味はなくこの7時間は退屈だっただろう
まあ僕もそうだけど今時っ子はそうだろう。
車のラジオは交通状況やゲストトークが流れているので隣でずっと運転する父は
「ナツ!、なんか音楽ないか?」
と聞いてきたので僕はカバンに入っていたCDを一つ取り出してラジオのイジェクターに
それを入れて流した。
僕が聞いてる曲なんてのは、前のクラスメイトどころか家族にすらわからないような物ばかり
だからこそ、その中で家族にも合うような物を選んでかけた。
「なんかこう…この曲は〇〇ぽいなあ」
と父が知ってる昔の曲を例えて僕の好みの感想をボソッと言った。
嫌だなとか嬉しいなとは思っていないがまあ恥ずかしいなってちょっと思った、さっきも
僕は今時っ子だと言ったけど、そのイマドキの子と少しずれている、なるせ流行りに疎いし
好きなものしか好きにならない変わったやつと思っている。
そう考えていると父が自分から見て10時の方向に指をさした。
「ナツ、見えてきたぞ、あれが我々がこれから暮らす“星空町”だ」
その町はかつて暮らしていたとこにたくさんあった天を貫くように高いビルたちは全く無く
あるのはまるで人形の家のような小さな住宅ばかりだった。
「すごくちっちゃいね、あの町」
「星空町ってなんかカワイイ名前だね」
後ろで退屈そうに座ってフユは、特に外を見ずにそう言った。
「コンビニとかスーパーとかあったらいいんだけど」
「大丈夫だよフユ、今じゃ全国どこにでもちゃんと一軒くらいはある時代だから」
という感じでどこの田舎町は少し近代的にはなってきたが、都会育ちの僕たちにとって
田舎は田舎、未開の場所は未開の地。
僕は心にワクワクとドキドキを抱えて町に降りた。
少し黒っぽいざらざらした白い壁の小さな二階建ての家。
ここが僕らの新しい家だ。マンション暮らしだったあの時と比べれば、正直見窄らしい
家だったが。良い方で見れば初めての一戸建て。両親は段ボールに入った荷物を片付けている。
僕はというと、友達や先生のメッセージの色紙を取り出して早速自分の部屋と決めた2階の
部屋の机に飾った、これならいつでも思い出せるから。
「あっそうだ望遠鏡はどこだろう」とドタドタと階段を降りて下にある段ボールを探していた。
あの望遠鏡は小さい頃小遣いをためて買ったお気に入り、今でもこれで天体観測をするから
もしもレンズが割れたらと思ったたゾッとする。
あたりにある段ボールを一つ一つ開けて探したら、それはあった。
レンズの方は無事だったのでホッとした。
また日があればこれで星を見る機会があるかもしれないので安全なところへ置いた。
片付けがひと段落し、両親や妹が落ち着いている時に玄関のチャイムが鳴った。
「誰か来たのかしら、ナツ出て」
片付けで疲れて休憩する両親に代わって僕はその訪問者の相手をした。
たったったっと駆けつけて扉を開けた
「はいどちら様ですか?」と顔を見てみた。
「こんにちは、遠いところからご苦労様でした、ご挨拶に来ました」
「あ、どうも初めまして、今日からここで暮らす夜空です」
少し言葉が怪しいと思いながらも、その人に僕も挨拶をした。挨拶に来た人は
顔にしわやしみがあるおばあちゃんだった、だから緊張が無く普段通り接しれたと今思う。
「すみません、父と母は今引っ越しで疲れていまして…」
「いいよ気にしなくて、また挨拶に来ますから」と笑って返してきた。
僕も釣られて少しはにかむような笑顔を見せた、
「私はここの近くの、星夜八風(ホシヨ ハップウ)です」とそのお婆さんは自己紹介をした
その時だった。
「ハップ婆‼︎ミカもあいさつするよー」と大声が八風さんの後ろから響いた。
その方向を見ると女の子がいた。
年齢こそ自分と同じくらいの子だったが、パッと見の雰囲気は“明るい”という感じだった
ふいに目を合わせたら、子供のような笑顔を見せてこっちへズンズンと迫ってきた。
目と目がくっつく距離に顔を近づけて彼女は言った。
「こんにちは、ミカっていうよ君は?」
「あ…、僕は夜空夏日(ヨゾラ ナツヒ)」とたじろいながら自己紹介した。
「夏日ねー、じゃあナツだねよろしくナツ!」
初対面でいきなりその呼び方とは、距離感が近すぎる、でも前のとこでも“ナツ”って
呼ばれていたし抵抗はなかった。
「いきなりで驚いたけど、このこはミカってうちで暮らしている子なの、仲良くしてあげてね」
と彼女のこの様子を咎めることは無く八風さんは僕にそう言ってきた。
しばらくして両親が後ろからやってきて、代わりに八風さんと話していた。
その一方でミカという子は空をじっとみていた。
「うん、新しい人がきたよ、なんかいい人だから仲良くなろうと思っている」
と独り言を言っていた。
ショートボブのその子はまたどっかで会えると僕は感じた。
その1
次の日の月曜日、新しい学校生活の最初の週の、最初の日。
支給された、学校の制服に着替えて、母と同伴でそこへ向かった。
「ナツ、学校への行き方はよく覚えておくのよ、今日はしょうがないけど。」
「わかってるよ母さん、僕をいくつと思ってるんだよ」
車の助手席でほおに手を当てながら、この田舎の風景を眺めていた、最近建てられた家も
あったけどほとんどが瓦と木の家で、父から聞いたけどあれが田んぼっていう
お米の畑みたいなのが、見えなくなるくらい広がっていた。全てが初めて見るような
ものばかりでなく、都会にもあったコンビニやスーパーもあったし、駅もあるという事は
電車も通っているんだと思った…(偏見のような言い方だけど)
「ナツ、見えてきたよあれがあなたが通う“星空高校”よ」
指差した方向を見るとそれはあった、第一の印象としてはまあ古いねって思った、
もといた高校と比べてしまってごめんとは思ってみたけど、まあコンクリに
ペンキを塗った壁、そして長年の雨で少しくすんだ色の屋根、
正直にそう言わざるおえなかった。
見た目の事はいいとして、僕は母と一緒に職員室へ行き僕が入るクラスの担任の先生と
挨拶をした。
「これから君の担任となる瓦十次郎“カワラ ジュウジロウ”だよろしくな」
と手を差し出してきたので、握手をした、田舎の先生はみんなこんな感じなのかなと感じたが
でも悪い先生ではないだろうと確実に思えた。
「夜空夏日です」と少し小さく自己紹介をした。
「俺は空手の顧問もやってるから気になったら声をかけてくれよ“気になったら”だけどな」
「え…はあ」こういう時は“いえ結構です”と言えばいいがしかし相手につい気を使って
「考えておきます」って少し笑って曖昧な答えを出してしまった。
すると瓦先生は時計をチラッとみて僕に言ってきた。
「おっと夏日くん、そろそろ朝の挨拶の時間だ、教室まで行くぞ」
立ち上がった先生とほぼ同時に僕も立ち上がり
「じゃあ母さん行ってくるよ」
「行ってらっしゃいナツ、母さんはここまでだから」
そのまま先生の後ろをついていき、廊下をコツコツと歩いて教室へと向かった。
先生のような大人なら少し理解してもらえるけども、同い年のクラスメイトは
どうなんだろうか、“都会者”とバカにされないか不安はあった。
最初の挨拶はどうしようか、何を話題にするかとかの最初の印象をよく考えようと
思ったけど少し変わり者の自分が手を打ってもうまく行くビジョンはないのだった
「ナツ、ついたぞここがお前のクラスだ!、心配するな何かあれば俺がなんとかするから」
とガラララっと勢いよく先生は扉を開けたら、中にいたクラスたちはその方向へ視線を向けた。
「あ、カワラアタマがきた」って小さく聞こえたし、また彼らは担任の次に僕に目を向けてきた。
「ああ…視線が痛い、心臓がバクバクするよ」教室の静けさもまたその音を立てる胸の鼓動を
さらに加速させた。
「えっと、昨日も言ってた通り、新しい生徒がうちのクラスに来ることになった、
さあ自己紹介しろ!」
とりあえず細かいことは言わずに名前だけを答えることにしよう。
「えっと……夜空夏日です。」
すると後ろの席あたりでガタンって音が響いた、皆が僕に向けた目をそっちへ向けた。
「ああー‼︎、ナツくんだ‼︎ミカと同じ学校に来たんだね!」
その声は聞いたことのある声だ、もしかしてと見たら、あのショートボブは覚えている
昨日挨拶に来た八風さんのところの子だった。
「ミカ⁉︎、夏日と知り合いなのか…てオイ!勝手に立ち上がるな!」
たったったっと走って僕に近づいた、昨日と同じ目と目がくっつきそうな距離で顔を近づけた
「ナツくん!よろしくねー!」
「あ…よろしくね」ちょっとたじたじな気持ちで返事をしたら、彼女は大声でワーイって叫び
ぴょんぴょんはねて喜んでいた。
「こらミカ!あまりはしゃぐな!」と先生が叱っても、たかぶる感情を彼女は抑えられず
喜びまくってた。
「…まあ、とりあえずだけどナツ、お前は星夜の隣の席に座ってくれ」
するとミカさんは僕の手を引いてその席へと連れて行った、周りを見ているとほとんどが
真っ白い目で見てるのがわかった、その時僕は思った。
「ああ…なんか…うまくいかなさそう…」
きっと印象を悪くしたとだいぶ落ち込んで今日の授業を受けた、
午前の授業を終えて、食堂で食事をしようと食券を買おうとしたら。
「ここはうどんがおいしいよ!、定食もいいけどやっぱりうどんだもんね」
ミカさんが話しかけてきた。
「…えっとー、ラーメンじゃダメなのかな?」
「ラーメンはしょっぱすぎてダメなんの、うどんがいいよ」
突然話しかけた彼女の言う通りうどんを頼んだ、彼女の言った通りすごく
美味しかった。
「あれ?ミカさんは頼んでないの?」
「んー?、ミカはねハップ婆のお弁当があるから大丈夫なのー」
と二段のお弁当を取り出して食べ始めた。
お金払って食券を買ったのに自分は家のお弁当かって言いたいが
無邪気な彼女の笑顔を見たら言うのが可哀想に思ったので大目に見た
というかうどんが本当に美味しかったのでまあいいかって気持ちだった。
おつゆも飲んで器を返却口へ返した後は教室へと戻った。
静かに机に座って午後の授業を待つのかと思ったが奥から何人かがやってきた
「夏日くんだっけ、あたしは東村よ、よろしく」
「俺は赤木だぜ」
ここで暮らしている生徒が僕に話しかけてきた、最初のことでだいぶ気味悪がられた
と思ってたが、僕はすごく安心感を覚えた。
なるせ地方の子が仲良くしようと話しかけてくれたんだ、味方ができたと感じた。
「あ、あの自己紹介の時にも言ったけど…夜空夏日です。」
「あっ、じゃあならナツって呼ぶね」
「ナツ、何かあれば俺らにいいな、なんとかするから」
この会話から、すごく頼りになる子だってわかった、不安だった新しい学校生活ももう安心だ。
この2人はすごく話しやすく、僕の好きなことにいいねって言ってくれた。
話は得意な方ではないけど、この時だけは楽しく思った。
「でも意外だったよねミカと知り合いだなんて」
「え?、うん引っ越しのに挨拶に来たから…」
「お前は知らないかも知れないけど、あいつは昔っから変なやつで、宇宙人と言う
あだ名をつけられていて、すごい軽蔑されているんだよ」
それについては、彼女に申し訳ないが、言われて当然だと思った。
自分の含む他の人とは何か番う雰囲気は感じたし、多分同い年だろうけど
あまりにも幼稚な性格すぎると思った。
とか思っているとその本人がやってきた、僕を見つけるとたったっと
走ってやってきた。
「あっナツくん‼︎、今日は一緒に帰ろうよー‼︎」
と今時の女の子とは思えないような抱きつき方をしてワーワーと騒いだ。
その場にいた東村さんや赤木くんはちょっと引いてたけど、まあ苦笑いをしてた。
「あっ東ちゃんに赤くん、一緒に帰るー⁉︎」
「あ…ええちょっと用事が…」
「俺もだぜ…」
と言い残して、彼らは自分の席へと戻っていった。
そんなタイミングに合わせてかチャイムもなってミカさんも僕も元の席へと
戻った。
午後の除業ではっきり覚えているのはミカさんのことだった。
国語の授業だった時に、隣のミカさんを見たら、彼女はなんなのかわからない
落書きを机にした。
「ミカさん、授業中だよ…」
「これはね、遠い星だよ!」と静かにするべき授業中にも構わず、
大声で答えた。
「こらミカ!、私語は慎め!」と先生は彼女を叱ったが、ミカさんは気にはせず
鼻歌を歌いながら落書きをしていた。
そんな彼女は僕の帰りに付き合っていた。
「ナツくん、あれはカラス神社って言うんだ!」
その神社は生い茂る森の前に赤い鳥居がありその奥に階段があり、神社がこの山の上に
あるんだとはっきり思うところだった。
まあその神社がどんなものかまた休みの日に見にいってみようと思った。
その流れでミカさんは、あそこが公民館、あれが〇〇マーケットとか。
この町の施設とか公園とかを紹介しながら、帰り道を帰っていった。
その道中のことだったけど、あることが気になっていて彼女に聞いてみた。
「あのミカさんは、親って八風さんだけなのかな…」
「んー?」
ミカさんがハップ婆と呼んでるお婆さん以外の家族、そう父と母の姿を
あの挨拶の際見てなかった。
「もしかして仕事か何かでいなかったのかなあの時」
「いるよ、あそこに」
彼女の指差す方向は空を指した、まさかすでに…など思ったがそれを聞く間もなく
彼女は言った。
「お父さんとお母さんは遠い星でミカを見守っているってハップ婆は言ってた。
だからミカはねどこかの星の人なんだねー」
この時のミカさんは目が宝石のように輝いていたので、それは違うよと言う言葉が
喉の奥で止まって、代わりに「そうなんだ」ってしか言えなかった。
彼女はただ子供のように汚れなく純粋だからって思うが、今の歳の子から見たら
それは幼稚で気持ち悪く見えてもしょうがないと思った。
僕は前者の方へ気持ちがある、気持ち悪いと思うのは可哀想だし。
その後ミカさんは変な事やちんぷんかんぷんの話をして勝手にケラケラ笑ってた。
その話に付き合ってあっという間に自分の家に着いた。
「ナツくんバイバーイ!」て手を振りながら彼女は自分の家へと帰っていった、
今日はかなり疲れたので早速玄関開けてただいまっと言ってすぐに二階へ上がって
部屋のベットで寝た。
「ふうっー、まさかあの子が同じ学校なんて…ふいー」
これからほぼ日で彼女と一緒にいると考えると今まで以上に体力を使うだろうと予測。
ああ、気持ちがさらに重く感じてしまう…、学校生活は絶望的になるだろうと悪い考えしか
頭に湧いて出てきた、完全に飲み込まれないようにプラスを考えようとした。
「えっと…ああそうだ、二人友達できたんだし、それがいいだろう…後は…」
あの天真爛漫の塊のようなミカさんのいいところを上げないと…えっと彼女は…。
そうだ一つあった、彼女は可愛かった…
背後で母さんが「夕飯できたよー!」て声が聞こえたので、僕はたったっと階段を降りて
リビングで家族4人で食事をして一日を終えた。
その2
昨日の疲れは全く取れなかった、かなり寝たはずなのに
布団の中でむにゃむにゃと起き上がれずうずくまっていたら、下から母さんが
「起きなさい‼︎」と大声が飛んできてすぐにばっと起きて下へ降りていった。
すぐに朝食のハムエッグを食べて制服に着替えるとまた母さんが大声で呼んできた。
「ナツ‼︎ミカちゃんが玄関で待っているよ‼︎」
「はいィ?」
さっと制服に着替えてカバンを持って玄関を開けると、ミカさんがいた。
しかしこっちに気づかずにヘッドホンを頭につけていた、音楽を聴いているのだろうか
でも何かぶつぶつと言っているぞ。
「もしもしー、こちらはミカでーす、応答ありますかー?」
どこかわからないとこへ交信しようと試みていた、てかよく見るとヘッドホンの
ジャックは繋がってないし…。
「あ、ナツくんおっはよー!」
彼女は笑顔で僕に挨拶してくれた、それに釣られてか僕も「お…おはよ…」と
引きながら挨拶をしたのだ。
「それは、あーえっと…何やってんの?」
「お星様に電話しようとしてんだー、でも繋がんないやー」
はぇっとため息をつき彼女を連れて学校へ向かった。
そこまで向かう道のりはもう覚えたし、というか彼女が先に走っていくから覚えてなくても
ついていけばすぐに着く。
学校について早々、ミカさんはドアをガララっと開けて
「オハヨー‼︎みんな‼︎」と大声で挨拶をした。
でもみんなこっちを見ずに無視をしてた、彼女はそのことを気にせずに席に座っていった。
まあ僕も自分の机へ向かおうとするが、やはり他の生徒の視線が痛い、
でも昨日話しかけてきてくれた東村さんや赤木くんが今日も「おはようさん」って
挨拶してくれたのに安心があった。
「おはよう、まだちょっとここの学校の雰囲気になれなくて困っているんだ」
「無理はしちゃダメよ、ゆっくり慣れればいいんだし」
「ああ、そうだね」というと後ろの扉が開いて先生がきたと思ったら違った、
多分隣のクラスの生徒だけど、見てわかった相手がたちの悪いヤンキーだって
都会の学校でも見たから。
「車田!」どうやらそれが彼の名前らしい、その車田はズッカズッカとこっちへ迫り
顔を僕に近づけた、後ろには取り巻きがいて逃げれない状態にして彼は言った。
「おめえか、他所から来た都会者は?」
「あ…うん」
「お前ごときがでかい顔をすんなよなあ、それに俺はお前みたいな奴はでえ嫌いなんだよ
都会のやつがな」
少しびくびくと体が震え出した、来て早々にヤンキーに絡まれるなんて運が悪い
「おいおいどうしたぁー?お坊ちゃんがよー」
と後ろの取り巻きも囃し立てるし、もしかしたら最悪ボコボコになるかもしれないと
思ったその時。
「いけないんだよー!意地悪は!」席に座ってたミカさんが間に入ってきた。
「うゲェ!宇宙人かよ、おい逃げんぞこいつの匂いは脳を蕩けさせるぞ!」
と言って取り巻きたちも「異常者ー」とかの悪口を言いながらどっかへ行った。
「ナツくん、怪我ないー」と心配してくれた。
「うん大丈夫だったよ」と僕は返した時に後ろの方からヒソヒソと何かが聞こえた。
「本当に、頭狂ってんじゃないの?…」
「車田は嫌いだけど、あいつらの言う通りだよ、異常者だと思うよ…」
クラスメイトもまた悪口を彼女に聞こえないように言っていた、多分こちらにも
微かに聞こえる距離なのに、ミカさんは何も気にしていないように
ニコニコ笑顔で僕を見ていた。
するとまた扉がガララっと開き瓦先生がやってきた。
「おーいお前らー朝の会始めるぞー!」
クラス内の生徒たちは自分の席に黙って戻って行った。
今日はいい天気だとか先生は今日瓦を十五段割ったとか大した話しかない
ホームルームは終わり、数学の授業が始まり先生は黒板に数式を書いていたが
僕は数学ってのは苦手で、できる人がすごいと思っている。
ちなみに隣の席のミカさんはスラスラと数式をすぐに解くらしく
僕は彼女の頭は計算機があるのかというくらいすごく思った。
その彼女曰く
「遠い星の絵みたいで好きなの」との事。
まあそんなこんなで数学の授業は終わって中休みになり、僕は久しぶりに
音楽が聴きたくなって、音楽プレーヤーを取り出して聴いていたら。
「ねえねえ、何してんの」とミカさんが話しかけてきた。
「あっうん、音楽を聴くんだけど」
「へえーそれでね、なんか宇宙の機械みたいだねー」と興味あるように
みていたら。
「よかったら聴いてみる?」とイヤホンの片方を彼女の耳につけた。
するとミカさんは静かになって聞き入っていた、僕の音楽は以前いた
高校のクラスメイトには合わなかったのに、彼女はまるで宝石を
うっとり眺めるように聴き入っていた。
「すごくいいねー、よかったよー」と笑顔で子供みたいな感想を言った。
すると彼女はカバンから何かをあの時していたヘッドホンを取り出してきた。
「これ繋げようよー」よくみるとこのジャックはプレーヤーのプラグにはまるやつだったので
言われるままつなげて、一番気にいってる(個人的に)の曲をかけると、彼女の顔はさっきより
笑顔が咲いた。
「うわー、すごい頭の中で音が回ってるみたいだー」
このヘッドホンのおかげもあるけど、今までわからないと言われていた僕の曲を好んで
くれる事はとても嬉しかった。
その後もこれも好きあれも好きととミカさんは言ってくれたので、とても気持ちがよかった。
そんなやりとりをしているとあっと言うまに休み時間は過ぎて、みんな席についていた。
午前の後半を終えた後は、食堂でうどんを啜り午後の体育を受けた、これもまた僕は苦手だった
でも今回はサッカーやバスケとかでなく徒競走の授業だったので安心した、体を動かしながら
ルールを厳守するスポーツは特に嫌いだし、それができる人はどうなってるか思う。
それでも徒競走の結果は最悪、僕のノロマっぷりが曝け出されたので
小っ恥ずかしい気持ちになった。
そんな気持ちで、座って女子の番をみていたらミカさん達の番になった。
固定概念だけど勉強できる人は運動ができない、その逆も然りと言う考えがあるから、
数学ができる彼女でもさすがに…て思ったが予想外だった。
ミカさんはスイスイと他の子を抜いていき一番でゴールしたのだ、彼女はやったーと喜んで
ぴょんぴょんはねている、横の赤木くん曰くミカさんは短距離走では右に出るものいないと。
中身は子供か幼稚園児みたいだけどなんでもできるんだってのには少し驚いた。
体育の終わりにミカさんとまた話した。
「お疲れさん、今日の体育はすごかったよ、ミカさん一着だったし」
それしか言えないので、そう話すと。
「走るのは大好きだよー」て返してきた。
「本当に苦手なものがないように思えるよ」
「ううん、苦手なものはあるよ」
それを聞いて興味がすごく湧いてきた、あのなんでもできるような彼女の苦手なものは何か。
「ええ、それはなんだい?」
「えっとね、漢字!、これは苦手なの遠い星の絵っぽくないから」
「そうなんだ…僕は国語は得意だからわからない所は教えられるよ」
すると彼女は少し嬉しそうに笑顔になって
「じゃあお願するねー」と言った。
その後の帰り道もまた同じくミカさんと一緒だった、今日は少し早くなったのでミカさんは
「今日はカラス神社まで行こうよ」
その神社というのは昨日名前で聞き、鳥居も見た所だが本殿は見たことはない、
彼女の手に引かれて鳥居をくぐり、階段を上がって山の上まで行った。
途中体力が尽きて、やっとの思いで階段を一歩一歩と上がっていく僕に比べて、ミカさんは
息を切らすこともなくたつたったっと階段を登っていく。
「遅いよー、はやく早くー」
と彼女は囃し立てるので、とにかく足を上げて上まで登った。
頂上の鳥居をくぐった時はもう汗だくでその場で座って休憩をし、そのカラス神社というのを
見たところ、ものすごく小さな社だった、最近改装したのだろうか汚れもヒビもないが
都会で見たあの大きな神社ではなく、そのそばにあるようなものすごくちっぽけなお社さん
だった。
「ナツくん、こっち来てー」とミカさんが呼んでいる。
すぐにそっちに行くと、木と木の間から星空町を眺められる場所を案内してくれた。
「ここから眺められる町はいいんだよー」
決してこの山は高い山ではない、だからこそ高層ビルで見るように一軒一軒が
豆粒になるような感じでなく、ちょうどよく見える高さなので、
あそこはあれで、あっちはあれとわかった。
「この星空町はこんなとこがあるんだね」と素直に関心をした。
そして「上をみて」と僕はその上もみたら空が一面に広がっていた。
これだけの木があるのに空は枝に遮られずに空が見えた。
「ここから星がたくさん見えるんだ、お父さんお母さんのいる星もあるよ」
確かにこの空なら、天気が良ければ星がよく見える、この時期なら
アンドロメダやペルセウス、ペガサスそしてカシオペアのが見えるだろう。
そう思うと僕はとても心が揺れた。
「ミカさん、僕は小学校の時から星を見るのが好きで…」
「あっそうなんだ!ミカとおんなじー!」
「また望遠鏡を持ってくるから、天気が良ければ一緒に見ないかい?」
というと彼女はすごく喜んでまたぴょんぴょんはねた。
「わーい!嬉しいなー天体観測ー!」
なんだかこの満開の花のような笑顔は、僕の心に晴れを持ってくるような
感じがして、多少のイラつくことでも許せそうに思えた。
それから僕は、いつか天体観測を一緒にすることを待ち続けた。
まだその天気だはないから。その3
この町へ引っ越してきて二週間目の休日の日にミカさんが遊びにきた。
朝の9時、まだ服も着替えてないのに、約束なくやってきた。
「遊びにきたよ!」
無邪気な笑顔の彼女の顔を見ると、叱ってやりたい気持ちが失せて。
「…あー、いらっしゃい」としか言葉は出なかった。
今日は何も用事がないことが救いになった、まあいいだろうと
ささっと彼女を家に入れた、家にいる両親は嫌な顔はせずにまねいてくれたし
妹のフユは
「にいちゃん、いつの間に彼女できたんだー以外」と茶化す。
「うるさいよ」と顔を赤くして反論し、ミカさんを上の部屋へ連れて行った。
とは言っても僕の部屋には面白いものはないし、漫画は個人の好みで買ったやつだし
ゲーム機はフユの部屋にしかない。
さあどうしようかと思っていたが、ミカさんは僕の望遠鏡をじっと眺めていた。
「それはそんなにいいものじゃないんだ、ちゃんとした物は本当に高いんだ」
この望遠鏡は、小学生の頃は立派な宝物としてみてた、今もその気持ちは変わらないが
大人たちが買うもっと性能のいいやつと比べれば、正直見窄らしい中古だった。
でもミカさんは。
「星が見えるんでしょ?これでもいいよー」て言ってくれた。
「うんまあ見えるけどね」
「あ、天体観測はいつするの?」
「まだだよ、今週と来週は天気がそれほどよくないからまた言うから」
彼女は残念そうにぷぅーとした表情になった。
その時にドアのノック音がして、入ってきたのはお菓子と飲み物を持ってきた
母さんだった。
「ミカちゃん、ごゆっくり、あとナツせっかくできたお友達だからちゃんとするのよ」
いつもの“母の小言”にはぁーいて返事をしたら、そのままさっと母さんは部屋を出た。
僕らはお菓子をパリパリと食べて、出された季節外れの麦茶を飲んで、一息つき僕は
こう言った。
「ちょっと外でない」
「うん」と特に感情なく頷いた。
階段をとたとたと降りて玄関で靴を履いて、行っていますと声をかけて外へ出たのはいいが
僕はここへきて二週間しか経ってない、アミューズメントや映画館のある所は
電車で何駅かあるだろうし、ここにあるのは公民館や歴史博物館(名前は立派だがここは昔の商人邸)しかないし後は図書館だけ…、遊べる場所がないのでさあどうしよう。
公園の遊具なら彼女は喜ぶかもしれないが17になってブランコでワイワイ騒ぐのは
かなり恥ずかしい。
「えっと…どこへ行こうか?」と自分で外へ出ようと言ったのに、彼女に聞くとは…という
よりも。
手段がそれしかないから仕方なかったんだ、すると彼女は。
「ミカん家に行こうよ!、ナツくんとこ行ったんだからー」
⁉︎…そういえば彼女の家は言ってなかったと僕は思った、ちょこっとだけどんな家か
気になったいたし、考えもなく「うん行こうか」て返事をした。
するとミカさんは僕の手を握って思いっきり引っ張っていった。
「ちょっとミカさん⁉︎」
「こっちにミカの家あるから!」
この時のミカさんはほんと力が強くて、腕を持ってかれそうと家へ帰った後思った。
そのまま彼女に手を引かれ、タタタっと走った。
以前の神社の階段の時でもそうだが、ミカさんは体力もすごかった、こんだけ走っても
息が切れないんだ、僕はついていくのにやっとなのに。
もう倒れそうになる時に突然彼女はピタッと止まった、どうやら家に着いたみたいだった。
切れた体力が戻り周りを見回すと、そこは金色の稲が一面に広がる田んぼに囲まれた。
一昔くらいの木造の平屋だった。
その隣の田んぼで稲を手で刈っている麦わら帽子のおばあさんがこっちに気づいて
手を振ってくれた。
「ハップ婆ー!、ナツくんきたよー!」
とミカさんも手を振りかえした、ざっざっと稲のかき分けて、こっちへ八風さんがやってきた
「ナツくん、よくきてくれたね、ここはミカと私の家よ」
「すみませんお邪魔しましたか?」
「いえいえ、さあうちに上がりなさい、とれたてのお米でおにぎり作るから」
僕はその言葉に甘えて彼女の家へ上がった。
木造の柱と天井、そして広い畳の居間で礼儀よく座ったら八風さんが
真っ白なおにぎりとあったかいお茶を持って着てくれた。
それをパクッと食べた、具は入っていなくて塩だけだったけど
それは格別に美味しかった。
お茶もあまり苦くなくて甘さを感じてしまうほどだった。
おにぎりは5個あったけど、ミカさんが3つ食べたのであっという間に
無くなった。
「美味しかったです」と正直に答えると。
「それはよかった、うちはこれくらいしか出せないからね」と八風さんは笑って答えた。
するとミカさんはお茶をごくりと飲み干して立ち上がり
「ナツくん!ミカ本を取ってくるよ!待っててー」
と走って襖を開けてたったったと足音立ててどこかへ行った。
「走ると転ぶよ!」と八風さんは注意するが、聞こえてないようだった。
「ナツくん、ここへきてしばらく経ったけどどうだい生活は?」
「最初は大変だったけど、でも友達ができてからはだいぶ慣れてきました」
「ミカとも仲良くしてるんだっけ本人からよく聞くわ」
「あ、そうなんですか」
あの彼女のことだから、身の回りのことは全部この八風さんに話すだろう。
それと比べると僕は彼女と仲良くしているなんてあんま話さないので、
その部分はミカさんを見習うべきとちょっと思った。
「正直言いますと、最初彼女にあった時は、びっくりでしたよ僕とほぼ同い年なのに
なんだか幼稚園児のまんま大きなった人みたいだったから。」
というと八風さんは大笑いして答えた。
「確かにそうね!、でもこれは私の育て方にちょっと影響があるのよ」
「育て方?」
「あの子は昔から純粋な子で、いろんな事に興味を持ったり、疑問に思ったり、まあ
よくいえば感性が豊かで純粋、悪くいえば幼稚なのかもしれないね、私はそれを前者に捉えて
育てたのよ」
そうか、八風さんの育て方と…、その言葉が頭に入った時一つ疑問が生まれた。
ミカさんの両親のことだった
それが気になって八風さん質問した。
「八風さん、ミカさんの親って今どうしているのですか?、2人とも働いているのですか?」
と言うと。
「ミカの親は星にいるのよ、そこでミカを見守っているの」と笑顔で返してきた。
「えっと…どういうことですか?」
「ナツくんには難しかったね、簡単にいえば生死がわからないとうこと、ちょうど16年前
くらいにミカを私に預けていなくなっちゃったのよ、その後に2人の車が山の崖の下で
見つかったの」
それを聞き、衝撃を受けた、
失礼ながらも僕はこう答えてしまった。
「死んだのですか?」
「遺体はなかったの、もしも生きているのならなぜ姿を消したのかわからないの…
ミカが生まれてから何もなかったのに…」
畳に座ってため息をつき八風さんはこう言った。
「でも私もミカと同じ純粋な人だから、きっと星にいて私たちを見守っていると考える事に
したの、その方が明るくなるでしょ」
八風さんは笑顔を僕に見せた、少し暗くなったと思ったのだろうか、場の空気を
明るくするための笑顔に違いないと思った。
「ナツくーん!、本持ってきたよー!」
襖がピシャッと開いてミカさんが現れた。
僕はその音にびっくりして飛び上がるほどだった。
「わっミカさん!」
すると、こっちのタイミングも合わせずにっ持ってきた絵本をパラパラ見せてきた。
無邪気に彼女は彼女なりの解説を入れてくれた。
僕はそれに合わせてその絵本を読んだ、こう言うのはもう小学校低学年で卒業したのに
また読む事になったけど、でも改めて読むとこう言う本は深いものもあるんだと感じた
彼女は感性が豊かっていう八風さんの言葉も頷けた。
そんなこんなで夕暮れになり僕は家へ帰る事になった。
「ナツくん明日学校でねー!」
「また何かあったらおいで、ミカとも仲良くね」
僕は2人に見送られて家へ帰った。
都会にいた時は建物で遮られ、ゆくゆく人々の波に揉まれて、ちゃんと夕焼け空を見れなかった
けど星空町へ引っ越してきてからは、夕焼けを眺めながら帰る時間が増えた。
田舎の人たちはその日の空の機嫌をみて晴れ雨を予測するとか父からきいたことがある。
それをできるようになるには、大人になったからだと僕は思うが。
すぐにでもそんな目が欲しいと今願っている。
そうすればいつ星が見える日か予測ができて便利だから、いつごろ天体観測ができるか
スケジュールも組める。
これから先、友達ともそしてミカさんとも会える時が増えるかもしれない。その4
「ようナツ!」
「ナツくんおはよー」と最近はよく挨拶やちょっとした話をしてくれるようになった。
もうすでにこの星空高校の生徒の一員として馴染めてきた。
僕もすでにこの学校の生徒や先生のことも理解できた。
顔はコワモテだけど優しい瓦先生、
気のいい友達である東村さんに赤木くん、
感じの悪い所で車田ら、そして陰険な女子たちそして…
答えると長くなるので次で最後にすると、変わり者のガールフレンド
「ミカさん」
この彼女とはどの友人よりも付き合いが長い、何かあれば何か言ってくるのが
学校生活のほとんだった、でも僕は最近思うんだミカさんといると
すごく落ち着く。
ミカさんが学校にいないといつもの日常にならないくらい(とは言っても皆勤賞になるくらい
彼女はほとんど休まない)
今日もそのミカさんが話しかけてきてくれた。
「ナツくん!おはよ!」
「ミカさんおはよ!」
僕の隣にいた東村さんや赤木くんも
「おはよう」
「おっす」
と挨拶をした、朝の最初の「おはよう」で初めて次に話題をミカさんがふってきた。
「ナツくん、天体観測はもうできるー?」
最近はこればっかり彼女は言ってくるが今回は違う、僕は自信があるかのようにこう答えた
「できるよ、今週は天気が最高だから」
「やったー!」と大喜びをした。
この満面の笑みをみて僕は嬉しくなった、この笑顔が好きになったから。
「明日、土曜の夜にたくさん星が出るからみんな7時ごろに集まって」
というと赤木くんは言った。
「場所はどこだ?」との事、もちろん場所は決まっている。
「カラス神社に集まろう、あそこは空が広いから」
「わーい!カラス神社ー!」
と言うわけで僕らは明日の夜カラス神社で天体観測をすることにした。今日の授業中は
ミカさんはワクワクしてたのか、授業中は鼻歌をやめず瓦先生に職員室に呼ばれてしまった。
その後の帰り道でも、歌うのをやめず常にご機嫌だった、別れた後も上機嫌であったし、
家についてからもあのまんまだと少しふふっと笑ってしまった。
「きっと今頃ハップ婆に今日のこと話してるんだろうな」と夕飯の食事中にボーっとしてたら
「ナツ」と母さんが声をかけてきた。
「どうしたの突然ぼーっとして」僕ははっと我に帰って
「あ…なんでもないよ」とご飯をかき込んだ。
夕食を終えて、お風呂に入り、今日の日を終えた。
次の日の朝、僕は眠い目をぱちぱちさせながらだるそうに起きた、たくさん寝たのに
まだ眠い、初めここへきた時の朝と同じ疲れが取れてない感。
タドタドと服を着替えて、今日の朝ごはんのベーコンエッグをご飯にのせて食べて
後は何をしようか…と考えて上へ上がろうとした。
「ナツ!、あんた暇なんでしょ、お醤油を買ってきて!」と母に頼まれた。
「お兄ちゃんついでに、お昼買ってきてー」とフユも“自分の要求”を命令したのだった。
夜までは暇なのは大当たりだから「いやです」とはいえないし、僕は大きめのバッグを持ち
外を出た。
うちからスーパーまでそんなに距離はない、コンビニのもあるがスーパーの方が安いので
そっちへ行く事にした。
「カップ麺でいいだろ、フユは」
トコトコと歩いてスーパーの方角へ向かった、一番の目的“お醤油の濃口”を買うために。
住宅街の端っこのチェーンのスーパーでカップ麺とお醤油を買って店を出て、
そのまま家へ帰った。
それから何かするわけでもなく、お昼を食べて自室でゴロンと床で寝転がった。
片付けをするほど散らかってないし、ゴミ箱すら空っぽ。
読みたい本も今はないし、ただただ床に寝転がるだけ、
足をパタパタと動かして、何かを考えようとしてもあるのは「ミカさんと天体観測」
ての事しか頭にない、今日はそれが目的なので、もうサッと夜まで寝たい。
そんなふうにウダウダと夕食まで寝転がり、ご飯を食べ終えた後に望遠鏡を
袋に入れて、バッグに本やノートを入れて玄関へ向かったら、
ピンポーンっとタイミングよく誰かが来た。
その主が誰かはすぐわかった、わかっているから、親が帰ってきた子供のような気持ちで
ドアを開けた。
「ナツくんー!きたよー!」現在は午後の6時だいぶ過ぎた時間。あまりにも早過ぎているけど
わざわざきてくれたんだと思って僕は彼女を連れて友人より先にカラス神社へ向かった。
あの神社は外灯は無く夜道は不気味に暗い。だから大きな懐中電灯を持ってこないといけない。
僕もミカさんもそれを持って階段を上がって行った。一番上の社へ着いた時はさっきより暗く
手に持った懐中電灯を頼りに袋に入っている望遠鏡を立てて、星についての本を開いた。
「もうすぐ7時だ、まだ2人来てないから、少しみてみるか」
「うん」と彼女が頷いたので、望遠鏡で夜空を眺めた。木々のドームにぽっかり空いた
穴から星座を見つけようと、望遠鏡を動かし、そして最初に見つけたのはペガサス座、
「あれはペガサス座、その横にアンドロメダがあるよ」
「なんでそんな名前なの?」
「それはわからない、けども星座はほとんどギリシャ神話の話から来てるって」
「ふーん」とそれ以上は質問しなかった、これ以上きたら説明が難しいからそれでいいや。
アンドロメダの近くにカシオペアがあるからその方向へ上へ望遠鏡を傾けようとすると。
「お父さんとお母さんの星は?、それをみてみたいなー」と彼女は言った。
「え?、それはどの星なのか知らないの?」
「だから聞いたんだよー、どこにあるか知らない?」きっとハップ婆は僕のように望遠鏡を
持ってなかったから夜空に指差して「あそこにお父さんとお母さんがいるよ」って
答えたんだろう。
本当なら“わからない物は探せない”ていう答え方が正しいが、ミカさんのことを考えると
その答え方はすごく無粋だった。
だから今彼女の両親のいる星って言うのを僕が見つけて、彼女の純粋な心を守ることが
僕にとって大事なことだった。
何かあるかと望遠鏡を動かした、そして僕はそれを見つけた。
「あったよミカさんあれが、お父さんとお母さんの星だよ」
その星はポラリス(現在の北極星)の少し隣にあった、小さな星。
それと比べると本当に消えそうな程の光を放つ小さな星だった。それを彼女に見せるために
望遠鏡を覗かせて場所を指した。
「あれがその星なんだ、とても小さい星だね」
「星が小さく見えるのは僕らからするとすごく遠くにあるって本に書いてあった、
そう見えてるだけで、本当はすごく大きいんだ…」
すると彼女はニコッと笑った。
「あそこでみてるんだ、ずっと」いつもは何か嬉しいことがあれば子供みたいに
はしゃぐミカさんが、ここまでおとなしく喜ぶ姿を見たのは初めてだった。
その時、僕はミカさんは宇宙人というよりも天体なんじゃないかと思った。
太陽のように明るくて時々月のようにスッとおとなしいそしてそれでいて濁りがない
そんな子だと子供ながら思った。
「お父さんー、お母さんー、ミカは元気にしてるからー」と突然大きな声を出した。
「み…ミカさん近所迷惑になるよ!」としーっと注意した。えへへっと笑顔を見せたので
強く怒れなかった。
その後に東村さんと赤木くんがやってきて、4人全員ようやく揃ってここから本当の
天体観測を始めた。
先ほど言った星座含む、あれがそれでと説明してその星を眺めた、途中ミカさんが
2人に両親のいる星を見せてきたりしたけど、それでもこの時はすごく楽しい時だった。
都会へいたときはマンションのベランダでただ一人で夏の大三角形など眺めて今日の日をノートに
まとめていただけ。
自分だけの楽しみとしての天体観測だったけど、東村さんや赤木くんには申し訳ないが。
これは僕のだけでなく彼女のための天体観測になった。
今日の日のような事がまたこないか願い家に帰った後はとても気持ちよく寝た。
ノートにはその時みた天体の名称とスケッチその隅っこに
「またミカさんと一緒にあの星を眺めたいな」と書いてあった。
その5
今日は雨の日だった、水を張った紙にポタポタと水彩を垂らしたような灰色の空から
ポツポツとそしてザーザーと雨粒が降り出した。
こういう日の夜は本当に真っ暗で星も見えない。
ミカさんは今日はずっと雨空を廊下の窓から見ていた、
「あ、ナツくんおはよー」いつもよりテンションの低い声で僕に挨拶をした。
「ミカさん今日は、あんまり元気ないよね、雨だからかな」
「うん、雨が降ってから夜に星が見えないんだ、ミカは雨は好きじゃないんだ
気持ちが下がるんだ」
目があまり開いていないので、瞼はいつもより厚く、笑顔もどこか力が無く
萎れたひまわりのような感じだった。
「星が見えないとなんだか不安なんだ、ひとりぼっちではないのに
ひとりぼっちになったみたいでー」
「大丈夫だよ、今見えなくてもそれは今頃だけで、次天気が良かったらさ
また見えるよ」
彼女の気持ちを考えるのは、僕も曇り空はそんなに好きではない、
星が見えないからもあるが、こういう時って気分が下がるし、
なんせ気象に左右されやすい体質だから。
理由は彼女と同じ部分はあって違うところはあるが、男の子の僕は
まず女の子のミカさんを元気づけなきゃと思った。
「そうだね…、今星が見えなくても、ミカはナツくんたちがいるから、一人じゃないね」
またちょっと元気ない笑顔を見せた、ミカさんは僕に不安な気持ちにさせたくないのかも
しれないから、無理にでも元気ですって彼女は振る舞ったのだろう
「ミカが元気でいなきゃ、お父さんお母さんも不安になるから、ミカ元気になるよ」
ムンっと気合いを入れ直して、あご引いた、いつものミカさんになろうとした。
「ミカさん無理しなくても大丈夫だよ」と僕は言った
「ナツ、ちょっといいか」瓦先生が大きな段ボールを持って声をかけてきた
「職員室に荷物運ぶの手伝ってほしい、もう一つは資料室にあるから」
「あっはい、わかりました」とすぐにそこへ向かった、一人ミカさんを置いて。
「あらら、ナツくん行っちゃった」
再び窓から空を眺めた、すると彼女の後ろから女子が3人くらいミカさんに
よってきた。
「ん?ミカに何かよう?」
「“ミカに何かよう”ですって、ほんとキッショ」と小馬鹿にするように一人が言ってきた。
「最近あんた調子乗ってんじゃないの?、マジでムカつくんだよぉ!」
ともう一人はズンズンと彼女に詰め寄ってきた。
「近いよー、意地悪は良くないよね」
「宇宙人は宇宙へ帰れ」と脅しをかけてきたするとミカさんは
「今は雲があるしお父さんとお母さんの星が見えないから…」ちょっと不安げな顔をして
答えたら
「お父さんとお母さんの星?あはははは‼︎、あんた本当脳みそ溶けてんじゃないの⁉︎
いるわけないじゃん‼︎、」
それを聞いて彼女はかっと表情が曇り始めた。
「…いるんだってハップ婆言ってたもん…」
「うわキモ!、本当に信じてんの?、なら本当のこと言うよ、あんたの親は死んでんだよ‼︎」
「キャハハハ‼︎あんたは孤児よ!ウケルー!」
僕と瓦先生が来た時には、あいつらはそこまで言ってた、それを聞いた彼女は
ぎゃああああ‼︎、と大声をあげて喚き出した。
「ミカさん‼︎」頭をぐしゃぐしゃかき乱して、恐ろしい何かを見たような表情をして
泣き喚く彼女を瓦先生はどうにか落ち着かせようとしたが、体育系の先生でも
どうにもできず結局何人かの先生でどうにかできた、その時の彼女は全ての
体力を使ったように気を失っていた。
ミカさんは保健室の先生に抱えられて保健室へ、
瓦先生は張本人の女子たちの腕を掴んで職員室へ行った。
周りの生徒はざわついた、突然のことに動揺しているだろう、だけど
僕はそれ以上に彼女の身が心配だった、他の先生は「教室へ戻れ!」と声をあげたので
僕は素直に戻って授業を受けたけど、頭には国語の文法とか数学の数式とかでなく
ミカさんのことだけだった。
結局どうにもならず先生に適当なことを言って授業を抜け出して。保健室に向かった。
そこに着いたときは、ミカさんは意識を取り戻して、駆けつけてきたハップ婆と
一緒にいた。
「ミカさん…大丈夫」と言っても何も答えなかった。
俯いた顔から、笑顔は消えていた目には星がない濁った曇り空のようになった
はっきり彼女の心が壊れたと感じた。
「ナツくん、わざわざ駆けつけてきてくれたんだね…ミカは少し体調が悪くてね
しばらく学校を休むことにするって先生に言ったの」
…何も答えられずただ、その場をたちつくした、ハップ婆は彼女の手を引いて
学校を後にした、僕のその気持ちに共鳴するように、雨空はさらに黒くなった。
仮に晴れたとしても、心に穴が空いてる自分にとってそれは無礼に思えただろう。
帰り道、僕のことを気をかけたか東村さんや赤木くんが一緒に帰り道を付き合ってくれた。
「ナツくん、落ち込んでいるから元気出せと言ってもあれだけど…」
「とにかく元気出せよ、お前までそんなんになったら…」
と励ましてくれたけど、それは空を切るようにすり抜けた。
自分の家へつき、夕飯を食べようとするが喉を通さない、僕の大好きなハンバーグなのに…
親も心配して「何があったの?」て聞くけど相談する気力もないので、今日は自分の部屋で
そのまま寝た。
次の日の朝はいつも家にくるミカさんはやってこない、学校まで一人で向かった。
玄関で靴を履き替えて、ただとぼとぼと教室へ行き机に座った、隣のミカさんの机は
空っぽの箱のように感じた、その机には彼女の描いた落書きが描かれていた。
それを見てはあーっとため息をついた。
すると教室の扉が開いてあの車田たちがやってきた、周りに威嚇するように目をつけながら
僕に近寄ってきた。
「ナツぅ、今日はあの宇宙人がいなくて寂しいんでちかぁー」
と自分を馬鹿にして大笑いするが、こんな奴とかまっていられるほど元気がないので
無視をした。
「ああん?何シカトしてんだよオイ!」と取り巻きが肩を掴んできたが、車田が間に入ってきた
「まあ待てや、それよりさ昨日のはウケたよなぁ、宇宙人ぷっつんしたとこ」
その言葉に僕はばっと車田の方へ振り向いた。
「おお?怒るのか⁉︎、よそものの分際でぇ、いい度胸だなぁオイ」
「…ミカさんを馬鹿にするな…」
怒りを込めて僕は車田の目を睨んだ。
「おめえ、宇宙人に惚れてんのかぁ?、ああーかわいそう!
あいつは脳みそクルパーだから、いろんな野郎と“や”っているゼエぇ」
僕の中の何かが切れて車田の顔を殴った。肩を掴んでいた取り巻きが
僕の頭を押さえつけて、拳を振り上げてきた。
「てめえ‼︎何しやがるんだこらぁ‼︎」押さえつけられてなおも
大声で喚き、車田に殴りかかろうとしたら、その本人が、
完全に怒髪天の状態になって、取り巻きごと殴り飛ばした。
僕らはそのまま机をガタガタ倒して吹き飛んだ、
「やめろよ車田‼︎、柱屋も巻き込んでんぞ‼︎」ともう一人の取り巻きが
押さえ込もうとするが、車田は顔を真っ赤にして
「ぶち殺してやる‼︎」と大声で喚いて僕に襲い掛かろうとした。
その後にやってきた瓦先生と他2名の教師に車田は抑えられてやつは職員室へ連れてかれた。
「何やってるの!何があったか話しなさい!」
顔に大きなあざをつけ、鼻血を流す僕はそれでも怒りが収まらず声にならない声をあげた後
そのまま泣いた。
結局僕も心がぐちゃぐちゃになり、感情が定まらなくなったので先生に連れて行かれた。
顔の怪我の治療もあるので保健室でしばらく先生とここにいた。落ち着きを取り戻してから
さっきの出来事を話した。
「…理由はわからないでもないけど…喧嘩になるは良くないわよ。」
「はい…」
「どうする?今日は授業は受けられる?無理なら早退でもいいよ」
とても今日の日を授業に使えるほど、心に余裕はなく僕は荷物をまとめて一人家へ帰った。
家にいても気持ちがいいわけでなく僕は帰る方向とは違う方向へ行き町を彷徨おうとした
ウロウロしても図書館に公民館、役場に商人邸しかないからボロボロの心を癒す助けには
ならない。
しばらく歩いてからちょっと経った時、目の前に見たことのある木造の平屋が見えてきた。
その周りの田んぼは荒野のようになっていた、稲は刈り終えたらしい。
僕はただ何も考えることなく、彼女の家を訪ねた、出てきたのはハップ婆だった。
「ナツくん!どうしたのその顔⁉︎」
僕は答えなかった。
「まあとりあえず、すぐに家に入りなさい、話は聞くから」
いつもの広い畳の居間に案内されここで今までのことをハップ婆に話した。
「そう…そんなことがあって…」
「あいつらだけじゃないんだ、クラスのみんなは彼女を軽蔑して悪口を言う…」
僕はハップ婆にそう言った。
「私はミカの純粋さを尊重して育ててきたけど、もしかしたらそのせいで傷つく事を
余計に増やすことになったのかもしれない」
「?」
「ごめんなさい、私はミカと同じく純粋な人と言ったけど、本当は違うの、
あの子の両親がいなくなった時、本当は死んだと言えばよかったのに、
適当な誤魔化しなんかして、ミカに嘘ばっかりついてきた、
私は育ての親としてダメな人かも…」
ハップ婆はすごく悲しそうな表情をして僕を見ていた。しかし僕はこう言った
「ハップ婆!僕はそれを間違いと思いたくない!、ミカさんは最初会った時は
変な人と見てたけど、…まだ一ヶ月しか経ってないから深く言えないけど…
キラキラ輝いて見えてたんだ…そんな彼女は僕は好きなんだ。」
これは僕の正直な彼女に対する感情だったかもしれない、本人や自分の親や友達にも
言わない子の感情を初めて放ったのは、ハップ婆の前が最初だった。
それを聞いたハップ婆はこう言った。
「あの子はどうしてナツくんに惹かれたか分かったかもしれない、あなたも
あの子と同じ純粋なのかもしれない」
「え、僕はそんなことはないです…」
「子供は大人に近づくほど濁っていく、若い頃はそういう子をたくさん見てきたのよ
ナツくんの言ってた通り、その中にはいつまでも輝く子もいるし、その輝きが見える人も
いる、だからあなたも純粋なのよ」
輝きが見える純粋さということは僕は初めて聞いた、それまで僕はハップ婆の言う通り、
大人に近づいて、少し汚くなった子供だと思っていたから、傷ついた僕にはその言葉は少し
しみるけど心の消毒薬になった、ちょっと立ち直ってから僕はハップ婆に聞いてみた
「ハップ婆、ミカさんは今大丈夫なのですか?、あの時のミカさんは…」
というとハップ婆は少し暗い表情になって答えた。
「部屋からあまり出てこなくなくなったの…食事もあまり食べないし、口も聞かなくなった…」
「そうですか…」僕は立ち上がり襖を開けて彼女の家の前へ行った。
ミカさんの部屋のドアの前にたち僕は言った。
「ミカさん!…あの…別に気にしなくていいなんだあいつらの言ったことは!…だから…」
声が詰まりこれ以上は何も言えなかった、それでも振り絞り
「また顔を見せてほしい、元気なミカさんが僕は好きなんだ」と言った。
声は返ってこなかった最後に「じゃあね」と言って玄関まで行った。
靴を履いて戸をガララと開けて帰る途中に、ハップ婆が
「ナツくん、ありがとうミカに会いにきてくれて、」と頭を下げてお礼を言った、
最後にハップ婆はあの時と同じ塩だけのおにぎりを手渡して、帰りを見送ってくれた。
家に帰ってから、そのおにぎりを家族に分けて残った一個を僕はパクりと食べた。
味は最初に家に来た時と同じ甘くて美味しかった、あの時の事を思い出して
僕は一つ涙をこぼした。
ミカさんは元気になる、そしてまた天体観測をしてあの星を見るんだ、それを僕は願った。
その6
刈り取った稲から米をとる作業をするハップ婆の前に瓦先生がやってきた。
「おや?瓦先生、いらっしゃい」
「こんにちわ八風さん、今時間はありますか?」
「ええ」と言ってあの居間に瓦先生を招いて2人は話した。
「ミカはどうですか?」
「体調は大丈夫と思いますけど、でもまだ登校再開は不安です、また起こると思って」
瓦先生はハップ婆の出したお茶をちびりと飲んでこう言った。
「八風さん、今回は重要なお話です、ミカのこれからの事についてです」
「はい」とハップ婆は返事をして、瓦先生は直入にこう言った
「ミカは今の学校ではうまくいくことはないでしょう…
だから転入を考えた方がいいと思います」
ピクッと反応はするが冷静にそれを聞き、ハップ婆は返した。
「それはつまり…ミカはもう学校へ来ないでほしいという事でしょうか?」
「いえ、落ち着いてください…、八風さん私もかつて支援学校での経験上、彼女のタイプは
たくさん見てきました、だから理解はあります、しかし」
「しかし?」
「ミカのようなタイプは、通常学級では悪い影響を受けることが多くまた
相手からの攻撃を受けやすいのです、簡単に言うと周りとうまくいかないと言うことです」
ハップ婆は少し黙り2人の間に少し重い空気が漂った、そして瓦先生は続けて言った。
「残念なことですが、星空高校には支援学級のように対応できるシステムはないのです…
私ができることは、彼女を理解できる学校を紹介することです」
「瓦先生!」少し張り詰めたような声を出してハップ婆はこう返した。
「先生…お気持ちはありがたいのですが、あの子をまるで病気みたいに言うのは失礼と
思います…」
「…すみません…」と謝る瓦先生。
その時ガララっと戸が開く音がなった、ハップ婆は「失礼」と言って玄関まで見に行った
戸は開きっぱなし、そして靴が一つ足りない。
何か嫌な予感を感じたハップ婆はすぐに外へ出たが右も左にも人影が見えない。
「ミカ!、ミカ‼︎」とあたりを叫んでも返事がない、すぐに家に戻って瓦先生を呼び
「先生!大変ですミカがどこかへ行きました‼︎」
「え!」と立ち上がり、すぐに携帯を取り出した。
「もしもし、警察ですか⁉︎あの…」と電話する瓦先生を横目に受話器を持ってハップ婆も
電話をした。
その時、僕は望遠鏡のレンズの手入れをする所だった、ポケットに入れてたケータイが
ブーブーと鳴り、誰だろうとかけたら。
「ナツくん⁉︎、ミカはそっちにいない⁉︎」
とものすごい慌てた声で僕に話しかけてきた。
「いえ、こっちにはいませんが…」
「ミカがどこかへ行ったの‼︎、ナツくんお願いだからあの子を探してきて‼︎」
「‼︎…、はい!わかりました!」
電話を切って急いで階段を降り、靴をギュウっと履き、僕は走って彼女を探しに行った。
公園や駅の近く、コンビニにスーパー、そして学校を回ったが姿は見えなかった。
ゼエゼエと息を切らしたけど、休んでいる暇はない、どうしてミカさんはいなくなったのか
理由はわからない、いやそんなことよりも、早く見つけないと事故か事件に巻き込まれる
残りの体力を振り絞り、最後の場所であるカラス神社へ向かった。
初めて天体観測をした2人の最初の思い出の場所に彼女はいるはずだと願い。僕は走って
鳥居の前へ来た。
「すうぅー」と息をつき、「んっ」と息を止め山の上まで僕は階段を上がった。
初めの頃、途中で体力を切らしてバテた時と違う、早足でたったったっと登っていけた。
途中足を踏み外して転んだけど、足の痛みを気にせずただ止まらず登った。
登り切った先の鳥居をくぐり、社の前へ立った。
ハアハアと息は上がりその疲れた体のまま、社の後ろ、あの星空町の風景を一望できる
ところへ向かった。ざっざっと落ち葉を踏み締めて進んだ先に彼女がいた。
町の風景を前に髪を靡かせているミカさんはこちらを振り向くことをしない。
「…ミカさん探したよ…ハップ婆が心配してるから…」
何も答えず、ただその先をじっと見つめている。
「…返事をしてミカさん。」
すると…
「嘘つき」
と一言彼女は答えた。
「ハップ婆もナツくんもみんなミカに嘘ついてたんだ」
その言葉はすごく突き刺さった。その突き刺さった痛みは彼女と同じ痛みと
考えた。
守るための言葉の玉が砕けて破片になってお互いに刺さったと思う。
「…ごめん…、でも信じてほしい、ハップ婆も僕もミカさんを傷つけたくて
信じさせたわけじゃないんだ、…だから帰ろう…ハップ婆ともう一度話をしに」
「ミカはずっとひとりぼっちなんだ‼︎」
ワッと大きな声を僕に飛ばしてきた。
「わかってたんだよ…みんなミカを嫌っているんだって…ずっとひとりぼっちだって…
お父さんとお母さんが星で見てるから平気だった…」
グスグスと泣き出している彼女を見て、もう何も返事や元気づけの言葉は出なかった。
ただ後ろに背を向けて泣く彼女を見つめることしか今はできなかった。
するとミカさんはパッとこっちを振り向いてこう言った。
「でも全部嘘だったんだ、誰も“いない”んだ、だからミカも“いなくなる”よ」
ミカさんは後ろへ倒れ込んだ、その先は山の崖のところ。
言葉を発することはない、無音の感覚の中、彼女の手を掴もうとしたが、
僕も彼女の倒れた先へと吸い込まれた。
地面に叩きつけられた感覚は一瞬だった、痛いを感じるまもなく僕は意識を失った
「ミ…カ……さ……」と声にならない言葉を残して…
…遠のいた意識は時間の感覚なく目覚めた…
ここはどこなのか…天国なんだろうか?
それとも地獄へ落ちたか?
目を覚ました時は周りは何もない、自分はアリのように小さくされて
そのままドームの中へ入れられたのかと感じるような場所だった。
「僕は一体…、確かあの時…」
足を進めようとしてもどこへ向かうべきか…と言うよりも行ってどうする?
ただ立ち止まっていたら…
「星なんて存在しねえよ」ときたことのある声が後ろからした。
こいつは知ってる車田だ!…
ばっと振り向くが声はそいつであるが姿は違った。それは黒い人型の何かだった。
僕はゾッとした、誰でも得体の知れないものには恐怖を覚えるだろうし。僕もその一人だ。
その人の形した何かはさらに言い続けた、一番嫌いなやつの声で
「星なんてねえよ!、」
「そこには何もねえよ!」
「空は空っぽだ!」
と僕に言い詰めてきた。僕は耳を塞ごうと手を当てた、けどそれは指をすり抜けるように
頭の中に入ってきた。
その声はさらに僕を否定するような言葉になった
「お前は無駄な17年間だった‼︎、ありもしない星だけ追って、ただの光を見つめてただけ」
「そう、お前は空っぽ、中身のない、まるでミカに言った言葉のように‼︎」
「虚無、虚言、空っぽ、嘘つき‼︎…」
そんな言葉がただ繰り返し繰り返し、骨に響いていきやがて、僕の視界はぼやけて…
塞いだ手はするっと降りてぶらり下がった。
「僕は…虚構…僕は…」ただ相手の言葉を口ずさみ、意識はそっちへ向かった…
ここは一体どこだろう…わからない…
真っ暗で何も見えない場所にいつの間にかミカはいた。
「…何も見えないよ…」手を目の前へ差し出しても何もコツンと当たらない。
まるで木箱の中に小さくされて詰められたような感覚だった。
その不安はすぐに消されて、少し落ち着きができてきた。
「そうだ…ミカは死んだんだ…、これでいいんだ…、
もうあっちで苦しんだりしなくていいから」真っ暗の中でも感じる、自分の意識が
消えかかっていること、このまま無の中へ入っていくことがミカにはわかった。
「…ミカ……ミカ‼︎」とどこからか声が聞こえた、返りかけた意識はハッと目覚め、
ミカはあたりを見回した。
すると近くに小さな光が2つあったそれは手のひらに乗るように小さく、そしてキラキラ
輝いていた。
「これはなんだろう…ううんあなた達は誰?」
とその“2人”に尋ねた。それはこう返事した。
「ミカ…私はあなたのお母さんよ…」
「そしてお前のお父さんだ」
えっ…、と驚きそしてボロボロと彼女は泣いた。
「おかーさーん‼︎おとーさーん‼︎」と手を回すけど空を切った。
「ミカ…ごめんね私たちはもう実態はないんだ、意識だけの存在なの…」
「あの事故の時、私たちに何が起こったのかわからない…、まるで別のところへ行ったような
感覚しか覚えてない…」
そう父は語った。
「…ハップ婆は言ってた、お父さんとお母さんは星になったって…、それは本当だったんだ…」
というと母はクスクス笑った。
「まあ、もしかしたら私たちは星になったのね、ロマンチック」
「ははは、その辺は全く母さんらしいよ、ミカにそう言うなんて」
ちょっと暖かくなった雰囲気の中、ミカも少し笑顔になった。
初めて両親と話したから、もしかしたらこれが最後で最初になると思ったから。
「ミカ…、もうそろそろあそこへ戻らないといけないよ…ここはまだ来る場所じゃないから…」
「!…いやだ…戻りたくない…あそこには味方はいないんだ…」
彼女は“あっち”の方へ行くのを拒否した、しかし父はこう言った。
「ミカ…大丈夫!、ハップ婆がいるじゃないか‼︎、母さん…おばあちゃんはね、決して嘘なんて
ついてないじゃない、私達が星になったのは本当のことだし」
「それに…おばあちゃんだけではない…ナツくんだっけあの子もいるじゃない…」
はっとミカは思った、自分はハップ婆だけでなかった、そう“夜空夏日”ことナツくんがいつも
そばにいた、そしていつも自分の味方になってくれた、それを今気づいた。
それにここに残ったら彼らは悲しむだろうと思う、だから帰らなきゃ…すぐに走ろうとした
「待ってミカ…こっちじゃない!…あそこよ」と母は指差した
「あの子もまたこの場所に来ている、そして苦しんでいる…それをはらうのにあなたが行くの」
「さあ、いくんだ…母さんによろしくな」
ミカは笑顔でうんと頷きその方向へ走って行った。両親の光は遠くなり闇が包まれたが
もう不安ではない、その先にナツくんがいる、ただ走りそして力を振り絞り大声で叫んだ
「ナツくぅーーーーーん‼︎」
飲まれそうな意識の中に微かに聞こえた、あの太陽の輝きのような声が
僕は意識をハッと取り戻し大量の人型を振り払いその方向へ走った。
走りそして力を振り絞り声を返した。
「ミカさぁーーーーーーーん‼︎」
がむしゃらに走った先に、あの中古の望遠鏡があった、それを覗きながら、
大声で彼女の名前を呼んだ、
その声に反応して、僕の名前を呼ぶ声が返ってきた。その方向へ確実に合わせようと
望遠鏡を傾けた…その先に一粒の光を見つけた。
それはあの時と同じ場所、ポラリスの近くにあった小さな光だった…
僕は最後の力で声を出した。
「ミカさぁーーーーーーーん‼︎」
「…ナツ……くーん…」とその声は近づいてきた、その方向から彼女が降ってきた…
ゆっくりとこっちへ降ってきたまるで、中をまう紙のように降ってきた…
すぐに僕は抱き抱えた。その瞬間このドームの闇はパリパリと割れていき、うすい朝日のような光が僕らを包んだ…
「ミカさん‼︎
「ナツくん‼︎」
彼女の目にはあの時の光がかがやいていた…そしてあの笑顔も…
僕の感情もまたそれに共鳴するかのように輝き、気がつくと目から大粒の涙が
流れた。
彼女もまたその涙を流して笑った。
遠のいた意識を、薄色の光で、僕らを目覚めさせた…。気がついた時は病院のベットだった。「痛」っと感じた時に
僕は生きてるんだと理解した。
僕の周りには両親と妹がい心配そうに見ていた。
「ナツ‼︎よかった…」母さんを少し泣いていた。
「全く心配したんだぞ」
「お兄ちゃん!無事でよかった!」
とあの父と妹も少し涙を浮かべていた、ちょっと珍しいと思ったがすぐにあることを聞いた。
「…ミカさんは?…彼女は…」と言うと両親は黙ったがすぐに答えた。
「ミカちゃんもあなたと同じところで見つかって…あなたと同じように
意識が戻らなくなったの…」
もしかしたらと思い僕は頭の痛みに耐えながら、ベットから立ち上がった。
止める両親と妹を振り切り病室を出た。
ヨタヨタと廊下を歩いて彼女を病室を探した、きっと彼女もまた…。
すると廊下のベンチで座っているハップ婆と瓦先生がいた。
「ナツ!もう大丈夫なのか⁉︎」それにはいっと答えたら。
「ナツくんごめんなさい…巻き込んじゃって…」と深々と頭を下げてハップ婆は謝った。
「いえ、大丈夫です…、それよりミカさんは?」
と尋ねると、2人の座るベンチの後ろのドアが開き、そこから彼女が少しふらつきながら
出てきた。
「ミカさん!」と言うとその声に反応するように、ゆっくりと僕の方へ顔を向けた。
あの時、自分たちがどこか別のところへいたと時に戻った笑顔はここではなかった。
目もまだ曇ってた…けど彼女はこう言った。
「…ナツくん、ちょっと来て…一緒に…」
それに僕はうんと答えついて行った、先生もハップ婆も止めに来たけど、またそれを振り切り
病院の外へ出て中庭のベンチで二人座った。
隣同士になって僕は何を言えばいいかわからない、あの時のことやそれより前のことを話すか迷った。
いや決まっていてもうまく声を出せない、でも勇気を振り絞り声をあげた。
「あのさ‼︎」「あのね‼︎」
最初の掛け声が彼女と同じタイミングで重なった。
ここは彼女に譲り、話を聞いた。
「あのね…会ってきたんだ…お父さんとお母さんに。」
「…うん…どんな人だった?」
と聞いてみた。
「姿はわからない、本当に小さな光だった、」それがどんなものか彼女は手の器を作り
表した、こんなに小さいんだって僕はわかった。
すると彼女は泣き出した、小粒の涙がポロポロと溢れていた。
「うん…嘘じゃなかったんだ…よかった…そしてごめんね疑って…」
という言葉で僕も思わず泣いてしまった、心では”ここで泣いちゃだめだ”と思っても、
コップから入り切らず溢れる水のように流れ出た。
そんな気持ちを抑えるかのように彼女をグッと抱いた。
「いいんだ…いいよ…そしてありがとう…あの時…」力は強かったのかミカさんは
腕をすり抜けて。
「ナツくん!、締め上げ過ぎだよ!」と少し怒った。
「あっごめん、痛かったよね」と少し笑ったら彼女は笑顔を返してきた。
その笑顔はいつもの、大きな笑顔ではなくもの静かなふふっとした笑顔だった。
「ミカさんなんだか違う感じがする…いつもはもっと弾けてるのに…」
すると彼女はベンチの背にもたれて空を見ながらこう言った。
「ミカはね、変わるんだ…、お父さんとお母さんは星になってみてるけど、でも
ミカはこのまんまでは2人とも心配すると思うの、だから変わるんだ…」
すっと立ち上がって3歩ほど歩きまた天を仰いだ。
「これから、2人の星は見えなくなる時がある、ずっと見えなくなる時もくる
でもミカは…私はみんながいるから…」
一瞬だけ、彼女から双葉の芽が目覚めたように見えた。あの彼女が消えてなくなったのではない
種から芽なる瞬間だった。
それを感じた僕は不思議な気持ちだった、寂しさもありそして嬉しくも感じた。
「ナツくん、大丈夫だよ、私はミカのまんまだから、“これからもよろしくね”じゃないから」
星になった笑顔はほんのり光を放ってたように思った、その笑顔に僕も笑顔で返して
こう言った。
「うん、よろしくねミカさん…」
その6
この星空町での初めての新春を迎えた今日、最初の一回目の天体観測を友達とする約束をした。
僕は小学校から使っているあの中古の望遠鏡を袋に入れて、あのカラス神社へ向かった。
この時期は、オリオンやおおいぬそしておうしが見える時期だから、さぞワクワクするだろう。
最初の鳥居をくぐり山まで続く階段をスイスイと登り山頂の鳥居を潜って本殿へ挨拶をしたら
あの場所に望遠鏡を立てた。
ここはまるでぽっかり空いたドームのように夜空が広がる場所、天気さえ揃えれば満点の星空が
見える、今日はそのばっちしの天気の日だ。
一人はあっと白い息を吹かすと。
「ナツくん」と声をかけてくれた。この声はあの子だった。
「ミカさん!」
ちょっとだけ大人びていた顔から子供のような笑顔を見せて、僕の方へよってきて。
ハップ婆の握ったおにぎりを取り出してくれた。
「他の友達はまだらしいから、先に見ようよ」と水筒に入った暖かいお茶を
コップに入れて分けてくれた。
「ありがとう、じゃ初めよっか」と早速ミカさんは望遠鏡を覗いて夜空を眺めた。
オリオン、こいぬ、おおいぬで構成される冬の大三角形に目を取られず眺めたのは
秋の頃、ポラリスの近くにあったあの小さく輝く星だった。
「今年も見えたねあの星が」と言うと。
「うん、お父さんとお母さんは元気そうだね。」と笑った。
望遠鏡のレンズから目を離して、彼女は僕にこう話した。
「ナツくんは進路はどうするの?、私は大学へ行くんだけど」
「うん僕も進学をするよ星空町の隣の街の小さな大学へ」
と僕は答えた。彼女はニカっと笑った。
「またおんなじだね、私もそこ。」
ちょっと変わったとは言え、時々あの時のミカさんが顔に出てくることがある。
あの純粋だった彼女は完全に濁ってしまった。
それは汚れとしてではなく、透明のガラスが真っ白に染まるように、
僕もそんな風になれるかなと思ってる、黒ではなく白に。
その後に友達がやってきた、東村さんや赤木くんだけでなく、もう2人増えて
この天体観測は少し賑やかになった。
「ミカ、ナツ、遅れてごめん」
「もうやってるのか、次は俺な」
立ててある望遠鏡を友達らに見せておき、僕とミカさんはただ裸眼で空を見上げた。
両親のいる星に“異星交信”と言う名目でそれに話しかけた。
「これからもミカさんとずっと仲良くやっていきます」
「だからこれからもずっと見守っていてね、お父さんお母さん」
完
プロローグ
もうずいぶん都市部は見えなくなった、だいぶ遠くまで来ただろう。
父の運転する車の助手席でもう7時間ほど座ってずっと外の風景を眺めていた
「あちこち木ばっかだね」
「そりゃそうだろここは田舎だからな、ナツはあまり県外は出てないしな」
父の仕事の関係で元々生まれ育った都市部を離れ、この山と森に囲まれた
小さな町へ引っ越しをすることになった。
お世話になった先生や小中高一緒だったクラスメイトとお別れをし
もらった手紙や色紙を家財道具と一緒に引っ越し屋に運んでもらい。
僕らはその後に都市を出た。
「心配するなよ、ナツなら向こうの子達と仲良くなれるさ」
「それでも不安だよ、知らない所だし、知ってる人がいないから」
「お父ちゃんもそうだよ、お母ちゃんもフユも、みんな同じさ」
「お父さん!」
と後ろの母がコラっと言った。
「あまりナツを不安にすることは言わないの、ほらフユもケータイ
いじってないの電池がすぐ切れるよ」
「はぁーい」
妹のフユはケータイをポケットにしまってウゥーんッと背伸びした。
17になって子供のように外の風景に目を輝かせていた僕とは違って
妹は見たことのないこの風景には全く興味はなくこの7時間は退屈だっただろう
まあ僕もそうだけど今時っ子はそうだろう。
車のラジオは交通状況やゲストトークが流れているので隣でずっと運転する父は
「ナツ!、なんか音楽ないか?」
と聞いてきたので僕はカバンに入っていたCDを一つ取り出してラジオのイジェクターに
それを入れて流した。
僕が聞いてる曲なんてのは、前のクラスメイトどころか家族にすらわからないような物ばかり
だからこそ、その中で家族にも合うような物を選んでかけた。
「なんかこう…この曲は〇〇ぽいなあ」
と父が知ってる昔の曲を例えて僕の好みの感想をボソッと言った。
嫌だなとか嬉しいなとは思っていないがまあ恥ずかしいなってちょっと思った、さっきも
僕は今時っ子だと言ったけど、そのイマドキの子と少しずれている、なるせ流行りに疎いし
好きなものしか好きにならない変わったやつと思っている。
そう考えていると父が自分から見て10時の方向に指をさした。
「ナツ、見えてきたぞ、あれが我々がこれから暮らす“星空町”だ」
その町はかつて暮らしていたとこにたくさんあった天を貫くように高いビルたちは全く無く
あるのはまるで人形の家のような小さな住宅ばかりだった。
「すごくちっちゃいね、あの町」
「星空町ってなんかカワイイ名前だね」
後ろで退屈そうに座ってフユは、特に外を見ずにそう言った。
「コンビニとかスーパーとかあったらいいんだけど」
「大丈夫だよフユ、今じゃ全国どこにでもちゃんと一軒くらいはある時代だから」
という感じでどこの田舎町は少し近代的にはなってきたが、都会育ちの僕たちにとって
田舎は田舎、未開の場所は未開の地。
僕は心にワクワクとドキドキを抱えて町に降りた。
少し黒っぽいざらざらした白い壁の小さな二階建ての家。
ここが僕らの新しい家だ。マンション暮らしだったあの時と比べれば、正直見窄らしい
家だったが。良い方で見れば初めての一戸建て。両親は段ボールに入った荷物を片付けている。
僕はというと、友達や先生のメッセージの色紙を取り出して早速自分の部屋と決めた2階の
部屋の机に飾った、これならいつでも思い出せるから。
「あっそうだ望遠鏡はどこだろう」とドタドタと階段を降りて下にある段ボールを探していた。
あの望遠鏡は小さい頃小遣いをためて買ったお気に入り、今でもこれで天体観測をするから
もしもレンズが割れたらと思ったたゾッとする。
あたりにある段ボールを一つ一つ開けて探したら、それはあった。
レンズの方は無事だったのでホッとした。
また日があればこれで星を見る機会があるかもしれないので安全なところへ置いた。
片付けがひと段落し、両親や妹が落ち着いている時に玄関のチャイムが鳴った。
「誰か来たのかしら、ナツ出て」
片付けで疲れて休憩する両親に代わって僕はその訪問者の相手をした。
たったったっと駆けつけて扉を開けた
「はいどちら様ですか?」と顔を見てみた。
「こんにちは、遠いところからご苦労様でした、ご挨拶に来ました」
「あ、どうも初めまして、今日からここで暮らす夜空です」
少し言葉が怪しいと思いながらも、その人に僕も挨拶をした。挨拶に来た人は
顔にしわやしみがあるおばあちゃんだった、だから緊張が無く普段通り接しれたと今思う。
「すみません、父と母は今引っ越しで疲れていまして…」
「いいよ気にしなくて、また挨拶に来ますから」と笑って返してきた。
僕も釣られて少しはにかむような笑顔を見せた、
「私はここの近くの、星夜八風(ホシヨ ハップウ)です」とそのお婆さんは自己紹介をした
その時だった。
「ハップ婆‼︎ミカもあいさつするよー」と大声が八風さんの後ろから響いた。
その方向を見ると女の子がいた。
年齢こそ自分と同じくらいの子だったが、パッと見の雰囲気は“明るい”という感じだった
ふいに目を合わせたら、子供のような笑顔を見せてこっちへズンズンと迫ってきた。
目と目がくっつく距離に顔を近づけて彼女は言った。
「こんにちは、ミカっていうよ君は?」
「あ…、僕は夜空夏日(ヨゾラ ナツヒ)」とたじろいながら自己紹介した。
「夏日ねー、じゃあナツだねよろしくナツ!」
初対面でいきなりその呼び方とは、距離感が近すぎる、でも前のとこでも“ナツ”って
呼ばれていたし抵抗はなかった。
「いきなりで驚いたけど、このこはミカってうちで暮らしている子なの、仲良くしてあげてね」
と彼女のこの様子を咎めることは無く八風さんは僕にそう言ってきた。
しばらくして両親が後ろからやってきて、代わりに八風さんと話していた。
その一方でミカという子は空をじっとみていた。
「うん、新しい人がきたよ、なんかいい人だから仲良くなろうと思っている」
と独り言を言っていた。
ショートボブのその子はまたどっかで会えると僕は感じた。
その1
次の日の月曜日、新しい学校生活の最初の週の、最初の日。
支給された、学校の制服に着替えて、母と同伴でそこへ向かった。
「ナツ、学校への行き方はよく覚えておくのよ、今日はしょうがないけど。」
「わかってるよ母さん、僕をいくつと思ってるんだよ」
車の助手席でほおに手を当てながら、この田舎の風景を眺めていた、最近建てられた家も
あったけどほとんどが瓦と木の家で、父から聞いたけどあれが田んぼっていう
お米の畑みたいなのが、見えなくなるくらい広がっていた。全てが初めて見るような
ものばかりでなく、都会にもあったコンビニやスーパーもあったし、駅もあるという事は
電車も通っているんだと思った…(偏見のような言い方だけど)
「ナツ、見えてきたよあれがあなたが通う“星空高校”よ」
指差した方向を見るとそれはあった、第一の印象としてはまあ古いねって思った、
もといた高校と比べてしまってごめんとは思ってみたけど、まあコンクリに
ペンキを塗った壁、そして長年の雨で少しくすんだ色の屋根、
正直にそう言わざるおえなかった。
見た目の事はいいとして、僕は母と一緒に職員室へ行き僕が入るクラスの担任の先生と
挨拶をした。
「これから君の担任となる瓦十次郎“カワラ ジュウジロウ”だよろしくな」
と手を差し出してきたので、握手をした、田舎の先生はみんなこんな感じなのかなと感じたが
でも悪い先生ではないだろうと確実に思えた。
「夜空夏日です」と少し小さく自己紹介をした。
「俺は空手の顧問もやってるから気になったら声をかけてくれよ“気になったら”だけどな」
「え…はあ」こういう時は“いえ結構です”と言えばいいがしかし相手につい気を使って
「考えておきます」って少し笑って曖昧な答えを出してしまった。
すると瓦先生は時計をチラッとみて僕に言ってきた。
「おっと夏日くん、そろそろ朝の挨拶の時間だ、教室まで行くぞ」
立ち上がった先生とほぼ同時に僕も立ち上がり
「じゃあ母さん行ってくるよ」
「行ってらっしゃいナツ、母さんはここまでだから」
そのまま先生の後ろをついていき、廊下をコツコツと歩いて教室へと向かった。
先生のような大人なら少し理解してもらえるけども、同い年のクラスメイトは
どうなんだろうか、“都会者”とバカにされないか不安はあった。
最初の挨拶はどうしようか、何を話題にするかとかの最初の印象をよく考えようと
思ったけど少し変わり者の自分が手を打ってもうまく行くビジョンはないのだった
「ナツ、ついたぞここがお前のクラスだ!、心配するな何かあれば俺がなんとかするから」
とガラララっと勢いよく先生は扉を開けたら、中にいたクラスたちはその方向へ視線を向けた。
「あ、カワラアタマがきた」って小さく聞こえたし、また彼らは担任の次に僕に目を向けてきた。
「ああ…視線が痛い、心臓がバクバクするよ」教室の静けさもまたその音を立てる胸の鼓動を
さらに加速させた。
「えっと、昨日も言ってた通り、新しい生徒がうちのクラスに来ることになった、
さあ自己紹介しろ!」
とりあえず細かいことは言わずに名前だけを答えることにしよう。
「えっと……夜空夏日です。」
すると後ろの席あたりでガタンって音が響いた、皆が僕に向けた目をそっちへ向けた。
「ああー‼︎、ナツくんだ‼︎ミカと同じ学校に来たんだね!」
その声は聞いたことのある声だ、もしかしてと見たら、あのショートボブは覚えている
昨日挨拶に来た八風さんのところの子だった。
「ミカ⁉︎、夏日と知り合いなのか…てオイ!勝手に立ち上がるな!」
たったったっと走って僕に近づいた、昨日と同じ目と目がくっつきそうな距離で顔を近づけた
「ナツくん!よろしくねー!」
「あ…よろしくね」ちょっとたじたじな気持ちで返事をしたら、彼女は大声でワーイって叫び
ぴょんぴょんはねて喜んでいた。
「こらミカ!あまりはしゃぐな!」と先生が叱っても、たかぶる感情を彼女は抑えられず
喜びまくってた。
「…まあ、とりあえずだけどナツ、お前は星夜の隣の席に座ってくれ」
するとミカさんは僕の手を引いてその席へと連れて行った、周りを見ているとほとんどが
真っ白い目で見てるのがわかった、その時僕は思った。
「ああ…なんか…うまくいかなさそう…」
きっと印象を悪くしたとだいぶ落ち込んで今日の授業を受けた、
午前の授業を終えて、食堂で食事をしようと食券を買おうとしたら。
「ここはうどんがおいしいよ!、定食もいいけどやっぱりうどんだもんね」
ミカさんが話しかけてきた。
「…えっとー、ラーメンじゃダメなのかな?」
「ラーメンはしょっぱすぎてダメなんの、うどんがいいよ」
突然話しかけた彼女の言う通りうどんを頼んだ、彼女の言った通りすごく
美味しかった。
「あれ?ミカさんは頼んでないの?」
「んー?、ミカはねハップ婆のお弁当があるから大丈夫なのー」
と二段のお弁当を取り出して食べ始めた。
お金払って食券を買ったのに自分は家のお弁当かって言いたいが
無邪気な彼女の笑顔を見たら言うのが可哀想に思ったので大目に見た
というかうどんが本当に美味しかったのでまあいいかって気持ちだった。
おつゆも飲んで器を返却口へ返した後は教室へと戻った。
静かに机に座って午後の授業を待つのかと思ったが奥から何人かがやってきた
「夏日くんだっけ、あたしは東村よ、よろしく」
「俺は赤木だぜ」
ここで暮らしている生徒が僕に話しかけてきた、最初のことでだいぶ気味悪がられた
と思ってたが、僕はすごく安心感を覚えた。
なるせ地方の子が仲良くしようと話しかけてくれたんだ、味方ができたと感じた。
「あ、あの自己紹介の時にも言ったけど…夜空夏日です。」
「あっ、じゃあならナツって呼ぶね」
「ナツ、何かあれば俺らにいいな、なんとかするから」
この会話から、すごく頼りになる子だってわかった、不安だった新しい学校生活ももう安心だ。
この2人はすごく話しやすく、僕の好きなことにいいねって言ってくれた。
話は得意な方ではないけど、この時だけは楽しく思った。
「でも意外だったよねミカと知り合いだなんて」
「え?、うん引っ越しのに挨拶に来たから…」
「お前は知らないかも知れないけど、あいつは昔っから変なやつで、宇宙人と言う
あだ名をつけられていて、すごい軽蔑されているんだよ」
それについては、彼女に申し訳ないが、言われて当然だと思った。
自分の含む他の人とは何か番う雰囲気は感じたし、多分同い年だろうけど
あまりにも幼稚な性格すぎると思った。
とか思っているとその本人がやってきた、僕を見つけるとたったっと
走ってやってきた。
「あっナツくん‼︎、今日は一緒に帰ろうよー‼︎」
と今時の女の子とは思えないような抱きつき方をしてワーワーと騒いだ。
その場にいた東村さんや赤木くんはちょっと引いてたけど、まあ苦笑いをしてた。
「あっ東ちゃんに赤くん、一緒に帰るー⁉︎」
「あ…ええちょっと用事が…」
「俺もだぜ…」
と言い残して、彼らは自分の席へと戻っていった。
そんなタイミングに合わせてかチャイムもなってミカさんも僕も元の席へと
戻った。
午後の除業ではっきり覚えているのはミカさんのことだった。
国語の授業だった時に、隣のミカさんを見たら、彼女はなんなのかわからない
落書きを机にした。
「ミカさん、授業中だよ…」
「これはね、遠い星だよ!」と静かにするべき授業中にも構わず、
大声で答えた。
「こらミカ!、私語は慎め!」と先生は彼女を叱ったが、ミカさんは気にはせず
鼻歌を歌いながら落書きをしていた。
そんな彼女は僕の帰りに付き合っていた。
「ナツくん、あれはカラス神社って言うんだ!」
その神社は生い茂る森の前に赤い鳥居がありその奥に階段があり、神社がこの山の上に
あるんだとはっきり思うところだった。
まあその神社がどんなものかまた休みの日に見にいってみようと思った。
その流れでミカさんは、あそこが公民館、あれが〇〇マーケットとか。
この町の施設とか公園とかを紹介しながら、帰り道を帰っていった。
その道中のことだったけど、あることが気になっていて彼女に聞いてみた。
「あのミカさんは、親って八風さんだけなのかな…」
「んー?」
ミカさんがハップ婆と呼んでるお婆さん以外の家族、そう父と母の姿を
あの挨拶の際見てなかった。
「もしかして仕事か何かでいなかったのかなあの時」
「いるよ、あそこに」
彼女の指差す方向は空を指した、まさかすでに…など思ったがそれを聞く間もなく
彼女は言った。
「お父さんとお母さんは遠い星でミカを見守っているってハップ婆は言ってた。
だからミカはねどこかの星の人なんだねー」
この時のミカさんは目が宝石のように輝いていたので、それは違うよと言う言葉が
喉の奥で止まって、代わりに「そうなんだ」ってしか言えなかった。
彼女はただ子供のように汚れなく純粋だからって思うが、今の歳の子から見たら
それは幼稚で気持ち悪く見えてもしょうがないと思った。
僕は前者の方へ気持ちがある、気持ち悪いと思うのは可哀想だし。
その後ミカさんは変な事やちんぷんかんぷんの話をして勝手にケラケラ笑ってた。
その話に付き合ってあっという間に自分の家に着いた。
「ナツくんバイバーイ!」て手を振りながら彼女は自分の家へと帰っていった、
今日はかなり疲れたので早速玄関開けてただいまっと言ってすぐに二階へ上がって
部屋のベットで寝た。
「ふうっー、まさかあの子が同じ学校なんて…ふいー」
これからほぼ日で彼女と一緒にいると考えると今まで以上に体力を使うだろうと予測。
ああ、気持ちがさらに重く感じてしまう…、学校生活は絶望的になるだろうと悪い考えしか
頭に湧いて出てきた、完全に飲み込まれないようにプラスを考えようとした。
「えっと…ああそうだ、二人友達できたんだし、それがいいだろう…後は…」
あの天真爛漫の塊のようなミカさんのいいところを上げないと…えっと彼女は…。
そうだ一つあった、彼女は可愛かった…
背後で母さんが「夕飯できたよー!」て声が聞こえたので、僕はたったっと階段を降りて
リビングで家族4人で食事をして一日を終えた。
その2
昨日の疲れは全く取れなかった、かなり寝たはずなのに
布団の中でむにゃむにゃと起き上がれずうずくまっていたら、下から母さんが
「起きなさい‼︎」と大声が飛んできてすぐにばっと起きて下へ降りていった。
すぐに朝食のハムエッグを食べて制服に着替えるとまた母さんが大声で呼んできた。
「ナツ‼︎ミカちゃんが玄関で待っているよ‼︎」
「はいィ?」
さっと制服に着替えてカバンを持って玄関を開けると、ミカさんがいた。
しかしこっちに気づかずにヘッドホンを頭につけていた、音楽を聴いているのだろうか
でも何かぶつぶつと言っているぞ。
「もしもしー、こちらはミカでーす、応答ありますかー?」
どこかわからないとこへ交信しようと試みていた、てかよく見るとヘッドホンの
ジャックは繋がってないし…。
「あ、ナツくんおっはよー!」
彼女は笑顔で僕に挨拶してくれた、それに釣られてか僕も「お…おはよ…」と
引きながら挨拶をしたのだ。
「それは、あーえっと…何やってんの?」
「お星様に電話しようとしてんだー、でも繋がんないやー」
はぇっとため息をつき彼女を連れて学校へ向かった。
そこまで向かう道のりはもう覚えたし、というか彼女が先に走っていくから覚えてなくても
ついていけばすぐに着く。
学校について早々、ミカさんはドアをガララっと開けて
「オハヨー‼︎みんな‼︎」と大声で挨拶をした。
でもみんなこっちを見ずに無視をしてた、彼女はそのことを気にせずに席に座っていった。
まあ僕も自分の机へ向かおうとするが、やはり他の生徒の視線が痛い、
でも昨日話しかけてきてくれた東村さんや赤木くんが今日も「おはようさん」って
挨拶してくれたのに安心があった。
「おはよう、まだちょっとここの学校の雰囲気になれなくて困っているんだ」
「無理はしちゃダメよ、ゆっくり慣れればいいんだし」
「ああ、そうだね」というと後ろの扉が開いて先生がきたと思ったら違った、
多分隣のクラスの生徒だけど、見てわかった相手がたちの悪いヤンキーだって
都会の学校でも見たから。
「車田!」どうやらそれが彼の名前らしい、その車田はズッカズッカとこっちへ迫り
顔を僕に近づけた、後ろには取り巻きがいて逃げれない状態にして彼は言った。
「おめえか、他所から来た都会者は?」
「あ…うん」
「お前ごときがでかい顔をすんなよなあ、それに俺はお前みたいな奴はでえ嫌いなんだよ
都会のやつがな」
少しびくびくと体が震え出した、来て早々にヤンキーに絡まれるなんて運が悪い
「おいおいどうしたぁー?お坊ちゃんがよー」
と後ろの取り巻きも囃し立てるし、もしかしたら最悪ボコボコになるかもしれないと
思ったその時。
「いけないんだよー!意地悪は!」席に座ってたミカさんが間に入ってきた。
「うゲェ!宇宙人かよ、おい逃げんぞこいつの匂いは脳を蕩けさせるぞ!」
と言って取り巻きたちも「異常者ー」とかの悪口を言いながらどっかへ行った。
「ナツくん、怪我ないー」と心配してくれた。
「うん大丈夫だったよ」と僕は返した時に後ろの方からヒソヒソと何かが聞こえた。
「本当に、頭狂ってんじゃないの?…」
「車田は嫌いだけど、あいつらの言う通りだよ、異常者だと思うよ…」
クラスメイトもまた悪口を彼女に聞こえないように言っていた、多分こちらにも
微かに聞こえる距離なのに、ミカさんは何も気にしていないように
ニコニコ笑顔で僕を見ていた。
するとまた扉がガララっと開き瓦先生がやってきた。
「おーいお前らー朝の会始めるぞー!」
クラス内の生徒たちは自分の席に黙って戻って行った。
今日はいい天気だとか先生は今日瓦を十五段割ったとか大した話しかない
ホームルームは終わり、数学の授業が始まり先生は黒板に数式を書いていたが
僕は数学ってのは苦手で、できる人がすごいと思っている。
ちなみに隣の席のミカさんはスラスラと数式をすぐに解くらしく
僕は彼女の頭は計算機があるのかというくらいすごく思った。
その彼女曰く
「遠い星の絵みたいで好きなの」との事。
まあそんなこんなで数学の授業は終わって中休みになり、僕は久しぶりに
音楽が聴きたくなって、音楽プレーヤーを取り出して聴いていたら。
「ねえねえ、何してんの」とミカさんが話しかけてきた。
「あっうん、音楽を聴くんだけど」
「へえーそれでね、なんか宇宙の機械みたいだねー」と興味あるように
みていたら。
「よかったら聴いてみる?」とイヤホンの片方を彼女の耳につけた。
するとミカさんは静かになって聞き入っていた、僕の音楽は以前いた
高校のクラスメイトには合わなかったのに、彼女はまるで宝石を
うっとり眺めるように聴き入っていた。
「すごくいいねー、よかったよー」と笑顔で子供みたいな感想を言った。
すると彼女はカバンから何かをあの時していたヘッドホンを取り出してきた。
「これ繋げようよー」よくみるとこのジャックはプレーヤーのプラグにはまるやつだったので
言われるままつなげて、一番気にいってる(個人的に)の曲をかけると、彼女の顔はさっきより
笑顔が咲いた。
「うわー、すごい頭の中で音が回ってるみたいだー」
このヘッドホンのおかげもあるけど、今までわからないと言われていた僕の曲を好んで
くれる事はとても嬉しかった。
その後もこれも好きあれも好きととミカさんは言ってくれたので、とても気持ちがよかった。
そんなやりとりをしているとあっと言うまに休み時間は過ぎて、みんな席についていた。
午前の後半を終えた後は、食堂でうどんを啜り午後の体育を受けた、これもまた僕は苦手だった
でも今回はサッカーやバスケとかでなく徒競走の授業だったので安心した、体を動かしながら
ルールを厳守するスポーツは特に嫌いだし、それができる人はどうなってるか思う。
それでも徒競走の結果は最悪、僕のノロマっぷりが曝け出されたので
小っ恥ずかしい気持ちになった。
そんな気持ちで、座って女子の番をみていたらミカさん達の番になった。
固定概念だけど勉強できる人は運動ができない、その逆も然りと言う考えがあるから、
数学ができる彼女でもさすがに…て思ったが予想外だった。
ミカさんはスイスイと他の子を抜いていき一番でゴールしたのだ、彼女はやったーと喜んで
ぴょんぴょんはねている、横の赤木くん曰くミカさんは短距離走では右に出るものいないと。
中身は子供か幼稚園児みたいだけどなんでもできるんだってのには少し驚いた。
体育の終わりにミカさんとまた話した。
「お疲れさん、今日の体育はすごかったよ、ミカさん一着だったし」
それしか言えないので、そう話すと。
「走るのは大好きだよー」て返してきた。
「本当に苦手なものがないように思えるよ」
「ううん、苦手なものはあるよ」
それを聞いて興味がすごく湧いてきた、あのなんでもできるような彼女の苦手なものは何か。
「ええ、それはなんだい?」
「えっとね、漢字!、これは苦手なの遠い星の絵っぽくないから」
「そうなんだ…僕は国語は得意だからわからない所は教えられるよ」
すると彼女は少し嬉しそうに笑顔になって
「じゃあお願するねー」と言った。
その後の帰り道もまた同じくミカさんと一緒だった、今日は少し早くなったのでミカさんは
「今日はカラス神社まで行こうよ」
その神社というのは昨日名前で聞き、鳥居も見た所だが本殿は見たことはない、
彼女の手に引かれて鳥居をくぐり、階段を上がって山の上まで行った。
途中体力が尽きて、やっとの思いで階段を一歩一歩と上がっていく僕に比べて、ミカさんは
息を切らすこともなくたつたったっと階段を登っていく。
「遅いよー、はやく早くー」
と彼女は囃し立てるので、とにかく足を上げて上まで登った。
頂上の鳥居をくぐった時はもう汗だくでその場で座って休憩をし、そのカラス神社というのを
見たところ、ものすごく小さな社だった、最近改装したのだろうか汚れもヒビもないが
都会で見たあの大きな神社ではなく、そのそばにあるようなものすごくちっぽけなお社さん
だった。
「ナツくん、こっち来てー」とミカさんが呼んでいる。
すぐにそっちに行くと、木と木の間から星空町を眺められる場所を案内してくれた。
「ここから眺められる町はいいんだよー」
決してこの山は高い山ではない、だからこそ高層ビルで見るように一軒一軒が
豆粒になるような感じでなく、ちょうどよく見える高さなので、
あそこはあれで、あっちはあれとわかった。
「この星空町はこんなとこがあるんだね」と素直に関心をした。
そして「上をみて」と僕はその上もみたら空が一面に広がっていた。
これだけの木があるのに空は枝に遮られずに空が見えた。
「ここから星がたくさん見えるんだ、お父さんお母さんのいる星もあるよ」
確かにこの空なら、天気が良ければ星がよく見える、この時期なら
アンドロメダやペルセウス、ペガサスそしてカシオペアのが見えるだろう。
そう思うと僕はとても心が揺れた。
「ミカさん、僕は小学校の時から星を見るのが好きで…」
「あっそうなんだ!ミカとおんなじー!」
「また望遠鏡を持ってくるから、天気が良ければ一緒に見ないかい?」
というと彼女はすごく喜んでまたぴょんぴょんはねた。
「わーい!嬉しいなー天体観測ー!」
なんだかこの満開の花のような笑顔は、僕の心に晴れを持ってくるような
感じがして、多少のイラつくことでも許せそうに思えた。
それから僕は、いつか天体観測を一緒にすることを待ち続けた。
まだその天気だはないから。その3
この町へ引っ越してきて二週間目の休日の日にミカさんが遊びにきた。
朝の9時、まだ服も着替えてないのに、約束なくやってきた。
「遊びにきたよ!」
無邪気な笑顔の彼女の顔を見ると、叱ってやりたい気持ちが失せて。
「…あー、いらっしゃい」としか言葉は出なかった。
今日は何も用事がないことが救いになった、まあいいだろうと
ささっと彼女を家に入れた、家にいる両親は嫌な顔はせずにまねいてくれたし
妹のフユは
「にいちゃん、いつの間に彼女できたんだー以外」と茶化す。
「うるさいよ」と顔を赤くして反論し、ミカさんを上の部屋へ連れて行った。
とは言っても僕の部屋には面白いものはないし、漫画は個人の好みで買ったやつだし
ゲーム機はフユの部屋にしかない。
さあどうしようかと思っていたが、ミカさんは僕の望遠鏡をじっと眺めていた。
「それはそんなにいいものじゃないんだ、ちゃんとした物は本当に高いんだ」
この望遠鏡は、小学生の頃は立派な宝物としてみてた、今もその気持ちは変わらないが
大人たちが買うもっと性能のいいやつと比べれば、正直見窄らしい中古だった。
でもミカさんは。
「星が見えるんでしょ?これでもいいよー」て言ってくれた。
「うんまあ見えるけどね」
「あ、天体観測はいつするの?」
「まだだよ、今週と来週は天気がそれほどよくないからまた言うから」
彼女は残念そうにぷぅーとした表情になった。
その時にドアのノック音がして、入ってきたのはお菓子と飲み物を持ってきた
母さんだった。
「ミカちゃん、ごゆっくり、あとナツせっかくできたお友達だからちゃんとするのよ」
いつもの“母の小言”にはぁーいて返事をしたら、そのままさっと母さんは部屋を出た。
僕らはお菓子をパリパリと食べて、出された季節外れの麦茶を飲んで、一息つき僕は
こう言った。
「ちょっと外でない」
「うん」と特に感情なく頷いた。
階段をとたとたと降りて玄関で靴を履いて、行っていますと声をかけて外へ出たのはいいが
僕はここへきて二週間しか経ってない、アミューズメントや映画館のある所は
電車で何駅かあるだろうし、ここにあるのは公民館や歴史博物館(名前は立派だがここは昔の商人邸)しかないし後は図書館だけ…、遊べる場所がないのでさあどうしよう。
公園の遊具なら彼女は喜ぶかもしれないが17になってブランコでワイワイ騒ぐのは
かなり恥ずかしい。
「えっと…どこへ行こうか?」と自分で外へ出ようと言ったのに、彼女に聞くとは…という
よりも。
手段がそれしかないから仕方なかったんだ、すると彼女は。
「ミカん家に行こうよ!、ナツくんとこ行ったんだからー」
⁉︎…そういえば彼女の家は言ってなかったと僕は思った、ちょこっとだけどんな家か
気になったいたし、考えもなく「うん行こうか」て返事をした。
するとミカさんは僕の手を握って思いっきり引っ張っていった。
「ちょっとミカさん⁉︎」
「こっちにミカの家あるから!」
この時のミカさんはほんと力が強くて、腕を持ってかれそうと家へ帰った後思った。
そのまま彼女に手を引かれ、タタタっと走った。
以前の神社の階段の時でもそうだが、ミカさんは体力もすごかった、こんだけ走っても
息が切れないんだ、僕はついていくのにやっとなのに。
もう倒れそうになる時に突然彼女はピタッと止まった、どうやら家に着いたみたいだった。
切れた体力が戻り周りを見回すと、そこは金色の稲が一面に広がる田んぼに囲まれた。
一昔くらいの木造の平屋だった。
その隣の田んぼで稲を手で刈っている麦わら帽子のおばあさんがこっちに気づいて
手を振ってくれた。
「ハップ婆ー!、ナツくんきたよー!」
とミカさんも手を振りかえした、ざっざっと稲のかき分けて、こっちへ八風さんがやってきた
「ナツくん、よくきてくれたね、ここはミカと私の家よ」
「すみませんお邪魔しましたか?」
「いえいえ、さあうちに上がりなさい、とれたてのお米でおにぎり作るから」
僕はその言葉に甘えて彼女の家へ上がった。
木造の柱と天井、そして広い畳の居間で礼儀よく座ったら八風さんが
真っ白なおにぎりとあったかいお茶を持って着てくれた。
それをパクッと食べた、具は入っていなくて塩だけだったけど
それは格別に美味しかった。
お茶もあまり苦くなくて甘さを感じてしまうほどだった。
おにぎりは5個あったけど、ミカさんが3つ食べたのであっという間に
無くなった。
「美味しかったです」と正直に答えると。
「それはよかった、うちはこれくらいしか出せないからね」と八風さんは笑って答えた。
するとミカさんはお茶をごくりと飲み干して立ち上がり
「ナツくん!ミカ本を取ってくるよ!待っててー」
と走って襖を開けてたったったと足音立ててどこかへ行った。
「走ると転ぶよ!」と八風さんは注意するが、聞こえてないようだった。
「ナツくん、ここへきてしばらく経ったけどどうだい生活は?」
「最初は大変だったけど、でも友達ができてからはだいぶ慣れてきました」
「ミカとも仲良くしてるんだっけ本人からよく聞くわ」
「あ、そうなんですか」
あの彼女のことだから、身の回りのことは全部この八風さんに話すだろう。
それと比べると僕は彼女と仲良くしているなんてあんま話さないので、
その部分はミカさんを見習うべきとちょっと思った。
「正直言いますと、最初彼女にあった時は、びっくりでしたよ僕とほぼ同い年なのに
なんだか幼稚園児のまんま大きなった人みたいだったから。」
というと八風さんは大笑いして答えた。
「確かにそうね!、でもこれは私の育て方にちょっと影響があるのよ」
「育て方?」
「あの子は昔から純粋な子で、いろんな事に興味を持ったり、疑問に思ったり、まあ
よくいえば感性が豊かで純粋、悪くいえば幼稚なのかもしれないね、私はそれを前者に捉えて
育てたのよ」
そうか、八風さんの育て方と…、その言葉が頭に入った時一つ疑問が生まれた。
ミカさんの両親のことだった
それが気になって八風さん質問した。
「八風さん、ミカさんの親って今どうしているのですか?、2人とも働いているのですか?」
と言うと。
「ミカの親は星にいるのよ、そこでミカを見守っているの」と笑顔で返してきた。
「えっと…どういうことですか?」
「ナツくんには難しかったね、簡単にいえば生死がわからないとうこと、ちょうど16年前
くらいにミカを私に預けていなくなっちゃったのよ、その後に2人の車が山の崖の下で
見つかったの」
それを聞き、衝撃を受けた、
失礼ながらも僕はこう答えてしまった。
「死んだのですか?」
「遺体はなかったの、もしも生きているのならなぜ姿を消したのかわからないの…
ミカが生まれてから何もなかったのに…」
畳に座ってため息をつき八風さんはこう言った。
「でも私もミカと同じ純粋な人だから、きっと星にいて私たちを見守っていると考える事に
したの、その方が明るくなるでしょ」
八風さんは笑顔を僕に見せた、少し暗くなったと思ったのだろうか、場の空気を
明るくするための笑顔に違いないと思った。
「ナツくーん!、本持ってきたよー!」
襖がピシャッと開いてミカさんが現れた。
僕はその音にびっくりして飛び上がるほどだった。
「わっミカさん!」
すると、こっちのタイミングも合わせずにっ持ってきた絵本をパラパラ見せてきた。
無邪気に彼女は彼女なりの解説を入れてくれた。
僕はそれに合わせてその絵本を読んだ、こう言うのはもう小学校低学年で卒業したのに
また読む事になったけど、でも改めて読むとこう言う本は深いものもあるんだと感じた
彼女は感性が豊かっていう八風さんの言葉も頷けた。
そんなこんなで夕暮れになり僕は家へ帰る事になった。
「ナツくん明日学校でねー!」
「また何かあったらおいで、ミカとも仲良くね」
僕は2人に見送られて家へ帰った。
都会にいた時は建物で遮られ、ゆくゆく人々の波に揉まれて、ちゃんと夕焼け空を見れなかった
けど星空町へ引っ越してきてからは、夕焼けを眺めながら帰る時間が増えた。
田舎の人たちはその日の空の機嫌をみて晴れ雨を予測するとか父からきいたことがある。
それをできるようになるには、大人になったからだと僕は思うが。
すぐにでもそんな目が欲しいと今願っている。
そうすればいつ星が見える日か予測ができて便利だから、いつごろ天体観測ができるか
スケジュールも組める。
これから先、友達ともそしてミカさんとも会える時が増えるかもしれない。その4
「ようナツ!」
「ナツくんおはよー」と最近はよく挨拶やちょっとした話をしてくれるようになった。
もうすでにこの星空高校の生徒の一員として馴染めてきた。
僕もすでにこの学校の生徒や先生のことも理解できた。
顔はコワモテだけど優しい瓦先生、
気のいい友達である東村さんに赤木くん、
感じの悪い所で車田ら、そして陰険な女子たちそして…
答えると長くなるので次で最後にすると、変わり者のガールフレンド
「ミカさん」
この彼女とはどの友人よりも付き合いが長い、何かあれば何か言ってくるのが
学校生活のほとんだった、でも僕は最近思うんだミカさんといると
すごく落ち着く。
ミカさんが学校にいないといつもの日常にならないくらい(とは言っても皆勤賞になるくらい
彼女はほとんど休まない)
今日もそのミカさんが話しかけてきてくれた。
「ナツくん!おはよ!」
「ミカさんおはよ!」
僕の隣にいた東村さんや赤木くんも
「おはよう」
「おっす」
と挨拶をした、朝の最初の「おはよう」で初めて次に話題をミカさんがふってきた。
「ナツくん、天体観測はもうできるー?」
最近はこればっかり彼女は言ってくるが今回は違う、僕は自信があるかのようにこう答えた
「できるよ、今週は天気が最高だから」
「やったー!」と大喜びをした。
この満面の笑みをみて僕は嬉しくなった、この笑顔が好きになったから。
「明日、土曜の夜にたくさん星が出るからみんな7時ごろに集まって」
というと赤木くんは言った。
「場所はどこだ?」との事、もちろん場所は決まっている。
「カラス神社に集まろう、あそこは空が広いから」
「わーい!カラス神社ー!」
と言うわけで僕らは明日の夜カラス神社で天体観測をすることにした。今日の授業中は
ミカさんはワクワクしてたのか、授業中は鼻歌をやめず瓦先生に職員室に呼ばれてしまった。
その後の帰り道でも、歌うのをやめず常にご機嫌だった、別れた後も上機嫌であったし、
家についてからもあのまんまだと少しふふっと笑ってしまった。
「きっと今頃ハップ婆に今日のこと話してるんだろうな」と夕飯の食事中にボーっとしてたら
「ナツ」と母さんが声をかけてきた。
「どうしたの突然ぼーっとして」僕ははっと我に帰って
「あ…なんでもないよ」とご飯をかき込んだ。
夕食を終えて、お風呂に入り、今日の日を終えた。
次の日の朝、僕は眠い目をぱちぱちさせながらだるそうに起きた、たくさん寝たのに
まだ眠い、初めここへきた時の朝と同じ疲れが取れてない感。
タドタドと服を着替えて、今日の朝ごはんのベーコンエッグをご飯にのせて食べて
後は何をしようか…と考えて上へ上がろうとした。
「ナツ!、あんた暇なんでしょ、お醤油を買ってきて!」と母に頼まれた。
「お兄ちゃんついでに、お昼買ってきてー」とフユも“自分の要求”を命令したのだった。
夜までは暇なのは大当たりだから「いやです」とはいえないし、僕は大きめのバッグを持ち
外を出た。
うちからスーパーまでそんなに距離はない、コンビニのもあるがスーパーの方が安いので
そっちへ行く事にした。
「カップ麺でいいだろ、フユは」
トコトコと歩いてスーパーの方角へ向かった、一番の目的“お醤油の濃口”を買うために。
住宅街の端っこのチェーンのスーパーでカップ麺とお醤油を買って店を出て、
そのまま家へ帰った。
それから何かするわけでもなく、お昼を食べて自室でゴロンと床で寝転がった。
片付けをするほど散らかってないし、ゴミ箱すら空っぽ。
読みたい本も今はないし、ただただ床に寝転がるだけ、
足をパタパタと動かして、何かを考えようとしてもあるのは「ミカさんと天体観測」
ての事しか頭にない、今日はそれが目的なので、もうサッと夜まで寝たい。
そんなふうにウダウダと夕食まで寝転がり、ご飯を食べ終えた後に望遠鏡を
袋に入れて、バッグに本やノートを入れて玄関へ向かったら、
ピンポーンっとタイミングよく誰かが来た。
その主が誰かはすぐわかった、わかっているから、親が帰ってきた子供のような気持ちで
ドアを開けた。
「ナツくんー!きたよー!」現在は午後の6時だいぶ過ぎた時間。あまりにも早過ぎているけど
わざわざきてくれたんだと思って僕は彼女を連れて友人より先にカラス神社へ向かった。
あの神社は外灯は無く夜道は不気味に暗い。だから大きな懐中電灯を持ってこないといけない。
僕もミカさんもそれを持って階段を上がって行った。一番上の社へ着いた時はさっきより暗く
手に持った懐中電灯を頼りに袋に入っている望遠鏡を立てて、星についての本を開いた。
「もうすぐ7時だ、まだ2人来てないから、少しみてみるか」
「うん」と彼女が頷いたので、望遠鏡で夜空を眺めた。木々のドームにぽっかり空いた
穴から星座を見つけようと、望遠鏡を動かし、そして最初に見つけたのはペガサス座、
「あれはペガサス座、その横にアンドロメダがあるよ」
「なんでそんな名前なの?」
「それはわからない、けども星座はほとんどギリシャ神話の話から来てるって」
「ふーん」とそれ以上は質問しなかった、これ以上きたら説明が難しいからそれでいいや。
アンドロメダの近くにカシオペアがあるからその方向へ上へ望遠鏡を傾けようとすると。
「お父さんとお母さんの星は?、それをみてみたいなー」と彼女は言った。
「え?、それはどの星なのか知らないの?」
「だから聞いたんだよー、どこにあるか知らない?」きっとハップ婆は僕のように望遠鏡を
持ってなかったから夜空に指差して「あそこにお父さんとお母さんがいるよ」って
答えたんだろう。
本当なら“わからない物は探せない”ていう答え方が正しいが、ミカさんのことを考えると
その答え方はすごく無粋だった。
だから今彼女の両親のいる星って言うのを僕が見つけて、彼女の純粋な心を守ることが
僕にとって大事なことだった。
何かあるかと望遠鏡を動かした、そして僕はそれを見つけた。
「あったよミカさんあれが、お父さんとお母さんの星だよ」
その星はポラリス(現在の北極星)の少し隣にあった、小さな星。
それと比べると本当に消えそうな程の光を放つ小さな星だった。それを彼女に見せるために
望遠鏡を覗かせて場所を指した。
「あれがその星なんだ、とても小さい星だね」
「星が小さく見えるのは僕らからするとすごく遠くにあるって本に書いてあった、
そう見えてるだけで、本当はすごく大きいんだ…」
すると彼女はニコッと笑った。
「あそこでみてるんだ、ずっと」いつもは何か嬉しいことがあれば子供みたいに
はしゃぐミカさんが、ここまでおとなしく喜ぶ姿を見たのは初めてだった。
その時、僕はミカさんは宇宙人というよりも天体なんじゃないかと思った。
太陽のように明るくて時々月のようにスッとおとなしいそしてそれでいて濁りがない
そんな子だと子供ながら思った。
「お父さんー、お母さんー、ミカは元気にしてるからー」と突然大きな声を出した。
「み…ミカさん近所迷惑になるよ!」としーっと注意した。えへへっと笑顔を見せたので
強く怒れなかった。
その後に東村さんと赤木くんがやってきて、4人全員ようやく揃ってここから本当の
天体観測を始めた。
先ほど言った星座含む、あれがそれでと説明してその星を眺めた、途中ミカさんが
2人に両親のいる星を見せてきたりしたけど、それでもこの時はすごく楽しい時だった。
都会へいたときはマンションのベランダでただ一人で夏の大三角形など眺めて今日の日をノートに
まとめていただけ。
自分だけの楽しみとしての天体観測だったけど、東村さんや赤木くんには申し訳ないが。
これは僕のだけでなく彼女のための天体観測になった。
今日の日のような事がまたこないか願い家に帰った後はとても気持ちよく寝た。
ノートにはその時みた天体の名称とスケッチその隅っこに
「またミカさんと一緒にあの星を眺めたいな」と書いてあった。
その5
今日は雨の日だった、水を張った紙にポタポタと水彩を垂らしたような灰色の空から
ポツポツとそしてザーザーと雨粒が降り出した。
こういう日の夜は本当に真っ暗で星も見えない。
ミカさんは今日はずっと雨空を廊下の窓から見ていた、
「あ、ナツくんおはよー」いつもよりテンションの低い声で僕に挨拶をした。
「ミカさん今日は、あんまり元気ないよね、雨だからかな」
「うん、雨が降ってから夜に星が見えないんだ、ミカは雨は好きじゃないんだ
気持ちが下がるんだ」
目があまり開いていないので、瞼はいつもより厚く、笑顔もどこか力が無く
萎れたひまわりのような感じだった。
「星が見えないとなんだか不安なんだ、ひとりぼっちではないのに
ひとりぼっちになったみたいでー」
「大丈夫だよ、今見えなくてもそれは今頃だけで、次天気が良かったらさ
また見えるよ」
彼女の気持ちを考えるのは、僕も曇り空はそんなに好きではない、
星が見えないからもあるが、こういう時って気分が下がるし、
なんせ気象に左右されやすい体質だから。
理由は彼女と同じ部分はあって違うところはあるが、男の子の僕は
まず女の子のミカさんを元気づけなきゃと思った。
「そうだね…、今星が見えなくても、ミカはナツくんたちがいるから、一人じゃないね」
またちょっと元気ない笑顔を見せた、ミカさんは僕に不安な気持ちにさせたくないのかも
しれないから、無理にでも元気ですって彼女は振る舞ったのだろう
「ミカが元気でいなきゃ、お父さんお母さんも不安になるから、ミカ元気になるよ」
ムンっと気合いを入れ直して、あご引いた、いつものミカさんになろうとした。
「ミカさん無理しなくても大丈夫だよ」と僕は言った
「ナツ、ちょっといいか」瓦先生が大きな段ボールを持って声をかけてきた
「職員室に荷物運ぶの手伝ってほしい、もう一つは資料室にあるから」
「あっはい、わかりました」とすぐにそこへ向かった、一人ミカさんを置いて。
「あらら、ナツくん行っちゃった」
再び窓から空を眺めた、すると彼女の後ろから女子が3人くらいミカさんに
よってきた。
「ん?ミカに何かよう?」
「“ミカに何かよう”ですって、ほんとキッショ」と小馬鹿にするように一人が言ってきた。
「最近あんた調子乗ってんじゃないの?、マジでムカつくんだよぉ!」
ともう一人はズンズンと彼女に詰め寄ってきた。
「近いよー、意地悪は良くないよね」
「宇宙人は宇宙へ帰れ」と脅しをかけてきたするとミカさんは
「今は雲があるしお父さんとお母さんの星が見えないから…」ちょっと不安げな顔をして
答えたら
「お父さんとお母さんの星?あはははは‼︎、あんた本当脳みそ溶けてんじゃないの⁉︎
いるわけないじゃん‼︎、」
それを聞いて彼女はかっと表情が曇り始めた。
「…いるんだってハップ婆言ってたもん…」
「うわキモ!、本当に信じてんの?、なら本当のこと言うよ、あんたの親は死んでんだよ‼︎」
「キャハハハ‼︎あんたは孤児よ!ウケルー!」
僕と瓦先生が来た時には、あいつらはそこまで言ってた、それを聞いた彼女は
ぎゃああああ‼︎、と大声をあげて喚き出した。
「ミカさん‼︎」頭をぐしゃぐしゃかき乱して、恐ろしい何かを見たような表情をして
泣き喚く彼女を瓦先生はどうにか落ち着かせようとしたが、体育系の先生でも
どうにもできず結局何人かの先生でどうにかできた、その時の彼女は全ての
体力を使ったように気を失っていた。
ミカさんは保健室の先生に抱えられて保健室へ、
瓦先生は張本人の女子たちの腕を掴んで職員室へ行った。
周りの生徒はざわついた、突然のことに動揺しているだろう、だけど
僕はそれ以上に彼女の身が心配だった、他の先生は「教室へ戻れ!」と声をあげたので
僕は素直に戻って授業を受けたけど、頭には国語の文法とか数学の数式とかでなく
ミカさんのことだけだった。
結局どうにもならず先生に適当なことを言って授業を抜け出して。保健室に向かった。
そこに着いたときは、ミカさんは意識を取り戻して、駆けつけてきたハップ婆と
一緒にいた。
「ミカさん…大丈夫」と言っても何も答えなかった。
俯いた顔から、笑顔は消えていた目には星がない濁った曇り空のようになった
はっきり彼女の心が壊れたと感じた。
「ナツくん、わざわざ駆けつけてきてくれたんだね…ミカは少し体調が悪くてね
しばらく学校を休むことにするって先生に言ったの」
…何も答えられずただ、その場をたちつくした、ハップ婆は彼女の手を引いて
学校を後にした、僕のその気持ちに共鳴するように、雨空はさらに黒くなった。
仮に晴れたとしても、心に穴が空いてる自分にとってそれは無礼に思えただろう。
帰り道、僕のことを気をかけたか東村さんや赤木くんが一緒に帰り道を付き合ってくれた。
「ナツくん、落ち込んでいるから元気出せと言ってもあれだけど…」
「とにかく元気出せよ、お前までそんなんになったら…」
と励ましてくれたけど、それは空を切るようにすり抜けた。
自分の家へつき、夕飯を食べようとするが喉を通さない、僕の大好きなハンバーグなのに…
親も心配して「何があったの?」て聞くけど相談する気力もないので、今日は自分の部屋で
そのまま寝た。
次の日の朝はいつも家にくるミカさんはやってこない、学校まで一人で向かった。
玄関で靴を履き替えて、ただとぼとぼと教室へ行き机に座った、隣のミカさんの机は
空っぽの箱のように感じた、その机には彼女の描いた落書きが描かれていた。
それを見てはあーっとため息をついた。
すると教室の扉が開いてあの車田たちがやってきた、周りに威嚇するように目をつけながら
僕に近寄ってきた。
「ナツぅ、今日はあの宇宙人がいなくて寂しいんでちかぁー」
と自分を馬鹿にして大笑いするが、こんな奴とかまっていられるほど元気がないので
無視をした。
「ああん?何シカトしてんだよオイ!」と取り巻きが肩を掴んできたが、車田が間に入ってきた
「まあ待てや、それよりさ昨日のはウケたよなぁ、宇宙人ぷっつんしたとこ」
その言葉に僕はばっと車田の方へ振り向いた。
「おお?怒るのか⁉︎、よそものの分際でぇ、いい度胸だなぁオイ」
「…ミカさんを馬鹿にするな…」
怒りを込めて僕は車田の目を睨んだ。
「おめえ、宇宙人に惚れてんのかぁ?、ああーかわいそう!
あいつは脳みそクルパーだから、いろんな野郎と“や”っているゼエぇ」
僕の中の何かが切れて車田の顔を殴った。肩を掴んでいた取り巻きが
僕の頭を押さえつけて、拳を振り上げてきた。
「てめえ‼︎何しやがるんだこらぁ‼︎」押さえつけられてなおも
大声で喚き、車田に殴りかかろうとしたら、その本人が、
完全に怒髪天の状態になって、取り巻きごと殴り飛ばした。
僕らはそのまま机をガタガタ倒して吹き飛んだ、
「やめろよ車田‼︎、柱屋も巻き込んでんぞ‼︎」ともう一人の取り巻きが
押さえ込もうとするが、車田は顔を真っ赤にして
「ぶち殺してやる‼︎」と大声で喚いて僕に襲い掛かろうとした。
その後にやってきた瓦先生と他2名の教師に車田は抑えられてやつは職員室へ連れてかれた。
「何やってるの!何があったか話しなさい!」
顔に大きなあざをつけ、鼻血を流す僕はそれでも怒りが収まらず声にならない声をあげた後
そのまま泣いた。
結局僕も心がぐちゃぐちゃになり、感情が定まらなくなったので先生に連れて行かれた。
顔の怪我の治療もあるので保健室でしばらく先生とここにいた。落ち着きを取り戻してから
さっきの出来事を話した。
「…理由はわからないでもないけど…喧嘩になるは良くないわよ。」
「はい…」
「どうする?今日は授業は受けられる?無理なら早退でもいいよ」
とても今日の日を授業に使えるほど、心に余裕はなく僕は荷物をまとめて一人家へ帰った。
家にいても気持ちがいいわけでなく僕は帰る方向とは違う方向へ行き町を彷徨おうとした
ウロウロしても図書館に公民館、役場に商人邸しかないからボロボロの心を癒す助けには
ならない。
しばらく歩いてからちょっと経った時、目の前に見たことのある木造の平屋が見えてきた。
その周りの田んぼは荒野のようになっていた、稲は刈り終えたらしい。
僕はただ何も考えることなく、彼女の家を訪ねた、出てきたのはハップ婆だった。
「ナツくん!どうしたのその顔⁉︎」
僕は答えなかった。
「まあとりあえず、すぐに家に入りなさい、話は聞くから」
いつもの広い畳の居間に案内されここで今までのことをハップ婆に話した。
「そう…そんなことがあって…」
「あいつらだけじゃないんだ、クラスのみんなは彼女を軽蔑して悪口を言う…」
僕はハップ婆にそう言った。
「私はミカの純粋さを尊重して育ててきたけど、もしかしたらそのせいで傷つく事を
余計に増やすことになったのかもしれない」
「?」
「ごめんなさい、私はミカと同じく純粋な人と言ったけど、本当は違うの、
あの子の両親がいなくなった時、本当は死んだと言えばよかったのに、
適当な誤魔化しなんかして、ミカに嘘ばっかりついてきた、
私は育ての親としてダメな人かも…」
ハップ婆はすごく悲しそうな表情をして僕を見ていた。しかし僕はこう言った
「ハップ婆!僕はそれを間違いと思いたくない!、ミカさんは最初会った時は
変な人と見てたけど、…まだ一ヶ月しか経ってないから深く言えないけど…
キラキラ輝いて見えてたんだ…そんな彼女は僕は好きなんだ。」
これは僕の正直な彼女に対する感情だったかもしれない、本人や自分の親や友達にも
言わない子の感情を初めて放ったのは、ハップ婆の前が最初だった。
それを聞いたハップ婆はこう言った。
「あの子はどうしてナツくんに惹かれたか分かったかもしれない、あなたも
あの子と同じ純粋なのかもしれない」
「え、僕はそんなことはないです…」
「子供は大人に近づくほど濁っていく、若い頃はそういう子をたくさん見てきたのよ
ナツくんの言ってた通り、その中にはいつまでも輝く子もいるし、その輝きが見える人も
いる、だからあなたも純粋なのよ」
輝きが見える純粋さということは僕は初めて聞いた、それまで僕はハップ婆の言う通り、
大人に近づいて、少し汚くなった子供だと思っていたから、傷ついた僕にはその言葉は少し
しみるけど心の消毒薬になった、ちょっと立ち直ってから僕はハップ婆に聞いてみた
「ハップ婆、ミカさんは今大丈夫なのですか?、あの時のミカさんは…」
というとハップ婆は少し暗い表情になって答えた。
「部屋からあまり出てこなくなくなったの…食事もあまり食べないし、口も聞かなくなった…」
「そうですか…」僕は立ち上がり襖を開けて彼女の家の前へ行った。
ミカさんの部屋のドアの前にたち僕は言った。
「ミカさん!…あの…別に気にしなくていいなんだあいつらの言ったことは!…だから…」
声が詰まりこれ以上は何も言えなかった、それでも振り絞り
「また顔を見せてほしい、元気なミカさんが僕は好きなんだ」と言った。
声は返ってこなかった最後に「じゃあね」と言って玄関まで行った。
靴を履いて戸をガララと開けて帰る途中に、ハップ婆が
「ナツくん、ありがとうミカに会いにきてくれて、」と頭を下げてお礼を言った、
最後にハップ婆はあの時と同じ塩だけのおにぎりを手渡して、帰りを見送ってくれた。
家に帰ってから、そのおにぎりを家族に分けて残った一個を僕はパクりと食べた。
味は最初に家に来た時と同じ甘くて美味しかった、あの時の事を思い出して
僕は一つ涙をこぼした。
ミカさんは元気になる、そしてまた天体観測をしてあの星を見るんだ、それを僕は願った。
その6
刈り取った稲から米をとる作業をするハップ婆の前に瓦先生がやってきた。
「おや?瓦先生、いらっしゃい」
「こんにちわ八風さん、今時間はありますか?」
「ええ」と言ってあの居間に瓦先生を招いて2人は話した。
「ミカはどうですか?」
「体調は大丈夫と思いますけど、でもまだ登校再開は不安です、また起こると思って」
瓦先生はハップ婆の出したお茶をちびりと飲んでこう言った。
「八風さん、今回は重要なお話です、ミカのこれからの事についてです」
「はい」とハップ婆は返事をして、瓦先生は直入にこう言った
「ミカは今の学校ではうまくいくことはないでしょう…
だから転入を考えた方がいいと思います」
ピクッと反応はするが冷静にそれを聞き、ハップ婆は返した。
「それはつまり…ミカはもう学校へ来ないでほしいという事でしょうか?」
「いえ、落ち着いてください…、八風さん私もかつて支援学校での経験上、彼女のタイプは
たくさん見てきました、だから理解はあります、しかし」
「しかし?」
「ミカのようなタイプは、通常学級では悪い影響を受けることが多くまた
相手からの攻撃を受けやすいのです、簡単に言うと周りとうまくいかないと言うことです」
ハップ婆は少し黙り2人の間に少し重い空気が漂った、そして瓦先生は続けて言った。
「残念なことですが、星空高校には支援学級のように対応できるシステムはないのです…
私ができることは、彼女を理解できる学校を紹介することです」
「瓦先生!」少し張り詰めたような声を出してハップ婆はこう返した。
「先生…お気持ちはありがたいのですが、あの子をまるで病気みたいに言うのは失礼と
思います…」
「…すみません…」と謝る瓦先生。
その時ガララっと戸が開く音がなった、ハップ婆は「失礼」と言って玄関まで見に行った
戸は開きっぱなし、そして靴が一つ足りない。
何か嫌な予感を感じたハップ婆はすぐに外へ出たが右も左にも人影が見えない。
「ミカ!、ミカ‼︎」とあたりを叫んでも返事がない、すぐに家に戻って瓦先生を呼び
「先生!大変ですミカがどこかへ行きました‼︎」
「え!」と立ち上がり、すぐに携帯を取り出した。
「もしもし、警察ですか⁉︎あの…」と電話する瓦先生を横目に受話器を持ってハップ婆も
電話をした。
その時、僕は望遠鏡のレンズの手入れをする所だった、ポケットに入れてたケータイが
ブーブーと鳴り、誰だろうとかけたら。
「ナツくん⁉︎、ミカはそっちにいない⁉︎」
とものすごい慌てた声で僕に話しかけてきた。
「いえ、こっちにはいませんが…」
「ミカがどこかへ行ったの‼︎、ナツくんお願いだからあの子を探してきて‼︎」
「‼︎…、はい!わかりました!」
電話を切って急いで階段を降り、靴をギュウっと履き、僕は走って彼女を探しに行った。
公園や駅の近く、コンビニにスーパー、そして学校を回ったが姿は見えなかった。
ゼエゼエと息を切らしたけど、休んでいる暇はない、どうしてミカさんはいなくなったのか
理由はわからない、いやそんなことよりも、早く見つけないと事故か事件に巻き込まれる
残りの体力を振り絞り、最後の場所であるカラス神社へ向かった。
初めて天体観測をした2人の最初の思い出の場所に彼女はいるはずだと願い。僕は走って
鳥居の前へ来た。
「すうぅー」と息をつき、「んっ」と息を止め山の上まで僕は階段を上がった。
初めの頃、途中で体力を切らしてバテた時と違う、早足でたったったっと登っていけた。
途中足を踏み外して転んだけど、足の痛みを気にせずただ止まらず登った。
登り切った先の鳥居をくぐり、社の前へ立った。
ハアハアと息は上がりその疲れた体のまま、社の後ろ、あの星空町の風景を一望できる
ところへ向かった。ざっざっと落ち葉を踏み締めて進んだ先に彼女がいた。
町の風景を前に髪を靡かせているミカさんはこちらを振り向くことをしない。
「…ミカさん探したよ…ハップ婆が心配してるから…」
何も答えず、ただその先をじっと見つめている。
「…返事をしてミカさん。」
すると…
「嘘つき」
と一言彼女は答えた。
「ハップ婆もナツくんもみんなミカに嘘ついてたんだ」
その言葉はすごく突き刺さった。その突き刺さった痛みは彼女と同じ痛みと
考えた。
守るための言葉の玉が砕けて破片になってお互いに刺さったと思う。
「…ごめん…、でも信じてほしい、ハップ婆も僕もミカさんを傷つけたくて
信じさせたわけじゃないんだ、…だから帰ろう…ハップ婆ともう一度話をしに」
「ミカはずっとひとりぼっちなんだ‼︎」
ワッと大きな声を僕に飛ばしてきた。
「わかってたんだよ…みんなミカを嫌っているんだって…ずっとひとりぼっちだって…
お父さんとお母さんが星で見てるから平気だった…」
グスグスと泣き出している彼女を見て、もう何も返事や元気づけの言葉は出なかった。
ただ後ろに背を向けて泣く彼女を見つめることしか今はできなかった。
するとミカさんはパッとこっちを振り向いてこう言った。
「でも全部嘘だったんだ、誰も“いない”んだ、だからミカも“いなくなる”よ」
ミカさんは後ろへ倒れ込んだ、その先は山の崖のところ。
言葉を発することはない、無音の感覚の中、彼女の手を掴もうとしたが、
僕も彼女の倒れた先へと吸い込まれた。
地面に叩きつけられた感覚は一瞬だった、痛いを感じるまもなく僕は意識を失った
「ミ…カ……さ……」と声にならない言葉を残して…
…遠のいた意識は時間の感覚なく目覚めた…
ここはどこなのか…天国なんだろうか?
それとも地獄へ落ちたか?
目を覚ました時は周りは何もない、自分はアリのように小さくされて
そのままドームの中へ入れられたのかと感じるような場所だった。
「僕は一体…、確かあの時…」
足を進めようとしてもどこへ向かうべきか…と言うよりも行ってどうする?
ただ立ち止まっていたら…
「星なんて存在しねえよ」ときたことのある声が後ろからした。
こいつは知ってる車田だ!…
ばっと振り向くが声はそいつであるが姿は違った。それは黒い人型の何かだった。
僕はゾッとした、誰でも得体の知れないものには恐怖を覚えるだろうし。僕もその一人だ。
その人の形した何かはさらに言い続けた、一番嫌いなやつの声で
「星なんてねえよ!、」
「そこには何もねえよ!」
「空は空っぽだ!」
と僕に言い詰めてきた。僕は耳を塞ごうと手を当てた、けどそれは指をすり抜けるように
頭の中に入ってきた。
その声はさらに僕を否定するような言葉になった
「お前は無駄な17年間だった‼︎、ありもしない星だけ追って、ただの光を見つめてただけ」
「そう、お前は空っぽ、中身のない、まるでミカに言った言葉のように‼︎」
「虚無、虚言、空っぽ、嘘つき‼︎…」
そんな言葉がただ繰り返し繰り返し、骨に響いていきやがて、僕の視界はぼやけて…
塞いだ手はするっと降りてぶらり下がった。
「僕は…虚構…僕は…」ただ相手の言葉を口ずさみ、意識はそっちへ向かった…
ここは一体どこだろう…わからない…
真っ暗で何も見えない場所にいつの間にかミカはいた。
「…何も見えないよ…」手を目の前へ差し出しても何もコツンと当たらない。
まるで木箱の中に小さくされて詰められたような感覚だった。
その不安はすぐに消されて、少し落ち着きができてきた。
「そうだ…ミカは死んだんだ…、これでいいんだ…、
もうあっちで苦しんだりしなくていいから」真っ暗の中でも感じる、自分の意識が
消えかかっていること、このまま無の中へ入っていくことがミカにはわかった。
「…ミカ……ミカ‼︎」とどこからか声が聞こえた、返りかけた意識はハッと目覚め、
ミカはあたりを見回した。
すると近くに小さな光が2つあったそれは手のひらに乗るように小さく、そしてキラキラ
輝いていた。
「これはなんだろう…ううんあなた達は誰?」
とその“2人”に尋ねた。それはこう返事した。
「ミカ…私はあなたのお母さんよ…」
「そしてお前のお父さんだ」
えっ…、と驚きそしてボロボロと彼女は泣いた。
「おかーさーん‼︎おとーさーん‼︎」と手を回すけど空を切った。
「ミカ…ごめんね私たちはもう実態はないんだ、意識だけの存在なの…」
「あの事故の時、私たちに何が起こったのかわからない…、まるで別のところへ行ったような
感覚しか覚えてない…」
そう父は語った。
「…ハップ婆は言ってた、お父さんとお母さんは星になったって…、それは本当だったんだ…」
というと母はクスクス笑った。
「まあ、もしかしたら私たちは星になったのね、ロマンチック」
「ははは、その辺は全く母さんらしいよ、ミカにそう言うなんて」
ちょっと暖かくなった雰囲気の中、ミカも少し笑顔になった。
初めて両親と話したから、もしかしたらこれが最後で最初になると思ったから。
「ミカ…、もうそろそろあそこへ戻らないといけないよ…ここはまだ来る場所じゃないから…」
「!…いやだ…戻りたくない…あそこには味方はいないんだ…」
彼女は“あっち”の方へ行くのを拒否した、しかし父はこう言った。
「ミカ…大丈夫!、ハップ婆がいるじゃないか‼︎、母さん…おばあちゃんはね、決して嘘なんて
ついてないじゃない、私達が星になったのは本当のことだし」
「それに…おばあちゃんだけではない…ナツくんだっけあの子もいるじゃない…」
はっとミカは思った、自分はハップ婆だけでなかった、そう“夜空夏日”ことナツくんがいつも
そばにいた、そしていつも自分の味方になってくれた、それを今気づいた。
それにここに残ったら彼らは悲しむだろうと思う、だから帰らなきゃ…すぐに走ろうとした
「待ってミカ…こっちじゃない!…あそこよ」と母は指差した
「あの子もまたこの場所に来ている、そして苦しんでいる…それをはらうのにあなたが行くの」
「さあ、いくんだ…母さんによろしくな」
ミカは笑顔でうんと頷きその方向へ走って行った。両親の光は遠くなり闇が包まれたが
もう不安ではない、その先にナツくんがいる、ただ走りそして力を振り絞り大声で叫んだ
「ナツくぅーーーーーん‼︎」
飲まれそうな意識の中に微かに聞こえた、あの太陽の輝きのような声が
僕は意識をハッと取り戻し大量の人型を振り払いその方向へ走った。
走りそして力を振り絞り声を返した。
「ミカさぁーーーーーーーん‼︎」
がむしゃらに走った先に、あの中古の望遠鏡があった、それを覗きながら、
大声で彼女の名前を呼んだ、
その声に反応して、僕の名前を呼ぶ声が返ってきた。その方向へ確実に合わせようと
望遠鏡を傾けた…その先に一粒の光を見つけた。
それはあの時と同じ場所、ポラリスの近くにあった小さな光だった…
僕は最後の力で声を出した。
「ミカさぁーーーーーーーん‼︎」
「…ナツ……くーん…」とその声は近づいてきた、その方向から彼女が降ってきた…
ゆっくりとこっちへ降ってきたまるで、中をまう紙のように降ってきた…
すぐに僕は抱き抱えた。その瞬間このドームの闇はパリパリと割れていき、うすい朝日のような光が僕らを包んだ…
「ミカさん‼︎
「ナツくん‼︎」
彼女の目にはあの時の光がかがやいていた…そしてあの笑顔も…
僕の感情もまたそれに共鳴するかのように輝き、気がつくと目から大粒の涙が
流れた。
彼女もまたその涙を流して笑った。
遠のいた意識を、薄色の光で、僕らを目覚めさせた…。気がついた時は病院のベットだった。「痛」っと感じた時に
僕は生きてるんだと理解した。
僕の周りには両親と妹がい心配そうに見ていた。
「ナツ‼︎よかった…」母さんを少し泣いていた。
「全く心配したんだぞ」
「お兄ちゃん!無事でよかった!」
とあの父と妹も少し涙を浮かべていた、ちょっと珍しいと思ったがすぐにあることを聞いた。
「…ミカさんは?…彼女は…」と言うと両親は黙ったがすぐに答えた。
「ミカちゃんもあなたと同じところで見つかって…あなたと同じように
意識が戻らなくなったの…」
もしかしたらと思い僕は頭の痛みに耐えながら、ベットから立ち上がった。
止める両親と妹を振り切り病室を出た。
ヨタヨタと廊下を歩いて彼女を病室を探した、きっと彼女もまた…。
すると廊下のベンチで座っているハップ婆と瓦先生がいた。
「ナツ!もう大丈夫なのか⁉︎」それにはいっと答えたら。
「ナツくんごめんなさい…巻き込んじゃって…」と深々と頭を下げてハップ婆は謝った。
「いえ、大丈夫です…、それよりミカさんは?」
と尋ねると、2人の座るベンチの後ろのドアが開き、そこから彼女が少しふらつきながら
出てきた。
「ミカさん!」と言うとその声に反応するように、ゆっくりと僕の方へ顔を向けた。
あの時、自分たちがどこか別のところへいたと時に戻った笑顔はここではなかった。
目もまだ曇ってた…けど彼女はこう言った。
「…ナツくん、ちょっと来て…一緒に…」
それに僕はうんと答えついて行った、先生もハップ婆も止めに来たけど、またそれを振り切り
病院の外へ出て中庭のベンチで二人座った。
隣同士になって僕は何を言えばいいかわからない、あの時のことやそれより前のことを話すか迷った。
いや決まっていてもうまく声を出せない、でも勇気を振り絞り声をあげた。
「あのさ‼︎」「あのね‼︎」
最初の掛け声が彼女と同じタイミングで重なった。
ここは彼女に譲り、話を聞いた。
「あのね…会ってきたんだ…お父さんとお母さんに。」
「…うん…どんな人だった?」
と聞いてみた。
「姿はわからない、本当に小さな光だった、」それがどんなものか彼女は手の器を作り
表した、こんなに小さいんだって僕はわかった。
すると彼女は泣き出した、小粒の涙がポロポロと溢れていた。
「うん…嘘じゃなかったんだ…よかった…そしてごめんね疑って…」
という言葉で僕も思わず泣いてしまった、心では”ここで泣いちゃだめだ”と思っても、
コップから入り切らず溢れる水のように流れ出た。
そんな気持ちを抑えるかのように彼女をグッと抱いた。
「いいんだ…いいよ…そしてありがとう…あの時…」力は強かったのかミカさんは
腕をすり抜けて。
「ナツくん!、締め上げ過ぎだよ!」と少し怒った。
「あっごめん、痛かったよね」と少し笑ったら彼女は笑顔を返してきた。
その笑顔はいつもの、大きな笑顔ではなくもの静かなふふっとした笑顔だった。
「ミカさんなんだか違う感じがする…いつもはもっと弾けてるのに…」
すると彼女はベンチの背にもたれて空を見ながらこう言った。
「ミカはね、変わるんだ…、お父さんとお母さんは星になってみてるけど、でも
ミカはこのまんまでは2人とも心配すると思うの、だから変わるんだ…」
すっと立ち上がって3歩ほど歩きまた天を仰いだ。
「これから、2人の星は見えなくなる時がある、ずっと見えなくなる時もくる
でもミカは…私はみんながいるから…」
一瞬だけ、彼女から双葉の芽が目覚めたように見えた。あの彼女が消えてなくなったのではない
種から芽なる瞬間だった。
それを感じた僕は不思議な気持ちだった、寂しさもありそして嬉しくも感じた。
「ナツくん、大丈夫だよ、私はミカのまんまだから、“これからもよろしくね”じゃないから」
星になった笑顔はほんのり光を放ってたように思った、その笑顔に僕も笑顔で返して
こう言った。
「うん、よろしくねミカさん…」
その6
この星空町での初めての新春を迎えた今日、最初の一回目の天体観測を友達とする約束をした。
僕は小学校から使っているあの中古の望遠鏡を袋に入れて、あのカラス神社へ向かった。
この時期は、オリオンやおおいぬそしておうしが見える時期だから、さぞワクワクするだろう。
最初の鳥居をくぐり山まで続く階段をスイスイと登り山頂の鳥居を潜って本殿へ挨拶をしたら
あの場所に望遠鏡を立てた。
ここはまるでぽっかり空いたドームのように夜空が広がる場所、天気さえ揃えれば満点の星空が
見える、今日はそのばっちしの天気の日だ。
一人はあっと白い息を吹かすと。
「ナツくん」と声をかけてくれた。この声はあの子だった。
「ミカさん!」
ちょっとだけ大人びていた顔から子供のような笑顔を見せて、僕の方へよってきて。
ハップ婆の握ったおにぎりを取り出してくれた。
「他の友達はまだらしいから、先に見ようよ」と水筒に入った暖かいお茶を
コップに入れて分けてくれた。
「ありがとう、じゃ初めよっか」と早速ミカさんは望遠鏡を覗いて夜空を眺めた。
オリオン、こいぬ、おおいぬで構成される冬の大三角形に目を取られず眺めたのは
秋の頃、ポラリスの近くにあったあの小さく輝く星だった。
「今年も見えたねあの星が」と言うと。
「うん、お父さんとお母さんは元気そうだね。」と笑った。
望遠鏡のレンズから目を離して、彼女は僕にこう話した。
「ナツくんは進路はどうするの?、私は大学へ行くんだけど」
「うん僕も進学をするよ星空町の隣の街の小さな大学へ」
と僕は答えた。彼女はニカっと笑った。
「またおんなじだね、私もそこ。」
ちょっと変わったとは言え、時々あの時のミカさんが顔に出てくることがある。
あの純粋だった彼女は完全に濁ってしまった。
それは汚れとしてではなく、透明のガラスが真っ白に染まるように、
僕もそんな風になれるかなと思ってる、黒ではなく白に。
その後に友達がやってきた、東村さんや赤木くんだけでなく、もう2人増えて
この天体観測は少し賑やかになった。
「ミカ、ナツ、遅れてごめん」
「もうやってるのか、次は俺な」
立ててある望遠鏡を友達らに見せておき、僕とミカさんはただ裸眼で空を見上げた。
両親のいる星に“異星交信”と言う名目でそれに話しかけた。
「これからもミカさんとずっと仲良くやっていきます」
「だからこれからもずっと見守っていてね、お父さんお母さん」
完
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