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立春の始まり

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「ちーちゃんっ 一緒に温泉行こう!」

 大学で同じ学部だった佐伯めぐみちゃんから一月の下旬に旅行のお誘いメールがきた。
 出発は二月の第一週の木曜日から日曜日までの三泊四日。
 場所は蔵王だという。

 思えばこれが私の人生の岐路だったのだと思う。
 小・中・高は地元の学校を卒業し、大学は親の薦めもあって、都内にある寮付きのミッションスクールに進学した私は、大好きな日本文学に打ち込んでいた。

  私が学んでいた大学は、他の学校と交流を持たない学校で出会いというとバイト先か、知り合いの伝手なのだが、私は大学の敷地内にある寮に住んでいたので門限もあるし、寮生のバイト禁止だったので出会いとは無縁だった。別に私はそれで構わなかった。

 花も恥らう大学生が、何をと思うかもしれないけれど、当時の私は男性と遊ぶことよりも、女友達と遊んでいることのほうが楽しかったのだ。
それは、社会人になってからもだった。
 同じ学部の友達や、寮仲間、仕事で同期の子たちと暇を見つけては集まって旅行に行ったりお茶したり。
だから、今回もめぐみちゃんのお誘いには、すぐ乗っかったんだけど、当日待ち合わせ場所にいくと男性三人がやたら大きいバッグと長い包みを持っていて、誰かを待っている感じだった。

  新幹線の待合所だから、誰かを待ってるのは当たり前なんだけど、なんかその3人組が気になって、チラチラと横見してしまう。
 (早くめぐみちゃん来て~~~!!)
と念じ始めて三十分。待ち合わせ時間を大幅に超えているんだけど、めぐみちゃんが来る気配がない。
めぐみちゃんめぐみちゃんと思っていたせいか、周りの様子が気になって顔をあげる。ふとあの三人組の男性はもう行ったのかなって見てみると、まだ誰かを待っていた。明らかにイライラした様子で。
あちらもご友人がこないのですね~。お仲間だー。うふふー。と生暖かい気持ちになっていると、あちらのグループの一人が電話し始めた。
 暫く電話をかけている様子で、相手が出なかったのか益々イライラした様子。
そうだよね~、待ち合わせの時間に来ないと心配になるよね~・・・・・私もめぐみちゃんに電話してみよう。
  留守電サービスになるまでしつこく鳴らしていると、寝ていました的な声でめぐみちゃんがやっと電話に出た。

 「めぐみちゃんっ!待ち合わせ時間から三十分も過ぎてるよーっ」
 「えー・・・? 今何時?」
 「八時だよ。七時半に待ち合わせって言ってたじゃない。」
 「そーだったー・・・。夜勤明けでつい寝入っちゃったごめんっ!」
 「夜勤明けならしょうがないけど、戸締りちゃんとして気をつけて来てね?」
 「すぐいくからっ!ちーちゃんごめんねっ」

  電話越しにバタバタと音が聞こえて通話を切った。
とりあえず、事故とかじゃなくて良かった。ほっとしていると視線を感じてそれを辿ってみると三人組の人たちからだった。
 なんだろう・・・探るような目は。とりあえず、挨拶が基本だよね?

 「お互い待ち人来ずですね。どこに行かれるんですか?」
男性と会話をすることもない私は男性を直視することが苦手であまり相手は直視せず、当たり障りない質問をすると、天パーっぽい人が話しに乗ってきた。
 「スキーに行く予定なんですよ。ただ、女の子二人がまだ来なくて、折角の指定チケットも自由席に成り下がっちゃいました。」
 「女の子と連絡着かないんですか?」
 「二人っていっても片方の子は俺ら誰も知らない子なんで。知り合いのもう一人の子が女友達誘うって。」
そういって天パーっぽい人が斜め後ろにいる男性二人に視線を投げる。視線を投げられた二人は軽く頭をさげるが会話に参加する気はなく、携帯をいじっている。
 「それで、知り合いさんと連絡がつかなくて困っていると・・・」
 「まあ、その子はよくこういう事をやらかす子なんで慣れてますよ。でも、あなたの待ち人さんとは連絡取れたみたいで良かったですね。」
 「そちらも連絡とれるといいですね。」
会話が途切れ、天パーっぽい人は男性二人との会話に混じる。一度会話を交わした相手からいきなり距離をとるのも相手に失礼かと思い、私はほんの少しだけ距離を取ってめぐみちゃんが来るのを待っていた。
  
 あちら側の会話が漏れ聞こえてくるのをBGMにして、持っていた小説を読もうとカバンに手を入れたら、めぐみちゃんの声が聞こえてきた。
 「ちーちゃん、みんなぁぁ!ごめんなさーい!!」
えっ・・ みんな??
 「めぐみちゃん、二人で温泉じゃないの?」
 「めぐっ おっせーよ!電話ぐらいよこせ馬鹿!」
と会話がかぶってしまった。
ん?
 「ちーちゃん、実はこのむっさい三人と行くんだよ~。あとね、スキーは苦手って言ってたから、言わなかったんだけど実はこれスキーしにいくの。黙っててごめんね」

色んなことが起き過ぎて私の頭は真っ白になった。
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