愛の女神様の作った、雑な乙女ゲームのヒロインにされてしまいました…!

ふじわら臣都

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新しいゲームシステムで。

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「てな感じでしたよねぇ?」


正座する女神様の前で仁王立ちして、前回のエピソードを振り返り終わった私に、反省会が始まってからずーっとほっぺた膨らませて不貞腐れている女神様。


この反省会が始まった時から、ずっと 自分は悪くない を繰り返してました。


「いや、このゲーム作ったのアナタでしょ。確かに最後の告白イベントは私の意志で動くから、ラストのスチルとかその他は、女神様のゲーム内容とは異なるもので終わるわけなんだけど。その告白イベントに行くまでの選択肢は私にはないんだから、リコーリアと感情がリンクしてたって、魂は別々なんだもん。むしろあのままだったら、アナタのヤンデレキャラがケツ丸出しのままのハズカシイ状況に陥ったスチルで終わったかもしれないんですよ?」


まあ、乙女ゲームだからそんなこたないだろうけど、とそこで一度切って。


「私がキリーちゃんに最後に会いに行って、全てを話してなかったら…。少なくともコウはラストのシーンで、幸せそうな笑顔を浮かべることはなかったかもしれませんね?」


まあ、コレだって結果論なんだけどさ。


『…ほんの少し、お色気があるのも、乙女ゲームの、醍醐味では、ないですか…。』

「そうなんだけど、前にも言ったけど。両極端なんですよ。白黒つける感じじゃなくて、アナタの見たい世界はパステルカラーのはずでしょ?」

そこで女神様ははっとなる。


「もっと、こう…甘酸っぱくて、キュンとしちゃうようなシチュエーションの中で、恋を自覚して育てていくもんじゃないんですか?」


なのに、初めのは何だかトチ狂った馬鹿展開になり、次のでは色気入れたら阿呆な結末になる所だった。


「色んな要素を組み込みすぎておかしな事になってるんですから、あまり難しい内容を入れずに、むしろキャラクターに任せてみたらいかがですか?」

『キャラクターに、任せる…?』


「元の性格とかの設定はあるんですから、彼らの感情を優先させるというか?コレまでは女神様か用意した選択肢を女神様が選んだだけなんですから、今度はキャラクターが出した選択肢を女神様が選んでみたらいかがでしょう?」


『なるほど!! それは面白いかもしれません!!』

途端に元気になる女神様。がばりと立ち上がるがしかし、前回のエピソードを振り返っていた間、ずーっと正座していたせいか、足が痺れていて盛大にすっ転んだ。 私がここぞとばかりに、これまでのアホ展開を味合わせてくれたお礼にと、悶絶する女神様の痺れている足をいじくり回したのは言うまでもない。




ーーーー



『それでは、最後の攻略対象のサクラ王子への世界は、サクラ王子の出す3つの選択肢をわたくしが選ぶことにします。』

これまで女神様が作ったゲームのイベント通りにキャラクターが選択されたコマンドに従って動いていたものを、今度はキャラクターが独自にだした選択肢を女神様が選ぶというシステムに変更して、ゲームは再び開始される事になった。

コレは本当にランダムでサクラ王子のその時の気持ちが反映されることになるらしい。ただし、選択肢が3つあるので、サクラ王子がどんな性格で、どのような選択肢が出るかはまだ未知数だ。女神様の作ったサクラ王子の設定は、どのキャラもぼんやりとした設定だし、作った本人がアレだから、あまり期待はしない方がいいとは思うけれど。


さて、サクラ王子の設定のおさらいだけしとくかな。えーと、なんだっけな。


ー サクラ・シャインスカイ ー
シャインスカイ王国の第一王子。騎士科二年生。社交性はあるが、常に狙われる立場にあるため、本音で人と接する事はできない。ヒロインに対しては王子様立場。
髪色 淡いミルクティー色
瞳色 ローズピンク




だったか。うーむ。心配はないかな?王子が王子らしくしててくれたら、さほど問題なく恋愛ができるだろう。

ハァ。

コレで最後の攻略対象。 

実を言うと、少しは恋愛ゲームとは言え、もう少しキュンとするもんだと思っていたから、今は女神様のせいでガッカリしかないんだよね。
女神様が私の記憶からこのゲームを作ったって言ってたけど、どっちかってとあのゲームは男性がやる方の恋愛ゲームだと思ってたから。だって、攻略対象はみんな女の子で、自分がプレイするのは男の子。転校するまでのひと月で、気になる女の子にアプローチして、最後の日に告白するっていうゲームだったから。


やりやすさはあるけど、性別が逆になっただけでさほど問題はないと思ってたら、作った本人に問題ありまくりで、強制的に トゥンク されてるだけの、まるで萌えない仕様になってるもんな。読んでる読者様も疲れてくるだろこんなん。私と同じく、「どーせ次もダメ王子が来るに決まってるさ」って、安易に想像できちゃうよねぇ。


まあでも、コレが最後。


もう少しだけ私とリコーリアにお付き合い下さいませ。



『行ってらっしゃい、リコさん。今度こそ素敵な恋を!』



ー いや、アナタのせいでこれまでが台無しだったワケですが。 ー


三度目の正直になれたらいいね。
物語自体は、本末転倒なんだけど。



3回目ともなれば慣れたもので、また戻ってきたこのゲーム内の自室。って、アレ?何だかいつもと雰囲気が違う? けど、何が気になるのかわからない違和感。

ふと時計に目がいくと。


「遅刻じゃん!!」

服装は女神様の所にいたおかげか、制服のままだ。このまま走っていけば、ギリギリ間に合う。その位の余裕しかない時間に、私は焦る…

鞄を引っ掴んで、食事する暇もないから仕方ないと、キリーちゃんから昨夜差し入れにもらったドーナツがあったんで、それを咥えて部屋を飛び出した。

寮の入り口から走り出る時に、寮母さんからシュクジョタルモノー!って声が聞こえた気がするけど、今はそんな事気にしてられない。早く教室に!今はそれしか頭になかった。

ああでも、ゲームは始まってるんだから、もしかしてこれもイベントの一つなのかな?頭の片隅でそう考えていたら。


ドンッ!!


「むぐっ⁈」

ドーナツを頬張ったままだったせいか、変な声が出てしまった。それぞれの科を繋ぐ中庭を通って、淑女科への道を曲がったら、何かにぶつかった。そのままの勢いで、私は思いっきり尻もちをついてしまった。


「いっ…たぁ…!」
「…大丈夫か?」
「え?」


私の声に重なる様にして聞こえた、静かな優しい声。その声に惹かれるように顔をあげると、そこには第3人目の攻略対象であるサクラ王子が、優雅な所作で私、リコーリアに手を差し伸べていたのだった。



早速来ました、サクラ王子とのエンゲージ! 展開は流石のゲームだ早いもんだな!さて、ここから今回はどんな風に変化があるのだろうか?そう思っていたら。

不意に、サクラ王子の真上に選択肢がゲーム内でのステータスウィンドウのように浮かび上がった。と、同時にサクラ王子含めた全ての世界から色が消える。


つまり、女神様が選択肢を選ぶ時間の時は、ゲーム内の時が止まるという事らしい。そして、どの選択肢を選ぶかを私も見る事ができるようだ。 おお、新しい! さて、新しく変更されたこのゲームシステムで、今度こそ私はまともに恋愛が出来るのだろうか?


私は改めて作り直されたゲームシステムに、ややワクワクしながら、現れた選択肢に目を通した。






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