SUN×SUN!

楠こずえ

文字の大きさ
上 下
9 / 78

第2話:魔法相談所開設(その1)

しおりを挟む

「ふぁああ~」

朝、目を覚ます太陽。

時計を見ると、そろそろ学校へ行く準備を始めないと
やばい時間だ。
まだ布団で寝ていたい気持ちをグッと我慢して
起き上がる。

「あー眠い・・・。
 昨日の夜、遅くまで起きていたのが悪かったかな・・・」

と、その時だ。
「ブブブブ!」と携帯が鳴る。
どうやらメールが届いたようだ。

「誰だ・・こんな朝早く・・・・」

メールの送信者は、いとこの大地からだった。

「大地!?」

大地からメールが来ることは
めったにないことゆえに、
驚く太陽。

一気に目が覚め、内容を読んでみると・・・

『なんか変なことに
足をつっこもうとしていると聞いたぞ。
悪いことは言わない。
やめておけ』

これを読んだ太陽はイラッとして、
「そんなこと、おまえに言われたくねーよ!!」
そう叫ぶと、携帯をベッドに投げつけた。

「チチチチ・・・・・」

その日の朝は、5月のさわやかな朝だった。
 空は青く、木々の新緑も実にまぶしくて、
 何か良いことが起こりそうな、そんな気分になってくるお天気だ。

が、ひまわりの心はドヨンと重かった。
重い足をひきずりながら校門をくぐっていく。

「はあ・・・、今日の朝の占いの結果、
『予期せぬトラブルに見舞われる』でした・・・。
当たって欲しくないですけど
何か嫌なことが起こりそうな予感がします・・・」

トボトボと教室に向って歩いていると、
「あ!夏野さん!」
と呼び止められた瞬間、ひまわりはギクッと飛び上がった。

 振り返るとそこにはニコニコ笑顔の太陽がいた。

「おはよう♪」

太陽のさわやかスマイルに周りの女の子達は
キャーキャー騒いでいるが、
ひまわりは知っている。
この笑顔が偽者の笑顔だということを。

「な・・・なんでしょうか・・・?」

ビクビクしているひまわりに、
太陽はキラキラ笑顔を振りまきながら、
「今日の放課後、ヒマかな?」
と聞いてくる。

周りにいた女子たちは
「どういうことよ!
なんであんな地味な子に
太陽は声をかけているわけ!?」
「信じられない!」
と、いら立ちをあらわにしているが、
もちろんこれはデートのお誘いではない。
魔法相談所に関する件で、
ひまわりに声をかけてきているだけだ。

ひまわりは、
「ほ・・・放課後は、
早く家に帰りたいんですけど・・・」
とボソッとつぶやくと、
「ヒマだよね?」
と、太陽が笑顔ながらも怖い顔をして
ゴリ押ししてきたので、
「ハイ!ヒマです!」
と答えてしまった。

『私、夏野ひまわりは
同じ学年の桐島太陽くんに
目をつけられてしまいました。

桐島くんの母方の一族「雨夜家」は、
大昔から呪術や占いを得意とし、
現在でも占術の世界では広くその名を知らしめています。

占いの的中率の高さを聞きつけ、
全国から悩みを相談に来る人も多く、
予約が数ヶ月待ちも当たり前だそうです。

雨夜家の当主は代々不思議な力を受け継ぎ、
桐島くんの従兄弟で次期当主でもある雨夜大地さんは
ここ数代の中では珍しいほど強い魔力を持っている人物だとか。

そんな魔術師一族の一員なのに
当の桐島くんはほとんど魔力が無いせいか、
大地さんにライバル心むき出しで、
なんとか自分も魔力を高め、
将来的には一族の仕事に従事したいということで、
訓練を兼ねて「魔法相談所」を開くことにしたのです。

が、 魔力の無い桐島くんゆえに
開設する条件として提示されたのが、
「魔法を使える助手を連れてくる」
ということでした。

しかし、この世の中、
魔法を使える人なんてめったにいないものでして、
桐島くんが探しに探して、たまたま見つけ出して来たのが、
私、夏野ひまわりだったのです・・・』

「じゃ、放課後♪」
と、無理やり用件だけ伝えると、
さっさと太陽は去っていった。

「はあ・・」と重くため息をついたひまわりの前に、
「夏野さん!!」
と女の子達がドッと押し寄せてきた。

何事かとびびるひまわりを
女の子達はグルッと輪になって囲ってにらみつける。
そして怒鳴りつけた。
「いったい太陽とどういう関係なの!?」
「まさか付き合ってるの!?放課後会うってどういうことなの!!」

ひまわりは突然の出来事に見舞われ、
心の中で「ひ~っ!?」と叫んだ。
どうやら女の子達は、
ひまわりと太陽が付き合っていると思っているようだ。

「い、いえっ!
 付き合ってなんかいません!!」
 全力で否定するひまわり。

だが、女の子達はまだ疑っているようで、
「じゃあ、どんな関係なのよ!!」
と聞いてくるが、まさかここで
『魔法相談所の開設・運営の手伝い』とは、
さすがに言えるはずがない。

なので、
「た・・・ただの・・・知り合いです・・・」
そう言うしかなかった。

すると女の子達は、ひまわりにバッと一枚の用紙をつきつけた。
それには『桐島太陽 ファンクラブ規則』と書いてある。

「太陽にはファンクラブがあって、抜け駆けは禁止だから!」
「変な気でも起こそうそしたら、絶対許さないからね!」
「近づきたかったら、ファンクラブに入りなさいよ!」

女の子達の猛烈な勢いに圧倒されて、
ひまわりは半泣きになりながらガクガク震えた。

『やっぱり占いの通り、予期せぬトラブルに見舞われました・・・』
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...