SUN×SUN!

楠こずえ

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第1話:ひまわりと太陽(その8)

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突然、大地の悪口を言い出した太陽に
ひまわりがびっくりしていると、
横からおばあさんが、
「大地と太陽は『いとこ』同士なんだが、
どちらも頑固でプライドが高くて、
『自分が一番正しい』と思っているからウマが合わないんじゃよ。
年も10歳ぐらい離れているから、
大地が太陽を完全に子ども扱いしているのを
太陽は気に入らないみたいでなあ・・・」
とため息をついた。

「特に太陽は一族の中でも魔力が弱いせいか、
大地に対してライバル心が強くて、
魔力以外の勉強、スポーツ、学校での生活態度は
大地に負けまいと『完ぺき』を子どもの頃から目指してきたんじゃ。
確かにその点はがんばってきたと私も思う」

話通り、太陽は
非の打ちどころがないぐらい
学校では優等生だ。

「しかし、そのせいか・・・」

「そのせいか?」

ひまわりが首をかしげる。

おばあさんはチラリと太陽を見て、
「学校ではかなり猫被った性格で
過ごしているようじゃな・・・。
素の太陽はこんな感じで、
負けず嫌いで、
自分中心に世界が回らないと嫌な性格なんじゃよ・・・」

その話を聞いて、ひまわりも「なるほど」と納得した。

学校ではいつも優等生だった太陽が、
実は裏の顔を持っていた理由はこれだったのか、と。

しかし、本当に知らなかった。

弱気でいつも自信のないひまわりにとって、
太陽は自信に満ちあふれていて
完ぺきで、
何の悩みも無いように見えていたのだが、
本当はそうではなかったのだ。

「雨夜家」という魔術師一族の中に生まれ、
一族の皆が持っている魔力を太陽だけが持っていないなんて・・・。

もしひまわりが同じ立場だとしたら、
絶対辛いし、引け目を感じてしまうに違いない。

「でも、太陽はあきらめてないんじゃよ」

「え?」

「絶対、魔力を強くして、
 将来的には何らかの形で家業に従事したいと言ってるんじゃ」

ひまわりは口には出さなかったが、心の中で、
『魔力が弱いのに、いったいどうやって・・・』
と思ってしまった。

と同時に、
太陽のあきらめない姿勢に、
『なんでそこまでがんばれるんだろう?』と。

絶対自分だったら、
勝ち目のないことには手を出さず、
さっさとあきらめてしまいそうだ。

おばあさんはお茶をズズズッとすすりながら、
「それでとりあえず
魔法で悩みを解決する相談所を運営させてみようかと。
といっても、全くの素人だから客からお金ももらわないし、
事情を説明して『それでもいい』と納得した人だけを対象にだが」

そこまで聞いて、ひまわりはふと疑問に思った。

「魔法相談所・・・ですよね?
でも桐島くんは、ほとんど魔法が使えないんですよね?
それって、ただの相談所なんじゃ・・・」

「だから、魔力を持っている良い助手を連れて来い、と
私が太陽に言ったんじゃよ」

おばあさんがそこまで話して、
ひまわりはやっと自分がここに連れてこられた意味が分かった。

「ま・・・まさか・・・
助手って私ですか!?」

改めてびっくりするひまわりに、
「おまえ以外に誰がいるんだよ」
と太陽がつっこんだ。

ひまわりは手を横に激しく振りながら叫んだ。

「無理無理無理!無理ですって!
私、魔力なんてないですから!」
と、必死に否定するが、太陽は、
「いや、おまえは魔法を使った!」
と言い張る。

「それは、桐島くんの見間違いです!」

「いや、絶対見間違いなんかじゃない!」

2人がギャーギャーと
無駄な言い合いしていると、
おばあさんが口をはさんできた。

「ひまわりちゃん。
力があるのに、おまえさんはまだ
自分の力に気づいてないよ」

その言葉を聞いて、
ひまわりは自分の祖母も同じことを言っていたことを思い出した。

『いいかい、ひまわり。
おまえには不思議な力がある。
ただ、今のおまえには勇気と自信が足りないせいで、
その力に気づかずにいる』

「あ・・・・」

戸惑ったような表情を浮かべるひまわりの手を、
おばあさんが微笑みながら取った。

「ひまわりちゃん、
もっと自分の力を高めてみたいと思わないかい?」

もし・・・本当に自分に不思議な力があって、
それを呼び起こしたなら、
いったいどんなことが起こるのであろうか?

良いことばかりでは無いかもしれない。
力を高めたことによって、
何か悪い災いが起こることもあるかもしれない。

ひまわりに不安が走る。

でも、ただ一つ分かることは・・・

力を高めれば、今より自信を持つことはできるのではないだろうか?

弱気で、いつも苦手なことから逃げている自分を
もっと大きく成長させることができるのではないだろうか?

しばらく黙っていたひまわりが、ポツリとしゃべりだした。

「高めて・・・みたいとは思いますが・・・」

「思いますが?」

ひまわりの表情は戸惑っている。

「でも・・私・・
桐島くんのお役に立てるか自信はなくて・・・」

果たして、本当に自分なんかが
相談所の助手を勤められるのであろうか?

魔力があると言われているけど、
そんな自覚、全く自分には無いし・・・

考えれば考えるほど、ひまわりの決心は揺らぐ。

「その・・・
せっかっくさそってもらったのに、
何もできなかったら・・と思うと・・・」

やっぱり後向きな姿勢のひまわりに、
イラッときた太陽が思いっきり「ダン!」と机を叩いた。

ビクッとしたひまわりが、太陽の方を見ると
こっちを思いっきりにらんでいる。

太陽は、ひまわりにツカツカと近づき、
まっすぐ目を見て言った。

「おまえな―、
まだ何もやってないのに、
最初から『できない』とか言うなよな!
せっかく力を持っているのに、
 『できない』って言って可能性をつぶすな!」

太陽のその言葉に、ハッとする。

そうだ、確かにいつもそうだ。

初めから「出来ない」「無理だ」と決めつけて、
いつも逃げて立ち向かうことを避けてきた。

そんな自分がいつも嫌いだった。

太陽はひまわりに手を差し伸べた。

「いいから黙っておれについてこい!」

不安は消えない。

でも、自分を変えたいならそのチャンスは「今」かもしれない。

ひまわりは差し伸べられた手をそっとつかんだ。

「魔力」は無いけど「自信」だけは満ち溢れている太陽と、
「自信」は無いけど「魔力」はあるらしいひまわり。

この2人の出会いが、どんな未来を作っていくのか、
物語の始まり、始まりです。
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