SUN×SUN!

楠こずえ

文字の大きさ
上 下
12 / 78

第2話:魔法相談所開設(その4)

しおりを挟む
太陽は紙人形をひまわりに差し出すと、
「おまえも試しにやってみろ。
ボーっと見てるだけで何もしてないじゃん」
と急に言ってきため、
ひまわりは「え!?」と飛び上がる。

「わ、私がですか!?」

「何驚いてんだよ!
おれより魔力持ってるんだから、何かできるだろ?」

急なムチャぶりを太陽が要求してきたため、
ひまわりはびっくりして固まってしまった。

自分に魔力があるなんて
一度も考えずに育ってきたひまわりゆえ、
急に魔法なんて使えるわけがない。

でも太陽の命令に従わなければ、
また怒られることだけは確かなので、
仕方なく鏡の前に向き合った。

ひまわりは見よう見まねで、
雨鏡の上に人形をソッと置いて、
鏡に向って力を込めてみる。

「雨夜家に伝わる雨鏡よ・・・
人形に魔力を吹き込み、我に仕わせよ・・・」

その瞬間、
今まで何の変化も起こらなかった鏡が
突然パアッと黄金色の光を放ち始めた。

「!」

ひまわりは
何が起こっているのかよく分かなかったが、
反応があったので、
そのまま力を込め続ける。

その横で太陽は、びっくりしすぎて声が出ない。

自分が何十分かけても動かせなかった人形を
一瞬で動かそうとしているひまわりに
ただただ驚くしかなかった。

魂を抜き取られたような状態の太陽に、
「桐島くん!」
とひまわりが声をかけたので、
ハッと我に返る。

ひまわりは鏡を指差しながら、
「人形が動き出してるんですけど、どうしたら・・・」
と言っている最中に、
紙人形がフワッと宙に浮かび始めた。

その様子をポカンとした表情で見ていた2人だったが、
状況を飲み込んだ太陽があわてて、
 「あ、あいつを追いかけろ!」
と叫んだ。

ひまわりも「はい!」と返事すると
紙人形を追いかけて2人は走り出した。

突然動き出した紙人形を追いかけていくと、
目の前に廃墟となった古い洋館の前に
いつの間にかたどり着いていた。

赤い屋根と白い壁が
童話に出てきそうな屋敷をイメージさせるが、
今はその面影もなく、
屋根はところどころ穴が開き、
瓦の隙間から草がぼうぼうに生えている。

窓はほとんどガラスが壊れ、
白い壁は今や汚れて灰色と化していた。

さらには、
家の周りをカラスが大量に飛び回っているため、
この廃墟を一層気味悪いものとしている。

紙人形は、まるで廃墟に引き寄せられたかのように
す~っと開いた窓から中に入っていってしまった。

その様子を見ていた2人は、
門のところで立ち止まり、
「桐島くん・・・ここに入っていきましたよ・・・」
「ああ・・廃墟だな」
とつぶやく。

ひまわりは太陽の顔を見ながら、
「でもなんで、こんな空き家にペンダントが・・・?」
と聞くと、
「それはこっちが聞きたいよ。
おまえが紙人形をここまで飛ばしたんだろ」
と太陽が逆に質問してきた。

その時だ。

「おやおや!
すごいじゃないか!」

振り返ると、おばあちゃんが2人を追いかけて
息切れしながら走ってきているではないか。

「ばーちゃん!?なんでここに!?」

「人形が飛んでいくのが見えたから
追いかけてきたんじゃよ!
ひまわりちゃんが飛ばしたのかい?」

そう聞かれてびっくりするひまわり。

「と・・・飛ばしたというか、
なんかよく分からないんですが、
念じたら
急に動き出して飛んだというか・・・」

はっきりいって、
なんで飛んだのかひまわり自身、
よく分かっていない。

何か特別なことをした記憶もないし、
気づいたら動いていたのだ。

それでも、
おばあちゃんは「うんうん」とうなずき、
「いや~、さすがじゃよ!
最初見たときから、
並々ならぬ魔力を持っていると思っていたけど、
やはりすごいよ、ひまわりちゃん!
これから鍛え甲斐がありそうだ!」
とひまわりの魔力を大絶賛した。

誉められることは喜ばしいことだが、
ひまわりとしては
特に何かがんばったわけでもなく
見よう見まねしたところ
たまたま動いただけのことだったので、
すっかり恐縮してしまっている。

「あ、でもおばあさん、
ここにペンダントがあるとは限らないですよ。
ただ単に風にあおられて、
ここに飛んできただけかもしれないので・・・」

と、ひまわりが否定的にモゴモゴと説明していると、
「あるんじゃねーの」
と横から太陽が割って入ってきた。

「え?」

ひまわりが振り返ると、
太陽は背を見せ、
「魔力が強いひまわりがやればいいじゃん。
おれなんかいなくてもさ」
とぶっきらぼうに言い捨てると
スタスタと来た道を帰っていっているではないか。

ひまわりとおばあちゃんは目が点になる。

「え!?
ちょ、ちょっと桐島くん!
どういうことなんですか!?
待ってください!」

ひまわりはあわてて叫んだが、
太陽はそのままどこかへ消え去ってしまった。

残されたひまわりは、
その場で立ち尽くすしかなかった。

『そ・・・そんな・・・
「ひまわりがやればいい」って
別に私はやりたかったわけじゃなくて、
桐島くんのプロジェクトに勝手に巻き込まれただけなのに・・・』

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...