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陶芸家
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絢梨が本家で祖母と叔母と話していたころ、『福幸堂』では奈子が1人で洗濯をしていた。そこへ午前中の仕事を終えた光が帰ってきた。
「あ!光さんお帰りなさーい」
「ただいま」
「光さん、お昼ご飯食べました?」
「まだだけど・・・」
「そうめん食べます?」
「え?うーん。食べます」
「じゃあちょっと待っててくださいね。すぐ降りて茹でますから!」
「・・・あ!私茹でようか!」
この光の一言に奈子の動きが止まる。
「・・・光さんもそんなこと言うんですか。そうめんくらい茹でれます!!」
あ・・・失礼しました・・・と光は引き下がり、食器などを出すことにする。
5分後、そうめんは奇跡的に上手く茹で上がった。
「ね。そうめんくらい茹でれるって言ったでしょ」
奈子は得意げに言う。
「そうだね。失礼しました」
2人が仲良くそうめんを食べていると、玄関の曇りガラスに何やら人影が見える。
「ん。玄関の外、誰かいますよね」
「そう・・・だね。あれは人だね」
「え?!人じゃなかったら逆に怖いですよ。私、ちょっと見てきます」
奈子はそう言って玄関に向かいドアを開ける。
「すいません。ここ、私有地なんですけど、何か御用ですか?」
突然声をかけられて驚いたその男は、バランスを崩して倒れこむ。
「ちょっ!!大丈夫ですか?」
「あはは。すみません。あの・・・。ここってなんかお店じゃないんですか?」
「え?ああ・・・。一応ここは住宅なんですよね。まあ、普段はお弁当販売をしたりはありますけど・・・」
そう奈子が答えると、男は必死の形相で食いついてきた。
「え?!売ってるんですか?いや実は、今日初めてここへ来て、まさかこんなに何もないところとは思わなくて・・・・あ、すみません。失礼なこと言いましたね」
「いや・・・、別に良いんですけど、すみません、水曜は定休日なので今日は無いです」
「え・・・・」
男はまるでこの世の終わりかのような絶望の表情を見せる。その表情を見て奈子は流石に申し訳なくなるがどうしようもない。奥で話を聞いていた光が助け船を出しに来てくれる。
「そこの坂降りて、5分くらいはかかるけどコンビニらしきお店はあるよ」
「ほんとですか!ありがとうございます」
その男の表情は途端に晴れて今にも走り出しそうである。奈子は、ずいぶん大げさで変な人だなーっと思った。そしてそれは顔に出ていたらしく、その男は走り出すのを止めて自己紹介を始めた。
「あ・・。なんか突然来てすみません。ぼく、香坂樹生と言います。実は今日は下見に来てて」
「下見?」
「ええ。あの、ここの隣に新しくお店をオープンすることになったので・・・」
「え?!あ、もしかしてあの新しい建物ですか?」
「そうです!そこで陶芸工房兼教室を開くことになって・・・。お隣さんになるので、皆さんにはいろいろとご迷惑をおかけするかもしれませんがよろしくお願いします。」
香坂樹生と名乗った男はそう言い残して、坂の下の商店へ向かっていった。一応自分たちは住人と従業員でオーナーは今日は居ないのでまた後日挨拶をお願いしますと伝えておいた。
「・・・変な人だね・・・でも・・・」
2人は顔を見合わせてこう言った。
「イケメンじゃない?!」
「あ!光さんお帰りなさーい」
「ただいま」
「光さん、お昼ご飯食べました?」
「まだだけど・・・」
「そうめん食べます?」
「え?うーん。食べます」
「じゃあちょっと待っててくださいね。すぐ降りて茹でますから!」
「・・・あ!私茹でようか!」
この光の一言に奈子の動きが止まる。
「・・・光さんもそんなこと言うんですか。そうめんくらい茹でれます!!」
あ・・・失礼しました・・・と光は引き下がり、食器などを出すことにする。
5分後、そうめんは奇跡的に上手く茹で上がった。
「ね。そうめんくらい茹でれるって言ったでしょ」
奈子は得意げに言う。
「そうだね。失礼しました」
2人が仲良くそうめんを食べていると、玄関の曇りガラスに何やら人影が見える。
「ん。玄関の外、誰かいますよね」
「そう・・・だね。あれは人だね」
「え?!人じゃなかったら逆に怖いですよ。私、ちょっと見てきます」
奈子はそう言って玄関に向かいドアを開ける。
「すいません。ここ、私有地なんですけど、何か御用ですか?」
突然声をかけられて驚いたその男は、バランスを崩して倒れこむ。
「ちょっ!!大丈夫ですか?」
「あはは。すみません。あの・・・。ここってなんかお店じゃないんですか?」
「え?ああ・・・。一応ここは住宅なんですよね。まあ、普段はお弁当販売をしたりはありますけど・・・」
そう奈子が答えると、男は必死の形相で食いついてきた。
「え?!売ってるんですか?いや実は、今日初めてここへ来て、まさかこんなに何もないところとは思わなくて・・・・あ、すみません。失礼なこと言いましたね」
「いや・・・、別に良いんですけど、すみません、水曜は定休日なので今日は無いです」
「え・・・・」
男はまるでこの世の終わりかのような絶望の表情を見せる。その表情を見て奈子は流石に申し訳なくなるがどうしようもない。奥で話を聞いていた光が助け船を出しに来てくれる。
「そこの坂降りて、5分くらいはかかるけどコンビニらしきお店はあるよ」
「ほんとですか!ありがとうございます」
その男の表情は途端に晴れて今にも走り出しそうである。奈子は、ずいぶん大げさで変な人だなーっと思った。そしてそれは顔に出ていたらしく、その男は走り出すのを止めて自己紹介を始めた。
「あ・・。なんか突然来てすみません。ぼく、香坂樹生と言います。実は今日は下見に来てて」
「下見?」
「ええ。あの、ここの隣に新しくお店をオープンすることになったので・・・」
「え?!あ、もしかしてあの新しい建物ですか?」
「そうです!そこで陶芸工房兼教室を開くことになって・・・。お隣さんになるので、皆さんにはいろいろとご迷惑をおかけするかもしれませんがよろしくお願いします。」
香坂樹生と名乗った男はそう言い残して、坂の下の商店へ向かっていった。一応自分たちは住人と従業員でオーナーは今日は居ないのでまた後日挨拶をお願いしますと伝えておいた。
「・・・変な人だね・・・でも・・・」
2人は顔を見合わせてこう言った。
「イケメンじゃない?!」
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