2 / 7
反抗期の思い出
しおりを挟む
例えば...
俺がわざと30分遅れて帰ってきた時、両親は「心配したのよ?」「無事なら良い」
と言っていたが弟達は顔を曇らせて、俺の手を掴むと「ちょっと話がある」
と言い嵐の部屋まで引きずられた。
「なっ何だよ!?」
俺がさすがにびっくりしたように言うと
「何なのじゃないでしょ?今何時だと思ってるの?」
と健二が優しく問いただす。
「...まだ明るかったから時間感覚、ズレちゃったんだよ」
俺は冷や汗を誤魔化すようにそっぽを向いて言い訳した。
「まぁ、夏だからな...でもそれで許されると思ってるのか?」
嵐の言葉に俺は肩をビクッと震わせた。
「うっ...だっだいたい俺が何時に帰ってこようとお前らに関係ねぇだろ?」
俺の反論に3人の神経がプツッと切れる音がした。
「...兄貴...いつからそんな聞き分けないこと言うようになったんだ?」
嵐は無表情で俺に問いかける。
俺は嵐のその冷めた目と声にゾッとした。
こいつらは3つ子なだけあって、怒り方が似ている。
その証拠に健二と翔斗はまさに今、嵐と同じ表情をしている。
顔も性格も全然似てないというのに、ふとした時に同じ顔をする。
「兄さん...今のは聞き流してあげる...けど、言うことあるよね?」
健二の表情は笑っていたが、目が全く笑ってなくて、これ以上怒らせてはいけないと本能が警告を出していた。
「なっ何だよ...言うことって...?」
俺は震える足に無理やり力を入れて、挑発するように言う。
「わからない?...「心配かけてごめんなさい」でしょ?」
健二の促しに俺はどうしてもプライドが勝って
「だから!わざとじゃないって言ってるだろ!?」
と言い返してしまう。
「るぅ兄...反抗期もいい加減にして。家でなら何しても良いけど、門限破るのは絶対にダメ」
翔斗の静かな言葉に俺は更に頭に血が上り、大きく舌打ちをした。
「弟のくせに偉そうに言ってんじゃねぇよ!俺が何時に帰ってこようと勝手だろ!?ほっとけよ!!」
俺の怒鳴り声が嵐の部屋中に響いた。
それを聞いた嵐は右手を思いっきりドアに叩きつけた。
世間で言う"壁ドン"と言うやつだ。
俺はそれをされ、腰が抜けそうになったが、そこは意地でも耐えた。
「いい加減にしろよ...兄貴にとってはたかだか30分でも俺らは心配で心配で長い30分だったんだよ!どんだけ父さんや母さんや俺らが心配したと思ってんだ!?」
嵐の怒鳴り声が俺の耳に、頭に響いた。
頭では心配かけたことがわかってた...だが、反抗期中の中学生男子が弟に叱られて素直になれるはずがない。
だが、それすらも間違いだと、素直に謝らきゃいけないと嵐の泣き出しそうな表情でわかった。
「...兄さん、僕らの目が届く範囲でなら、何しても良いけど、目の届かない所で何かあったら心配なんだ...わかってくれる?」
健二は嵐の怒鳴り声で逆に正気に戻り、諭すように言う。
俺は頷く他なかった。
「...ごめん...心配、してくれたんだよな...」
俺は俯きながらポツリポツリと言う。
するとさっきまでビリビリしていた空気がなくなり、一気にふわりとした開放感のある空気に変わった。
「わかってくれたなら、もういいよ!」
健二はそう言い、今度はニッコリと嬉しそうに笑った。
「俺も大声出して悪かった...もう門限は破らないでくれよ」
嵐もそう言い、そっと俺から離れた。
「ってか、1人で下校させるのが良くないと思う」
翔斗の言葉に俺は
「1人じゃない...友達と一緒にいた」
と言い訳じみたことを言うと3人の雰囲気がまたピリついた。
「友達?...どの友達?名前は?」
健二の問に俺は
「は?...司だよ。前、うちに来たことあるだろ?」
と聞くと3人の表情が更に険しいものになった。
俺はそれを不思議に思ったが、間違いなく、自分へ向けられたものではないと本能的に理解し、ひとまず安心した。
「でもね、兄さんは可愛いんだから、1人行動はさせたくないんだよ!だから僕達と一緒に下校しよう?」
この頃から登校は一緒だったが下校はバラバラだった。
皆それぞれ部活に入っていたし予定もあったからだ。
嵐はサッカー部(他のスポーツ部にも助っ人で行く)、健二は弓道部、翔斗は科学部とコンピュータ部の掛け持ち。
俺は帰宅部で友達とゲーセンに行ったり、カラオケに行ったりと自由にしている。
それに対して、こいつらはうるさく色々言ってくる。俺が中1で3人が小6の時、こいつらは校門の前で待ち伏せをして、しぶしぶ一緒に帰っていたが3人が中学に上がってからはそういう訳にもいかなくなったのだ。
「...俺は部活に入るつもりはない...興味がないからな。でも大丈夫、もう門限は破らないから」
俺はそう言うのが精一杯だった。
3人は顔を見合わせて、ため息をついたが、諦めたのか、そのまま、嵐に抱きしめられた。
「はぁ...危なっかしいんだよ...」
嵐の言葉の意味がわからず「何が?」と聞き返すと嵐の腕の力が強くなった。
「...何でもない。門限守れよ」
嵐がそう言いながら抱きしめた腕を緩めずにいると
「いつまで独り占めする気?」
と言い健二が俺を引っ張って嵐から離すと嵐よりも優しかったが強く抱きしめられた。
「兄さん...もう二度とこんなことしないでね。次やったらお仕置きするからね?」
健二の言葉に俺は恐怖で何度も頷くとまたニコッと笑って
「じゃあ沢山いい子いい子しようね」
と言い俺の頭を撫でた。
それを見た嵐は何か言いたげに口をパクパクさせたが言葉として発せられることはなかった。
健二はいつも俺に可愛い可愛いって言ってくるが俺は別にモテる訳でもないし、対してスタイルがいい訳でもない。
勉強だって中の上くらいだし、スポーツは壊滅的だ。
だから、とてもこの3人とは違いすぎて、自分が恥ずかしくなる。
周りの子にも同じような理由でやっかまれ、最近は少しいじめられるようになった。
机に鉛筆で落書きやクラスメイトからの一斉無視、唯一話せる友達も2、3人しかいない。
そんなことを考えてるとまた腕を引かれた。
「健兄、次僕の番」
そう言い俺を引っ張った翔斗は優しく俺を抱きしめて、耳元で
「後で部屋に来て」
と囁かれた。
俺が頷くと翔斗はほっとしたのような表情をして俺に子供のように抱きついた。
嵐と健二はそれを怪訝そうな表情で見つめていた。
俺がわざと30分遅れて帰ってきた時、両親は「心配したのよ?」「無事なら良い」
と言っていたが弟達は顔を曇らせて、俺の手を掴むと「ちょっと話がある」
と言い嵐の部屋まで引きずられた。
「なっ何だよ!?」
俺がさすがにびっくりしたように言うと
「何なのじゃないでしょ?今何時だと思ってるの?」
と健二が優しく問いただす。
「...まだ明るかったから時間感覚、ズレちゃったんだよ」
俺は冷や汗を誤魔化すようにそっぽを向いて言い訳した。
「まぁ、夏だからな...でもそれで許されると思ってるのか?」
嵐の言葉に俺は肩をビクッと震わせた。
「うっ...だっだいたい俺が何時に帰ってこようとお前らに関係ねぇだろ?」
俺の反論に3人の神経がプツッと切れる音がした。
「...兄貴...いつからそんな聞き分けないこと言うようになったんだ?」
嵐は無表情で俺に問いかける。
俺は嵐のその冷めた目と声にゾッとした。
こいつらは3つ子なだけあって、怒り方が似ている。
その証拠に健二と翔斗はまさに今、嵐と同じ表情をしている。
顔も性格も全然似てないというのに、ふとした時に同じ顔をする。
「兄さん...今のは聞き流してあげる...けど、言うことあるよね?」
健二の表情は笑っていたが、目が全く笑ってなくて、これ以上怒らせてはいけないと本能が警告を出していた。
「なっ何だよ...言うことって...?」
俺は震える足に無理やり力を入れて、挑発するように言う。
「わからない?...「心配かけてごめんなさい」でしょ?」
健二の促しに俺はどうしてもプライドが勝って
「だから!わざとじゃないって言ってるだろ!?」
と言い返してしまう。
「るぅ兄...反抗期もいい加減にして。家でなら何しても良いけど、門限破るのは絶対にダメ」
翔斗の静かな言葉に俺は更に頭に血が上り、大きく舌打ちをした。
「弟のくせに偉そうに言ってんじゃねぇよ!俺が何時に帰ってこようと勝手だろ!?ほっとけよ!!」
俺の怒鳴り声が嵐の部屋中に響いた。
それを聞いた嵐は右手を思いっきりドアに叩きつけた。
世間で言う"壁ドン"と言うやつだ。
俺はそれをされ、腰が抜けそうになったが、そこは意地でも耐えた。
「いい加減にしろよ...兄貴にとってはたかだか30分でも俺らは心配で心配で長い30分だったんだよ!どんだけ父さんや母さんや俺らが心配したと思ってんだ!?」
嵐の怒鳴り声が俺の耳に、頭に響いた。
頭では心配かけたことがわかってた...だが、反抗期中の中学生男子が弟に叱られて素直になれるはずがない。
だが、それすらも間違いだと、素直に謝らきゃいけないと嵐の泣き出しそうな表情でわかった。
「...兄さん、僕らの目が届く範囲でなら、何しても良いけど、目の届かない所で何かあったら心配なんだ...わかってくれる?」
健二は嵐の怒鳴り声で逆に正気に戻り、諭すように言う。
俺は頷く他なかった。
「...ごめん...心配、してくれたんだよな...」
俺は俯きながらポツリポツリと言う。
するとさっきまでビリビリしていた空気がなくなり、一気にふわりとした開放感のある空気に変わった。
「わかってくれたなら、もういいよ!」
健二はそう言い、今度はニッコリと嬉しそうに笑った。
「俺も大声出して悪かった...もう門限は破らないでくれよ」
嵐もそう言い、そっと俺から離れた。
「ってか、1人で下校させるのが良くないと思う」
翔斗の言葉に俺は
「1人じゃない...友達と一緒にいた」
と言い訳じみたことを言うと3人の雰囲気がまたピリついた。
「友達?...どの友達?名前は?」
健二の問に俺は
「は?...司だよ。前、うちに来たことあるだろ?」
と聞くと3人の表情が更に険しいものになった。
俺はそれを不思議に思ったが、間違いなく、自分へ向けられたものではないと本能的に理解し、ひとまず安心した。
「でもね、兄さんは可愛いんだから、1人行動はさせたくないんだよ!だから僕達と一緒に下校しよう?」
この頃から登校は一緒だったが下校はバラバラだった。
皆それぞれ部活に入っていたし予定もあったからだ。
嵐はサッカー部(他のスポーツ部にも助っ人で行く)、健二は弓道部、翔斗は科学部とコンピュータ部の掛け持ち。
俺は帰宅部で友達とゲーセンに行ったり、カラオケに行ったりと自由にしている。
それに対して、こいつらはうるさく色々言ってくる。俺が中1で3人が小6の時、こいつらは校門の前で待ち伏せをして、しぶしぶ一緒に帰っていたが3人が中学に上がってからはそういう訳にもいかなくなったのだ。
「...俺は部活に入るつもりはない...興味がないからな。でも大丈夫、もう門限は破らないから」
俺はそう言うのが精一杯だった。
3人は顔を見合わせて、ため息をついたが、諦めたのか、そのまま、嵐に抱きしめられた。
「はぁ...危なっかしいんだよ...」
嵐の言葉の意味がわからず「何が?」と聞き返すと嵐の腕の力が強くなった。
「...何でもない。門限守れよ」
嵐がそう言いながら抱きしめた腕を緩めずにいると
「いつまで独り占めする気?」
と言い健二が俺を引っ張って嵐から離すと嵐よりも優しかったが強く抱きしめられた。
「兄さん...もう二度とこんなことしないでね。次やったらお仕置きするからね?」
健二の言葉に俺は恐怖で何度も頷くとまたニコッと笑って
「じゃあ沢山いい子いい子しようね」
と言い俺の頭を撫でた。
それを見た嵐は何か言いたげに口をパクパクさせたが言葉として発せられることはなかった。
健二はいつも俺に可愛い可愛いって言ってくるが俺は別にモテる訳でもないし、対してスタイルがいい訳でもない。
勉強だって中の上くらいだし、スポーツは壊滅的だ。
だから、とてもこの3人とは違いすぎて、自分が恥ずかしくなる。
周りの子にも同じような理由でやっかまれ、最近は少しいじめられるようになった。
机に鉛筆で落書きやクラスメイトからの一斉無視、唯一話せる友達も2、3人しかいない。
そんなことを考えてるとまた腕を引かれた。
「健兄、次僕の番」
そう言い俺を引っ張った翔斗は優しく俺を抱きしめて、耳元で
「後で部屋に来て」
と囁かれた。
俺が頷くと翔斗はほっとしたのような表情をして俺に子供のように抱きついた。
嵐と健二はそれを怪訝そうな表情で見つめていた。
35
お気に入りに追加
387
あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!
彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。
何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!?
俺どうなっちゃうの~~ッ?!
イケメンヤンキー×平凡

お前ら、、頼むから正気に戻れや!!
彩ノ華
BL
母の再婚で俺に弟が出来た。義理の弟だ。
小さい頃の俺はとにかく弟をイジメまくった。
高校生になり奴とも同じ学校に通うことになった
(わざわざ偏差値の低い学校にしたのに…)
優秀で真面目な子と周りは思っているようだが…上辺だけのアイツの笑顔が俺は気に食わなかった。
俺よりも葵を大事にする母に腹を立て…家出をする途中、トラックに惹かれてしまい命を落とす。
しかし目を覚ますと小さい頃の俺に戻っていた。
これは義弟と仲良くやり直せるチャンスなのでは、、!?
ツンデレな兄が義弟に優しく接するにつれて義弟にはもちろん愛され、周りの人達からも愛されるお話。

転生先がBLの世界とか…俺、聞いてないんですけどぉ〜?
彩ノ華
BL
何も知らないままBLの世界へと転生させられた主人公…。
彼の言動によって知らないうちに皆の好感度を爆上げしていってしまう…。
主人公総受けの話です!((ちなみに無自覚…

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。


どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。
彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。
だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。
どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる