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校則順守少女と臨機応変少年
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オレは生徒手帳なるものを読んだことがない。たぶん、そこには詳しい校則だとか規則だとかが書いてあるんだろうが、そんなものを一から十まで読んでも覚えられるわけないし、読まなかったとしても学校生活で気を付けるべきことはだいたいわかる。
常識の範囲内で他人に迷惑をかけないようにすること。これがわかっていればそんなに怒られることはない。
だから、オレたちは常識の範囲ギリギリまで学校できるお洒落をしたり、他人に迷惑をかけない範囲で菓子を持ち込んだりしている。そういう工夫をすることも学校に行く中で楽しいことだと、オレやこのクラスの多くの奴はそう思っている。
「夏川君! 胸のボタンは一番上以外とめなさい!」
ただ一人……相守を除いては。
高校に入って風紀委員が存在していることには結構驚いたが、1年生の時は別に気にすることもなかった。
でも、2年生の今のクラスになった時、相守が風紀委員になってからそうもいかなくなる。相守はまるでドラマやマンガから出てきたんじゃないかって思うほど風紀委員らしいことを言って、風紀委員らしくクラスの奴らに注意をしていく。
もちろん、相守は生徒手帳を読んでいないオレでもわかるくらい模範的な見た目と恰好だ。クラスで一番長くスカートを履いて、髪は長すぎず短すぎない清潔感を出す切り揃え方。更にはテキパキとした動作まで含めて風紀委員っぽく見える。
「また始まった。風紀委員長のお説教」
そんな相守は今のクラスでは風紀委員長と呼ばれている。けど、相守は本当に風紀委員で委員長を務めているわけじゃない。そのあまりにも厳しく毎日のように目を光らせる様にオレたちが親しみと……ちょっと皮肉を込めてそう呼んでいた。
「ナッキー、今日も言われてやんの」
「俺もさっき靴下がどーだとか言われたわ。フツーそんなとこまで見るか?」
「アタシもさっき化粧注意されてさー」
今日も相守の行動はクラスの中の話題になる。いわゆる悪目立ちってやつだ。
「風紀委員長、化粧してない系?」
「黙ってればけっこー可愛い顔してんだけどなぁ。それに付ける化粧が怒る顔じゃあ……」
「何? アンタ、風紀委員長のことそういう感じで見てたの?」
オレが相守に指摘されてから集まり到着しなくともこいつらの声は教室内に響き渡っていた。
「お前ら、それくらにしとけよ」
「おっ、ナッキーも実は隠れ風紀委員長ファン?」
「そういうのじゃねぇよ。まぁ、悪るいのはオレだからしょうがないって話だ」
「そんなこと言いながらもう外してんじゃん」
「別にいいだろ? お前らが嫌なら一番上までとめてやるけど」
「まさかー 風紀委員長でも言わない~」
その声の大きさについて度が過ぎないように気を付けつつもオレたちは平和な日々を送っていた。いや、送っているつもりだった。
それは別の日にオレがたまたま忘れ物をしたことを家に帰ってから気付いて、学校が閉まりそうになる時間に教室に戻った時に起こった。というか、目撃した。
「ぐすっ……………えっ!?」
教室の自分の席で大粒の涙を流す相守の姿を。オレはもう誰もいないと思って勢いよくドアを開けて教室に入ってしまったから絶対に誤魔化せない。
「あ、あー……えーっと……」
「何やってるの……すんっ……もうすぐ完全下校時刻よ」
「こんな時までお説教かよ! つーか、まだ時間あるなら別にいいだろ」
「何で……今……」
「忘れ物取りに来たんだ。それより――」
「だったら早く取って帰って」
何か聞く前に相守はオレを突き放す。つまりは余計な気は遣うなってことだ。運悪く見てしまったことは申し訳ないが、わざわざ教室で泣いている相守にも問題がある。そう思いながらオレは忘れ物を回収すると、何も言わずに教室を後にした。
「…………何? また忘れ物」
「ちげーよ。ほら、どっちか選べ」
「早く帰れと言ったはずだけど」
「受け取って落ち着いたの見たら帰るさ。なに、オレの自己満でやってるから詳しい話とかは聞かねぇよ」
数分後。自販機へ行ってから教室に戻って来たオレは相守に飲み物を差し出す。相守的には帰る方が正解だったのかもしれないが、さすがにあれだけ泣いている姿を見て、関係ないとそのまま帰れるはずがない。
「……じゃあ、こっちを頂くわ」
「えっ、そっち……」
「何?」
「な、なんでもない」
オレが買って来た飲み物はブラックコーヒーとピーチジュースだったが、相守はピーチジュースの方を取る。イメージ的には絶対ブラックコーヒーだと思っていたから驚いてしまった。オレは缶を適当に振りながら相守の様子を窺う。
「…………」
「結構、美味しいだろ? 高校の自販機って意外と他じゃ見ない飲み物売ってるから買ってみると面白いぜ」
「まるで私が学校の自販機を利用したことがないような言い草ね」
「す、すまん。オレらは結構入り浸ってるけど、風紀委員長が買いに行ったとこ見た事なかったから……」
「……謝らないで。当たってるから」
少しだけ良くなったと思った相守の表情がまた曇ってしまった。何をやっているんだと反省しつつ、別の話題を探すが……思い付かない。現状の相守に触れないようにして適当な話を振れるほど、オレは相守のことをよく知らなかった。
それからジュースを飲む音だけが暫く聞こえて幾分が過ぎた頃、次に口を開いたのは相守の方だった。
「泣いてた理由、本当に聞かないの?」
「な、泣いてた? そ、そんなのオレは見てないが?」
「……下手くそ」
「ひでぇな!? そりゃあ、聞いていいなら聞くけど……本当にオレが聞いていいのか?」
「そのつもりで残ったんじゃないの?」
「ま、まぁ。でも、別に無理して言わせるつもりはねぇよ。その調子ならもう帰ってもいい感じだな」
相守は確かにクラスで顔見知りだが、よく知らないオレが聞いてどうにかなるのかとその時は思い始めていた。だけど、オレがそう言うと相守は何だか寂しそうな表情をする。普段は怒っているか厳しい顔で見られるかのどちらかだったが、こうして見ると相守の表情は結構わかりやすい。
「やっぱ聞かせて貰うわ。何があったんだ?」
「……悔し泣きしてた」
「く、悔し泣き? えっと……失恋でもした?」
「ば、馬鹿じゃないの!? どうしてそうなるのよ!?」
「だって、悔し泣きっていうのはなんか負けたりしたってことだろ? 風紀委員長が勉強や運動で悔しいなんてなるわけ……」
「……私、運動神経は全然ないし、成績はそこそこだけど?」
ちょっと拗ねた感じで相守は言う。オレはまたしてもイメージで話してしまった。
「すまん。じゃあ、何の悔し泣きなんだ?」
「それは……みんなが校則を守ってくれないから」
「はぁ!? そ、それで?」
「それでって、重要なことでしょう。夏川君もだけど、みんな何回行っても服装は治らないし、持ち込みは増えるしで、一向に良くならない」
「で、でも、そうだとして何もそのことで風紀委員長があんなに泣くことは……」
「どうして? 私は……夏川君たちの言うように委員長ではないけど、風紀委員ではあるわ。それなのに改善してないのは……私のせいになるじゃない」
相守が失恋という指摘に驚いていたからもっと普通の悩みかと思っていたが、それはオレの想像を越えた悩みだった。たかが学校の委員会の役割が果たせなかっただけでそんなに悔しがることなんて……
「……私、当たり前のことだけど、小さい頃から両親に規則をきちんと守るように教えられてきた。学校にだってルールはあるし、私はそれを守ることが正しいと思ってる。だから、みんなにも当たり前のことを守って欲しい。そう思っているけど……私はみんなに嫌われているから聞いて貰えない」
「ふ……相守、そんなことは……」
「ううん。わかっているわ。だけど、これで厳しく言うのを辞めたら、困ってしまうのはみんなの方。不誠実な格好は校外での評判を下げる可能性があって、それで今後の受験や就職に響くことだってある。それに加えて変に目を付けられたら外に出た時に危険なことに巻き込まれる可能性だって……そういう危険性から身を護るのが本当の意味での校則なの」
「相守……」
「それでも、そう思っているのが私だけなら……私が間違ってるのかな……」
相守は弱々しく言いながらまた涙を浮かべる。そんな姿を見て、オレは大きな間違いに気付く。
常識の範囲内で他人に迷惑をかけないようにすること。オレたちはそれを守れているつもりでいたが、勝手にそう思っていたルールすら守れていなかった。本来なら正しいはずの相守が間違っているように思わせるほど、身勝手なことをしていた。
そして、相守はオレが思っていた以上に純粋で、真面目で、真っすぐなやつだ。相守は校則を守っていないオレたちを嫌ったり、馬鹿にしたりするわけではなく、校則を守らないことで不利益になるかもしれないことを心配している。それで感じなくてもいい不甲斐なさで泣かせてしまっている。
「相守…………ごめん!」
オレはその場で勢いよく頭を下げて謝る。
「ど、どうしたの急に……」
「オレ……いつも相守の言うこと聞き流して、悪いってわかっていながら着崩しとか、持ち込みとかずっとしてた。相守のことなんか全然考えずに……」
「そ、そうだけど、別に夏川君だけを責めているわけじゃないわ。それに結局は私の人望がないから……」
「そんなこと言わせてんのもオレたちのせいだ。勝手に相守のことを決め付けて、たぶん傷付けるようなことも言って……だから、本当にごめん!」
普段から相守のことをフォローしているつもりだった自分が恥ずかしい。その気持ちも重なって俺は頭を上げらなくなった。今どんな顔で相守を見ればいいかわからない。
そんなオレが謝ったまま、相守は少し間を空けてからオレに声をかける。
「……夏川君。頭を上げて」
「あ、相も――」
「ふふっ! なに、今にも泣きそうな変な顔!」
「は、はぁ!? 何ふざけて……」
そう文句を言いかけたけど、相守は泣きながら笑っていた。その瞬間、相守から感じる空気が少しだけ変わっているようにオレは思った。
「そこまで謝られたら許すしかないわ。それと……勝手に決め付けていたのは私も同じ。夏川君がこんな人だと思ってなかった」
「ど、どんな人だと思ってたんだ」
「イキり不良少年」
「……相守、結構口悪いな」
「そう? 私の普段の物言いと変わらないと思うけど。でも、今ので夏川君の印象変わった。思ったよりも撃たれ弱くて……」
「やっぱり口悪いじゃねぇか!?」
「……ちゃんと話せば話せる人だって」
相守がほほ笑む顔を……オレは今まで見たことなかった。いつも怒らせているのはオレたちの方だけど、相守も本当ならそんな顔で笑える。それを常に実現するためにはどうしたらいいか。
オレはここまで話しながら少しずつ考えていたことを口にする。
「……相守、これからはオレもちゃんと校則は守るよ。だが、……相守も現状をちょっとだけ変えてみないか?」
「か、変えるって、私に校則を破れと……?」
「そうじゃねぇ。何つーか、クラスの連中への話し方だ。相守は厳しくしないといけないと思ってるみたいだが、厳しく言われると逆に従いたくなくなるもんだろ?」
「そんなことはないと思うけど?」
表情を変えず相守はマジにそう言っていた。それは……オレにはない考え方なんだろうが、そこを変えることで相守の現状の悩みはちょっとはマシになるかもしれない。
「お、オレみたいなタイプはそう思うんだよ。だから、もう少しだけ柔らかくっていうか、優しくっていうか、そういう感じで注意してみないか?」
「そ、それだけで何か変わるとは思えないけど……」
「それはまぁそうだろうな。だから、それに加えてさっき言ってたような校則の重要性もついで伝えてみるとかさ。生徒手帳とかに書いてあってもオレみたいなタイプは読まないし――」
「始業式の日に一通り目を通してと言われなかった……?」
「はい、オレが悪いです! そんな悪いやつもいるから面倒かもしれないが、優しく伝えてやってくれると助かるし、きっと聞く耳を持つやつも増えるぜ?」
オレはとりあえず考えていたことを全部伝えてみたが、今までのイメージしていた相守だとこの意見は受け入れられなかったと思う。だが、そのイメージが少しずつ変わった今の相守なら……
「……やってみる。クラスで影響力のある夏川君が言うなら、たぶん当たっているんだろうし……」
「お、おお! サンキュー、相守!」
「べ、別にお礼を言われることじゃないわ。それにしても急に協力的になるなんて……」
「いや、今までのオレが非協力的過ぎたんだ。これからは相守のためにオレも色々やるよ」
「……まだ感謝はしないわ。明日には夏川君も元に戻っているかもしれないし」
さすがに今日だけですぐに受け入れられるとオレも思っていない。何ならオレだって、全然違う雰囲気を感じる相守を完全に飲み込めていないのだから相守は尚更だろう。
「こんなに話すつもりはなかったのに、全部話しちゃった……って、ああ!? 下校時刻!」
「あっ……まだギリギリ大丈夫だろ」
「5分前行動が基本なの! 早く出ましょう!」
そんな一幕があったこの日以降、相守の校則に関する注意は少しずつ変わり始める。
「そのスカートの短過ぎ……少し短いから今すぐ……この次の休み時間までに直してくれないかしら? あまりに短いとあなたの身に危険が……あっ、この話はそんなに時間は取らないから!」
もちろん、相守も最初から上手くできたわけじゃないし、聞く側のクラスメイトも突然の変化には戸惑っていた。だけど、オレが出した案や相守自身も考えた喋り方を交えて、風紀委員としての注意は以前と違う空気になっていく。
一方、オレはというと……
「ナッキー、そんなビシッとしてどうした急に?」
「い、いや、わざわざ怒られるのも面倒だから、身なりくらいは最初から整えておこうと思ってな」
「どういう心境の変化……?」
相守が言っていたように誤魔化し方が下手くそだった。だが、オレが本来守るべき校則通りの恰好をすることで、男子の間ではそれなりの広告効果はあった。みんな着崩した格好をしているのは周りに合わせている部分もあったようで、その理由がなくなると案外きっちりするやつもいたのだ。
そして、結果としてクラスメイト全員が校則通り……とはならなかったが、勝手に作られた常識の範囲内から校則の範囲内という正しい形に近づく奴が増えてきた。
でも、それはオレからすればあくまでオマケの部分だ。
「風紀委員長、最近は話しやすくなったよねー」
「なんていうか……柔らかくなった感じ?」
「あたしもこの前相守さんとちょっとだけ話したけど、化粧のことで色々……」
一番良くなったのは相守に対するクラスメイトの心証だ。相守は嫌がらせでお説教をする奴ではなく、クラスメイトのためを思って行動している奴と最近の言動から感じ取れるようになったらしい。それが相守の注意を聞いてもいいというきっかけにもなっていった。
相守が望んだところではないかもしれないけど、あれだけ自分以外の心配ができる部分を勘違いされたままでいるなんてオレは間違っていると思う。だから、オレにとってはそこが一番大きな変化だ。
こうして、風紀委員の相守は以前よりもクラスメイトから信頼される存在になったとさ。めでたしめでた……
「夏川君! ちょっと!」
……しとは言い切れない。ここ最近はビシッと校則順守しているはずのオレだったが、何故か以前よりも相守に目を付けられることが多くなった。
「な、なんだよ、風紀委員長。別に今日もおかしなところはないと思うが」
「……そのようね。でも、夏川君は油断ならないから」
「はぁ!? 今や男子の中でオレほど模範的な生徒はいないくらいだぜ!?」
「……それでも油断ならないの!」
なんていうやり取りを毎日繰り返すようになってしまった。こんなことをされると、イキり不良少年時代に戻ってしまいかねない。
「ったく、柔らかい雰囲気で接するの女子限定なのか……?」
「……話しかけるのにもきっかけがいるんだから」
「えっ? なんて言った?」
「何でもないわ! それより、私は本来風紀委員長じゃないし、ちゃんとした名前があるから……」
「ああ、悪い。どうにもそっちの方で口が慣れててな。今度からちゃんと呼ぶよ、相守」
「う、うん。夏川君…………と、とにかく明日も注意するように!」
ただ、そういう厳しいところも相守の一面なわけだからオレはなるべく受け入れていこうと思う。
「ナッキーも隅に置けませんなー」
「いつからそういう関係になったんだよ?」
「は? なんの話だよ」
「またまたー それが理由で急に変わったでしょ?」
「何言ってるかさっぱりわからんが」
「……これ、本気で言ってるやつだ」
「……マジかよ。今のやり取りを馬鹿正直に受け取るのか」
常識の範囲内で他人に迷惑をかけないようにすること。これがわかっていればそんなに怒られることはない。
だから、オレたちは常識の範囲ギリギリまで学校できるお洒落をしたり、他人に迷惑をかけない範囲で菓子を持ち込んだりしている。そういう工夫をすることも学校に行く中で楽しいことだと、オレやこのクラスの多くの奴はそう思っている。
「夏川君! 胸のボタンは一番上以外とめなさい!」
ただ一人……相守を除いては。
高校に入って風紀委員が存在していることには結構驚いたが、1年生の時は別に気にすることもなかった。
でも、2年生の今のクラスになった時、相守が風紀委員になってからそうもいかなくなる。相守はまるでドラマやマンガから出てきたんじゃないかって思うほど風紀委員らしいことを言って、風紀委員らしくクラスの奴らに注意をしていく。
もちろん、相守は生徒手帳を読んでいないオレでもわかるくらい模範的な見た目と恰好だ。クラスで一番長くスカートを履いて、髪は長すぎず短すぎない清潔感を出す切り揃え方。更にはテキパキとした動作まで含めて風紀委員っぽく見える。
「また始まった。風紀委員長のお説教」
そんな相守は今のクラスでは風紀委員長と呼ばれている。けど、相守は本当に風紀委員で委員長を務めているわけじゃない。そのあまりにも厳しく毎日のように目を光らせる様にオレたちが親しみと……ちょっと皮肉を込めてそう呼んでいた。
「ナッキー、今日も言われてやんの」
「俺もさっき靴下がどーだとか言われたわ。フツーそんなとこまで見るか?」
「アタシもさっき化粧注意されてさー」
今日も相守の行動はクラスの中の話題になる。いわゆる悪目立ちってやつだ。
「風紀委員長、化粧してない系?」
「黙ってればけっこー可愛い顔してんだけどなぁ。それに付ける化粧が怒る顔じゃあ……」
「何? アンタ、風紀委員長のことそういう感じで見てたの?」
オレが相守に指摘されてから集まり到着しなくともこいつらの声は教室内に響き渡っていた。
「お前ら、それくらにしとけよ」
「おっ、ナッキーも実は隠れ風紀委員長ファン?」
「そういうのじゃねぇよ。まぁ、悪るいのはオレだからしょうがないって話だ」
「そんなこと言いながらもう外してんじゃん」
「別にいいだろ? お前らが嫌なら一番上までとめてやるけど」
「まさかー 風紀委員長でも言わない~」
その声の大きさについて度が過ぎないように気を付けつつもオレたちは平和な日々を送っていた。いや、送っているつもりだった。
それは別の日にオレがたまたま忘れ物をしたことを家に帰ってから気付いて、学校が閉まりそうになる時間に教室に戻った時に起こった。というか、目撃した。
「ぐすっ……………えっ!?」
教室の自分の席で大粒の涙を流す相守の姿を。オレはもう誰もいないと思って勢いよくドアを開けて教室に入ってしまったから絶対に誤魔化せない。
「あ、あー……えーっと……」
「何やってるの……すんっ……もうすぐ完全下校時刻よ」
「こんな時までお説教かよ! つーか、まだ時間あるなら別にいいだろ」
「何で……今……」
「忘れ物取りに来たんだ。それより――」
「だったら早く取って帰って」
何か聞く前に相守はオレを突き放す。つまりは余計な気は遣うなってことだ。運悪く見てしまったことは申し訳ないが、わざわざ教室で泣いている相守にも問題がある。そう思いながらオレは忘れ物を回収すると、何も言わずに教室を後にした。
「…………何? また忘れ物」
「ちげーよ。ほら、どっちか選べ」
「早く帰れと言ったはずだけど」
「受け取って落ち着いたの見たら帰るさ。なに、オレの自己満でやってるから詳しい話とかは聞かねぇよ」
数分後。自販機へ行ってから教室に戻って来たオレは相守に飲み物を差し出す。相守的には帰る方が正解だったのかもしれないが、さすがにあれだけ泣いている姿を見て、関係ないとそのまま帰れるはずがない。
「……じゃあ、こっちを頂くわ」
「えっ、そっち……」
「何?」
「な、なんでもない」
オレが買って来た飲み物はブラックコーヒーとピーチジュースだったが、相守はピーチジュースの方を取る。イメージ的には絶対ブラックコーヒーだと思っていたから驚いてしまった。オレは缶を適当に振りながら相守の様子を窺う。
「…………」
「結構、美味しいだろ? 高校の自販機って意外と他じゃ見ない飲み物売ってるから買ってみると面白いぜ」
「まるで私が学校の自販機を利用したことがないような言い草ね」
「す、すまん。オレらは結構入り浸ってるけど、風紀委員長が買いに行ったとこ見た事なかったから……」
「……謝らないで。当たってるから」
少しだけ良くなったと思った相守の表情がまた曇ってしまった。何をやっているんだと反省しつつ、別の話題を探すが……思い付かない。現状の相守に触れないようにして適当な話を振れるほど、オレは相守のことをよく知らなかった。
それからジュースを飲む音だけが暫く聞こえて幾分が過ぎた頃、次に口を開いたのは相守の方だった。
「泣いてた理由、本当に聞かないの?」
「な、泣いてた? そ、そんなのオレは見てないが?」
「……下手くそ」
「ひでぇな!? そりゃあ、聞いていいなら聞くけど……本当にオレが聞いていいのか?」
「そのつもりで残ったんじゃないの?」
「ま、まぁ。でも、別に無理して言わせるつもりはねぇよ。その調子ならもう帰ってもいい感じだな」
相守は確かにクラスで顔見知りだが、よく知らないオレが聞いてどうにかなるのかとその時は思い始めていた。だけど、オレがそう言うと相守は何だか寂しそうな表情をする。普段は怒っているか厳しい顔で見られるかのどちらかだったが、こうして見ると相守の表情は結構わかりやすい。
「やっぱ聞かせて貰うわ。何があったんだ?」
「……悔し泣きしてた」
「く、悔し泣き? えっと……失恋でもした?」
「ば、馬鹿じゃないの!? どうしてそうなるのよ!?」
「だって、悔し泣きっていうのはなんか負けたりしたってことだろ? 風紀委員長が勉強や運動で悔しいなんてなるわけ……」
「……私、運動神経は全然ないし、成績はそこそこだけど?」
ちょっと拗ねた感じで相守は言う。オレはまたしてもイメージで話してしまった。
「すまん。じゃあ、何の悔し泣きなんだ?」
「それは……みんなが校則を守ってくれないから」
「はぁ!? そ、それで?」
「それでって、重要なことでしょう。夏川君もだけど、みんな何回行っても服装は治らないし、持ち込みは増えるしで、一向に良くならない」
「で、でも、そうだとして何もそのことで風紀委員長があんなに泣くことは……」
「どうして? 私は……夏川君たちの言うように委員長ではないけど、風紀委員ではあるわ。それなのに改善してないのは……私のせいになるじゃない」
相守が失恋という指摘に驚いていたからもっと普通の悩みかと思っていたが、それはオレの想像を越えた悩みだった。たかが学校の委員会の役割が果たせなかっただけでそんなに悔しがることなんて……
「……私、当たり前のことだけど、小さい頃から両親に規則をきちんと守るように教えられてきた。学校にだってルールはあるし、私はそれを守ることが正しいと思ってる。だから、みんなにも当たり前のことを守って欲しい。そう思っているけど……私はみんなに嫌われているから聞いて貰えない」
「ふ……相守、そんなことは……」
「ううん。わかっているわ。だけど、これで厳しく言うのを辞めたら、困ってしまうのはみんなの方。不誠実な格好は校外での評判を下げる可能性があって、それで今後の受験や就職に響くことだってある。それに加えて変に目を付けられたら外に出た時に危険なことに巻き込まれる可能性だって……そういう危険性から身を護るのが本当の意味での校則なの」
「相守……」
「それでも、そう思っているのが私だけなら……私が間違ってるのかな……」
相守は弱々しく言いながらまた涙を浮かべる。そんな姿を見て、オレは大きな間違いに気付く。
常識の範囲内で他人に迷惑をかけないようにすること。オレたちはそれを守れているつもりでいたが、勝手にそう思っていたルールすら守れていなかった。本来なら正しいはずの相守が間違っているように思わせるほど、身勝手なことをしていた。
そして、相守はオレが思っていた以上に純粋で、真面目で、真っすぐなやつだ。相守は校則を守っていないオレたちを嫌ったり、馬鹿にしたりするわけではなく、校則を守らないことで不利益になるかもしれないことを心配している。それで感じなくてもいい不甲斐なさで泣かせてしまっている。
「相守…………ごめん!」
オレはその場で勢いよく頭を下げて謝る。
「ど、どうしたの急に……」
「オレ……いつも相守の言うこと聞き流して、悪いってわかっていながら着崩しとか、持ち込みとかずっとしてた。相守のことなんか全然考えずに……」
「そ、そうだけど、別に夏川君だけを責めているわけじゃないわ。それに結局は私の人望がないから……」
「そんなこと言わせてんのもオレたちのせいだ。勝手に相守のことを決め付けて、たぶん傷付けるようなことも言って……だから、本当にごめん!」
普段から相守のことをフォローしているつもりだった自分が恥ずかしい。その気持ちも重なって俺は頭を上げらなくなった。今どんな顔で相守を見ればいいかわからない。
そんなオレが謝ったまま、相守は少し間を空けてからオレに声をかける。
「……夏川君。頭を上げて」
「あ、相も――」
「ふふっ! なに、今にも泣きそうな変な顔!」
「は、はぁ!? 何ふざけて……」
そう文句を言いかけたけど、相守は泣きながら笑っていた。その瞬間、相守から感じる空気が少しだけ変わっているようにオレは思った。
「そこまで謝られたら許すしかないわ。それと……勝手に決め付けていたのは私も同じ。夏川君がこんな人だと思ってなかった」
「ど、どんな人だと思ってたんだ」
「イキり不良少年」
「……相守、結構口悪いな」
「そう? 私の普段の物言いと変わらないと思うけど。でも、今ので夏川君の印象変わった。思ったよりも撃たれ弱くて……」
「やっぱり口悪いじゃねぇか!?」
「……ちゃんと話せば話せる人だって」
相守がほほ笑む顔を……オレは今まで見たことなかった。いつも怒らせているのはオレたちの方だけど、相守も本当ならそんな顔で笑える。それを常に実現するためにはどうしたらいいか。
オレはここまで話しながら少しずつ考えていたことを口にする。
「……相守、これからはオレもちゃんと校則は守るよ。だが、……相守も現状をちょっとだけ変えてみないか?」
「か、変えるって、私に校則を破れと……?」
「そうじゃねぇ。何つーか、クラスの連中への話し方だ。相守は厳しくしないといけないと思ってるみたいだが、厳しく言われると逆に従いたくなくなるもんだろ?」
「そんなことはないと思うけど?」
表情を変えず相守はマジにそう言っていた。それは……オレにはない考え方なんだろうが、そこを変えることで相守の現状の悩みはちょっとはマシになるかもしれない。
「お、オレみたいなタイプはそう思うんだよ。だから、もう少しだけ柔らかくっていうか、優しくっていうか、そういう感じで注意してみないか?」
「そ、それだけで何か変わるとは思えないけど……」
「それはまぁそうだろうな。だから、それに加えてさっき言ってたような校則の重要性もついで伝えてみるとかさ。生徒手帳とかに書いてあってもオレみたいなタイプは読まないし――」
「始業式の日に一通り目を通してと言われなかった……?」
「はい、オレが悪いです! そんな悪いやつもいるから面倒かもしれないが、優しく伝えてやってくれると助かるし、きっと聞く耳を持つやつも増えるぜ?」
オレはとりあえず考えていたことを全部伝えてみたが、今までのイメージしていた相守だとこの意見は受け入れられなかったと思う。だが、そのイメージが少しずつ変わった今の相守なら……
「……やってみる。クラスで影響力のある夏川君が言うなら、たぶん当たっているんだろうし……」
「お、おお! サンキュー、相守!」
「べ、別にお礼を言われることじゃないわ。それにしても急に協力的になるなんて……」
「いや、今までのオレが非協力的過ぎたんだ。これからは相守のためにオレも色々やるよ」
「……まだ感謝はしないわ。明日には夏川君も元に戻っているかもしれないし」
さすがに今日だけですぐに受け入れられるとオレも思っていない。何ならオレだって、全然違う雰囲気を感じる相守を完全に飲み込めていないのだから相守は尚更だろう。
「こんなに話すつもりはなかったのに、全部話しちゃった……って、ああ!? 下校時刻!」
「あっ……まだギリギリ大丈夫だろ」
「5分前行動が基本なの! 早く出ましょう!」
そんな一幕があったこの日以降、相守の校則に関する注意は少しずつ変わり始める。
「そのスカートの短過ぎ……少し短いから今すぐ……この次の休み時間までに直してくれないかしら? あまりに短いとあなたの身に危険が……あっ、この話はそんなに時間は取らないから!」
もちろん、相守も最初から上手くできたわけじゃないし、聞く側のクラスメイトも突然の変化には戸惑っていた。だけど、オレが出した案や相守自身も考えた喋り方を交えて、風紀委員としての注意は以前と違う空気になっていく。
一方、オレはというと……
「ナッキー、そんなビシッとしてどうした急に?」
「い、いや、わざわざ怒られるのも面倒だから、身なりくらいは最初から整えておこうと思ってな」
「どういう心境の変化……?」
相守が言っていたように誤魔化し方が下手くそだった。だが、オレが本来守るべき校則通りの恰好をすることで、男子の間ではそれなりの広告効果はあった。みんな着崩した格好をしているのは周りに合わせている部分もあったようで、その理由がなくなると案外きっちりするやつもいたのだ。
そして、結果としてクラスメイト全員が校則通り……とはならなかったが、勝手に作られた常識の範囲内から校則の範囲内という正しい形に近づく奴が増えてきた。
でも、それはオレからすればあくまでオマケの部分だ。
「風紀委員長、最近は話しやすくなったよねー」
「なんていうか……柔らかくなった感じ?」
「あたしもこの前相守さんとちょっとだけ話したけど、化粧のことで色々……」
一番良くなったのは相守に対するクラスメイトの心証だ。相守は嫌がらせでお説教をする奴ではなく、クラスメイトのためを思って行動している奴と最近の言動から感じ取れるようになったらしい。それが相守の注意を聞いてもいいというきっかけにもなっていった。
相守が望んだところではないかもしれないけど、あれだけ自分以外の心配ができる部分を勘違いされたままでいるなんてオレは間違っていると思う。だから、オレにとってはそこが一番大きな変化だ。
こうして、風紀委員の相守は以前よりもクラスメイトから信頼される存在になったとさ。めでたしめでた……
「夏川君! ちょっと!」
……しとは言い切れない。ここ最近はビシッと校則順守しているはずのオレだったが、何故か以前よりも相守に目を付けられることが多くなった。
「な、なんだよ、風紀委員長。別に今日もおかしなところはないと思うが」
「……そのようね。でも、夏川君は油断ならないから」
「はぁ!? 今や男子の中でオレほど模範的な生徒はいないくらいだぜ!?」
「……それでも油断ならないの!」
なんていうやり取りを毎日繰り返すようになってしまった。こんなことをされると、イキり不良少年時代に戻ってしまいかねない。
「ったく、柔らかい雰囲気で接するの女子限定なのか……?」
「……話しかけるのにもきっかけがいるんだから」
「えっ? なんて言った?」
「何でもないわ! それより、私は本来風紀委員長じゃないし、ちゃんとした名前があるから……」
「ああ、悪い。どうにもそっちの方で口が慣れててな。今度からちゃんと呼ぶよ、相守」
「う、うん。夏川君…………と、とにかく明日も注意するように!」
ただ、そういう厳しいところも相守の一面なわけだからオレはなるべく受け入れていこうと思う。
「ナッキーも隅に置けませんなー」
「いつからそういう関係になったんだよ?」
「は? なんの話だよ」
「またまたー それが理由で急に変わったでしょ?」
「何言ってるかさっぱりわからんが」
「……これ、本気で言ってるやつだ」
「……マジかよ。今のやり取りを馬鹿正直に受け取るのか」
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