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3年生2学期
10月22日(日)晴れ 清水夢愛と産賀良助Ⅱその3
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朝は寒く昼はやや熱いパラシュートの日。
この日は木曜から始まるテストのための勉強に費やす日になった。
いや、最近はテストでなくとも勉強はしているのだけど、明確な試験が目の前に迫ると、少しだけ頑張らなければという気持ちが出てくる。
だから、今日は特に書けることもないので……一週間前の出来事で書ききれなかったことを記そうと思う。
というのも、今日の昼過ぎあたりにちょうど清水先輩から連絡があって、文化祭が終わったから勉強を教える話を本格始動させようと言われたのだ。
今週と来週はテスト勉強するので、実際に始まるのはもう少し先になるけど、結構長いこと後回しにしていたので、そろそろ清水先輩も我慢できない頃だ。
そんな清水先輩も先週の文化祭に足を運んでくれて、日曜の午後には文芸部の見学に来てくれた。
「こんにちは、良助」
「清水先輩。お疲れ様です。あれ? 隣の方は……」
「ああ。茶道部にいた同級生の成川さん。茶道部に行ったら偶然会ったんだ」
「あっ、そうでしたか」
そう言いながら僕が会釈すると、成川さんもにこやかに返してくれる。
清水先輩や実香さんと同じ茶道部ということは、去年や一昨年の文化祭で顔を合わせている可能性もあるけど、僕は覚えていなかった。
「これが今年の冊子か。小織の分ももらってもいい?」
「冊数はあるからいいんですけど……桜庭先輩に見られるのはちょっと嫌ですね」
「ははっ。でも、小織はペンネーム知らないんじゃないか?」
「た、確かに。でも、なんかバレそうな気もして……」
「キミ、小織ちゃんとも仲いいんだ。ということは……一時期、茶道部で話題に挙がってた子?」
「そうそう。その子」
清水先輩と成川さんの間で会話は成立していたけど、突然のことに僕は困惑する。
そういえば、実香さんからもそんな話を聞いたような……
「なるほど。それで色々飛ばして先に文芸部に来たんだ」
「いや、この後に他も回るつもりだよ。成川さんも良かったら一緒に回る?」
清水先輩がそう言うと、成川さんはきょとんとした顔になった。
「うん? 私なんか変なこと言った?」
「いや……夢愛ちゃんから誘われたことなんてなかったからちょっと驚いて。正直、久しぶりに会って全然変わってないなーと思ったから、意外だった」
「ふむ……言われてみれば前までの私なら誘わなかったな」
「というか、こんなに話す感じでもなかったから……こっちとしては結構嬉しいよ」
「えっ。3年生になってからは結構話してたつもりなんだけど……」
「いやいや。そこまでの2年間でよくわらかない時期の方が長かったから!」
いつの間にか清水先輩と成川さんの思い出話の方が盛り上がり出して、そのままの流れで清水先輩は展示室を後にしていった。
清水先輩がそう言ったのは久しぶりに会ったからかもしれないけど、成川さんにとっては嬉しい変化だったらしい。
僕としても親心……と言ったらおかしいかもしれないけど、何だか嬉しい気持ちになる一幕だった。
この日は木曜から始まるテストのための勉強に費やす日になった。
いや、最近はテストでなくとも勉強はしているのだけど、明確な試験が目の前に迫ると、少しだけ頑張らなければという気持ちが出てくる。
だから、今日は特に書けることもないので……一週間前の出来事で書ききれなかったことを記そうと思う。
というのも、今日の昼過ぎあたりにちょうど清水先輩から連絡があって、文化祭が終わったから勉強を教える話を本格始動させようと言われたのだ。
今週と来週はテスト勉強するので、実際に始まるのはもう少し先になるけど、結構長いこと後回しにしていたので、そろそろ清水先輩も我慢できない頃だ。
そんな清水先輩も先週の文化祭に足を運んでくれて、日曜の午後には文芸部の見学に来てくれた。
「こんにちは、良助」
「清水先輩。お疲れ様です。あれ? 隣の方は……」
「ああ。茶道部にいた同級生の成川さん。茶道部に行ったら偶然会ったんだ」
「あっ、そうでしたか」
そう言いながら僕が会釈すると、成川さんもにこやかに返してくれる。
清水先輩や実香さんと同じ茶道部ということは、去年や一昨年の文化祭で顔を合わせている可能性もあるけど、僕は覚えていなかった。
「これが今年の冊子か。小織の分ももらってもいい?」
「冊数はあるからいいんですけど……桜庭先輩に見られるのはちょっと嫌ですね」
「ははっ。でも、小織はペンネーム知らないんじゃないか?」
「た、確かに。でも、なんかバレそうな気もして……」
「キミ、小織ちゃんとも仲いいんだ。ということは……一時期、茶道部で話題に挙がってた子?」
「そうそう。その子」
清水先輩と成川さんの間で会話は成立していたけど、突然のことに僕は困惑する。
そういえば、実香さんからもそんな話を聞いたような……
「なるほど。それで色々飛ばして先に文芸部に来たんだ」
「いや、この後に他も回るつもりだよ。成川さんも良かったら一緒に回る?」
清水先輩がそう言うと、成川さんはきょとんとした顔になった。
「うん? 私なんか変なこと言った?」
「いや……夢愛ちゃんから誘われたことなんてなかったからちょっと驚いて。正直、久しぶりに会って全然変わってないなーと思ったから、意外だった」
「ふむ……言われてみれば前までの私なら誘わなかったな」
「というか、こんなに話す感じでもなかったから……こっちとしては結構嬉しいよ」
「えっ。3年生になってからは結構話してたつもりなんだけど……」
「いやいや。そこまでの2年間でよくわらかない時期の方が長かったから!」
いつの間にか清水先輩と成川さんの思い出話の方が盛り上がり出して、そのままの流れで清水先輩は展示室を後にしていった。
清水先輩がそう言ったのは久しぶりに会ったからかもしれないけど、成川さんにとっては嬉しい変化だったらしい。
僕としても親心……と言ったらおかしいかもしれないけど、何だか嬉しい気持ちになる一幕だった。
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