産賀良助の普変なる日常

3年生2学期

10月11日（水）晴れ 後輩との日常・三浦将基の場合その10

　折り返しのウインクの日。
　本日も放課後は文芸部で準備を進めるけど、展示室への搬入は金曜の準備日まではできないので、時間的には結構余裕があった。
　なので、結局はいつも通り和やかに雑談しながらの準備になる。

「当日って忙しいんですか？」

「いや、一気にお客さんが来るわけじゃないし、質問されない限りはこっちも話しかけないから、今日みたいに結構余裕があると思うよ」

　それでも桐山くんは副部長として色々作業をしているので、男子の会話は僕と三浦くんだけになっていた。

「正直、2日もやる必要あるのかとは思っちゃいますけどね」

「この学校は文化部が多い……わけでもないから、見て回れないための配慮ではないか。言われてみると、高校で2日連続は珍しいのかな」

「い、いえ。単にやる側として疲れるなーって話です」

「それは確かに。でも、うちの文芸部は文化祭以外だと年度末の冊子の寄稿くらいしか主なイベントがないから、ちょうどいいと思う」

「そう……ですね。他の文芸部だと、ディベート大会とかやってるところあるみたいですし」

「三倉くん、他の文芸部のこととか調べたりするんだ？」

「調べたというか……たまたま目に入っただけです」

　入部した当初はすぐに帰っていた三浦くんだけど、今はこんな風に暇な時間もしっかりと話してくれるようになった。
　最近は石渡さんとも比較的話せるようになった気がするし、文化祭前に1年生との距離が縮まっていて本当に良かったと思う。

「まぁでも……ちょっと楽しみにはなってきました。なんかある日の前日のテンション的な」

「それなら良かった。本番は他の見学もできるからもっと楽しいよ」

「産賀さんは文化祭デートできますもんね」

「ごほっごほっ……急にぶっこんでくるね」

「すみません。でも、実際にやる人が近くにいるんだなーと思うとつい」

「み、三浦くんは誰かと回る予定は？」

「いつもの連れという意味ならありますけど、恋人って意味ではありません」

「そ、そうか……」

「で。実際どんな感じなんですか、文化祭デート」

　その後、実は付き合ってから回るのは初めてだと伝えたけど、なぜか信用されなかったので付き合い始めから遡って話すはめになった。
　まぁ、こういう話を深掘りできるのは、本当に仲良くなった証拠……だと思っておこう。