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3年生2学期

10月3日(火)曇り 後輩との日常・野島結香の場合その7

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 気候的には登りやすくなっているであろう登山の日。
 文化祭の提出物は印刷待ちなので、本日から数日は展示に必要な物の製作時間になった。
 部員募集の時はポスターのデザインにやや苦戦していたけど、今回は1年生が加わったことで、展示のデザインはスムーズに決定していく。

「こういうのはどうでしょう……?」

「おお! いいね、結香ちゃん。それ採用!」

 その中でも結香さんは絵心があるようで、サラッと例としての絵を描きながら色々提案していた。

「勧誘の時に結香ちゃんがいてくれたらもっと楽だったのにぃ」

「でも、皆さんの勧誘があったからこそ、文芸部に入ったわけですから」

「なるほど。つまりはひまり達もセンスあったってことか~」

「日葵。たぶん野島は気を遣ってくれてるだけだぞ」

 そんな話をしながらも結香さんの意見を中心に当日のデザインはおおよそ固まった。

「こういう時、絵心あるのはいいなぁ。僕はなんかのっぺりした絵になっちゃうから」

「わたしも線が角ばった感じになってあんまりかわいい感じの描けないし、結香ちゃんすごいね」

 僕と路ちゃんは結香さんの下描きを見ながら感心する。

「い、いえ。まさかこんなに褒められるとは思いませんでした」

「そうなの? それこそ中学の文化祭とかで活躍してたんじゃない?」

「ちょっと意見を出すことはありましたけど、文化祭実行委員をやってたわけではないので。むしろ……そういうのは姉の方が得意だと思います」

「実香ちゃんが?」

 路ちゃんはそう言いながら少し驚く。
 結香さんが珍しく自分から実香さんのことを話したからだ。

「お二人は見たことあるんじゃないですか? 茶道部のポップや案内用の看板は姉がデザインを提案したらしいんです」

「あー……あれか」

 毎年看板を持って案内していたのは記憶にあるけど、あれは自分で作ったものだったのか。
 それなら実香さんの性格からすると、自慢する意味で持っていたのかもしれない。

「なので……なんかムカつくから一昨年と去年は文化祭自体行きませんでした」

「そ、そうなんだ……」

「でもまぁ……今年は最後だし、行ってみてもいいかもしれません。茶道部に」

 そう言った結香さんの表情はどこか寂しそうに見えたのは……この前実香さんが家を出る予定だという話を聞いたせいだろうか。
 今年は校内で一緒にいるのだから、実香さんは確実に文芸部の見学には来るはずだ。
 どちらにとっても一緒に高校の文化祭をやるのは、最初で最後なのだから、お互いの日頃の成果を平和に確認し合えたらいいなと勝手に思った。
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